ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。 作:サラダよりは肉が好き
少年の決意と、少女の策略によって。
今日はちょっとシリアス。次回からギャグが復活してきます。
そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/
広井と友達になってから数日、俺の日常は少しずつ変わり始めた。
唐突にデートに誘う……ということは無くなった。しかし、俺、広井、緋色(ときどき天童)と過ごす時間が多くなってきたのだ。
休み時間はもちろん、放課後も時々遊びに行くことが増えた。例えば買い物。例えばカラオケなど……そう、普通の高校生活というのを送っている。
金城のことも探りを入れているが……誘いを入れると、金城のグループの用事にかこつけて断られてしまう。……何か企んでいる気配はするが、今はあまり深入りできそうも無かった。
かといって、この数日をのんびり過ごしていたわけではない。……人と向き合うこと。広井によって気づかされたことを実践しようと試みていた。
よし向き合うぞ!と言っても、すぐに人と向き合えていれば世の中に争いは起こらない。だからまずは、ゲームのデータ抜きの皆を知るために動くことにした。会話をしたり、観察したりだ。
まずは広井。……ゲームの設定だが、黒髪ロング清楚系で、容姿端麗成績優秀な古き良きザ・ギャルゲーヒロインだ。しかし実際は、読書が好きのレベルを通り越して生きがいといえるレベルにまで達している。夜中、唐突に「今日出た新作小説の感想を語りたいのだけれど今起きているかしら……!」とメッセージが来るくらいである。どんだけだよ。夢中になると周りが見えなくなる一面は、可愛らしくも思える。
次は緋色。……ゲームでは、普通の皮を被ったスーパーマン系お人よし主人公……典型的なギャルゲー主人公だ。しかし、こいつは実はとても面白い。ボケると即座にツッコミを入れてくれたりする。良く人を観察している奴で、これがお人よしに拍車をかけている。人を観察して察することが上手い故に、困っている人をすぐに見つけてしまうといった具合だ。自分の事には無頓着なところがあり、実は制服のボタンがほつれていたりすることもある。
あとは天童。……ゲームでのキャラクター性は、天真爛漫な勝負好き元気系ボクッ子だが……自分には運動しか取り柄が無いと思うが故の勝負好きという一面があったり、実は乙女なものが結構好きだったり。お化けが怖いから心霊系の話題はNGだったり。素直が故に誤解を生むことが多く、それ故に苦労することもあったり。
ゲームの上ではテキスト上の情報だったり、そもそもゲームには描写されない一面の数々を目にして改めて実感する。彼らはどうしようもなく人間で、様々なことに悩み、憂うのだと。
そして、それは金城だって同じはずだ。普通に日々を過ごしてしたと思ったら、知らない世界の夢が見え始めて……ある日、この世界は上書きされた世界であると自覚させられた彼女は、一体どれほどの想いをもって悪魔と結託し、この世界を破壊しようとしているのか。そんな中で、“本物の影谷信人”との幸せな記憶はどれだけの支えになっていたのか。
もちろん世界の崩壊は阻止したいし……広井に惹かれている自分もいるから、欲を言えば広井と結ばれはしたい。……何とか上手い方法はないものか。
「影谷君が難しい顔してるねー」
「こういう時の彼は真面目なことを考えてる時と、真面目な顔をして変なことを考えてるかの二択だよね」
「同感よ。でも道のど真ん中で立ち止まられるのも迷惑よね……影谷君、こっち向いて」
「あん?(バチン!)痛った!?何すんだ広井ッ!」
考えに耽って居たら広井にデコピンされた。……そうだった。今日は天童、緋色、広井とアミューズメント施設に遊びに行くんだった。……時間があると、色々考えちまうのが悪い癖だ。
どうしてアミューズメントパーク施設に行くことになったのかと言えば、俺にしつこく勝負を持ちかけてきている天童ととうとう決着をつけるためである。足の速さでは勝ち目はないが、卓球やボウリングなどに勝負を持ち込めればまだ勝機がある……!
