三度目の生は半妖でした   作:大枝豆もやし

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四闘神

 

 蓬莱島。

 五十年に一度だけ現れる島。

 かつては妖怪と人間が共存する楽園であった。

 妖怪に堕ちた神獣たち、四闘神が現れるまでは。

 

 四闘神。

 彼らの力は絶大であった。

 原作では力の大半を封じられても尚、犬夜叉を圧倒。

 作中最強と思われる犬夜叉の父とも戦ったらしく、勝敗は不明だが生存していることから相応の実力があると考えられる。

 

 大妖怪に相応しい実力。

 冷酷さと残忍さに目を瞑れば神獣といっても良いであろう。

 

 彼らを倒せるものはいない。

 ほんの例外を除いて。

 

 

 

「この野郎、ちょかまかとぉぉぉぉ!!!」

 

 その例外が、この島に現れた。

 

 妖怪化した犬夜叉。

 結界を足場にして、獣化した状態で空を駆け抜ける。

 背後には無数の光弾と爆撃音、そして獣のような姿の妖怪。

 剛羅の放つ砲弾と獣羅である。

 

 獣羅と剛羅。

 二人は兄弟であり、四闘神の片割れ。

 彼らはこの島に侵入した犬夜叉を排除しようとしている。

 

『どうした鈍間共? もうギブか?』

 

 犬妖怪の姿の犬夜叉が言う。

 普段の巨大な姿ではなく、大型犬程度の大きさ。

 しかし、大妖怪としての力は健在。その上結界まで使っている。

 

 今夜は満月ではない。

 しか妖怪化している。

 鍛錬と戦闘、そして幾度なる強化の結果、半妖時でも一時的な妖怪化が可能になったのだ。

 しかしそこは大妖怪に匹敵する神獣たち。しかも二対一。犬夜叉を徐々に追い詰める。

 剛羅が砲弾で弾幕を張って足止めと牽制、獣羅が弾幕の隙を縫って強襲しながら隙を伺う。

 

「捕まえたぜ獣野郎!」

 

 犬夜叉の背後を捉えた。

 タイミング的にも位置的にも絶好のポイント。

 このまま直撃するかと思いきや…。

 

『かかったな!』

「ぐあッ!?」

 

 突如、青い結界が獣羅を殴り飛ばした。

 前世でも多様していた結界による打撃。

 大したダメージにはならないが問題ない。

 目的は殴り飛ばす事であってダメージを与える事ではないのだから。

 

 殴り飛ばされた先は剛羅の放った砲弾。

 その着弾点へと殴り飛ばして誘導したのだ。

 しかも、他の砲弾も結界によって横からビヤホールのように弾かれたり、跳ね返されて追加されている。

 

「ぐああああああ!!?」

 

 次々と砲弾が獣羅に命中。

 集中砲火された獣羅は強烈な光の爆発に覆われる。

 ソレに耐える中、犬夜叉が巨大な大顎を開いて噛みついた。

 

 ただの噛みつきではない。

 犬夜叉は妖怪の急所にして力の源である妖穴を斬る技、妖穴斬りを習得している。

 当然、神喰牙同様に妖気を食らう性質がある己の牙でも使用可。

 犬夜叉はその牙で獣羅の妖穴を咬み砕いた。しかも、たっぷり溜めた毒を注入しながら。

 

『ダメ押しだ!』

 

 更に覇界を展開。

 噛みつかれて身動きが取れない獣羅は、直に覇界を浴びることになった。

 

 全盛期とほぼ同じ威力の覇界。

 今夜は新月でない上に人間化もしていない。

 しかし鍛錬と戦闘の結果、半妖時でも全盛期とほぼ同じぐらい結界を使るようになったのだ。

 

「―――ッ!!?」

 

 連続大ダメージ

 剛羅の砲弾の集中砲火、犬夜叉の牙による妖穴斬り、全盛期クラスの覇界、最後に毒。

 これらのダメージを一気に受けた獣羅。

 ソレに耐えきれず彼は塵となり、犬夜叉に吸収された。

 

「兄者あああああ!!!」

 

 犬夜叉に突撃する剛羅。

 兄を人やられた怒りを表すかのように、砲撃の威力を強める。

 しかしそれらは犬夜叉の覇界によって防がれ、中には跳ね返された。

 

「ぐおッ!?」

 

 跳ね返った砲弾を受けて怯む剛羅。

 そのせいで口を大きく開けてしまい、その中に犬夜叉は飛び込む。

 

 大型犬サイズから小型犬サイズへ。

 本性を顕す事で巨大化するのを応用し、逆に縮小化。

 おかげですんなりと体内へ侵入することが出来た。

 

「グおおおおおお!!?」

 

 剛羅の腹の中で思いっきり暴れ始めた。

 覇界を纏った状態で爆走しながら、手あたり次第に毒牙で咬み千切りまくる。

 更に妖気を暴発させ、棒結界で適当な部分を貫き、滅茶苦茶に暴れまくる。

 

