ギャルゲーの世界にモブとして転生したけど、メインヒロインルート潰さないと俺は死ぬらしい。   作:サラダよりは肉が好き

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筆が乗ったので投稿。モチベーションがあるうちに沢山投稿したいですね。

そして、私の前作「とある男子高校生のラブコメ観察日記」が、書籍化作業進行中でございます。是非こちらもよろしくお願いいたします。
https://syosetu.org/novel/299644/




第6話 体育祭本番ではゲームの通りにいかないらしい。

倉庫の件があってから……広井の態度が変わるということはなく、彼女はいつも通りの態度で俺に接していた。俺の方は割と意識してしまって言動が怪しくなったりしたのだが……広井曰く。

 

「あなたが変なのは今に始まったことじゃないもの。気にするだけ無駄だわ」

 

 だそうだ。冷たい……。この反応に、同じく閉じ込められた金城は

 

「もー……つまらないですよ~」

 

 だそうだ。なんで不服そうなんだこいつは……。

 何というか、俺の普段の奇行に助けられた感じがある。助けられたと言っていいのかわからないけどな!

 ともかく、今の俺にとっては緋色が天童の好感度を稼げているかどうかが重要だ。体育祭練習が始まってからの、二人がどうなったかというと……。

 

「ははぁ……中々やるね緋色君!」

 

「流石に運動部の天童さんに比べたらそうでもないと思うけど……」

 

「ううん!帰宅部でボクについてこれる人なんて中々いないよ!この調子で体育祭がんばろー!」

 

 悪くはないと言った感じだ。盗み聞いた会話からも、小さな差異はあれど大体ゲーム本編のやり取りと変わらない。この調子ならば、体育祭当日までに必要な好感度は稼ぎきるだろう。

 だが俺は油断をしない。この世界に転生してから、ゲーム通りにいかない事だってそれなりに経験して来た。故に、イベントにはない行動も起こして緋色と天童の距離を縮めている。

 以下、For exampleである。

 

「いっけなぁい手が滑ったぁ!オラァ!」ズザザァ!(障害物競走式二人三脚練習中の緋色と天童にスライディングする音

 

「手じゃない上に思いっきり故意だよ影谷君!?」

「よっと、なかなかえぐい角度で来るねぇ!」ヒョイ(二人で息を合わせて飛んで躱される音

 

 とかだったり、騎馬戦の練習中に

 

「行くぞ野郎ども!美少女に囲まれている緋色に今こそ復讐の時!練習だろうと構わねぇやっちまえ!」

 

「「「「緋色ぶっ〇す!イェーーーー!!!」」」」

 

「そもそも僕まだ騎馬組んでないんだけどぉ!?」

 

「何それ面白そう!混ぜて混ぜて!」

 

 非モテ軍団の皆さんを扇動して、緋色と天童のドタバタ場面を起こしてみたりした。

 途中から自分でも何をやらかしているのかわからなくなってきていたし、ちゃんと先生とか広井からお叱りを受けた。妥当すぎて何も言えない……!

 そんな日々を過ごして……

 

「体・育・祭!じゃあああああああ!!!!」

 

「気合はいってるなぁ影谷君……」

 

「体!育!祭!だああああああああ!!!!」

 

「天童さんが影谷君みたいに……!重症ね……」

 

「楽しみですね~」

 

 まるで俺がやばい奴みたいに言うんじゃない広井。反論できないでしょ!というわけ体育祭当日である。ここで、体育祭について軽く確認をしておくことにしよう。

 体育祭で行われる競技は、徒競走とか二人三脚とか大玉転がしとか綱引きとか騎馬戦とか……おおよそ世間一般で行われる内容だ。ゲーム内では、天童の好感度によって緋色が所属する赤組の勝敗が決まる。当然好感度が高いと勝利である。

 天童の好感度が高いことによって見れるイベントとして、緋色が全力で取り組む姿に天童が目を奪われたり、障害物式二人三脚にてゴール直後に、抱き合う形で倒れ込んでしまうムフフなイベントだったり、優勝時に天童が思わず緋色に抱き着いてドギマギしたりとかそういうのが発生する。リア充がよぉ……!

