ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。   作:サラダよりは肉が好き

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少年の心は、時が近づくにつれて迷いを増す。

そして、オーバーラップ文庫様より、7月刊として書籍化される
拙作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」もどうぞよろしくお願いいたします。
ラブコメシチュエーションを観察する、変な男子高校生の日記です。
Web版と書籍版では、若干設定や内容がことなりますが、パワーアップとボリュームアップの結果です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
Web版→https://syosetu.org/novel/299644/

書影も公開しております。是非公式サイトにてご確認ください。



第19話 世界崩壊まで一か月を切ったらしい。

 七月に突入した。うだるような暑さに比例するようにクラスの連中の熱気も絶好調。もちろん、今月の半ばから夏休みに突入するからだ。

 そんな熱気とは裏腹に俺の不安は増すばかりだ。……今月末の夏祭り。このイベントによって、この世界の命運が決まる。

 緋色がメインヒロインルートに突入すれば世界は崩壊する。その時、俺は死ぬ。……そして、この事実は本人たちに伝えることができない。伝えたとしても記憶から消えてしまう。

 ……そして、緋色は広井に惹かれている。広井の心情は定かではないが、悪い気はしていないはずだ。

 中々悩ましいことばかりだが……ここに、もう一つの不安要素が帰って来た。

 

「みなさん、おはようございます~」

 

「あ、金城さん!久しぶりだね」

 

「緋色さんお久しぶりです~」

 

「もう大丈夫なの?その、お家のこととか……」

 

「大丈夫ですよ広井さん~。色々片付けて来たので~」

 

 ……金城・アレクサンドラ・ネヴィラ。悪魔と契約し、この世界を崩壊させ、前の世界……“本物の影谷信人が主人公だった世界”を取り戻すことを目的としている。しばらく学校を休んでいたが、とうとう登校してきたな。……一時期、俺が広井を攻略することでルート突入を阻止しようと思い行動してきた時、金城は敢えて広井の前で、俺に偽りの好意を示すことで作戦を妨害してきたり、悪魔の力を使い緋色を洗脳したりなど積極的に行動していたのだが……洗脳作戦が失敗したあたりで姿を消していた。

 洗脳されていた緋色もそこら辺の記憶はすげ変わっているらしい。神曰く、神や悪魔といった超常の存在が起こした事象は無かったことにされるそうだしな。だから悪魔のことも覚えていない。

 

「……影谷くんも、おはようございます」

 

「……おう」

 

 何事も無かったかのように俺に挨拶してくる面の皮の厚さには驚愕せざるを得ない。……今までは、目だった行動もしてこなかった金城がどう行動してくるのか……。

 

「君が金城さんだね。……ワタシは道標ミコト。この間転校してきたんだ。よろしく頼むよ」

 

 

「……そう、あなたが。よろしくお願いします~」

 

 ……ここに、ゲーム内の主要人物が揃ってしまった。

 

主人公 緋色悠

メインヒロイン 広井芽衣

サブヒロイン 金城・アレクサンドラ・ネヴィラ

サブヒロイン 天童沙良

サブヒロイン 道標ミコト

 

 ……そして、モブキャラ兼……前のシナリオの主人公、影谷信人。

 

 七月は、所謂共通ルートによる強制イベントが多い。金城が何を仕掛けて来るかはわからないが……俺は、俺の命の為にも、世界の為にも……今この世界を生きている奴らの為にも、何としてでも緋色と広井が結ばれるのを阻止しなければならない……ダメだ、普通に手段が最低だ。

 

「はぁ……」

 

「影谷が黄昏てる……」

 

「なんででしょうね~」

 

 うるせぇ誰のせいだと思ってんだ。……策はある程度考えたが、そんなものがアテになるとも思えない。

 思えなくても、やるしかないのだが。どんなに悩んでしまっても、やる時はやるしかないのだ。気合を入れて……頑張ろう。

 

 

 休日。早速回避不能なイベントがやって来た。夏といえば……の、ド定番の一つ。それは……

 

「プールだぁ!やっほーい!」

 

「天童さん、まずは準備運動を……ってもう飛び込んでいるわね……」

 

「ふむ……プール施設を貸し切りというのは中々できる経験はないね。金城さんに感謝しなければ」

 

「いいんですよ~。新装オープン前で、試しに遊んでくれるモニターが欲しかったので~」

 

「……その、目のやり場に困るね影谷君」

 

「そうだな。俺はわりとバッキバキだった緋色の肉体に困るけどな」

 

 ……海、ではない。金城が所有する豪華プール施設を、貸し切りで堪能しているのである。そう、七月最初のイベント……「ドキ!?貸し切りプールでドタバタ遊泳!?」である。

 早速金城が大きく関わってくるイベントということもあり、かなり警戒していかなければならない、ならないのだが……。

 

「……何かしら。人の事をじろじろ見て」

 

「ふふ、広井さん水着お似合いですから~」

 

「美女揃いだからね、似合ってない人なんていないさ」

 

「もー、はやくはやく~」

 

 あまりにもヒロインたちが美女すぎてつらい。

 広井は白のパレオ的な水着を着ていて、髪を後ろで結んでいるのも相まって清楚な美しさが輝いている。

 金城はホルターネックタイプの水着で……抜群のプロポーションを強調しつつも黒の配色が下品ではない色っぽさを感じさせる。

 天童は競泳水着で、引き締まった身体の魅力を一層爆発させている。

 道標は紫の袖があるタイプの水着で、露出こそ少ないがそれが道標の妖しい魅力を引き立てているとも言えるだろう。

 

