ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。 作:サラダよりは肉が好き
青春は成長、そして自分の心との戦いである。
そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/
僕は緋色悠……桃色学園に通う普通の高校生だ。……ってことを友達に言うと、「お前は普通じゃねぇんだよ!」と言われるけど……なんでなんだろう?
高校2年になるタイミングで、僕は今通っている高校に転校してきた。ありふれたとある理由だ。
正直クラスに馴染めるかは不安だったけど……そんな不安は、とある自分によって消し飛ばされることになる。
その人物とは……影谷信人君。同じクラスのちょっぴり……いや、かなり変わった人だ。
彼とのファーストコンタクトは、校門をくぐる前から始まった。
「ヘイ!そこの一見冴えなさそうだが、実は馬鹿みたいなポテンシャルを持ってそうな顔した君!どこからきたの?二次元?」
不審者に絡まれたかと思った。でも、よく見てみると桃色学園の制服を着ているし年も同じくらいだ。話を聞いてみると、影谷君は高校からこの学園に入学したのだという。僕と少し状況は違うけど、少しだけ親近感が沸いた。
「というかこの顔の良さで普通の容姿は無茶だろ……頭イカれてんのかこの世界……」
どちらかというとイカれてるのは彼の頭かもしれないなぁなんて思いながら、彼と二人で校舎へと向かっている途中で……
ギャルルルルルル!(自転車がとんでもない速度で突っ込んでくる音)
ドォン!(僕がとんでもない勢いで吹き飛ばされる音)
「……は?オイテメェどこに目つけて走ってんだクソが!!!……クソ、放って行くわけにもいかないしなぁ!!!」
何が起こったのか、その時はわからなかった。覚えているのは身体の痛みと、僕を心配する影谷君の顔だ。
その後、影谷君が保健室に運んでくれたらしい。保健室の先生が言うには大したことないけど一応病院には行った方が良いってことで、新たな教室に入る前に早退届を書くことに。
そうして、保健室から出て外へ向かう途中の窓から見える桜の木に目を奪われて……もうひとつ、運命的な出会いをした。
桜の木の下のベンチで、本を読んでいるとてもきれいな女の子。長い黒髪に端正な顔立ち。桜の木というシチュエーションも相まって、とても絵になる光景から目が離せなくて…… 思わず、外に出てそっちの方に近づいていた。
「……あら、あなたは……?」
「……えっと、僕は」
と、自己紹介を始めようとした時だ。突然校舎の二階の窓が爆音を立てて開き、そこから何かの影が……こちらに降りて来る。
「そうはさせるかぁぁぁぁぁ!!!!!」
それは、影谷君だった。どうして飛び降りて来たのか、何をさせまいとしたのかは今でもわからない。彼はダイナミックな着地音と共にその場に着地して、しゃがんだ状態から数秒動かなかった。そして……
「俺の名前は影谷信人……普通の高校生さ」
「普通ではないよね!?明らかに飛び降りたよね今!?」
「…………これ、どういう状況かしら」
これが、僕らが一緒に過ごすようになったきっかけ……。あまりにも意味不明で、未だによくわからないけど……この時、僕は困惑する中でどこかワクワクしていたんだ。日常とは違う何かが起こる気がして……。
その予感は、しっかりと当たることになる。主に影谷君が原因で。
学園生活が始まってわかったことは、やっぱり影谷君は変な人だということだった。いつもは借りて来た猫のように大人しいのに、常に何か動いていてとんでもないことばかりやらかす。
例えば唐突に奇声を上げて僕にスライディングしてきたり、僕と広井さんが二人きりになった時に奇声を上げて突撃してきたり……本当に変な人だ。
でも、彼は決して悪い人ではなかった。僕が消しゴムを忘れたら、
「仕方ねぇ。この“華麗なカレーのにおいがしなくもない”消しゴムを貸してやる。ありがたく思えよ」
「小学校とかでしか見ないような奴だ!?」
「カレーが不服か贅沢な野郎だ。ならこの“青春の味R18編~好きなあの子はじつは先生と…~”の匂い消しゴムを貸してやる」
「実は何!?先生となにがあったっていうのさ!?消しゴムなのに味って言ってるし、小学生が買えない類だよね!?」
「……何バカをやっているの。もう私の消しゴムを貸してあげるから大人しくしていなさい」
「あ、ありがとう広井s「うるせぇ!緋色に消しゴムを貸すのは俺だ!」何のこだわり!?」
……思い返す思い出が変なものしかない!
と、ともかく、変人だけど悪い人ではないんだ。……いつの日だったか、こういう会話をしたことがあった。
「……影谷君って、マメだよね。宿題は絶対忘れないし、テストで間違えた部分は絶対復習するし。普段がアレなのに」
「何だ喧嘩売ってんのかテメェ。……まぁ、俺の取柄っていったらこれくらいだし。……別にやりたくてやってるわけじゃねぇよ。やれることがあるのに、やらないのが気持ち悪いだけだ」
「そういうもん?」
「そういうもんだ。俺にとってはな……だからゲームはトゥルーエンドまで見ないと気が済まないし、近づいて来る広井にホイッスルを吹くこともやめられん!そこ!進入禁止!!!」ピピーッ!
