ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。 作:サラダよりは肉が好き
少しずつ、心も成長していく。
そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/
「あらあら~?影谷君に広井さんじゃないですか~?」
「あら……金城さん」
……広井と本屋へ行く途中に現れる金城。やはり、嗅ぎつけてきたか。
「デート……に行くと仰っていましたものね~」
「か、影谷君曰くそうらしいけれど……別に、普通に遊んでいるだけよ」
さて、どうしたものか……。見た所、悪魔は近くに居ないみたいだが、この状況をそのままにしておくわけにもいかない。
金城は、俺も思惑はお見通しだろう。俺が広井を攻略する主人公の立場になることにより、ルートの妨害をする。……となると、金城が取る手は、
「……奇遇だな、金城。こんなところでお嬢様が一人で居ていいのかよ」
「護衛は常についていますから、ご心配無く~」
良く見ると、物陰に黒スーツにグラサンという如何にもSPちっくな奴らが物陰に居るような……そうだ、こいつお嬢様だったな。……金城グループの力を使えるなら、そりゃ強いし、俺の場所もお見通しか。
「デートじゃないなら……私も一緒について行っていいですか~?出かけたはいいですが、暇で仕方なくて~」
同行を申し出たか……。しかし、今は広井とデート中だ。ここで俺が同行を許可してしまえば、広井からの好感度は下がりかねない。
「悪いけど、デート中だからまた今度にしてくれ」
「けど、広井さんはデートじゃないって言ってましたよ~?」
「か、影谷君。別に普通に遊んだって良いんじゃないかしら……!」
広井は普通に恥ずかしがっている。当たり前か。教室で俺がデートと宣言してしまったせいで、広井にも少なからず羞恥があっただろうからな……。そこに関しては申し訳ないが、ここで引くわけにはいかない。
「悪いが、俺は真剣だ……引き下がってくれよ、金城」
「影谷君!?」
「……それは、少し寂しいですね~。わかりました。帰ることにします」
意外とあっさり引き下がったな……どういうことだ?
「……でも、ね?」
金城が、俺と距離を詰める。そして……、俺に、抱き着く形で、倒れかかってきた。
「……私だって、あなたの事……ね?」
上目遣いで俺を見つめる金城……敵だとはわかっているのに、不覚にも、胸が高鳴ってしまう。金城はサブヒロインだけあって、美少女だ。ときめかない方が無理がある。
「ふふ♪なんて冗談です♪では、お二人共、また学校で……」
俺から離れ、去っていく金城……一体、何がしたかったんだ……?
「……金城さん、もしかして、影谷君のこと」
「……ど、どうした広井?」
「……ごめんなさい。影谷君。私、帰るわね」
突然どうしたんだ!?金城の介入はあったが、楽しく過ごしていたハズなんだが……。
「きゅ、急にどうしたんだよ広井……なにか、気に障ったか?」
「違うわ。……今日は、本当に、楽しかったもの……でも、ちょっと金城さんのことを考えると……ごめんなさい!」
「お、おい!」
そのまま、走り去ってしまう広井。走って追いかけるが……物陰から、突如グラサン黒スーツの男……金城のSPが飛び出してきて、俺の行く手を阻んだ。
「……お嬢様の命です。今日はお引き取り願いましょう。影谷殿」
「なっ……避けろってば……!」
その後、奮闘するもSPをどかすことが出来ずにその日は帰ることになってしまった。……金城、一体何をしたっていうんだ……?
☆
『あ~……それはアレだね。広井ちゃんに誤解されたよ君』
「誤解……?」
誤解、とはどういうことだろうか。……確かに、広井の様子がおかしくなったのは、金城が現れた時ではなく、金城が俺に抱き着いた時だったが……。
『……うっわ、本当にわからないの?終わってるなぁ……これだから童〇は』
「関係ありますそれぇ!?」
『……いいかい?友達が好きな人と、自分が二人きりだったら気を遣うだろう?』
「そりゃ、まぁ……」
『つまりそういうことだよ』
……友達が好きな人……二人きり……広井と二人きりだったのは俺で、金城が来て……金城は広井にとって友達だから……。
「……そういうことか……やられた……!」
つまり、広井は……金城が俺の事を好きだと誤解したんだ。だから、俺とデートしていることに引け目を感じて、その場を去った。……非常に不味い。
金城は俺への妨害として、俺が広井を攻略して妨害しようとしたように、“俺を攻略”することで俺を妨害しようとしている……!
