ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。 作:サラダよりは肉が好き
リアル事情とかそのほか色々あって投稿してませんでした。
執筆自体は続けています。
これからものんびりやっていこうと思いますのでよしなに。
ゴールデンウィーク明け。大体の高校生にとっては憂鬱だ。高校生じゃなくたって憂鬱だ。だが、俺はこの時を待ちかねていた。
なぜならば……。
「えー、家庭の事情で高校1年生の間、イギリスに帰省していた金城が今日から復帰しました。挨拶をお願いします。」
「はい、中等部には居たんですが、高等部では初めましてのかたもいらっしゃいますね。……ネヴィラ・アレクサンドラ・金城です。またよろしくお願いいたします」
「「「「うおおお!!!!」」」」「お帰りー!」「よっ、待ってました!!!」
沸き立つ教室。それもそうだ。金城は何を隠そう攻略対象の一人……そして、ゲームが開始してから初めて接触できる、初めてのサブヒロインなのだ。
今まで大変な日々だった。イベント破壊のためやりたくもないソーラン節を踊り、ダイナミックに緋色と広井の間に割り込み、二人きりになる状況にならないように、体を張って阻止してきた……。
だが!!!!そんな日々にも終わりを告げた!ここからは俺だけが苦労する必要は無い……!どうやって緋色との恋を実らせてやろうか……。
「くっくっくっ……」
「急に悪の組織みたいに笑わないでよ影谷君……」
「女の子を見て笑い出したわね……率直に言うとだいぶ気持ち悪いわ……」
うるせぇ誰のせいだと思ってんだ。
さて、金井について簡単にキャラ紹介をしよう。
ネヴィラ・アレクサンドラ・金城。身長173cm、スリーサイズは上から95-60-90。ハーフアップ……髪の毛の上部分だけを後ろで結び、型まで伸びる髪はそのままにしている。
性格は天然気質。基本的にはおしとやかなのだが、結構抜けているところもある。そして……様々な事業を手掛ける金城財閥のご令嬢だ。ギャルゲー世界だとお約束である。この財閥が実際なにをしてるのかとか、そもそも財閥って今日日聞かねぇよとかのツッコミは置いておく。
「金城の席は……まぁ緋色の隣でいいか」
「緋色さん……あぁ、あなたが今年転校してきたという……よろしくお願いいたします」
「よろしくね、金城さん」
そして何より重要な点……それはこの金城。メインヒロインである広井の次に攻略がしやすいという点だ。……メインヒロインルートと比べると、どうしてもフラグ管理に気を使う必要はあるのだがそれはそれ。なんとか緋色を金城ルートにぶち込む為に暗躍せねばな……。
「…あなたも、転校生ですか?」
「…あ?俺?」
今でこそ、俺は影谷信人という名でこの世界に転生しているが……要するに、モブキャラだ。申し訳程度のバックストーリーは存在するが……。
「俺は高等部からの編入組だな。見覚え無くて当然か……影谷信人。秘密諜報機関のエージェントだ。よろしくな」
「まぁ……!」
「流れるようにバレる嘘つかないでよ影谷君……!」
「秘密の諜報機関が名乗ってどうするのよ……」
世界を護るために暗躍しているという意味では全く間違っていないんだよな。俺の命のついでに護るだけだけど。
「とてもユニークな方……楽しい高校生活になりそうですね」
大丈夫だ金城。お前の青春は俺が彩ってやろう。緋色という世界の分岐点ともいうべき男をあてがってな。くくく……
因みに席は
俺 広井
緋色 金城
という感じになっている。
「せっかくだし、親睦を深めるためにどっか行かねぇ?カラオケとかファミレスとか」
とりあえず、これで乗ってくれればいいが……。
「まぁ……!それはいいですわね……わたくし、皆さんとお近づきになりたいです……!」
「……そうね、行きましょう。せっかくならショッピングモールがいいかもしれないわね。色々あるし」
「わかった、じゃあ放課後だね」
よし、問題なさそうだ。
さて……秘密諜報機関並みの暗躍を始めようか……。はっはっはっは!
☆
「ど、どうしてこうなった……」
.