 ゲーム内で言うならば、体育祭準備終了時点での好感度次第で体育祭イベントの内容は確定する。体育祭中に分岐イベントは無いということだ。つまり、この日に限っては今までのように無理に介入する必要は一切無いし、今日までの様子を見る限り、天童の好感度は問題ないだろう。

 かといって、気を抜くわけにはいかない。ここで天童ルートを確保しておかなければ、世界……もとい俺の命が危ぶまれる。なので、出来る限り気を付けて行きたい訳なんだけど……。

 

「どうじで……」

 

「私とペアなのがそんなに不満なの?ちょっとショックなんだけれど……」

 

「不満とかじゃなくて普通に美少女が真横に居て緊張で死にそうなだけですがァ!?」

 

「びっ……そういうこと言わないでよ!なんで逆切れ気味なのよ!」

 

 障害物競走式二人三脚で広井とペアになっちゃいました☆どうじでだよォ!

 いや、理由はわかりきってはいる。本来のゲーム内ならば、天童の好感度が一定以上に達していない場合、緋色と広井が障害物競走式二人三脚のペアになる。緋色と天童がペアとなった場合、もちろん広井は別の人とペアになるのだが……誰がペアになったかは、作中でも描写が無かった。

 広井とペアになりたいという奴はもちろん多い。男女混合の二人三脚なら尚更だ。よってペア希望者が殺到した結果、くじ引きという手段が用いられて、こうなったんだなコレが。

 緊張で緋色と天童に気を配るとかそういう次元じゃない……!

 

「ほら、始まるわよ……も、もっとくっついてくれる?このままじゃ走り辛いから……」

 

「モット=クッツイテ=クレルー?どこの貴族様だそれは……!」

 

「急にポンコツ発揮しないでくれるかしら!?」

 

 こっちがいっぱいいっぱいなのに照れるそぶりとか見せないでください広井さぁん!

 結局、なんとか二人三脚を中間くらいの順位で乗り越えたと思ったら、借り物競争にて……

 

「あ!影谷君見つけた!一緒に来てくれる?答えは聞いてなーい!!!」

 

「痛い痛い痛い!!!手首を掴んでいきなり全力疾走するな天童ォ!!!なんのお題だよぉ!」

 

「強敵と書いて「友」と呼ぶライバル!」

 

「なんでそんなものがお題にぃぃぃぃぃ!」

 

 思いっきり天童に引きずりまわされてみたり……。

 

「ありがとうございます~……ちょっと足挫いちゃって……」

 

「だからって近くに居た俺にノータイムで声をかけないでくれるかなぁ金城……!」

 

「……力強くてたくましいですね♪」

 

「耳元で囁くのやめろォ!!!!!」

 

 足を挫いた金城に肩を貸して保健室に送り届けてみたり……いい匂いがするゥ!

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

「大丈夫影谷君……?」

 

「うるせぇ誰のせいだと思ってんだこの野郎……」

 

「え!?僕のせいなの!?」

 

 緋色に少し八つ当たりをして満足しつつも考える。

 どうして俺がラブコメしてんだァ!!!嬉しくないかと言われれば嘘になる!なるけれどもッ!普通に精神が持たない……ラブコメ主人公ってメンタルお化けかよ……!

 俺のような、女子とまともに関わってこなかった免疫がない上に、欲に振り切ることができないチキンにはキツイ……!!

 ひとまず、緋色と天童のイベント自体は問題なく進んでいるようだ。二人の距離は、間違いなく縮んでいると言えるだろう……。

 そして、このイベントを締めくくる最終競技は……お約束のリレーである。リレーは男女混合で行われる。メンバーの中には、もちろん緋色と天童が含まれており、天童のバトンが緋色に渡り、一位を取ることによって赤組の優勝が確定……嬉しさのあまり、天童が緋色に抱き着くイベントCGが表示され、体育祭編は終了となる。色々あったが、体育祭も無事に終わりそうだ……。と、思っていたら、天童がこちらに駆け寄って来た。何なんだ……?

 

「ほら、影谷君もレッツゴー!位置について!」

 

「…………………え?」

 

 

「どうして俺がアンカーになってんだよ!!!!!!!」

 

「あはは……言ったら参加してくれないと思って黙ってたんだよ影谷君」

 

「お前の仕業か緋色ォ!当たり前だろうが!というか足もそんなに速くないしィ!」

 

「異議あり!それは嘘だよー!」

 

「天童ォ!何が嘘だってんだよォ!」

 

「だって他の皆に聞いてみたら……」

 

赤組生徒A

『授業中はともかくとして、奇行に走ってる時はアイツ陸上部並みに走るよな』

 

赤組生徒B

『人の動きじゃないよね……』

 

赤組生徒C

『影谷×緋色なのか、緋色×影谷なのかが重要だと思うんだ……!』

 

「って言ってたよ!」

 

 最後の奴は全く関係ねぇだろうが!!!!畜生!普段の奇行がこんな形で牙を剥いてくるのかよ……!確かに無理やりテンション上げてるから、アドレナリンとかのせいで身体能力は上がってるかもしれないけどさぁ!

