ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。   作:サラダよりは肉が好き

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仲良きことは良きことであるが……。

ラブが少しだけ帰ってきました。次回からどちらもフルスロットルです。

そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/



第15話 ヒーローはヒロインと仲直りするらしい。

 身支度を整えた緋色を連れて、俺は広井の家へと向かっていた。言わずもがな、緋色に謝罪させるためだ。

 させる、なんて言い方をしたが……本人の逸る気持ちを抑えつつ、ひとまずは出向くことで誠意を見せようという話だ。放っておくと、そのまま突撃しそうな雰囲気があった。怖がらせた相手にそれは不味い。

 

「あ、来た来た!影谷君!緋色君!」

 

男連中だけで行くのも不味いだろうということで、天童にも協力を求めた。あの日広井を送っていったのは天童だしな。

 

「悪いな天童……部活まで休ませて」

 

「いいよいいよ!友達の危機だもんね!……一応連絡は貰ったけど、緋色君、本当に大丈夫なの……?」

 

「……ごめん。天童さんにも迷惑かけて……大丈夫かどうかは、きっと僕から言っちゃいけないことだと思うから、行動を見て判断して欲しい」

 

 天童にも物理的に距離を置き、頭を下げる緋色。……誠意のつもりかなんなのか。操られていたから仕方ないといえば仕方ないのだが……受け取り手には関係のない事実なのも確かだ。ならば、こうして行動で示すしかない。

 

「……んー……まぁ、何かあればボクが止めればいっか!」

 

「楽観的かよ。まぁ安心しろよ緋色。常に110番に通報できるように準備してる上に、一応会話は録音してクラウド共有できるようにしてるから」

 

「そ、そこまでガチガチに固められると……いや、当然のことだよね。ありがとう、影谷君、天童さん」

 

 ……本当は、会わせるべきではないのかもしれないが……だが、この世界の主人公は紛れもなく緋色であり、そしてこの世界のヒロインは紛れもなく広井なのだ。この二人が仲違いすることは……あれ、俺にとって都合が良いのでは?

 

「影谷君!ボーっとしてないで行くよー!」

 

 天童に引きずられながら、広井の家へと向かう。……不可解だな。どうして金城はこんな危険な手段をとったんだ?どんな手段を使っても緋色と広井をくっつけようとしているのは理解できる。そのために緋色を洗脳して、広井に積極的にアプローチをしかけさせるのも、まだ理解できる。……だが、あんな強引な迫り方をしては広井じゃなくても恐怖心を抱くだろう。俺が金城なら、緋色にそんな雑な命令はしない。

 考え事をしているうちに、広井の家についてしまった。

 

「……すぅー……はぁ……」

 

「お邪魔しまーす!芽衣ちゃんいますかー!」ピンポーン

 

「ちょ、ちょっと天童さん!?」

 

 遠慮という言葉を知らない天童がインターホンを押す。……もちろん、反応はない。そりゃそうだ。家族が居ないとしたら、家にいるのは広井一人なわけで。天童には、一応事前に連絡を取ってもらってはいるのだが……自分に強引に迫った男になど、誰が会いたいだろうか。

 

「……天童、一応広井に連絡は?」

 

「したんだけど……既読にはなってないかなぁ。今日の朝までは一応あったんだけどねー」

 

 ……やりとりは出来ている。寝ているのか、窓から俺たちの様子でも覗いているのか。

 

「って思ったんだが、カーテンも空いてなさそうなんだよなぁ」

 

「……流石に、そうだよね。昨日の今日だし、やっぱり突然来るのは良くなかったかな」

 

「……そうかもな、やっぱりここは一旦出直して」

 

ドン……と、どこかから物音が聞こえた気がした。

 

「……おい、今の」

 

「何かの物音……?」

 

「物を叩いたような音だ……」

 

ドン、ドンドン!!と、また音が聞こえる。その先は……!

 

「オイ!あそこの二階の」

 

 俺が言い切る前に、緋色は駈け出していた。ジャンプして石造りの塀に足をかけ、また跳躍。音が聞こえた窓……の真横の窓を蹴り破った。

 

「えぇ!?緋色君!?」

 

「一体どこのスーパーマンだアイツ……!俺たちも行くぞ!」

 

 思わず駈け出して、広井家の玄関のドアノブに手をかける。何故か鍵はかかっておらず、そのまま天童と共に二階へと駆け上がった。そのまま、声が聞こえる部屋の扉を蹴り破った先に見えた光景は

 

「……一体何者なんだい、君」

 

「……ひい、ろくん」

 

『……ッハ!ヒーロー登場……そして、役者もそろい踏みかよォ!』

 

 怯える広井と、広井を庇うように立つ緋色……その前に立っている、金城と契約した悪魔の姿だった。

 

 

「……テメェ、何のつもりだ」

 

『なんのつもりィ?……それは、お前が一番良くわかってるんじゃないのかァ、影谷信人ォ……!』

 

「……え?どういう状況!?悪魔っぽいコスプレした女の人が芽衣ちゃん襲ってたってこと……?というかこの人影谷君の知り合い!?」

 

 ……理解が思いついてない。どうして悪魔が広井を襲ってる?この世界には干渉できない……いや、なるべくしないんじゃないのか?