決して、ただ負けたくないから勝てる競技を選ぼうとしているわけではない。少しでも、運動が大得意な天童に勝るものがあれば、天童も遠慮なく俺達を遊びに誘えるだろうという俺の浅はかな考えが関係している。
というわけで、ついて早々大はしゃぎの天童をなだめながら向かったのは……ローラースケートである。……いきなり競う競技ではないのだが、仕方がない。
「……」
「どうしたの広井さん。ローラースケートのコートをまじまじと見て……」
「……一度、やってみたいのよね、アレ」
と、キラキラした瞳で見られては形無しである。満場一致(?)でローラースケートをすることになった。
ちなみに俺もやったことはない。というかみんなやったことはなかったので、スタッフさんに聞きながらの挑戦となったのだが……。
「あはは!楽しーねコレ!」スイスイー(持ち前の運動神経を駆使して早々に高速で滑る天童
「コツを掴んでしまえば、あとは流れでいけるね」スィ……(同じく絶妙なバランス感覚で難なく走る緋色
「「ちょ、ちょっと待って……」」ガタガタ(立つだけで精一杯の広井と俺
見事に分かれた。なんというか……いたたまれない。上手いこと滑ることができれば、広井の手を引いて……と言うことも出来たかもしれないが、現実は非常だ。
「……広井さん。こっち」
「え?緋色君……?」
緋色め!そう思った矢先に広井の手を引いて走って行きやがった……悔しいが完璧なリードだ……俺にはとても真似できない……!
「影谷君影谷君!」
「なんだ天童、俺は今自分の無力に打ちひしがれているところなんだが……!」
「ボク達も負けてられないよー!こっちこっちー!」(ギャルルルルルル
「ちょっとローラースケートから鳴っちゃいけない音がうおおおおおおお!?」
お止めください!?ダイナミックにトップスピードを出して爆走するのはおやめくださいぃぃぃぃぃぃ!?
とまぁ、こんな感じで色んな競技を回っていった。バッティングセンターでは天童や緋色がかっ飛ばし、俺と広井はそこそこだったが……緋色が広井にやさしくフォームを教えていたし、卓球では俺×天童、緋色×広井のペアで思いっきり楽しんだり……心なしか、緋色が明らかに広井を意識した動きをしていたが、おおむね楽しく終わることが出来た。
……こうしてみてみると、自分は如何に中途半端なのかを実感する。勉強ではかろうじて一歩先に進んでいるが、これも転生前の記憶があるからである。俺特有の優れた部分はほぼないような気さえしてくる。
落ち込んだ気持ちをリセットするために、トイレに行くふりをして屋上へと向かった。……夕暮れがとても綺麗だ。でも、この夕暮れも見れなくなってしまうのかと思うと、少しだけナーバスになる。気分を変えに来たのに落ち込んでどうするんだよ……。
溜息を吐きながら、皆の所へ戻ろうとした時……
「……影谷さ~ん」
「ッ!お前……金城ッ……」
俺がある意味待ち望んでいた人物、金城が現れた。
☆
「……どうしたんだよ」
「だって~皆でこんな楽しそうなところに来ているなんて言ってくれなかったじゃないですか~」
「……言ったし誘ったよ。断ったのはお前だろうが」
金城のことは、何かする度に毎回誘っていた。神には危険だと忠告されていたのだが……それでもやはり、俺は金城とも向き合いたかったのである。それが正しい行動かどうかはわからないが、会話が出来なければ向き合うもなにもない。
「あらあら~それは申し訳ありませんでした。……それで?作戦は上手くいっているのですか?」
「……どうだろうな。進んでいる感じはあるが……それでも、決定打には程遠いよ」
「そんなことで何とかなると思っているのでしょうか~?夏祭りはすぐに来てしまいますよ?」
「……良くはないけどさ。いいんだ。今はこれで」
「……不可解ですね。影谷さんのことは、SPを使って観察をしていましたが……前と比べて、行動が落ち着きすぎていますから」
……見られているとは思っていた。大方そのことに疑問を覚えて直接尋ねに来たということか。
「……恋だのなんだのは、手段にすべきじゃないって思ったんだ」
