気味の悪い剣を作っちまった。
犬夜叉に神喰牙を作った瞬間、刀々斎はそう思ってしまった。
刀々斎は様々な刀剣を作って来た。
中でも傑作なのは鉄砕牙と天生牙。
二本とも意思のようなものを持つ。
犬の大将の牙によって作られた刀。
その息子の牙によって作られた神喰牙。
しかし、その有様の本の刀に比べて異様だった
出来た当初は違和感を覚える程度だった。
意思の薄い刀も存在するが、そんな時は持ち主が振るえばどんな刀か分かる。
刀々斎は完成した神喰牙を犬夜叉に渡し、どんな刀なのか見定めた。
アレはただの牙だ。
神喰牙には意思のようなものが一切無い。
持ち主である犬夜叉を強化する為の道具。
口に収まりきらないものを飲み込む為の捕食器官である。
「(やっぱ犬夜叉には鉄砕牙の方がよかったんじゃないのか?)」
そう思わずにはいられない。
他者を食らって糧にする刀。
そんな貪欲な刀でいいのか。
「まあ、大丈夫じゃろ」
犬夜叉は独り立ちした。
あの犬の大将が認めたのだ。
大丈夫だろう・・・たぶん。
満月の夜。
赤い月に照らされる芒野原で、犬夜叉は一体の妖怪と対峙していた。
首塚の鬼。
武蔵の国で屈指の実力を持つ妖怪。
普段は美しい女性の容貌ををしているが、その本性は数十mもある巨大な鬼。
竜骨精が居なくなった今、彼女はその力で猛威を振るっていた。
犬夜叉が鬼に飛び掛かり、神喰牙を振るう。
ソレを両腕で受け止める鬼。
体格差は圧倒的。どちらが力負けするかは一目瞭然。その筈だが…。
「ぐわぁ!?」
倒れたのは鬼の方だった。
両腕のガードを崩されてたたら踏む鬼。
その隙に犬夜叉は開いた胴体目掛けて斬撃を叩き込んだ。
体格差を覆す程の怪力。
その秘密は今の犬夜叉の状態にある。
赤い目に青く割れた瞳。
頬には紫色の爪跡のような一対の模様が浮かんでいる。
妖怪化。
満月の夜、犬夜叉は妖怪の血が活性化し、一時的に妖怪になる。
朔日の夜、妖気を失って人間になる頃とは真逆の状態である。
原作でも犬夜叉は妖怪化する事があった。
その際は暴走状態にあり、最後まで制御する事は出来なかった。
しかし、この犬夜叉は違う。
血の昂りによって性格の変化はあるが、その力を使いこなしている。
妖怪化しても武器を扱えるのがその証拠である。
まあ、全ての妖力を使えるわけではないが。
今の彼の戦闘力は大妖怪と遜色ない。
否、大妖怪そのものと言っていい。
「斬月破!」
剣圧と共に放たれる無数の斬撃波。
豪風爪、疾風爪、そして烈風爪を掛け合わせた数々の斬撃波。
この技自体は犬夜叉が武器無しでも使えるが、神喰牙によって増幅されている。
まして今の犬夜叉は妖怪化して格段に威力が上がっている。
一撃一撃が必殺技。原作の風の傷と互角といってもいい。
だが、鬼はソレに耐えた。
首塚の鬼は高い生命力を誇る。
首だけの状態でも生存し、風の傷にも耐えた。
まして今の彼女は万全の状態。首だけの状態の比ではない。
「ッグ!?…この!」
鬼が妖術による祟りを発動する。
妖術にも秀でている彼女は様々な術を行使可能。
原作でも首だけの状態で封印されていたというのに、祟りや呪いで人間を殺してきた。
特に得意なのが邪気縛り。
自らの強大な邪気を利用した邪気縛りによって99人もの僧侶を打ち倒してきた。
まして今の彼女は万全の状態。首だけの状態の比ではない。
犬夜叉が神喰牙を掲げる。
刀身から発せられる青白い光。
ソレは鬼の放った呪いから犬夜叉を守った。
結界。
神喰牙に込められた呪力で結界を形成し、鬼の呪いを無力化したのだ。
今の犬夜叉は妖怪。
妖気が増した代わりに呪力が使えなくなっている。