俺が攻略されるかどうかは問題ではなく、広井にそう取られてしまうのが問題だ……!このままだと、俺が広井と距離を詰めようとしても相手から離れて行く……作戦が根本からひっくり返されてしまう!
『君、ギャルゲー好きなくせに鈍いねぇ……そんなんで大丈夫?』
「うるせぇ!……どうするか……」
『君の作戦、方向性自体は悪くないと思うよ。如何に金城の誘惑を乗り切って、広井ちゃんと距離を詰めるかじゃない?』
……明日は学校だ。一回ああいう動きをしてきたということは、明日も活発化してくると考えていいだろう。どう立ち回って行こうか……。
『まだ夏祭りまでは時間がある。良く考えて行動しよう』
「……そうだな」
明日以降が不安だが……頑張るしかないな。
☆
翌日。いつものように教室へ行くと……、浮かない顔をした広井と、それを心配して声をかける緋色が居た。
「……どうしたの?広井さん。元気ないみたいだけど……」
「何でもないわ……少し、考え事をして眠れなかっただけ」
……非常に入りにくいが、そういうわけにも行かない。
「……おはy「おはようございます影谷君♪」うわぁ!?」
自分の席へ向かおうとした瞬間。唐突に後ろから金城が抱き着いて来た。早速仕掛けてきたか……!?
「ふふふ……」
「何のつもりだ……!離れろ……力つっよ!?」
「……金城さん。やっぱり……」
「あれ、影谷君は広井さんとで、デートして、でも今は金城さんが抱き着いてて……え、えぇ…?」
混乱に包まれる教室。そして、俺に向けられる男子からの殺気……!
「……なぁ、今まで緋色が羨ましいって思ってたけど……最近は影谷が……」
「広井さんをデートに誘った上で、金城さんから抱き着かれているだと……!?」
「許すまじ……!」
ポップにクラスの男子たちから嫉妬されているが、それどころじゃない!速く、何とかしないと……!
「だぁっ!」
「ぁん♪強引なんですから~」
「うるせぇ誰のせいだと思ってんだ!」
とりあえず、頑張って力づくで脱出した。……くそ、広井の前でコレは本当にいただけない……!
「本当に何のつもりだ金城……!」
「何のつもりって……もう♪言わせないでくださいよ~」
そのまま、俺とすれ違うように自分の席に向かう途中、小声で
「……させませんよ。影谷君の姿で、私以外になびくなんて」
「は!?」
問い詰めようとした瞬間、チャイムが鳴り響き、担任が教室へと入ってくる。……ひとまず、広井の誤解を解かないと……!
☆
……その後も、何とか広井の誤解を解こうとするが。
授業合間の休み
「広井ちょっと話g「影谷さ~ん♪」寄るなぁ!!!」
チャイムと共に抱き着かれそうになり、
昼休み
「広井一緒に昼飯「さぁこっちです影谷さ~ん!シェフにランチを作らせました~」ステーキを切り分けずに口にぶち込むなもがががががががが」
阻まれ続けて……放課後。
このままだと、関わる機会すら貰えない……なら!
