ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。   作:サラダよりは肉が好き

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主人公は立ち上がり、舞台が少しずつ整い始める。

コメディーが帰って来たので、次回はラブが帰ってきます。

そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/


第14話 ヒーローは影(と神)の力で立ち上がるらしい。

 緋色が広井に強引に迫った翌日。学校が休みだったこともあり、俺はまず緋色の家を訪ねることにした。広井にはあの後連絡を飛ばしてみたが、「……今はそっとしておいてほしいわ」とのことだった。……それはそうだろう。楽しく遊んでいた時間が急にあんな形で壊れ去ってしまったのだ。しばらくは、学校にも来れないかもしれない。

 念のため、緋色にも連絡してみたがこちらはスルーされた。……あの時の緋色は、明らかに普通じゃなかった。付き合いこそ短いが、あいつは強引に迫るような奴じゃない。誰かを傷つける方法を選ばないはずだ。

 神にこのことを相談してみると、

 

『うーん……あるはずが無いんだけど、考えうるとしたら悪魔ちゃんの仕業かなぁ』

 

「……悪魔の仕業?」

 

『この神と同じく超常的な存在だからね彼女。……金城ちゃんが金城グループの力を使って洗脳した……みたいなことも考えられるけど、足が付く手段を取るとも思えないし、多分そうでしょ』

 

「でも本当は悪魔の仕業ってことは考えにくいんだろ?……それに、具体的に悪魔は何ができるんだ?」

 

『“なんでも”さ。全力を出せば、彼女はこの世界の全ての事象に干渉できる……まぁ、そんなことばっかりしていたら世界が“消える”から滅多にしないんだけどね』

 

「世界が消えるならアイツらにとっても願ったり叶ったりだろ!抗う手段なんてないじゃねぇか……」

 

『あー、違う違う。正確に言うと、“壊れる”と、“消える”は違うんだよ』

 

 神は、どこからかモニターを出現させて図解して説明し始めた。

 

『いいかい?世界を“壊す”っていうのは、形のあるものを“壊す”ってことだ。例えばほら、貝なんかは砕いて加工すればチョークとかになるだろう?世界を貝とするなら、それを砕く作業が“壊す”ってこと。世界は、壊れても新たに形を成そうとする力をもっているからね。これだけだと……良くはないが、世界そのものは存続する』

 

「……じゃあ、消えるっていうのは?」

 

『“存在そのものがなかったことになる”。貝は元々存在しなかったことになるし、再生しようにも世界そのものが存在しないからどうしようもない。超常的な存在が干渉するというのは、常に世界のバランスを崩す危険と隣り合わせだからね。……それは、かつての“本物の影谷信人”を取り戻したい金城ちゃんにとっても困る筈だ』

 

「……なのに、その手段をとった」

 

『多分ね。……世界そのものが不安定なことを利用して、超限定的に力を行使したってところだろうけど……危険な綱渡りするなぁ』

 

 話を聞いているうちに、世界が滅びるということについての定義が明らかになった。説明不足が目立っていたため神のことは一発殴っておいた。

 神によれば、仮に緋色が悪魔の力によって操られているとした場合、神の力によってなその呪縛から解放できるらしい。俺と緋色が接触することによって、神が力を行使して“あるべき姿へと戻す”。これくらいならば世界のバランスを崩さずに済むそうだ。

 というわけで、緋色が操られているかの真偽を確かめるべく緋色の家へと来た。緋色は母と妹、そして緋色の三人暮らしだ。父親については海外赴任をしている、としかゲーム内の表記はない。

 インターホンを押す。誰も出なかった。……留守か?