故、普段から呪力を神喰牙に溜め、必要な時にこうして使っている。
「今度はこっちの番だ!」
犬夜叉の身体が赤黒く光る。
妖気をオーラのように纏っているのだ。
全身を包み込む妖気は犬夜叉の身体能力を引き上げ、戦闘力を爆発的に飛躍させる。
「ッな!?」
鬼の視界から犬夜叉が消える。
一体どこに。
答えに気づいた瞬間、身体から痛みが走った。
切られた。
見えない程の速度で。
目の前にいたというのに。
視認できない程の速度で体を切ったのだ。
「おのれ!」
腕を振るって犬夜叉を捕まえようとする。
捕まらない。
あまりに早くてどこにいるのかすら分からない。
気が付いた頃には、既に切り傷を刻み終えていた。
速い。
あまりに速くて視認すら出来ない。
鋭い
あまりに鋭くて防御すら出来ない。
強い。
あまりに強くて戦闘すら成立しない。
「お…おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええ!!!」
妖力と邪気を全身から一気に爆発させる。
自身もダメージを負うが、そうでもしなくては犬夜叉をあぶりだせない。
一か八かの賭けで鬼は自爆を行った。
「ッグ!?」
賭けに勝った。
犬夜叉が吹っ飛んでいる。
今こそ勝機。ここで仕留める!
放たれた鬼火。
全力の妖気で放たれたソレが犬夜叉を飲み込む…。
「………っへ」
彼女は気づいていなかった。
その時、犬夜叉がほくそ笑んでいたことに。
「激流破」
犬夜叉も妖力波を放つ。
赤黒い光を放つ神喰牙から撃ち出された一撃。
ソレが放たれた瞬間、首塚の鬼は赤黒い閃光に飲み込まれた。
55:半妖
とまあ、こんな感じで妖怪化した俺は敵を圧倒しました
56:一方
色々聞きてぇことはあるが一つずつ聞かせてもらうぜ
先ず、最後の技は何だ?
57:半妖
激流破
敵の攻撃を俺の妖力波で飲み込み、自分のものにして跳ね返す技
普段から使えるが、神喰牙を媒介にすることで効果は格段に上がる
58:一方
なるほどなァ
要はカウンター技ってことか
俺と同じだな
59:覇王
他者を食らって自分の力にする
牙だけじゃなく妖力レベルでそんな性質ってことか?
60:半妖
まあな
けど俺ら犬妖怪にとって牙=本質だ
当然こうなる
61:青龍
へー、電撃みたいな見た目だから痺れ効果あると思ったけど、吸収効果の方か
62:叢雲
しかしそれにしてもすごい戦闘力だな
圧勝じゃん
コレ、妖怪化の方が強くない?
63:半妖
いや、そうとは限らない
確かに身体能力や攻撃力は妖怪化の方が上だが、防御力や利便性は大分下がる
呪力も結界も使えなくなるからな
64:闇闇
え、でも結界使ってたじゃん
65:半妖
アレは予め刀に呪力を込めてたからだ
込められる量はそんなに多くないから多用出来ない
66:一方
そういや思ったんだが、半妖時の結界ってどれだけ強いんだ?
結界師としての前世があって、そのスペックをフルではないとはいえある程度は引き継いでいるんだろ?
なら結界師としての方が強くねえか?
67:青龍
やり込んだ別のゲームのデータを持ちこしてるようなものだからな
そこはどうなの?
68:半妖
確かに最初は妖怪としてより術師としての方が強かった
けど術師としての俺は頭打ちで妖怪としてはまだまだ強くなれる
だから妖気をメインにして鍛えてる
69:半妖
それに術師としては確かにこの世界でも強いが、これ一本じゃ最強になれない
というかこの世界の妖怪が前世の妖より強い
初期で出てくる雷獣が牙銀ぐらいの強さだぜ?
土地神クラスの妖怪もゴロゴロいる
フルスペックでも最強には届かない
70:叢雲
雷獣?