「影谷さん一緒に……」
「皆また明日ッ!」
直ぐに教室を出て駈け出す。すぐにスマホ取り出し、広井にメッセージを送った。
『ちゃんと話したい。放課後に駅に来てくれ』
……来てくれるかはわからないけどな。
☆
「……影谷君」
「……来てくれたのか、広井」
……どうやら、一人のようだ。金城の介入も考えたが、ひとまず話ができないとどうしようもない。
「……」
「……」
沈黙の時間が続く。……正直、どういえばいいのかわからない。わからないが、ただ黙っているわけにもいかない。ちゃんと誤解を解かないと……作戦が上手くいかなければ、俺も、広井も死ぬ。
「……まず、すまなかった」
「……何に対してかしら?別に、謝られるようなことはされていないけれど……」
「それは、そうかもしれないんだが……」
「……私に構うより、金城さんと一緒に居た方がいいんじゃない?」
ここの誤解をなんとかしないといけない。……が、どう話したらいいものか。
「……この間、いきなりデートとか言って悪かったよ」
「……びっくりしたわ。突飛なことをする人なのは知っていたけれど、デートだなんて」
「……あの時は、何と言うか必死でさ。自分でもいきなりすぎたと思う。……広井にも、嫌な想いをさせた」
「嫌なんて……!……びっくりしたけれど、昨日は楽しかったわ。久しぶりに、勉強を忘れて趣味に没頭して……話し相手もできたしね」
広井が柔らかい表情で笑う。……だが、それはどこか寂しそうだ。
「……できるなら、またああいう風に感想戦をしたいけれど……。そういうわけには、いかないわよね」
「そんなことは……」
「……流石に、気づいてないとは言わないわよね?影谷君」
違う、金城は俺を好きなわけじゃない。“本物の影谷信人”が好きで、世界を崩壊させてそれを取り戻したいからそういうそぶりを見せているだけなんだ……なんて言えるわけもない。
「……そうだったとしても、俺はその気持ちには応えられない」
「どうして……?」
「……言えない」
……言えるわけがない。……金城が俺の事を好きではないように……俺だって多分、広井のことを恋愛的に好きなわけじゃないから。
「……少しだけね、金城さんが、影谷君に抱き着いた時……胸の辺りが、痛くなった」
「……広井?」
「……本だけは沢山読んでいるから、それがどういうことかは、何個か推測が立ったわ。……だから、余計にわからなくなって、色々考えてしまった。……だから、これが解決するまでは」
もう、あなたと二人だけでは出かけられないわ。……そういう彼女の顔は、申し訳なさそうだった。
「……そう、だよな。……悪い。色々、悩ませちまったみたいで」
「……影谷君」
広井が、俺に近づき、真っすぐに目を見て来る。
「……あなたは、色々変な行動をするけれど……優しくて、色々考える人なのは知っているわ。……デートに誘ったのも、きっとあなたにとっては大きな意味を持つ行動だったのね」
「……それは」
「……だけど、だからこそ、私もあなたも、焦るべきではないと思う。……この関係を、今は大事にしていきたいと、そう思うから……影谷君」
――――私と、ちゃんと友達になってください。
「……」
「あなたは、私たちを見ているようで、見ていない……何故か、そう思う時が何度かあったわ」
……そうだ、俺は最初、緋色や広井、金城や天童をゲームのキャラとしてしか見ていなかった。だから、自分勝手に、自分の命惜しさに行動した。
「でも、昨日は少しだけ違ったのよ。素のあなたと、沢山話した気がする。……私は、そっちの方が好き。……いつか、あなたが常にそう在れるようになったら、その時は、改めて……で、デートに誘ってほしいわ」
……今だってそうだった。世界の命運だとかなんだとか考えても、結局……ひとりよがりで、勝手に悩んで……だけど、広井はそんな俺を見てくれていた。様子がおかしいことも含めて、見てくれていたのだ。
……まずは、向き合うべきだったんだ。広井と、金城と、緋色や天童とだって。……そんなこと、前世でもできていなかったけれど。
俺は、広井の手を取った。
「……こっちからも、お願いします。俺と、友達になってください」
「……もちろん。これでちゃんと友達ね。……友達ってこうやって作るものではないとは思うけれど」
……ラブコメをそのままやろうとしたって上手く行かないのは当然だった。だって、ラブコメはシュチエーションとかの総称で、あくまで起こった現象につけられた名前でしかないからだ。……そんなことだけを考えていては、上手くいくもなにもない。
もう少し、考えよう。攻略する方法じゃなくて、向き合う方法を。
広井の手を放す。その後、二、三言かわして、俺は帰路に着いた。
―――――握った広井の手は、冷たかったけど、暖かかった。
青春とは、成長の物語だ。