 

「……ひとまず、出ていってくれないかな。広井さんが、怯えてる」

 

『怯えてるゥ?それは、オレに対してか?それとも……そこの女を襲いかけたお前のことをかァ?』

 

「……ッ!」

 

 何のつもりだ?自分たちで洗脳しといて、どうしてこんな状況を作りだした?……強硬手段に出た?何のために?これをすることによってこいつらに何の得がある?

 

「……確かに、僕は許されないことをした。経緯は関係なく、彼女の心に深い傷を負わせてしまった」

 

『わかってんじゃねぇか……』

 

「……だけど、それとこれとは別問題だ。君が広井さんに危害を加えようとするなら……僕は、僕の大切な人を護るよ」

 

「……ひ、いろくん」

 

 ええい、何が目的かなんて考えてる場合じゃねぇな……!

 

「おい、何のつもりでここに来たかは知らないが……やめといたほうがいいぜ」

 

『あン?』

 

「緋色を元に戻したのは俺だ。……今の俺は、接触するだけで“お前にだって”干渉できるぞ」

 

 ……沈黙を保つ悪魔。めんどくさそうな顔をしながら、

 

『……やっぱ、ここまでやるとヤツも出張ってくるかァ……面倒だな、帰る』

 

 瞬間、悪魔の足元に怪しげな紫色に発光した、魔法陣のようなものが浮かび上がり……そのまま、光の中に消えて行った。……妙にそれっぽい演出だな。俺と会った時は普通に飛んで来たっていうのに。

 

「広井さん!……っ、大丈夫!?」

 

 広井に近づこうとして、踏みとどまる緋色。……やはり、広井に迫ってしまったことが心に大きな楔となって残っているんだろう。

 

「……大丈夫。ちょっと、首を絞められたけど……助けて、貰ったから」

 

 座り込みながらも、声を発する広井。……やがて、無事だとわかると緋色がとたんに慌てふためきはじめた。

 

「そ、そのごめんね。急に窓から出てきたりして……その、物音、聞こえて……えっと、まず110番だよね。……それから、えっと……ごめん……僕、出て行くよ」

 

 そのまま去ろうとした緋色の手を、広井が取る。

 

「……」

 

「……大丈夫。わかっているから」

 

 ……少しの沈黙のあと、広井が言葉を紡ぐ。

 

「……あの時の緋色君、様子が変だった。……緋色君が緋色君じゃないような、そんな感じ。……でも、今は違う。……何があったかはわからないけれど、大丈夫よ」

 

 だって、私を助けてくれたじゃない。

 

 その言葉を聞いた緋色は……その場にへたりこんだ。

 

「ごめん……ごめん広井さん!……僕は、なんてことを君に……!」

 

「……正直、怖かったわ。天童さんに付き添ってもらって帰った時も少し震えてた……緋色はあんなことをする人じゃないって、わかっているから余計に。……考えて、落ち着かせるのに時間が欲しかったの」

 

 広井は、座り込んで緋色と目線を合わせる。そして、手を握って……

 

「……本当に怖かった。突然現れたアレは、私に何も言わずに迫ってきたから……でも、その時あなたが助けに来てくれた……様子のおかしい緋色君じゃなくて、いつもの緋色君で」

 

 涙が流れる緋色。そして、それを優しい笑顔で見つめる広井……。

 

「ありがとう、緋色君。私、あなたのおかげで救われたわ」

 

「……ぁ、あぁぁぁ……!」

 

 ……この後、緋色が泣き止んだ後警察を呼んだ。事情聴取されたが悪魔が襲撃に来たとも言えず……不審者が家屋に侵入したという話になった。

 広井の家族もかけつけ、あまり詳しい話はできなかったが……何よりの収穫は、広井と緋色のわだかまりが解けたということだろう。

 ……そして、俺は、金城と悪魔の本当の狙いに気が付いた。

 

 

「ご苦労さまです~」

 

『……チッ、変な三文芝居させやがってよォ』

 

 金城グループが所有する屋敷。そこの一角にオレは転移した。……目の前にいるのは、オレが契約者に選んだ女……この世界の真実に気がついちまった、哀れなヒロイン、金城・アレクサンドラ・ネヴィラだ。