 城や要塞を落とすのは中から。

 古来より決まったやり方である。

 まあ、火力で無理やり落とす事はこの時代でも出来るのだが。 

 

「―――ッ!!?」

 

 内部から紫色の暴発。

 トドメの妖呪合一・陰陽茈破。

 口から放たれたソレは剛羅の体内で大爆発した。

 耐えきれず剛羅は腹の中から弾け、海に肉片と甲羅の残骸をぶちまける。

 

「あと二人…」

 

 獣の状態で夜の空を駆ける。

 結界を足場にして疾走し、次の獲物の元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 蓬莱島の浜側。

 いつもなら村が死んでいるかのように静かなのだが、今晩は違っていた。

 灼熱の炎が燃え盛り、極寒の吹雪が吹き荒れる。

 大音量の雷鳴が轟き、強烈な暴風が吹き荒れる。

 犬夜叉、龍羅と凶羅。この三人がこの地獄を造り上げた。

 

 上陸したと同時、犬夜叉は残りの四闘神と遭遇した。

 両者は出会った瞬間に戦闘開始。言葉を交わす前に互いを攻撃し始める。

 

 犬夜叉は半妖体に戻りながら神喰牙を氷の大刀に変え、吹雪を放つ。

 龍羅は愛刀である風刃牙と雷刃牙を抜刀して雷と嵐を放つ。

 凶羅は炎の渦や鳥の形をした炎、灼熱鳥を放つ。

 

 結果出来上がったのがこの地獄。

 互いの技が周囲を破壊し、その跡を刻み込む。

 

「なかなかやるな!久々に楽しいぜ!」

「やりますね犬夜叉様。流石は犬の大将の息子」

 

 二人とも犬夜叉を賞賛する。

 原作では取るに足らない半妖扱いしていた彼を。

 

「氷槍破!」

 

 犬夜叉が無数の氷の槍を放つ。

 神喰牙・氷麗。

 氷妖怪を食らい続け得た能力を組み合わせ得た形態。

 要するに烈火の氷バージョン。

 今回、犬夜叉はこの形態を多様している。

 

「灼熱炎壁」

 

 氷撃を防ぐ凶羅。

 炎の障壁によって氷を解かすが、冷気によって炎も消え去った。

 

「天龍迅雷!」

 

 龍羅が雷刃牙を天に翳し雷撃を落とす。

 覇界で防ぐ犬夜叉。むしろソレを龍羅に跳ね返した。

 

 戦いはより苛烈に、より激化していく。

 炎と熱気が、雷と風が、氷と冷気が。

 互いの攻撃がぶつかり合い、互いの気がより苛烈になっていく。

 

「大灼熱業火!」

「!?バカ、連携を崩すな!」

 

 凶羅が特大の炎を放つ。

 最高大出力。彼が出せる最強の炎。

 空を焼き、地を嘗め回す程の大出力かつ巨大な炎。

 ソレが雪崩や津波のように犬夜叉を飲み込む…。

 

「赫灼激流破!」

 

 神喰牙から業火と暴風が放たれる。

 凶羅のソレを上回る規模のソレは、大灼熱業火を飲み込んで凶羅へと返された。

 

 赫灼激流破。

 不知火の状態で放つ激流破。

 犬夜叉の妖力波ではなく、炎と熱風によって敵の攻撃を押し返す技である。

 不知火が炎を操る刀である以上、炎の方が飲み込んで返しやすい。

 どうせ返すなら大出力がいい。犬夜叉は凶羅が最高出力を出すのを狙っていたのだ。

 

「凶羅!? テメエ!」

 

 龍羅が風刃牙と雷刃牙で切り掛かる。

 対する犬夜叉は神喰牙を不知火から接近戦に特化したものに変えて迎え撃つ。

 

 神喰牙・絶影。

 スピードに特化した形態。

 特殊な技を使えなくなるが、その分の妖力がスピードに変換される。

 パワーはそれほど要らない。何故なら、覇界という最強の盾があるのだから。

 

「(クソ、コイツの結界が鬱陶しい!コレのせいでコイツは攻撃に全振りしやがる!)」

 

 相手の攻撃を跳ね返し、直接触れると消し飛ばされる結界。

 結界自体も頑強で、自身の攻撃は素通りするのだ。

 相手にとっては厄介極まりない。

 

 防御のみに集中する龍羅。

 風刃牙と雷刃牙を構え、地龍風隠で風の結界を張る。

 従来の地龍風隠と違い、雷刃牙で結界の防御力を高めている。

 犬夜叉に行動を誘導されていたと知らずに。

 

「神喰牙・覇界!」

 

 犬夜叉の神喰牙が龍羅を切り裂く。

 青白い呪力の光を放つ神喰牙・覇界。

 神喰牙に纏わせる事で切断のみに特化させた形態。

 その威力はあらゆる形態の中でもトップの威力である。

 