 

「大丈夫!緋色君とボク、そして影谷訓が揃えば、絶対優勝できるから!」

 

「何を根拠に……!」

 

「緋色君はすごいし、影谷君はライバルだもん!」

 

「だからライバルじゃ「勝とうね、影谷君」」

 

 否定をしようとする言葉に被せて、真っすぐな目で天童が見つめてくる。……初めて、天童を間近で見た気がした。何も疑ってない目だ。俺が参加した上で、リレーで勝つと何も疑っていない。信じ切っている。……一体なんだってんだ。こんなに真剣に、真っすぐ向き合って言葉をぶつけられたことは、俺には無い。

 ……そうか、天童は真剣なんだ。体育祭なんて、タダのお遊び、青春の一ページ……とかそう考えているんじゃなくて、ただ、全力で楽しんで、勝とうとしている。

 

「……言っとくけど、抜かれても文句言うんじゃねぇぞ」

 

「……!もちろん!」

 

「影谷君、なんだかんだ付き合ってくれるよね。僕はそういうところ好きだよ」

 

「野郎に言われても嬉しくもなんともねぇよ緋色くたばれ」

 

「僕にだけ辛辣じゃない!?」

 

 うるせぇ誰のせいだと思ってんだ……ったく。

 

 

 この後、特筆すべきことは特にない。というか何かを特筆するだけの元気がない。リレーでは、緋色と天童が大幅なリードを作った。天童から緋色、そして俺へとバトンが渡った。

 最後、リードを貰って走っているはずが、白組も底力を見せ、とうとう並ぶか並ばないかまで追い上げて来た……らしい。

らしいというのは、俺は走るのに必死で何も見えていなかったからだ。ただ、全力で走った。走って、走って……、ゴールをくぐった。

 

『優勝は、赤組ですッ!!!!』

 

 スピーカーで出された音声だけが聞こえて、そのまま倒れ込んで、仰向けになって息を上げていた。

 

「…………………」

 

 思ったよりも、感情は浮かびあがらなかった。走ったなぁ、とか、負けなくてよかったなぁ……とか、そういうことばかりが頭に浮かんだ。

 思えば、前世の高校生活では……ただ、何となく過ごしていた気がする。……何かを必死にやったのは、この世界に来てからかもしれない。必死にメインヒロインルート妨害して……あれ、俺ってやっぱやってること最低……?

 ……というか、あれ……?なんか背中の地面の感覚が無くなってきたな……宙に浮いてるみたいだ……。

 

「「「「わーっしょい!わーっしょい!」」」」

 

「って胴上げされてるゥ!?」

 

 なんか超怖いナニコレ!?安定しない空中浮遊が言いようもない恐怖がァ!

 

「勝ったね影谷君ッ!流石だよー!」

 

「ただっ!お前たちが!リード稼いでただけだろっ!」

 

 胴上げのせいでまともにしゃべることが辛いィ!

 ひと段落して、下して貰った頃にはヘトヘト……どう考えても俺が勝因じゃないだろ……。でもまぁ、必死になって勝ち取ったものがあるっていうのは、悪くない気分だ。

 この後、赤組は表彰され、大盛り上がりのまま体育祭の幕は閉じた。無事に緋色と天童の好感度も上がり……上がり……。ちょっと待て。

 

「緋色……お前リレーの後天童に抱き着かれたりした……?」

 

「きゅ、急に何を聞くのさ影谷君……!……“抱き着かれてないよ!”リレーの後すぐに胴上げに行ったんだから……」

 

「……………………………………は?」

 

 嘘だろ……本来のイベント内容と大幅に変わった?どういうことだ?今までは、どれだけイベントを妨害しても、最後の最後は決まった結末へ収束してたのに……?

 何が間違えた?イベント内容を間違えて覚えてた……?そんなことはありえないし……?……この世界は、ゲームの世界が全てじゃないのか……?

 

「影谷君……?」

 

 緋色が心配そうにこちらを見つめるも、それに反応する余裕もなく、俺はその事実の思考に耽るしかなかった。

 

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