 ……ただ寝ているなら良いのだが、割と俺の中では一刻を争う事態だ。誰かいるなら、何としてでも出てきてもらおう。

 

<ピンポーン。ピッピピンポーン。ピッピッピッピピンポーン、ピ……

 

「あぁもううるさいなぁ!そこまで押したなら最後まで押したらどうなの!?」

 

 バァン!と勢いよく扉が開いて現れたのは、髪をサイドテール風にまとめた、どこか緋色の面影がある少女……緋色悠の妹、緋色リンだった。

 

 

「とりあえずずびばぜんでじだ……」

 

「全くもう……お兄ちゃんの友達なら先に言ってよね……ぼこぼこにしちゃったじゃない」

 

 何とか家に上げてもらうことには成功した。……代償にボコボコに殴られたが。自業自得なので何も言えない。

 

「あなたがえーっと……怪人奇人面相影谷さんだっけ?」

 

「確かに俺は影谷さんだが怪人扱いは心外だな」

 

「お兄ちゃんから聞く話の限りじゃそうとしか表現できないし、人の家のインターホンでリズム刻む奴だし……」

 

「すみませんでした」

 

 平謝りである。

 

「……悪いけど、お兄ちゃんには会えないわよ。昨日から、部屋からでてこないの」

 

 話を聞くには、昨日突然帰って来たと思ったら部屋へ直行し、引きこもってしまったらしい。話を聞こうにも「……ひとりにして欲しい」としか返答がなく、お手上げ状態だそうだ。

 

「……最近、緋色……お兄さんの様子がおかしかったとか、心当たりはないか?」

 

「……うーん、考えてみると……最近は妙に淡々としてたというか、あまり感情が感じられなくて気持ち悪かったのはあるかも」

 

 ……確定かはわからないが、緋色に変化があったことは間違いないらしい。

 

「……ダメ元でお兄さんと話をしてみる」

 

 立ち上がり、緋色の部屋があるという二階に向かう。階段を上る前に緋色リンは俺を引き留めた。

 

「……ねぇ」

 

「なんだ?」

 

「……本当は、家族でもなんでもないただの友達に、お兄ちゃんに変に干渉されたくない」

 

「……」

 

「……でも、でも……私がいくら声をかけても、お兄ちゃんは反応すらしてくれなかった」

 

 ……緋色リンの声が、少しずつ涙ぐんだものへと変わっていく。

 

「お兄ちゃんね……影谷さんのことを良く話してたの。変だけど、面白い人だって。転校して不安だったけど、影谷君のおかげで緊張も解けたし、今が楽しいって……だから……」

 

 ……お兄ちゃんを、少しでも救ってあげてください。そう告げる緋色リンの姿は、とても苦しそうだった。

 

 

 緋色の部屋の前。……特に特徴はない。緋色の部屋であるという表札的なものがあるわけでもない。

 俺はとりあえず、そのドアをノックする前にドアノブを全力で回してみることにした。ノックしても開かないことは明白だし、急いで帰って来たなら鍵も閉めずにいる可能性はないか確かめてみようと思ったのである。まぁ開かなかったのだが。

 ノックもするが、反応はない……外からよじ登って窓を開けるのは、最終手段として、とりあえず、語りかけることにした。

 

「緋色……大丈夫か?」

 

 返事は返ってこない。……ここに来る途中、緋色の部屋らしきところの窓は空いてなかったし、多分部屋には居るはずだ。

 

「ひーいろくーん。あっそびましょー」

 

 扉をドンドンと叩きながら声をかけてみる。もちろん、返事はない。

 

「……はぁ」

 

 とりあえず、俺は扉に背を預けた。そのままその場に座り込む。長期戦も辞さない覚悟だ。

 

「……緋色。率直に聞くぞ。お前、広井のこと好きだろ」

 

 返事はない。俺は構わず話を続ける。

 

「そりゃ、好きな女にあんなに強引に迫っちまったらショックだよな」

 

 返事は、ない。

 

「……別に、お前が本気であんなことするなんて考えてねぇ。大丈夫だから、速く出てこいよ」

 

 返事は……ない。

 

「俺はさ、お前が羨ましいよ。勉強も運動も……それ以外のことも何だってできる。……でも、それは才能じゃなくて自分で頑張って来たからなんだよな」

 

 立ち上がり、扉から距離を取る。

 

「だけどなぁ緋色!俺にだってお前に勝ってるところがあるんだぜ!……た、と、え、ばぁ!」

 

 そのまま、扉まで全力疾走して、体当たりッ!!!

