ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。   作:サラダよりは肉が好き

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ラブコメは、加速する――――

そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/


第16話 前のシナリオイベントが本気を出して来たらしい。

道標ミコト。セミロングで薄い紫の髪を携えた……ミステリアス系サブヒロインだ。趣味が占い……してもらう方ではなく、自分でする方だというのも怪しい雰囲気に拍車をかけている。

 ゲームでは7月頃……夏祭りがある月に登場するヒロイン。ルート確定直前に現れる彼女の攻略は、金城や天童より何倍も難しい。広井の好感度を一定以下に保ちながら、その状態で発生する金城や天童のイベントでも好感度を稼がずに7月まで来ないといけないというのだから中々に手間だ。

 しかし、手間に見合うだけの魅力を持つヒロインでもあるわけで。占い好きという設定を活かしてか、プレイヤーに直接語り掛ける様な描写もあって、ミステリアスな雰囲気とグラマラスなスタイルも相まって、プレイヤーの中でも人気があった。

 俺も例に漏れずその一人だ。道標のルートに入ろうとして、何度他のルートに入ってしまったか……。

 だが、今は6月半ば……。道標が登場するには速いし、ましてや“転校してくる”なんて描写は無い。彼女は本来、街中で偶然出会った他校生徒……という立ち位置なのだ。突然転校してきた挙句に、俺が道標の運命だと……?理解が追い付かない……!

 

「おや……どうしたんだいワタシの運命。いきなり現れた美女に告白紛いのことをされてフリーズしてしまったのかい?」

 

「ヒュッ」

 

「影谷君が胸を押さえてうずくまり出した!?」

 

「……あぁいうのが好み、なのかしら」

 

 大丈夫、致命傷だ……。だって会えるはずもない推しが目の前に居るだけじゃなくて自分に話しかけてきているんだぞ……!?死ぬだろ!(死なない)

 

「……仕方がない。ここは騒がしい……また後で」

 

 と、道標は担任に席を指定され、そこへ向かう。

 

「……だめ、限界、死ぬ」

 

「語彙が死んでるよ影谷君……!」

 

 落ち着くためにはどうすればいいんだっけ……ひっひっふーだっけ……!?

 

「ひっひっふー……ひっひっふー……」

 

「落ち着こうとしているのなら深呼吸をするべきだし、それはラマーズ法よ影谷君……はぁ」

 

「そうだよワタシの運命……少し元気を出したまえ……フゥー」

 

「ヒュッ!?」

 

「影谷君が耳に息をかけられて気絶した!?」

 

 ハッ!?(覚醒)。

 

「どどどどどどどどどうしてこちらに!?」

 

「どうしてって、君の前がワタシの席だからだけど?」

 

道標

俺 広井

緋色 金城(欠席)

 

「……ヒュッ」

 

俺はそのまま10分程意識を喪失したのだった。

 

 

 生きた心地がしない時間が過ぎて行く。授業を受けようにも顔を上げれば推しがいるのでまともに黒板を見ることができずに怒られっぱなしだった。

 休み時間にはクラスの男子共から「道標さんとはどういう関係だコラァ!」と詰め寄られたが「俺が知りたいわコラァ!」と返したりしていた。

 そして放課後……道標さんに話しかけられる瞬間、「影谷君勝負しよーーー!」という天童にひったくられて、公園に連行されて今に至る。……今回ばかりは助かったな。推しの過剰供給で死ぬところだった……。

 

「さぁ勝負……って、影谷君が悟った顔してる……?」

 

「落ち着いたと言ってもらおう……大丈夫だ、問題無い。助かった」

 

「何も助けてないけどどういたしまして!」

 

 推しと物理的な距離が発生したことにより、脳みそが冷静を取り戻した。……どうして道標は転校生として桃色学園に来たんだ……?やはり世界のバランスが崩れたことによるバグなのだろうか?こんなイベントは見覚えないし……イベント?この前、神がイベントに関してなにか言っていたような……?

 

「やぁワタシの運命。ワタシを差し置いて逢瀬とは……色に目が無いね君も」

 

「ヒュッ」

 

「影谷君が胸を押さえて崩れ落ちた!」

 

 せっかく離れたと思ったのに……おいバカやめろ天童。俺を木の棒でつつくな。汚いものみたいだろうが……!

