三度目の生は半妖でした   作:大枝豆もやし

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新形態と新武器

 

 荒野の真ん中、犬夜叉は三人の人型妖怪に囲まれていた。

 既に獣の姿から人型に戻っており、神喰牙を抜いている。

 斬撃波や妖力波を放ち、迫り来る敵を迎え撃っていた。

 

 最初は万全に進んでいた。

 犬夜叉が派手に暴れたおかげだ。

 敵の陣形を崩し、穴を拡げていき、敵を屠って来た。

 部下の犬妖怪たちは彼の後を追い、零れた猫妖怪を処理するだけでよかった。

 豹猫四天王が現れるまでは。

 

 彼らが現れてから戦場は激変した。

 猫妖怪の雑兵たちの敗走は相変わらずだったが、四天王たちは犬妖怪たちを瞬く間に蹴散らした。

 犬夜叉は配下の妖怪たちを逃がすため、四天王たちをおびき出す。

 結果、彼が四天王のうち三人と戦う事になった。

 

 豹猫四天王。

 そのうちの三人。

 春嵐、夏嵐、そして冬嵐。

 豹猫族の大将代理であり、本来の大将である猫のお館の血を継ぐ子供たち。

 要するに、豹猫族にとっての殺生丸のような位置付けにある。

 

 猫のお館。

 豹猫族の総大将であり、東の国を支配していた大妖怪。

 しかし犬の大将に敗れ、死亡した…筈だった。

 

 敵陣の真ん中にある屍。

 犬の大将クラスの巨体。

 猫のお館のものである。

 

「(なるほど、アレが戦を仕掛けた原因か)」

 

 猫のお館のミイラは完全には死んでいなかった。

 死体ではあるが、復活の兆しがある。

 おそらく、必要なものは生贄。

 大量の命と魂を求めている。

 

 戦を仕掛けたのは魂と命を集める為。

 特に、強い妖怪のものを。

 

「よそ見とは余裕だな、犬族の王子さま!」

「ッチ!」

 

 防戦一方の犬夜叉。

 吹雪が、火炎が、幻影が。雨霰の如く注がれる。

 

「ッグ!?」

 

 敵の猛攻に押され、若干下がる。

 妖怪化することで普段以上の力を発揮しているというのに。

 その事実はこの妖怪たちが一筋縄でいかないことを証明していた。

 

「ッチ!あまり使いたくなったが!」

 

 神喰牙に保存していた呪力で覇界を形成。

 雨霰の如く繰り出される猛攻を悉く防いだ。

 続けて、神喰牙を振るって牽制の斬撃波を放つ。

 

「クソ、なんだよこの結界!?」

「全然壊れねぇじゃんか!」

「結界に籠るな臆病者!」

 

 猛攻の手を更に強める四天王たち。

 しかしビクともしない。

 あれだけ妖怪化した犬夜叉が追い込まれていたというのに。

 ソレは犬夜叉の覇界がどれだけ強力なのかを示していた。

 

「(なるほど、3人とも属性攻撃か。幻の方は植物由来、つまり木の属性ってわけか)」

 

 覇界内で敵を冷静に観察する犬夜叉。

 敵の攻撃を気にすることなく熟考出来る。

 これも犬夜叉の強みである。

 しかし長くはもたない。

 早期に決着を付けねば。

 

 一見すれば自分勝手に攻撃している。

 しかし、ちゃんと観察すれば攻撃の意図が見え てきた。

 春嵐が幻で攪乱、秋嵐が炎で足止め、冬嵐が氷の刃でトドメを刺そうとしている。

 

「(なら、コイツだな)」

 

 瞬間、神喰牙の姿が変わった。

 赤い刀身に黒い峰の大太刀。

 燃え盛る炎のような形状の刃紋

 ソレは炎の渦を纏っている。

 

 神喰牙・烈火

 炎を扱う様々な妖怪の力を吸収して手にした形態。

 基本能力は火炎や高熱の発生と操作。他にも吸収した様々な炎妖怪の特性を組み合わせ強化されている為、炎や熱に関する様々な能力を有している。

 

 神喰牙の新たな形態はこれだけではない。

 他にも様々な形態と能力を有している。

 そして、ソレは今でも増え続けている。

 

「はあッ!」

 

