とある理想の異世界伝 作:爪先
一方そのころ。
「うわーっ上里はんが突然泡吹いて倒れた!?!?」
学園都市を出てからしばらく経った上里勢力。倒れた上里をぐるりと囲うようにして、皆心配そうに覗き込んでいた。旅に旅を重ねる上里たちだったが、ここ最近も普通に健康で、もし病気だったとしたら上里勢力が見逃すはずもなく、もちろん上里が何の原因も無く倒れるはずもなく。
ということは。
「この中に上里さんをこんな風にした犯人が……?」
皆んなの目に殺意が籠った。
「絵恋っお前変な薬でも盛ったんだろ!!」
まず絵恋に突っかかったのは上里の護衛役、獲冴だ。ボディーガードとしての責任から熱くなっているのかもしれない。
「ひどい言い掛かりどすなあ。それこそ獲冴がやったんと違いますの。ほら気付かないうちに上里はんのことぶってしまったりして」
結局本場の京都弁なのか、誰も本物を知らないからわからない、シュレディンガーの京都人絵恋がやりかえすと、
「大将にそんなことするかい!!……いや、そうだよな、あれ?もしかして私無意識に大将のことを……?」
なぜか自分を疑い始めてしまった。そんな彼女を見て、同じく護衛役の暮亞は呆れる。
「……獲冴に味方する気はないですけど、流石にそんなアホなことあります?」
こうやって見ると、やはり「上里に見られている」というのは、彼女たちにとって相当なストッパーだったらしい。以前上里不在だった時は、まだ同じ方向に向けさせられていたからよかったものの、今回は犯人探しだ。どうしても彼女たちの中で対立が起こる。
なにかドロドロとした争いが始まった。
「ほら出洞がまたトラック乗せて酔わせたんだろ?」
「いや私は杏奈が怪しいと思うね」
「おい夢厨どこいった?」
原作であまり出番のなかった者たちがこれを機に前へ出はじめ、さらに混乱が大きくなっていく。
そんなわちゃわちゃを横目に、割と冷静なのが琉華だった。今日は大人バージョンだったからなのかもしれない。
「というか何のためにやったのかしらね……」
独り言のつもりだったが、取っ組み合いからちょうどよく抜け出してきた獲冴が反応した。
「どうせ大将を襲おうって魂胆だろ?それじゃあダメだよなあもっとロマンチックにさ」
どうやら自分がやったかもしれないという考えはもう無くなってしまったらしい。
「やい暮亞お前かお前がやったんだな!!」
「いやいやいやそんなっ、そんなことしませんよ!!」
会議は荒れる、そして進まず。
うねりにうねった彼女たちのエネルギーは、行く先を知らない。