「あらあら……」
「あらあら、じゃないんだよ。どうして放課後になって街に出た瞬間にふらふらと歩き回っちゃうの?どうしてショッピングモールにたどり着いた瞬間に迷子になるんだよ……」
「興味深いものが多くてつい……」
「好奇心幼児かッ!緋色と広井と手分けして探して、どうして見つかる場所が迷子センターなんだよ!!!」
「迷子の子供が居たので連れてきていたので…」
「それは……何も言えねぇな……」
そうだった、忘れていた。お嬢様故に俗世に疎く、興味のままに行動する超行動派な上に困った人は見過ごせない善人……それがネヴィラ・アレクサンドラ・金城だった……。
思わず消えてしまった金城を全員で捜索することになってしまい、俺の「ドキ!?いつの間にか緋色と金城を二人きりにさせて好感度を稼がせよう作戦!」がいきなり破綻してしてしまった。
本来ならば、金城の好感度稼ぎポイントは数日後……緋色が外出をしている最中、困っている人を助けている金城と遭遇し、なんだかんだ巻き込まれて二人きりで休日を過ごすというイベントがある。だがこのイベント、緋色が街に出かける選択肢を選ばないと発生せず、これを逃すと好感度を稼ぐことがかなり難しくなってしまうのだ。
ならば、一緒に出掛けることが出来る好感度を今のうちに稼いでしまおうという魂胆である。メインヒロインである広井のルートは俺が直接妨害へと出向くことができる。しかし、別ヒロインのルートへと誘導するにあたって俺は直接的に介入ができないのだ。いい雰囲気って基本男女二人きりの状況じゃないと発生しないしないからな!
俺ができることと言えば、橋渡し。緋色が金城に、金城が緋色に興味を持ち、恋愛感情を芽生えさせるための補助輪となる……。
なので、ある意味こうして金城と二人で話す機会を得られたのはチャンスと言えなくもない。緋色が良い奴だということを徐々に刷り込み、興味を持たせるのだ。
「『要救助者発見、1Fホールにて合流されたし……』っと。とりあえず連絡入れたから行こうぜ」
「要救助者なんて大げさですよ~」
「そうだな。迷子の大型犬だったな」
ひどいです~。と笑顔で堪えてもいない様子の金城を無視しつつ……さて、どう話を広げてやろうかな……そうだ。
「それにしても金城ってお人よしなんだな……まるで緋色みたいだ」
「そうですか?照れちゃいますね~」
「迷子なんて、誰かが助けるだろって見て見ぬフリする奴も珍しくないしな。俺が知ってる限りで……その場で直接助けようとするのは金城と緋色くらいだ」
「緋色君が……広井さんだって良い人だと思うのですが……」
「アイツはその場で迷子センターの人を呼びに行くタイプ。冷静に最適解選びそう」
「なるほど~……」
ちなみにあたふたして何もできないのが俺だ。俺、格好悪すぎ……!?
「緋色はまぁ、なんだかんだいい奴だよ。勉強も運動もできるのに人当たりもいいしな。転校したての時もすぐ馴染んだし。真っ先に金城を探そうって提案したのも緋色だ。俺だったらその場で帰る可能性があったからな!あいつの善意に感謝でもしておけよ!あっはっは!」
「……」
その後もなんとなく話をしていた気がするが……他人から他人の好感度を上げるのって難しすぎない????思いつく限り……というか、緋色のゲーム内で描写された限りの長所を挙げほめちぎった。
「……影谷さん」
「ん?なんだよ。そろそろ集合場所には着くぞ?」
「……影谷さんって緋色さんのこと大好きなんですか?」
「いや別に……寧ろ嫌いまであるぞ。何か何でもできるの見てるとムカつくし……」
「そんなに褒めちぎっているのに……!?」
☆
無事に合流し、ショッピングを楽しむことが出来た。途中、また好奇心のままに金城がはぐれそうになったので「もう誰かがずっと手を握っていればいいんじゃねぇの?」と、俺の一言により、広井と金城が手を繋ぐ結果になった。どうしてそこは緋色じゃないんだ……一部の界隈は盛り上がりそうだけどな。
色々楽しんで、いざ帰るぞとなった時……。
「もう終わりだ……」
……ショッピングモールの出口の近くで、うずくまる男が、そこにいた。俺ではない。本当に知らないおじさんである。そして、“いかにも私、困ってます”みたいな顔をしている奴が目の前に現れたら……!
「「どうかしたんですか?」」
緋色と金城というお人よし共が、声をかけてしまうじゃないか……!
「あぁ……ヒーローショーのヒーロー役と相手役の共通の友人が病院に送られたとかで二人共お見舞いに……はぁ……」
何をやってるんだ友人……というかそれ、ヒーローショーをぶっちするための嘘なんじゃないだろうな……。
「元々、共通の友人と、ヒーロー役か悪役のどちらと付き合うかっていうのがもめてたらしくて……ヒーローショーどころじゃないって言われちゃって……はぁ……」
なんで関係ない所のドロドロの三角関係を聞かされてるんだよ……!
「えぇっと……とりあえず、ヒーロー役と悪役が居ればいいのかな?」
「それなら私が一役やります~」
またそんな安請け合いを……!……まてよ?
空いている役は2つ……ここは緋色と金城の二人に親睦を深めてもらおう……!
