ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。   作:サラダよりは肉が好き

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書けたので連投。

自由気ままにレッツゴ!

そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/


第10話 真っ当なラブコメは楽しいらしい。

数日後。俺は駅に訪れていた。普段しないような服装……まぁ、白いシャツの上に黒のジャケット。そして黒いズボン……ショッピングモールに行ってマネキン買いをした、可もなく不可もなさそうな服装に身を包んでいる。

 

 

「……お、お待たせ……待ったかしら」

 

「……」

 

 数分後、待ち人来たれり。広井芽衣である。白いワンピースにピンクの薄い上着。そして何を入れるのかわからないような、小さい白い鞄を片手に持った……モデルのようなオシャレな服装だ。

 

「……な、何?まじまじと見て」

 

「あ、あぁ……こう、フィクションの存在が飛び出して来たみたいな衝撃に襲われてる……」

 

「……はぁ、やっぱり、影谷君は影谷君なのね。こういう時のお手本を見せてあげる……似合ってるわ、格好いいわよ影谷君」

 

 広井は俺のマヌケな反応に飽きれたのか、最初の恥ずかしがった様子は消え去りいつも通りの声色と表情を見せる。……正直、どう反応していいかわからなかった。それほどまでに、綺麗だったから。だってさぁ!二次元のキャラとデートだなんて、現実になると思わないだろ!誘ったの俺だけど……!

 

「べ、別に……い、行こうぜ」

 

「……ふふっ、おかしいと思ったのよ。……後で聞かせてもらうから、覚悟しておいてくれるかしら?」

 

 ……だが、今回ばかりは気を抜くことはできない。このデートも、メインヒロインルートを妨害する戦略の一つなのだから……!

 

 

『広井ちゃんとデートをするぅ?……まさか君、自分がメインヒロインを攻略すれば阻止できるなんて考えてる?』

 

「それが出来れば万々歳だな……まぁ無理だろうけど……」

 

 金城と悪魔に出会った夜。神と俺は次の一手を考えていた。金城と悪魔が本格的に妨害に入ると仮定するならば、今までのような、ゲームの流れに沿った妨害では足りない。

 当初の俺の予定では、広井のフラグを全てブチ折りつつ、別ヒロインとのフラグを建設することによって、緋色をサブヒロインルートへと導くはずだった。だが、サブヒロインの一人である金城が敵側に回ってしまった以上、別ルートへの移行作戦は厳しいものとなる。

 

「……要は、ルート確定時点である夏祭りまでルートを確定させなければいい」

 

『ふむ……』

 

「この世界は、既にゲームの流れから外れている……そういう認識で間違いないか?」

 

『そうだねぇ……相変わらず、根本的な流れ……ギャルゲーで言うところの、共通ルートは変わらないよ。何もしなければ、緋色君はメインヒロインルートへ突入してしまう……だが、世界のバグはかなり影響を及ぼしている。加えて、元々の主人公である、影谷信人の肉体を使っている君の行動は、緋色君レベルの影響力を持っていると言っても過言ではないかな……?』

 

「なら、俺が広井に“恋愛的なアプローチ”を仕掛けたら、どうなる?」

 

『……なるほど、広井君は主人公二人に攻略される形になる。今までのように基本の流れに沿って妨害するんじゃなくて、壊してしまう訳だね』

 

 そう。俺が、緋色が遭遇するはずのイベントを横取りして、“俺自身が”広井を攻略する。こうすることで、好感度を分散し……出来る限り、ルートの確定を先延ばしにする。もちろん、並行して天童を緋色にけしかけることは忘れない。緋色に別ルートに入ってもらう方が楽だからな。難易度は高いが、ゲームの流れ的には新ヒロインも登場することだし。

 ……我ながら最低だが、俺自身が影響力を持つというのならば、使わない手はない。行ってしまうなら、人の好意を分散して、どっちつかずの状態を作り広井を悩ませようという魂胆なのだ。推奨されるべき手段ではない。

 

『でもさ、もし本当に広井ちゃんが君に恋をして、付き合うことになったらどうするんだい?』

 

「……それこそ、無理だろ。俺は元々勉強位しか取り柄がない人間だったし、何より人に好かれるための努力もしてこなかったし、しようとしてこなかった」

 

 だが、それでも……俺の命も、アイツらの命も護りたいと思ってしまった。どうせ一度死んでる。今更失うものなんてない。なら、やるしかないじゃないか。

 

「幸い、鵜吞みにはできなくなったとはいえ、ゲームの広井芽衣のことなら把握してる。……なんとか、やるしかない」

 

 自分に自信がなかろうが、なんだろうが……世界の命運は、俺の手に懸っているのだから。

 

 

 なんて決意して来たはいいけど……!