「……皆ビジュが良い……無理」

 

「影谷君……気持ちはわかるけどプールサイドで四つん這いになって限界化したら危ないよ」

 

「リアクションに困らない人だわ……まぁ、悪い気はしないけれど」

 

 ……そうだ、緋色の言うように限界化してる場合じゃない。

 本来、このイベントは緋色とヒロインたちが遊びながらキャッキャウフフするイベントだ。羨まし死ね。

 ゲームでは夏祭りの前に好感度を大幅に稼ぐチャンスであり……例の如く、広井の好感度が爆上がりしてしまうイベントだ。

 この世界がゲームではないとはいえ、起こる出来事はある程度共通だ。……単純に、緋色と広井の接触機会が多い分危険性が高い。

 

「……」

 

 立ち上がって、自分の肉体を見たあと緋色の肉体を見る。……特別筋肉があるわけでもないこの肉体と、バッキバキな緋色の肉体……そうでなくてもあらゆる要素は緋色に負けている。……本当に、メインヒロインルートを阻止して世界の崩壊を防ぐことはできるのか?

 

「かーげーたーにーくーん!」(ザッパーン

 

「うおっ!?!?」

 

 天童がプールサイドから現れて、俺をプールに引きずり込んできやがった……!

 

「ぷはっ!危ないだろうが!」

 

「大丈夫だよ~。影谷君くらいなら抱えて泳げるし~」

 

「そういう問題じゃ……ってマジで?」

 

「マジマジ!……それに……」

 

 天童が俺の耳に口を近づけて……

 

「……影谷君が溺れても、ちゃんと助けてあげる」

 

「!?」

 

 助けるってどういうことですかね……人口的な呼吸的なアレだろうか……

 

「……天道さん、流石に危ないわ。ちゃんと安全には配慮すべきよ。何かあったらどうするの」

 

 ……広井が、真面目な様子で天童に語り掛ける。いつも真面目ではあるのだが……そうか、広井は医者志望だしな。準備運動をするように言ったのも、納得だ。

 

「……そうだね、ごめん」

 

 流石に悪ノリが過ぎたとおもったのか、シュンとなる天童。その後、わかってくれれば良いと優しい表情を浮かべる広井に、思わず目を奪われる。

 ……天童のように好意を示されることは嬉しいし、取り乱しもする。……しかし、こうして目を奪われてしまうのは、広井にだけだ。

 

「……さて、そこで鼻の下を伸ばしている影谷君は置いておいて、私達も泳ぎましょうか」

 

「そうしましょうか~」

 

「……少し妬けてしまうな、ワタシの運命」

 

「そういうわけにはいかないよ……影谷君、大丈夫?」

 

 ……それぞれの心境を図りかねたまま、プールイベントが始まった。

 

 

「……」

 

 各々が、各々の楽しみ方をしている。天童と数あるプールを全て制覇しようと泳ぎまくっているし、金城と道標は横になれるタイプの椅子に腰かけてトロピカルなジュースを飲んでいる。

 ……あれ、緋色と広井が見当たらない。

 

「……どうしたのかしら?」

 

「……広井」

 

 俺はプールサイドに腰を掛けていたのだが、広井が俺の横に座り話かけてくる。

 ……思えば、洗脳の一件以降、あまり広井と話す機会はなかった。道標のこともあったし……いや、言い訳だ。緋色と広井の距離が縮まってから、俺から話しかけることが減っていた。

 

「……影谷君」

 

「……なんだよ」

 

「……影谷君って、モテモテね」

 

「……は!?」

 

 突然何を言い出すんだ広井は……俺なんて、緋色に比べれば取柄もなくて……。

 

「……道標さんに、後は天童さんもね。……私とのデートは遊びだったのかしら」

 

「遊びなんかじゃない!俺は真面目に……!」

 

「か、影谷君!わかった、わかったから顔を近づけないで……そ、その……照れるわ」

 

 ……思わず、距離をつめてしまった。近くで見ると、広井の顔がはっきりと見える。……何度もゲーム出見て来たはずなのに、どうしてこうも、美しく思えるのだろう。

 バツが悪くなり、顔を離す。

 

「……悪い」

 

「……別に、いいけれど」

 

 ……広井は、最近緋色に惹かれているのだと思っていた。普段の会話する様子もそうだし、いくら世界がバグっているとはいえ、基本的には緋色と広井が両想いになるように動くだろう。

 ……だから俺は、口では緋色に「負けないぞ」なんて言いながら、心のどこかで“既存のメインヒロインルート”にさえならなければ良いと思っていて。

 

「あれ、影谷君に広井さん……泳がないの?」

 

「あ、あぁそうだな……」

 

「そ、そうね……せっかくなら、皆で遊べるものをやりましょう?私、こういう水場でバレーとかやってみたかったのよ」

 

 ……なぁ、緋色。お前は……仮に世界が滅びるとしたら、広井と結ばれるのを諦めてくれるのか?

 広井……お前は、世界が滅びるとしたら、俺を選んでくれるのか?

 

「……私、こういう風にプールに友達と来るの、初めてだから……色々、やってみたいわ」

 

 ……ここにきて、自信が揺らぐ。そんなもの元々持ち合わせてはいないが……世界が滅びないとしたら、この友人として過ごす時間が続けば良いのにと、俺は思ってしまうのだ。

 




悩むのもまた青春であることを、当事者はわからないものである。
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