 

「どれほど効果があるかはわかりませんが……形としては、上々ですね~」

 

『……まァ、いい雰囲気だったんじゃねぇか?』

 

 金城のここ数日の動き……緋色悠を洗脳し、広井に強引に迫るように指示を出したのは、いくつか目的があった。

 ひとつ、緋色に積極性を持たせること。これでメインヒロインである広井芽衣を攻略できれば万々歳。

 ふたつ、上手くいかなかった場合の保険として、緋色と広井にわだかまりをつくること。ここでマイナスのイメージを広井に植え付ける。 

 みっつ、その状態で、オレが広井を襲い……緋色に助けさせること。これで狙うのは、ズバリ吊り橋効果だ。危機的状況で助けられることにより、緋色の存在を印象付ける……マイナスなイメージがあるのも作用して、かなり効果的に働く……と、金城は読んだらしい。

 影谷……いや、偽影谷はメインヒロインルートを潰すことがゴールだから、妨害されるかとも思ったが……「影谷さんは、間違いなく二人を仲直りさせる方向に動きます~人と向き合うなんて甘いことを言っている人が、自分の利だけを追求した動きをするとは考えられませんから~」という金城の話もあり、作戦は実行された。

 結果、作戦は成功。あとは結果を待つだけだが……あの様子を見ると、だいぶ綺麗にキマったらしいな。

 

「ですが……そうですか~神がとうとう出張ってきたんですね~」

 

『厄介なことにな……だが、せいぜい洗脳を解くくらいの干渉しかしないだろォ……世界が消えるのは、お互いに都合が悪いわけだしなァ』

 

「ですが、イレギュラーな力を使った妨害はこの程度でいいですよ~あとは、“影谷君自身が引き寄せるイベント”と、私の介入で何とかしましょう~」

 

『……わかってんだろうなァ。世界を壊した後は』

 

 わかってますよ~といつもの調子で返し……金城は、怪しく微笑む。

 

「“お互いの大切な人のために”頑張りましょう~」

 

 

 あれから数日が経った。……悪魔も直接出張ってきたことだし、俺は皆に“この世界の真実”を教えようとしたのだが……

 

『それは無理だね』

 

「なんでだよ!?」

 

『忘れたのかい?神や悪魔が干渉した出来事は“無かったことになる”……もしくは“出来事が置換”される』

 

「置換……?」

 

『多分だけど、悪魔が出てて来た今回の件に関しては、“不審者が家屋侵入し、広井ちゃんが襲われそうになったところを緋色君が助けた”……とかになるってこと』

 

 ……どうやら、俺に味方は増えないらしかった。しがらみが多いな……。

 そして、あの事件による新しい問題が発生した。

 

「おはよう、広井さん」

 

「お、おはよう緋色君……」

 

 普通に挨拶する緋色と、顔を少し赤らめて返事をする広井……明らかに、距離が縮まっている。……金城の狙い通り、ということだろう。敢えて仲違いさせ、危機的状況を利用した吊り橋効果も使って心理的距離を無理矢理縮めさせた……褒められた手ではないが、有効に働いたのは確かだ。

 ……やはり、俺程度のアプローチでは広井の心を射止めるのは難しいのか。顔も良くなければ、特別優れたなにかがあるわけでもない。……二人の仲が壊れなくて良かったと思うが、今度は俺が危機的状況になってしまった。世界的にも、心情的にも。

 

 少しだけやきもきした気持ちのまま、三人でクラスに入り、着席する。

 

「なぁ聞いたか?今日、転校生が来るってよ」

 

「本当かよ……!」

 

「しかも、女子って話だぜ、超美人だってさ!」

 

 ……教室が少し騒がしい。……転校生?そんなイベントは無かったはずだが……?

 暫くして担任が教室へ入り、騒がしい教室を一喝する。

 

「静かに!……知っている者も多そうだが、今日は転校生を紹介する。入りなさい」

 

 そうして入って来たのは……セミロングで薄い紫の髪をした女子だった。少しつり目っぽい目は、まるで未来を見通いるかのようで……って!?

 

「嘘だろ……!」

 

「……影谷君?知り合い?」

 

「影谷君にあんな美人の知人がいるだなんて、信じがたいけれど……」

 

 思わず立ち上がる。だって、目の前に居るはずの少女が転校してくるのはもう少し先のはずで……!

 

「……ワタシは“道標(みちしるべ)ミコト”。……そして、君がワタシの運命だね、影谷信人君」

 

 俺のことを補足しているはずが無い、最後のサブヒロイン……そして、前世の俺の最推しが、こちらを真っすぐに見てとんでもないことを言い放った。

 




波乱が巻き起こる五秒前。
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