 

「あ、ボク天童沙良っていうんだ!よろしくね!」

 

「ワタシは道標ミコト……よろしく」

 

 俺を放置して自己紹介を始めやがった……。

 

「で、こっちが影谷信人君、ボクのライバルだよ!」

 

「ライバル……そうか。中々色んな人間関係を構築しているね、ワタシの運命?」

 

「その……たわしがうんめいって何?影谷君のこと?」

 

「無機物を食すなバカタレ……!」

 

「影谷君が復活した!」

 

 何とか頭を回転させる。……そうだ、俺もそれが気になっていた。俺が知る限り、道標が“ワタシの運命”なんて呼ぶ人物はただ一人……そう、主人公である緋色悠だ。

彼女と緋色の出会いは街中で偶然出会うところから始まる。だが、道標曰くそれは偶然ではなく……緋色と道標が出会う“運命”だったから、ということらしい。

占いキャラである彼女らしい言い分だが……どうして、俺のことを運命と呼ぶのか。

 

「その、運命とかいうのは気になるな……ど、どぅうして俺があなた様の運命なんでしょう?お、教えてくださいませんこぉう?」

 

「かみっかみだ!」

 

「ふふ、そんなに緊張しなくても良いのに……そうだね、答えようか。今のままではワタシの行動は不信そのものだからね」

 

 そうして、道標はどうして俺を運命と呼ぶのか語り出す。

 

 

 飲み物でも買ってゆっくり話そうという道標の提案のもとジュースを買っていると、緋色と広井も合流してきた。一緒に話を聞くというので、公園のベンチに腰をかけ……るのは人数が多いので、カラオケ店の部屋を借りることに。暑いしな……。

 

「さて……では話をはじめよう。どうしてワタシが信人を運命と呼ぶのか……」

 

「爆速で下の名前呼びするのやめてもらえませんか?気絶しますよ」

 

「なんかわけわからないキャラになってるよ影谷君……!」

 

 埒が明かなそうなので俺は口を閉じることにした。

 

「……あれは今年の四月の出来事だった」

 

「意外と最近なのね……」

 

「ワタシは占いが趣味でね……してもらう方ではなく、占いをする方が趣味なんだ」

 

「すごーい!」

 

「ありがとう。……そして、時々自分の事も占うんだが……ハッキリ出て来る結果の一つとして、七月に運命の出会いをする……というのがあった。名前もはっきり出ていてね……」

 

「それが影谷君だったってことかい……?」

 

「いや、その名前は……緋色悠君。君だったんだ」

 

「「「え!?」」」

 

 まぁ、それはそうだろう。緋色はこの世界の主人公だ。本人の自覚あるなしなどは関係なく、本来ならば……道筋を辿ればこの二人は出会うようになっている。

 

「それだと、運命というのは影谷君ではなく緋色君になると思うのだけれど……」

 

「あぁ、“三月”まではそうだったのさ……だが、それが四月に覆った」

 

 ……それって、もしかして、

 

「四月に占った結果が……ワタシも驚いたのだが、運命の出会いをする人物が影谷信人という名前に変わっていた。……それだけじゃない。出会い方や場所まで、細かいビジョンが浮かんできたんだ。……趣味で占いを始めて数年経つが、こんなに運命が覆ったのは始めてだった」

 

「ふーん……難しい話だけど、要するに占いで出たから、影谷君が運命の人ってこと?」

 

 そういうことだね、と軽く返す道標……俺は、道標が言うことに心当たりがあった。俺が“影谷信人”としてこの世界に転生したのが、まさに四月の出来事だ。……俺が現れたことによって占い結果が覆って、それによって道標の行動が変わったのだとしたら……

 

道標が現れたのは、“影谷信人が主人公だった頃のシナリオイベント”だからなんじゃないか……?