 春嵐の攻撃タイミング合わせて振るう。

 途端に斬撃と共に放たれる火炎と熱風。

 炎は春嵐の植物性の粉を燃やし、炎を飲み込んで勢いを強めていく。

 ソレは冬嵐の氷刃とぶつかって大爆発。同時に蒸気が発生し、周囲の姿を覆い隠した。

 

「な…なんだ!?」

「煙幕か!?卑怯な!」

「どこだ、どこにいる!?」

 

 爆発と煙幕によって混乱する四天王たち。

 その隙に犬夜叉は次の手を打つ。

 

 神喰牙が再び姿を変えた。

 黄色の刀身に黒い峰の大太刀。

 雷が奔ったかのような刃紋。

 ソレは稲妻を纏っている。

 

 神喰牙・迅雷。

 雷を扱う様々な妖怪の力を吸収して手にした形態。

 一言で表すなら烈火の雷バージョンである。

 

 刀を脇構えする犬夜叉。

 赤黒い妖力を纏って身体能力を格段に引き上げ、地面を強く踏みしめ、弾丸の如く駆け出した。

 

 春嵐。

 すれ違いざまに一閃。

 強烈な電気を帯びた刀身で切り裂く。

 刃が彼女の血肉に触れ、高電圧が体内に流れ込む。

 ソレに耐えきれず春嵐は一撃で昏睡し、力なく倒れた。

 

 夏嵐。

 突進して一突き。

 咄嗟に防御しようとするが、パワーとスピードで無理やり押し通す。

 ブスリと剣先が突き刺さり、直接高圧電流が流れ込んだ。

 ソレに耐えきれず夏嵐は身体中からプスプスと煙をあげ、身体から力が抜けた。

 

「春嵐!夏嵐! おのれよくも!」

 

 一番遠くにいた冬嵐は無事だった。

 犬夜叉の攻撃から免れ、一連の行動を見ていた。

 故、状況をいち早く理解した彼女はすぐに行動へ移れた。

 

「殺す!殺してやる!」

 

 端正な顔を怒りに歪める冬嵐。

 妹たちの仇を討つ為に犬夜叉目掛けて怒涛の連撃を繰り出す。

 ソレを犬夜叉は神喰牙を烈火に再び変えて迎撃した。

 巨岩の如き氷塊を、雨霰の如き氷の矢を、嵐の如き吹雪を。

 炎を圧縮した巨大な刀身で、炎の渦で、剣圧から放つ熱波で。

 冷気と熱気が、炎と氷が。ぶつかり合って水蒸気爆発を引き起こし、二人の姿を隠す。

 

「そこだあ!!…何!?」

 

 臭いで犬夜叉の位置を探り出し、氷の槍で突き刺す。

 しかし、そこにいたのは犬夜叉ではなかった。

 式神。しかも毒がたっぷり仕込まれたもの。

 

「なんだ…これは!?体が…毒か!? おのれ小癪な!」

 

 ドロドロのスライム状になり、槍を伝って流れ込む毒。

 しかしそこは大妖怪の娘。原作でも当時の殺生丸とも互角に渡り合うほどの凄実力を誇る。

 すぐさま毒を氷漬けにして無力化しようと…。

 

「轟雷破」

「!?」

 

 瞬間、上空から犬夜叉が現れ、電撃を放った。

 妖力をたっぷり込めて強化した一撃。

 名の通り轟音を立てながら凄まじい雷を繰り出す。

 

「ぎゃあああああああああ!!?」

 

 直撃。

 毒の冷凍に意識を向けていた彼女はソレに対応出来なかった。

 直に電撃を食らい、全身に駆け巡る。

 

「あ…あぐ………」

 

 気絶する冬嵐。

 トドメを刺そうと刀を掲げて犬夜叉が近づき…。

 

「殺しはしねえ。戦後処理が面倒だからな」

 

 刀を鞘に納める。 

 気絶し、周囲も安全なのを確認してから…。

 

「ッ!?」

 

 その場を急いで飛び退く犬夜叉。

 強烈な邪気。

 ソレを感じたと同時、身体が勝手に反応した。

 

『命ィ…イノチヲヨコセェ………!』

 

 

 

 死体が動き出している。

 まだ十分魂が集まってないのに。

 大方、魂が集まらなくて業を煮やしたのだろう。

 

「………こりゃ不味いな」

 

 強烈な邪気。

 不完全な復活とはいえ、相手は大妖怪。

 未だに超えられない父親、犬の大将にも匹敵する。

 そんな相手に本気で勝てると思う程、犬夜叉は傲慢ではない。

 