 

「……♪」

 

 なんか楽しそうに電車の窓から景色見てるんだよな広井……!これは大丈夫、大丈夫なのか!?

 なんだか妙に可愛く見えるし……世界の命運が懸ってるっていうのにしっかりしろ俺……!

 ……まてよ?誘った時も、最初こそ「何を言っているのかしら……」なんて言っていたが、最終的にはOKしてくれたし……!?

 

「すぅぅぅぅぅぅぅ……こぉぉぉぉぉぉぉ……」

 

「唐突にどうしたのよ影谷君……後、息の吐き方変よ……?」

 

 落ち着け、落ち着け……まずはこのデートを成功させることを考えろ……。

 本来これは、広井が姉の誕生日プレゼント選びに緋色を誘う「ドキ!?デートのついでにプレゼント選び大作戦!?」というイベントである。

 広井が緋色に持ち掛ける前に、俺がデート持ち掛け、似たような手順を辿ることによって、イベントを先潰ししてしまおうとう魂胆だ。本来のイベント発生時期を待っていると、金城と悪魔が何を仕掛けて来るかわからない。

 なので、先手を打った形だ。念のため、本来のイベントの場所から少し離れた場所を指定し、広井が好きそうなものを見て周る作戦だ……。問題は、俺自身女性とデートした経験が皆無、ということである……!

 

「そういえば、ちょっと遠くまで行くのね……何か理由があるのかしら?」

 

「ク、クラスメイトとかに見られたら恥ずいかと思って……」

 

「堂々と教室の中でデートに誘っといて良く言うわね……」

 

 アレは金城への牽制でもあった。一応この数日間、妙な動きはしていないはず。デートへ行くということを事前に話しておけば、妨害される可能性もあるが……この作戦、実は検証も兼ねているのだ。

 金城と悪魔は、俺が本物の影谷信人ではないと知っている……いわば、この世界の裏側を知る奴らだ。もしかしたら、ゲームとしてのこの世界のことも知っているかもしれない。

 神も、アイツらがどこまで把握しているかはわからないらしい。ならば、ここで見極める。本来のイベントの待ち合わせ場所にはカメラを設置し、常にこちらから確認できるようにしてある。俺が別の場所をチョイスしたことは、俺と広井、あとは神しか知らない。

 上手くいかなかったとしても、デート、という単語を使って、広井に少しでも俺を意識させること、そして緋色のイベントを潰すことがメインの目標だ。……広井がデートを了承し、待ち合わせ場所に来てくれた時点である程度成功と言えば成功なのだが……。

 

「……ここだ、そろそろ降りようぜ」

 

「わかったわ」

 

 電車を降り、俺たちは隣町へ繰り出した。

 

 

 広井芽衣は、ギャルゲーのメインヒロインである。まぁこの世界はあくまでゲームに似た別の世界なのだが……それ故、俺は、ある程度広井のパーソナルデータを把握している。

 好きな食べ物は甘さ控えめの和菓子で、嫌いな食べ物はパクチー。趣味は読書と勉強。将来の夢は医者……。休日は勉強するか、それ以外は本屋を巡っている。

 

「ひとまず、カフェで一回一息つくか……そこ、ブックカフェらしいから寄ってこうぜ。そこで何となくの予定も話すから」

 

「ブックカフェ……そんなものがあるのね」

 

「あぁ。読書に配慮されてる空間だから落ち着いてるし、本も置いてあるから読むこともできるぞ……確かそこの店は、絶版の小説を多く扱ってるとかなんとか」

 

「行きましょう、すぐに行きましょう」

 

「ちょ、待てって!」

 

……はしゃぐと、淡々と行動が早くなるのも、広井芽衣というキャラクターの魅力だったりうする。

 そうして、ブックカフェへと入店。予約してあったのでスムーズに落ち着いた席を確保することができた。

 

「……影谷君、その……」

 

「……あぁ、注文終わったら本取りにいってもいいよ。絶版コーナーは確かあっち「行って来るわ」早っ!?」

 

 ……本当に本のことになるとキャラが変わるな。そういえば、この前緋色と金城のイベントを覗き見したとき、広井と鉢合わせのは本屋だったな……。

 なんてことを考えていたら、数冊の小説を持った広井が戻って来た。

 

「おいおい……全部読む気か?」

 

「滅多に見れないものもあったからつい……ごめんなさい。やっぱり絞るわ」

 

「いいよ別に。……俺も読んでいいか?」

 

「影谷君も小説とか読むの?てっきり漫画とかばかりかと思ってたわ」

 