「いいんじゃないか?せっかくの機会だし、やってみようぜ……ってこいつ(緋色)が言ってました!」
「何も言ってないよ影谷君!?……でも、困ってる人がいるなら、やっぱり見過ごせないのは変わらないし……僕も一役やります!」
「将来緋色君が誰かに騙されないかだけが心配だわ……」
大丈夫だ広井。この主人公君は騙されても「あなたが困っていないなら良かった」とか言っちゃう奴だから。
さて……この状況を利用して、緋色に金城の好感度を稼いで貰わねばな……。
☆
「この娘がどうなってもいいのかぁ~」←ぴちぴちのタイツに身を包んだ悪役金城
「タ、タスケテー」←人質役にされた広井
「くっ……卑怯な怪人め!!!」←妙に様になっているヒーロー役緋色
「ケッケッケ!!!運のツキだぜェヒーローォ!!!!」←急遽追加された悪役B俺
ど う し て こ う な っ た
最初は普通に緋色がヒーロー役、悪役が金城のまま進むはずだったんだ。申し訳程度のアクションシーンで、緋色と金城が肉体的な接触をしてドギマギする的なイベントを発生させられるはずだったんだ……なのに……!
「せっかくなら~みんなで楽しみたいですよね~」
なんて金城が余計なことを言うもんだから……!拒否する間もなくあれよあれよと話が進んでこんなことに……!
「タスケテ緋色……ヒーローォー」
というか広井!どうしてそんなに大根役者なんだよお前はよ!ゲーム内でそんな描写なかっただろ……!
「さぁて……いい気味のヒーロー様をどうやっていたぶってやろうか……なァ!怪人黒タイツ様ァ!」
「そうですねぇ~。まずはその赤いスーツを黒タイツにしてあげましょう~。……これで、お揃いですね?」
「何て悪行を……!クソッ!ヒーローがここで屈するわけには……!」
そもそもこれどういう世界観だよ。概要は聞いたけどさ。
どうやら、『ファッションヒーローキレルマン』という名の特撮作品らしい。この世全てのファッションを黒タイツにしよう企んでいる『秘密結社クロノミー』との戦いを描いたモノらしい。どういう世界観だよ(二回目)。
『大変!ヒーローが大ピンチ!みんなの好きなファッションを叫んで、ファッションパワーを溜めてあげて~!』
何を言ってんだ司会のお姉さん。ファッションパワーってなんだよ。好きなファッションを叫んでなんのパワーが溜まるんだよ!
<ノースリーブゥ!
<ニーハイ絶対領域!
<ウェスタンスタイル!
<タンクトップ!
<巨乳黒タイツに勝利を!
今秘密結社混じってたんだけど。袖無しも2人いるし、一人性癖叫んでるし……!
「ファッションパワーが……高まる……これなら……!」
「ま、マズイ!撤退を黒タイツ様……!」
「黒タイツが負ける訳ありませんから却下で~」
「ガ、ガンバレー」
「うぉおおおおお!ファッション!ビーーーーム!!!!!」
なんだそのわけわからん必殺技は!!!!!
だが悲しいかな……オタクの性ゆえか、こんな時でも全力で演じてしまう……!
「うわあああああああああ!!!!!!!」
「わ、わ~!」
お前はもうちょっとどうにかならんのか金城ッ!!!!
「た、タスカッタワ。アリガトウキレルマン」
お前はもっとどうにかならんのか広井ッ!!!!
「あぁ、悪は滅びた……!」
何故そこまで無駄に演技が上手い緋色ォ!!!!
……最後は、ヒーロー役の緋色に人質役の広井は抱き着く形でエンディングとなった。ショー自体はそこそこ成功と言え……何にも成功してないじゃん!!!また距離縮めてるじゃん……!
結局、雀の涙程のバイト代を貰いショッピングモールを後にすることになった……クソ!なんでこうも上手くいかない……!
「影谷君~。四つん這いになってないで行きましょう~?」
「どうしてそこまで落ち込んでるのかわからないよ影谷君……」
「……演技って、難しいわね」
各々好き勝手いいながら、帰路に着く。……今日は考えるのをやめて、立ち上がろうとした時。
「影谷君影谷君」
と、横に金城が。
「……なんだよ、緋色ならあっちだぞ」
「影谷君にお礼を言ってなかったなって思いまして~……ありがとうございます」
「何もしてねぇよ……はぁ……」
……マイペースでお人よしだが、悪い奴ではないんだよな。何ならキャラクターランキング上位だし……。
そして、歩き始めようとした時、金城が急に俺の耳元で……!
「本当は色々気を使ってくれたんですよね?私、そういう人好きです♪」
「ホワッ↑」
きゅ、急に何を言うのだね君は!!!!!と、心の中はざわめきが収まらないのだが……!だが……!どうしてそうなったんだ俺そもそも本当に何もしてないし……!
いつの間にか、金城は緋色と広井の横に並んで談笑していた。
……本当にどういうことだ?俺への好感度が?モブキャラにそんなことが起こる訳が……。
いいや心を惑わされるな!俺はメインヒロインルートを阻止しなければ死ぬのだ……!金城が何を考えているのかは知らんが、絶対に緋色にあてがってやるからな……!
天然の皮を被った小悪魔っていいと思うんだ。