「仕方ない、あんまし使いたくなかったんだが」

 

 髪の毛から針のようなものを取り出す。

 途端、針は野太刀へと変化した。

 ソレもまたすさまじい邪気を放っている。

 

「起きろ叢雲牙。久々の活躍だ」

 

 ドクンと、脈打つ叢雲牙。

 柄頭の大きな紫色の珠が赤色に変化する。

 犬夜叉が着ている火鼠の羽衣や、犬夜叉の妖気と同じ色。

 ソレは、犬夜叉がこの剣を完全に支配しているという事実を示していた。

 

 叢雲牙を鞘から引き抜く。

 同時に漏れ出る強烈な瘴気と邪気。

 溢れる力が龍の幻影となって刀に巻き付く。

 

「獄龍破」

 

 瞬間、闇の奔流が戦場を支配した。

 黒い竜巻を纏っている赤い球体のエネルギー波。

 膨大な量のソレは猫のお館へと一気に雪崩れ込んだ。

 

 獄龍破。

 叢雲牙の必殺技であり、その威力は爆流破と蒼龍破をはるかに上回る。

 原作では鉄砕牙や天生牙が近くにあると威力が下がる為、本来の威力を発揮できるシーンは少なかったが、その状態ですら爆流破や蒼龍破を凌ぐ。

 今は鉄砕牙も天生牙もない万全の状態。犬の大将が振るっていた頃よりも断然高い威力を発揮した。

 

『グ…オオオオオォォ』

 

 だが、ソレでも猫のお館の屍は倒れなかった。

 生前は犬の大将と同格であった大妖怪。

 屍に成って尚、その力が僅かに残っている。

 しかしそれもこれまでだ。

 

『ご…おお………!』

 

 突如、猫のお館の動きが鈍った。

 取り込んだ魂と妖力が抜けている。

 今まで集めて来た人間の魂が、この戦で吸収した妖気が、漏れ出るかのように抜けていった。

 

 叢雲牙の能力の一つ、亡者の蘇生。

 コレを応用することで縛られている魂を解放してあの世へと旅立たせているのだ。

 本来の叢雲牙では先ずやらない使い方。叢雲牙を完全に使いこなせている彼だからこそ使える技である。

 

「これで現世との繋がりは弱まったぞ!どこまでその体を維持できるかな!?」

『お…おのれぇぇぇぇぇ』

 

 地の底から響くような怨嗟の声。

 対する犬夜叉は余裕の笑みを浮かべて叢雲牙を構える。

 

「コイツで地獄に送り戻してやるぜ!」

 

 叢雲牙を八相に構える。

 再び邪気や瘴気が滾り、黒龍の幻影となる。

 二度目の獄龍破。剣を振り下ろすと同時、闇のエネルギー波となって剣先から繰り出される。

 

「獄龍・斬殺剣!」

 

 否、ソレはエネルギー波ではなかった。

 剣。闇が圧縮され長大な刀身となり、猫のお館の巨体を切り裂いていった。

 

「トドメだ!」

 

 振り下ろされる超巨大暗黒剣。

 叩きつけられると同時、獄龍波と同等の破壊力を発揮。

 ソレによって今度こそ猫のお館の屍を完全に破壊した。

 

 叢雲牙を鞘に納める。

 途端、辺りを覆っていた邪気と瘴気は嘘だったかのように無くなった。

 

 

 

 





・形態変化
犬夜叉が数々の妖怪を斬り、その特性を吸収した結果得た能力。
類似している様々な能力や特性を組み合わせて一つの形態となった。
一言で言うなら仮面ライダーやウルトラマンみたいなタイプチェンジ。
今でも様々な妖怪から能力や特性を食らい続けており、ソレを組み合わせる事で既存の形態を強化中。どんどん強くなってきている。
また、この能力は神喰牙から犬夜叉に継承されているので、犬夜叉自身も使える。

・叢雲牙
異界に封じられていた妖刀。
犬夜叉はコレを見つけ出し、破壊するのが本来の試練なのだが、未達成のため今は所有する事に留まっている。
原作と違って支配されることなく扱っているが、破壊力が凄まじい上に威力調整も出来ず、その上周囲の汚染も激しいため滅多に使用しない。
普段は封印された上に針ほどの大きさに縮小されて髪の毛に隠されている。
何時か破壊して神喰牙に継承させる予定。
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