 思い出した。確か神も『没になった影谷信人を中心としたストーリー内で起こるイベント”が、起こりはじめる』なんて言っていた。……これがそうか。この状況は、嬉しいがある意味不味い。緋色を攻略するヒロインが減ってしまう……。

 ……それに、このことから一つわかったことがある。道標の“占い”は、ある程度この世界で起こる事象を観測できるということだ。それも、変化を含めて割と正確に。

 

「そういうことだから……ワタシは、ワタシの運命を本格的にオトすことにするよ……まさか、既にお手付きだったりはしないよね?」

 

「わぁ……実質告白だ……すごいなぁ」

 

「……恋愛は個人の自由だもの。誰にも口出す権利は、ないものね」

 

「えっと……」

 

 やめろ緋色。俺をそんな目で見るな……!広井に惹かれてるのに乗り換えるのか……みたいな目で俺を見るな……!

 そもそも、“推しに対する好き”と“恋愛的な好き”は違うわけであって!恐れ多いというかそもそもあり得ないというか!

 

「……覚悟しておいてくれたまえ。ワタシの運命……信人」

 

「ヒュッ」

 

「影谷君がまた気絶したー!」

 

「……知らないわ、もう」

 

「影谷君!しっかりして!影谷くーん!」

 

 

「危うく死ぬところだった」

 

『安心してくれ。ちゃんと死んでたから』

 

 夜。俺は神に今日あったことを夢のなかで報告していた。聞きたいこともあったしな。

 

「……なぁ、一つ思ったんだが、“影谷信人が主人公だったときのシナリオ”って知ることできないのか?ぶっちゃけ、それがあれば今日みたいな事が合っても致命傷で済むんだけど……」

 

『致命傷は負うんだね。オタクとは悲しき生き物だ……できない、というより無理だね』

 

「神のくせに?」

 

『痛いところをつくね……仕方ないじゃないか、神も影谷信人が主人公だったシナリオは詳しくわからないんだよ。神はすべてを見通せるわけじゃないんだ』

 

 世界の命運が懸ってるのに使えない奴だ。

 

「使えない奴だな……」

 

『心で思ったことを口に出さない方がいいよ?そろそろ泣くからね?……それで、君は大丈夫なの?うっかり道標ちゃんを好きになったりしない?』

 

「……しないよ」

 

 ……推しに対する好きと、恋愛的な好きは、違う。これは、俺が広井に恋をしてはっきりわかったことだ。

 

『じゃあ道標ちゃんとふたりきりになって、服をはだけさせて前かがみで物理的距離を詰められたとしても?』

 

「…………好きにならない、ならないぞ!というかそれは反応しちゃうだろうが別の意味で!」

 

『やれやれ……これだから童〇は』

 

「関係ありますぅそれ!?」

 

『結構あると思うけど……』

 

 神からのメンタル攻撃が辛い……話題を、話題を変えなければ……!

 

「……そういえば、金城は……前のシナリオで影谷信人と過ごした記憶があるんだったよな。……そうなると、やっぱり金城は情報的なアドバンテージがある……本当に不利だなこれ」

 

『まぁ全部じゃないだろうけどね。話を聞くに、多分彼女が持っている記憶は、所謂金城ルートっていわれるものだろうさ』

 

 ……ルートに入る前の、共通ルートはある程度同じのはず。俺が持っているのはあくまで緋色が主人公のシナリオだ。……金城がその情報を持っているかは知らないが、悪魔なんてものがついているんだからあってもおかしくはないか……?あれ?そういえば……

 

「なぁ、神」

 

『なんだいノブ太くん』

 

「某ロボットほど万能じゃないだろお前……神が居て、悪魔が居るのはわかったんだけどさ……じゃあ、天使っているのか?」

 

『……“言えない”。それを答えることは、神にはできないかな』

 

 ……言えない、か。居ない、と言わないからには居るのか……もしくは“居た”のか……。

 

「……協力が得られればと思ったんだがなぁ」

 

『現状のまま頑張るしかないね。あまり力を貸せないのは申し訳ないけど』

 

 ……まずは、明日以降に起こるであろう道標の猛アタックの対処を考えないとな。

 猛アタック……道標が……

 

「ヒュッ」

 

『夢の中で気絶するとか器用なことしないでくれる?』

 




ミステリアスなヒロインっていいよね。
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