「では、諦めたのですか?諦めたから、楽しい青春を過ごそうとしているとか?」
「別にしてないぞそんなこと。……まずは、ちゃんと広井や皆のことを知ろうと思った。ただそれだけだ」
……金城が驚いたような表情を浮かべ、そして、
「……あはは、アハハハハハハハハ!」
狂ったように笑い始めた。
「……何がおかしい」
「だって、おかしいですよそんなの!前までの貴方は、自分の事しか頭にない自分勝手な愚者だったのに……今のあなたはなんですか、人の顔色を伺がっているだなんて、とんだピエロじゃないですか~!」
……見方によっては、そうともいえるかもな。歩み寄るならば、相手の事を知ろうとするならば……そういう一面も必要になってくるだろう。
「……本当に、癇に障る男ですねアナタ……その顔と声で、彼と同じようなこと……」
「……何だって?」
一転して暗い表情になった金城は、空を見上げて……うすら笑いを浮かべていた。
「……ねぇ影谷さん。私、本気なんですよ。……本気でこの世界を壊して、本当の彼を取り戻したいと思っています」
「そんなことわかってるよ……!」
「“わかってませんよ”。……本気の本当の意味をね……では、ごきげんよう」
「待っ……!?」
静止するも、金城はその場を後にした。……追いかけたが、見つけることはできずに……俺は、皆の下に戻ることにした。
しかし、見つけられたのはバスケットボールコーナーでフリースローをしている天童だけだった。
「……天童、広井と緋色はどうした?」
「あ、おかえり影谷君!飲み物買って来るっていなくなったんだけど……遅いなぁ、どこまで買いにいったんだろう?」
……広井と緋色、二人が揃って消えた……!?嫌な予感がして、俺もすぐに駈け出した。二人きりで邪魔がはいらなそうな場所はどこだ……!?アミューズメントパーク内だと、大体は人の目がある……となると、外か!
外に飛び出し、物陰になりそうなところをしらみつぶしに探して行くと……そこに、緋色と広井は居た。お互いに向かい合って……いや、緋色が、一歩ずつ広井との距離を縮めて行く。
広井を壁まで追い詰め……そして、
「……広井さん」
「緋色君……!?」
手で行き場を塞いだ。……俗にいう、壁ドンと言う奴である。
「……広井さん。聞いて欲しい、僕、君の事が……」
「え、ちょっと……!?待って、緋色君!様子がおかしいわ……!」
振り払おうとするも、緋色の力に抗うことが出来ず、緋色の唇が、広井の唇へ近づき……!
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「……ッ!」
すんでのところで、俺のタックルが間に合った。流石に助走をつけた俺のタックルを受け止めきることができず、緋色は俺と一緒に床に転がった形になる。
「離せ……!」
「何をやってんだお前らしくもない!お前は!好きな女に!あんな顔させる奴じゃねぇだろうが!!」
「…………っ」
広井は、震えていた。いつもと違う緋色に、男性の力による強引さに。……そして、顔を青くして怯えているんだ………!
マウントを取り、思わず一発ビンタをする。すると、暫く緋色は固まった。壊れた機械のように、数秒……そして……、
「……かげ、たにくん」
「あぁ!?なんだよ!?」
「……うっ!……あぁぁ!!!!」
急に、頭を抱えはじめる。そして物凄い力でおれを弾き飛ばし……そのまま去って行った。
「……ッ!大丈夫か広井……!」
「来ないで!!!……あっ」
…………クソ、無理もない。あいつは、ついさっき、男に迫られたばかりだ……同じように俺が近づいちゃ、怖いに、決まっている。
「……ごめん。今、天童呼ぶから」
「……あ、いや……違うの、影谷君……!」
……その日は、天童に広井を任せて解散となった。……緋色は、明らかに普通の様子じゃなかった。……緋色は、どんな状況でもあんな暴力的な手段に出る奴じゃない。……何か、あったのか?
……この時、俺の頭には金城と……彼女の傍らにいる悪魔の顔が浮かんでいた。
シリアスらしいシリアスは、今回ともう1~2話しか生まれないかも。