 

 バァン!大きな音をたてて、扉が開く……鍵を壊してしまったが、あとで弁償でもなんでもしよう。

 緋色は、部屋に居た。部屋のベッドの上で体育座りをしてただ俯いていた。

 

「……こんな無茶をやれるところとかな、なぁ、緋色?」

 

「……」

 

 返事はない。だが、少しだけ顔があがる。

 

「……かげ、たにくん」

 

「おう、俺だぞ」

 

「……へんなんだ、とつぜん、きおくがはっきりしなくなって……じかんがすぎていって……」

 

「おう」

 

「……あたまのなかに、いまでもひびくこえがあるんだ……ひろいさんをうばえ、ものにしろって……」

 

「……そうか」

 

「……びんたされて、すこしだけいしきがはっきりして……ひろいさんに、とんでもないことをしていたとわかって……ぼくは、ぼくは……」

 

 ……昨日から、抗っていたのか。変に動くと、また広井に対して強引に迫ってしまうから。それはなんとも……、

 

「だっせ」

 

「憔悴してる兄にダサいとは何事かキサマ!」

 

「グハッ!!!!」

 

 ……緋色リンに、後ろからドロップキックを食らわされた。そりゃ来るか!大きな音たてて器物損壊したもんな!

 

「お兄ちゃん大丈夫!?変なことされてない!?あぁもう!やっぱりこんな変な人に任せるんじゃなかった!」

 

「…………り、ん」

 

「おー、いつつ……だってよぉ。ダサいもんはダサいだろ」

 

「よくわからないけど、まだそんなこと……!?」

 

「“いいように使われるままで良いのかよ”。緋色」

 

「……」

 

 色々疑問や感情をぶつけてくる緋色リンを追い出しながら、俺は緋色に問う。

 

「詳しい事情は伏せるが、お前はとある奴に操られてる。広井に変に迫ったのもそのせいだ。お前は何一つ悪くない」

 

「……」

 

「だけど、だけどなぁ……好きな女にあんな顔させて、お前はこんな部屋に籠るだけか?」

 

 緋色に近づき、目を見る。……虚ろだが、少しだけ意志が宿っているようにも感じられた。

 

「……ち、がう」

 

「そうだろうな、お前はそういう男だよ緋色。……俺は、見て来たから知ってる。この世界とは違うのは充分理解しているが……だが、お前の本質を知ってる!」

 

「……ぼ、くは」

 

「……これでも喰らって、目を覚ませよヒーロー!助けを求めているやつが居るんだよッ!」

 

 そのまま、緋色に近づき……強引に立ち上がらせて、頭突きッ!!!!

 ゴッ、という鈍い音が響く。お互いにその場にへたりこみ、頭を抱えた。

 

「痛っっっ~ッ!!!!」

 

「ちょっと!?鈍い音聞こえたんだけど!?もう無茶苦茶するなら出てってよこの変態!」

 

「聞き捨てならねぇなオイ!俺は確かに変人だが変態じゃねぇよ!変態だったとしても変態と言う名の紳士だよ!」

 

「結局変態じゃない!?」

 

 神曰く、洗脳を解くには俺が緋色に接触すればいいらしい。なので、ついでにアイツに募らせた劣等感も乗せて一緒に頭突きをしても良いわけだ……痛かったけど。

 

「………影谷君」

 

「お兄ちゃん!?大丈夫!?変人菌うつされてない!?」

 

「病原体みたいにいうなよ。……気分はどうだ」

 

「……スッキリした。やるべきことも、はっきりしたよ」

 

 立ち上がった緋色が見せたのは……いつもよりも幾分か頼もしい顔をした……いうなれば、主人公のような堂々とした姿だった。

 

「そうこなくっちゃな……」

 

「お兄ちゃん……大丈夫なの?」

 

「ありがとう、リン。……それと、ごめんね。冷たくしちゃったりして」

 

「……よくわからないけど、よかった……お兄ちゃんが元気になって……っ」

 

 兄に抱き着き、泣きじゃくる妹。……なんとなくエモい光景だが、それどころではないのも事実。

 

「緋色……色々話したいことがある」

 

「うん、僕もだよ影谷君……だけど、お願いがあるんだ」

 

 急にお願い……?珍しいな、一体なんだ?

 

「……お風呂、入っていいかな?」

 

 昨日から身支度一切してないもんなお前。

 




なんだかんだ色々いっぱいいっぱいなので、テンションを上げているモードの影谷さんである。
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