「―――ッ!!?」

 

 龍羅に一太刀浴びせた。

 強化された地龍風隠を切り裂き、風刃牙と雷刃牙の防御を突破して。

 妖穴斬りまでは達成できなかったが、龍羅の身体を深々と切り裂いた。

 

 追撃を仕掛ける犬夜叉。

 今度こそ妖穴を斬ろうと神喰牙を掲げた瞬間、死角から炎が飛んできた。

 凶羅の炎。赫灼激流破と自身の最大出力の炎で大ダメージを受けたが、まだ彼は倒れていなかった。

 

 凶羅の攻撃を防ぐ犬夜叉

 神喰牙を覆う覇界を自身に戻す。

 続けて、龍羅と凶羅の足止めを開始した。

 

「結!封!」

 

 龍羅と凶羅を結界で覆う。

 同時に二人、しかも多重結界。

 前世でもあまりやらなかった高等テク。

 そのまま二人を封印しようとしたが…。

 

「な、なんのこれきし…!」

「なめんじゃねえぞ!」

 

 耐える龍羅と凶羅。

 前世でもこのやり方で大妖を倒してきた。

 だが、この二体には通じなかった。

 しかしソレで良い。

 今の目的は封印ではなく足止めなのだから。

 

「陰陽茈破!」

 

 放たれる極大の紫電。

 呪力と妖力、人間の力と妖怪の力。

 二つの力が織り成す破壊のエネルギー波が二人の妖怪を吞み込んだ。

 

「「―――ッ!!?」」

 

 消滅する龍羅と凶羅。

 犬夜叉は天穴の要領でブラックホールのようなものを形成し、塵と化した二人の残骸を神喰牙に食わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 龍羅が本性を顕した。

 仏像などで見る阿修羅のような姿。

 倒された四闘神たちの力を取り込んで復活した姿。

 顔の両側に凶羅と剛羅の顔、両肩から龍のような手が生え、剛羅の甲羅のような鎧を着ている。

 

 四闘神全員の能力を発揮。

 剛羅のように光弾を放ち、凶羅のように炎を放ち、龍羅のように雷や風を操り、獣羅のように凄まじい身体能力を発揮。それらが組み合わさって凄まじい戦闘力を編み出していた。

 

 犬夜叉もソレに対抗する。

 覇界で防御し、神喰牙で応戦するが…。

 

「(形態変化が間に合わないか。厄介だな)」

 

 神喰牙の売りは形態変化によって相手にメタを張れる事。

 あらゆる戦況であらゆる手段を取り、最善の手を打てる事。多様な戦略を編み出せることである。

 だが、形態変化という過程を挟む以上、多彩かつ強力な敵には対応しきれない。

 よってここは通常とは異なる形態変化が望まれる。

 

「あんまり使いたくなかったが仕方ない」

 

 神喰牙が変わった。

 牙のような大刀から柄頭に紫色の宝玉がある野太刀のような刀へと。

 神喰牙・叢雲。

 父親から課せられた試練の一つ、叢雲牙の破壊。

 犬夜叉は見事にそれを達成し、その力を神喰牙に継承させたのだ。

 

 神喰牙を掲げる。

 途端に起こる力の流れ。

 邪気、妖気、瘴気。三つの力が。

 剣先から渦巻き、黒い龍となって纏わり付く。

 

「な、なんだその剣は!?」

 

 神喰牙から放たれる異様かつ強大な力に初めて恐れる龍羅。

 この神喰牙はソレ程の力を有しているのだ。

 しかし逃げるわけにはいかない。

 四闘神としてのプライドが許さない。

 ソレを知ってか犬夜叉は彼を挑発する。

 

「勝負だ。俺とお前の牙、どっちが上かケリ付けようぜ」

「ッ!? 上等だ!」

 

 必殺技の構えに入る両者。

 渾身の力と気を込め、迅速に繰り出す。

 

「天龍迅雷旋風!」

「煉凶灼熱炎!」

「獣剛衝壊波!」

 

 犬夜叉に向かって各々の部位が必殺技を繰り出す。

 龍羅の剣が、凶羅の口や龍の両腕から、獣羅と剛羅の口や鎧の突起物から。

 ありとあらゆる部位から、各々の必殺技が撃ち出される。

 

 島ごと破壊するかの勢い。

 明らかに人間サイズの相手には過剰な火力。

 だが問題ない。なにせ犬夜叉もコレを上回る攻撃をするのだから。

 

「獄龍破」

 

 瞬間、世界が闇に覆われた。

 何もかも飲み込み、破壊し尽くす黒い気の奔流。

 ソレは敵の必殺技を押しのけ、破壊しながら龍羅へと向かった。

 

「「「―――ッ!!?」」」

 

 悲鳴をあげることなく飲み込まれる龍羅。

 闇が晴れたころには、そこには何も無くなっていた。

 

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