「どういう理屈!?」
……根本は、真面目な人なんだなって思った。……だからこそ、不可解だ。広井さんにちょっかいをかけるから、広井さんに気があるのかと思っていたら、天童さんにもちょっかいをかけたりしていたし。だから、僕なりの忠告をしたこともあった。広井さんをデートに誘った時は、とうとう腹をくくったのかと思った。
……僕も、広井さんのことは気になっているけど、彼なら応援できるかなって。自覚があるかはわからないけれど、広井さんも彼と会話するのは楽しそうにしているし。
だから、デートが終わったらしい次の日。広井さんが思いつめた表情で教室に入ってきたときは、何があったのか不思議に思った。驚愕して、真実を確かめようとしたんだけど……影谷君が登校してきて、その後金城さんが影谷君に抱き着いて居たりして……本当に、状況が意味不明だ。
その日、影谷君は必至に広井さんに話しかけようとしていたけれど、妨害するように金城さんが影谷君に行動を起こしていた。恋する乙女のように影谷君の世話を焼くその姿は異質そのものだ。
結局、影谷君は放課後になると直ぐに教室を駆けだし、少ししたあと、広井さんも教室を出た。僕は、声をかけることが怖くなって何もできずに……暫く、自分の席から動けなくて。
ようやく体が動かせた頃には、もうみんなは帰ってしまっていた。いい加減自分も帰ろうと、立ち上がった時……
「帰られるんですか~?」
「……金城さん」
金城さんが、僕に声をかけてきた
☆
「……どうしたの?」
「どうしたの?とは、どういうことでしょうか~?」
「……全部だよ。急に影谷君に抱き着いたり、ステーキねじ込んだり……一体何があったの?」
「あらあら~嫉妬、ですか?」
「……そんなんじゃないよ。ただ、不思議だから」
「……」
金城さんは、いつものような笑みを浮かべて、語り出す。
「……実は、影谷さんの事が好きなんです。……広井さんとデート、と言われて、焦ってしまってつい……距離を、縮めたくなりまして」
「……」
金城さんが影谷君のことを特別な目でみていることは、なんとなくわかっていた。普段はおっとりしているけど、影谷君と接するときだけ彼をからかうような言動をする。距離もなんとなく近い気がしていた。
気になっている男の子が別の女の子をデートに誘ったのをみて、焦ってしまうという気持ちもわからなくはない。
「……実は、緋色君にはお願いがあるんです」
「お願い……?」
「……影谷さんは、広井さんに惹かれています……でも、私は影谷さんと結ばれたい……」
「……それで?」
「協力して欲しいんです。影谷さんと結ばれるために」
……そんな気はしていた。自分の恋を応援して欲しい、という要求は当たり前の物だし、普通なら、協力するべきなんだろうけど……。
「ごめん、僕は、それはできないよ」
「……どうして?……あなたも、広井さんが好きなんでしょう?協力しない手はないと思いますけど……」
「……」
普通なら、そうなんだろう。咎められることでもないし、お互いが好きな人を手に入れられるなら、良いことなのかもしれない。
……でも、今までの影谷君の様子と、今日のことを見て……わかったことがある。
「……影谷君って、変な人だよね」
「……突然、なんです?」
「色々無茶苦茶するし、発言も意味不明だし、何を考えてるのかいまいちわからない」
「だから、一体なんだっていうんです~?」
「“でも彼は苦しんでいる”」
……その、奇人変人のような行動に隠れがちだけど、彼はずっと苦しんでいた。わざと咎められるようなことをしていたんじゃないかって、思う。周りに迷惑をかけるような大きなことをした後は、必ずその後始末をしていた。
誰かに、苦しみを気が付いて欲しかったんじゃないかって思う。だって、彼は本当は真面目だから。ゴールデンウィークに勉強会に来た時は、必死な顔をしていたけれど、時々疲れた顔をしていた……広井さんにデートをしようと告げた時の顔は、とても申し訳なさそうな顔をしていた。
今日は、焦った顔をしていた。やってしまったと、やってしまったことを何とかしなければいけないと……そんな、子供のような顔をしていたんだ。
「……今は、色恋とかそういうのを持ち出すべきじゃないと、僕は思う。彼が苦しんでいるなら、まずは彼を助けてあげたいんだ」
「……恋敵なのに?」
「恋敵だからこそ。戦うなら、正々堂々がいい」
……話していて、ようやく自分の心が纏まった。僕は、広井さんが好きだ。そして影谷君のことも好きだ。
だからこそ、人に誠実で在りたい。向き合って、ちゃんと理解した上で、広井さんを振り向かせたいんだ。
「……お人よしというか、なんというか」
「あ、でも金城さんのことは応援してるよ。影谷君、実はそんなに悪い気はしてなさそうだし」
「……そう、ですか。わかりました」
……金城さんには悪いけど、これが僕の答えだ。
「では、もう頼みません……“命令です、我が傀儡となりなさい”」
「え?」
僕の記憶は、そこで途切れている。最後に視界に入ったのは、黒い羽と縞模様の何かだった。
明るい心は気高く、そして暗い心は狡猾に。