ああ、前の動画で出てたな
アイツらは兄弟じゃなくて夫妻だけど
71:覇王
あいつらで牙銀レベルか…
確かに犬夜叉は妖怪が全盛期戦国時代だからな
妖が日陰者になった現代ものとは神秘が比べ物にならないか
72:闇闇
地形破壊できる奴がゴロゴロいる世界観だ
インフレ具合が違う
73:一方
けど真界とか使えるんだろ?
それでもダメなのか?
74:半妖
真界は無敵じゃない
ずっとは張れないし、破ってくる敵もいる
大妖怪なら妖気である程度防げるし、全盛期の親父なら逆に押し返せるはずだ
75:闇闇
前世のフルスペックでも難しいのか
ヤバいな、犬夜叉の大妖怪
76:覇王
じゃあ逆は?
犬夜叉と父は結界師の妖でどれぐらい強い?
77:半妖
鉄砕牙無しだと志々尾ぐらい
アリだと幅が広い上に色々特殊だから判定不能
親父は前世の俺を殺した土地神どころかお袋より強い
78:青龍
マジで犬夜叉の父強すぎ
というか犬夜叉の世界の妖怪自体結界師の妖より強くない
79:半妖
確かに火力という面では妖怪の方が強い
けど妖や術師は能力が厄介
精神支配や退魔の刃や無限の呪力とかな
80:叢雲
確かに違う世界観でどっちが強い弱いというのはアレだな
81:一方
その世界そのルールで適応した強さってのがあるからな
一概にどっちが優れてるかなんて言えねぇわ
82:覇王
で、その二つの強さを半妖さんは持っている
どっちも血統も才能も能力も高いときた
83:青龍
特に大妖怪の血がヤバい
妖怪化をコントロール出来るなら既に大妖怪名乗っていいんじゃない?
84:半妖
いや、原作の犬夜叉は何百年も生きる事で妖力が成長したけど、俺はそこまで成長してない
だから神喰牙で他の妖怪から妖気を奪ってるんだよ
85:闇闇
成程、時間経過で大妖怪に成長できるけど、神喰牙で増強してるのか
86:青龍
という事はアレ?
原作犬夜叉と同じ頃には本来の妖力+今まで食った妖力になるってこと?
87:一方
しかもアレだな
半妖さンは吸収した妖力を完全に自分のモンに出来る上に、妖力を完全に制御出来るんだろ?
ならその時は親父さンを超えてるってことだろ?
88:半妖
そういう事になるな
けどそんな悠長には待たない
俺は俺のやり方で最強になる
89:一方
そっか、頑張れ
・妖力ブースト
今作の犬夜叉の技の一つ。
妖力を活性化させて身体能力や技の威力を上げる。
活性時は凄まじい威力を発揮するが、制限時間を過ぎると自動で解除され、反動として活性させた分妖気が弱まる。
一番効果が発揮できるのは妖気が強まる妖怪時。
・激流破
赫龍破の応用技であり、今作の犬夜叉の必殺技。
放った妖力波が相手の放った攻撃を喰らって撃ち返す技。
自身の攻撃に加えて相手の妖気も喰らって跳ね返すため、その威力は相手の放った攻撃に応じて跳ね上がり、場合によっては何倍もの威力になったカウンターとなる。
カウンター技なので能動的に使用できず、打ち返す攻撃の見極めを誤ると大した威力を出せないまま隙を晒してしまうなど、戦闘センスの問われる技になっている。
一見すれば爆竜破と同じだが、爆波破は相手の攻撃を巻き込んで跳ね返す技なのに対し、こちらは妖力がその攻撃を喰らって跳ね返す技なので、たとえ相手が自身の技ではダメージを受けない能力を持っていてもダメージを与えられる。
・本性
今作の犬夜叉が妖怪化している時のみ使える。
殺生丸や父親のように真の姿である巨大な化け犬の姿に変化。
しかし半妖の為か血縁者たち程大きくはなく、外見も首まで口が裂けた巨大な白い狼になっており、本来の一族の姿からかけ離れている。
刀々斎達曰く、自身の力より大きなものを呑み込もうとする野心からそうなっていると言われている、半妖であるから人間の部分としての本性も出た等、様々な説はあるがどれも仮説の段階にしかない。
巨体ながら凄まじいスピードを誇り、本性を顕した殺生丸をも上回る。