「それなりにな。ご想像通り漫画が大体だけど、ライトノベルとか普通の文学系も読むぜ」

 

「成程……無駄に豊富な表現と語彙はそこから来ているのね……」

 

「無駄に!?」

 

 冗談よ、とクスクス笑う姿は、妙に絵になっていた。……どうしたことか、まだデートが始まったばかりだというのに、俺の方が参ってしまいそうだ。だが、広井がいつもの通り振舞ってくれているからか、俺も肩の力が抜けてきた。

 暫くの間、紙の捲る音だけがその場に流れる。時々注文したコーヒーを啜りながら読み進めていく。

 そうして、ほぼ同時に、俺と広井が小説を閉じた。読み終わったのだ。そうして、俺が次の小説に手を伸ばした瞬間。

 

「影谷君。感想戦、しない?」

 

「感想戦……?」

 

「……その、私、読書仲間どころか友達もこの間まで少なかったじゃない?……だから、ちょと、そういうの、やって、みたくて……」

 

 顔を赤くしながら、少しだけ俯く……なんだこの可愛い生物は……!元々、ゲームの最推しは広井では無かったというのに……!揺らぎまくりだ……!

 

「べ、別にいいけど……」

 

「本当!?……じゃあ、読んでいた本を取り換えましょう。それから感想を言い合うの」

 

「わかった……でも、いいのか?結構時間食っちまうけど……」

 

「本は逃げないわ。読めなかった本は、また来てから読めばいいじゃない」

 

 また、ってことは、次があるということなのだろうか……!?……どうしたことか、思ったよりデートは順調なのかもしれない……!

 

 

「だから、こっちの本の主人公は結局のところ初恋が忘れられなかったんだろ?だから未練がましく元カノの心配をしてさぁ……」

 

「それは違うわ影谷君。吹っ切れたからこそ、好意ではなく純粋な心配が残るのよ……あなただって友達は見捨てたりしないでしょう?」

 

「それはそうかもしれないけど……ほら、ここの描写とかさぁ……!」

 

 感想戦は、がっつり感想戦になりました。さっきまで甘い雰囲気でいけてるなぁ、なんて思っていたら、俺と広井の感性は結構違っていたようで……感想を言い合っているうちに、討論のように語りまくっていた。

 俺は結構、物語は俯瞰的に捉えるタイプだ。描写から類似的な点を探して、論理的に読んで行くタイプ。

 広井は、感情を考えながら読むタイプだ。自分の実体験も併せて、結構感情移入して読むらしい。

 それ故に、結構意見が食い違う部分も生まれるわけで……。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

「……ぜぇ……ぜぇ……」

 

 かなり、白熱してしまった。結構強い言葉を使った気がするけど……も。

 

「……影谷君」

 

「なんだ広井……」

 

「……また、やりましょう。」

 

「そうだな……」

 

 どうやら、お互いに楽しめたようだ。

 その後、長居しすぎていても悪いので退店。まるでスポーツでもした後のような倦怠感と共に、ゆっくりと外を歩きはじめる。

 

「……影谷君」

 

「……なんだよ」

 

「……ありがとう」

 

 そういう彼女の顔には、微笑が浮かんでいて。……恋愛小説で感想戦をしてしまったからか、落ち着いたはずの顔の火照りが復活してしまった。

 

「で、デートは終わらんぞ!次はアレだ……そこ!近隣の街では一番大きい本屋!」

 

「本尽くしね……影谷君、もしかして、色々調べてくれたの?」

 

「え……まぁ、一応な。本好きだってのはなんとなくわかってたし……」

 

 まぁ半分くらいゲームの事前情報だが。

 

「……ふふ、じゃあ影谷君の好きな本も教えてくれるかしら?実はライトノベルとかはあんまり読んだことないのよ」

 

「いいぞ。ライトなものからヘビーなものまでお任せあれだ」

 

「ライトノベルなのにヘビーなの……?」

 

 ……楽しい。普通に楽しい。……彼女ができたら、こんな感じなんだろうか。一緒に出掛けて、お茶して、買い物に行く。

 正直、世の中のカップルの事は小馬鹿にしていた節もある。一体何が楽しいのかと。自分好みの女の子が語り掛けてくれるゲームの方が楽しいじゃないかと。

 ……でも、違うのだ。色んな目的や思惑は確かにあるのかもしれない。でも……純粋に楽しいデートも、あるのだ。

 目の前にいる子が笑ってくれるだけで、嬉しくて……

 

「あらあら~?影谷さんに広井さんじゃないですか~?」

 

 ……そんな時間は、唐突に終わりを告げた。

 




まともなデートって実は初めて書いた可能性がある。
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