「ええ、まじかよ」
俺の名前は
現在は、実家の世話になりながら大学に通い、その裏で就職活動に熱を入れている。
そんな俺の日課、というか日常は朝目が覚めたら、歯を磨きながらTwitterを眺めることだ。
そんな日常は今日も変わらず、俺はいつものようにTwitterを開いた。
そんな時、必ず目に入るトレンド欄に、ありえないものが目に入った。
『艦娘の建造法』
艦娘。俺が四つの頃まで続いた深海棲艦との大戦争で活躍した人類の最終兵器。
義務教育で必ず習うことだ。
中でも、戦争で大活躍した艦娘、戦艦と呼ばれる”大和”や”武蔵”や”長門”は全男子が憧れる艦娘だ。
曰く、艦娘は人ではなく、人によって作られる存在らしい。
そして、艦娘はその戦闘力による危険性と、死亡時に新たな深海棲艦となる特性を考慮され、現在はすべて廃棄され、建造法も秘匿されているはずだ。
そのはずなのに、目の前の画面には現代では絶対に見ないような武装をつけた少女が自己紹介をしている。
その映像に、心が動いた。
いつかどこかに置いてきていた、ロマンというにも幼すぎる感情だ。
どうせ、ただのガセ。
期待しても損するだけ。
そう自分に言い聞かせながら、トレンドから検索する。
『これマ?』
『流石にCGでしょ』
『これ本当だったらめちゃくちゃ夢あると思う』
『違法じゃね』
『大丈夫?投稿主消されない?』
反応で言えば、信じてない奴が半分、半信半疑が三割、信じてないが茶化しているやつが二割といったところだろうか。
俺自身、信じてはいない。
個人的に、艦娘という存在はとてもロマンがあるとは思う、でもそれと同時にとても危険だとも思う。実際、俺は艦娘全廃棄に賛成派だ。
だがしかし、興味は尽きない。
googleでは検索予測に真っ先に『艦娘の建造法』が出る。
検索して、真っ先に出てくる記事は、民放のニュースだ。
Twitterでも話題になるくらいだ、すでに記事は例のニュースに染められている。
いつの間にか俺は、歯を磨く手を止めてニュースの記事を読み漁っていた。
それをやめたのは、時刻が10時になる頃だった。
「やばっ!」
今から出ればギリギリ昼の講義に出られると思い、俺は急いで口をすすいで顔を洗った。
すぐに着替えて、最低限の荷物を持つ。食卓に出ている朝食を冷蔵庫に放り込み、急いで駅に向かった。
駅につき、電車に乗り、降りて大学に向かう道の途中でおにぎりを買い食いする。
そして大学に到着した。
俺は、あまり友達が多い方ではない。だがそんな俺にも一人だけ友達と言える人がいる。
それが彼女、
「ちょっと巡!今朝のニュース見た?」
「え、あー斉藤純の不倫報道?」
「誰それ!そうじゃなくてこれ、艦娘の建造法がわかったってやつ!」
「あーそれね」
途中渾身の爆笑ジョークで茶々を入れながらも、本題へ進む。
「ほら見て!武装は単純だけどこれは吹雪型2番艦の白雪、次のこの子は睦月型10番艦の三日月!
教科書の写真よりかわいいね、それにこの子達新品だよ!」
「新品って、なんでそんなことわかんの?」
「だって建造直後のモデルと特徴が全く同じ、艦娘は同じ艦でも時間が経てばそれぞれに個性が出てくるからね!見た目とか性格とか、趣味とかにも」
そう言って輝いた目でスマホの画面を見せつけ、俺に力説してくる。
好きな話をする時に周りが見えなくなるのは全オタク共通なのだろう。
でも、それが俺にはありがたい。
俺は、人と新しく関係を作るのが苦手だ。そもそも彼女と友達になったのだって、たまたま同じ艦娘関連の小論文を書こうとしたときにたまたま少し話をして、そのときもまた熱弁してきた静日にへーとかほーとか言ってただけなのだ。
だけど、そうするだけで彼女は嬉しそうに話を続ける。
まるで俺しかそういう相手がいないかのように。
それが俺の自尊心と孤独感を満たしてくれる。
そして俺もたまに、こうして聞き返すのだ。
「じゃあさ、静日は本物の艦娘に会ってみたい?」
何気ない質問だった。
それに対して彼女も、何気なく、それでいて熱のこもった声でこういった。
「当たり前だろ!」