なんとか週一目標を継続できてます……。
『ここは……』
『優樹……目が覚めたのね……』
『……姉……さん』
『詳しい事は、朝に話すから……今はまだ、眠りなさい』
『ね……さん……』
『ごめんなさい……優樹……』
『なん……よ……ね……さ…』
僕の意識は深い闇へ落ちていった。
◆◇
「……なんでまたこの夢なんだよ……」
休日早々、最悪の目覚めに僕は顔を顰めた
あの時の──僕が記憶を失ったと伝えられた時の出来事は、今でも時々夢に見ることがある
毎回目が覚めるとこから始まって、姉さんが謝って終わる夢だ……。
あの時の姉さんの悲しみに満ちた顔は今でも忘れる事が出来ない
姉さんがあんな顔をしたのは──父さん達が死んだ時以来だ
そして、何故あの時謝ったのか、今でも聞けていない
「そういえば……なんかお腹に違和感が──っ!?」
違和感がした方に顔を向けてみると、そこには──
「千景!お前、いつの間に……」
僕の布団の上にいたのは、白猫の千景であった
「みゃぁ……」
うるさいなぁと言わんばかりの千景の欠伸を聞きながら、僕は千景の頭を撫でた
「可愛いなぁ……って、なんで部屋に……あっ、窓閉め忘れた……」
原因は何かと辺りを見渡してみると、ベッドに近い窓が開いていたから、ここから入ったんだろうな。でもいつの間に……
「とりあえず、僕は起きるから」
「ふにゃぁ〜」
私も起きると言わんばかりに、千景は大きな伸びをしてベッドから飛び降りた
◆◇
「みゃあ〜」
「はいはい、ご飯だよ」
「にゃん」
千景が入り浸るようになってから、猫の餌を買っておいて良かったなぁ……さてと、僕も朝ごはんどうしようかな
「確か……ご飯と納得と卵が残ってるしそれにしよっかな」
この組み合わせは筋肉の為によく食べてるメニューの1つだ。それとプロテインもあれば朝は完璧だ
「今日は……悩み相談だっけか……どうしてこうなったんだろ」
勇者部の活動の一環に、校内の悩み相談というものがある
提案した風先輩曰く──『校内に迷える子羊達の悩みを聞くのも勇者の活動よ!』
だそうだ。
仕組みはこうだ。まず、勇者部にお悩み相談をしたいと依頼をする。そして勇者部員──主に僕と風先輩が讃州中学の生徒の悩みを聞いて出来る限りの助言をするというものだ。とは言ってもまだ出来たばかりだし僕は上手く相談に乗れてるかわからないのでとても不安だ。東郷さんはとても良いと誉めてくれたが……。こういうのはどちらかと言えば風先輩の専門な気がする。
「まぁ……休日の活動のみだし、人数もそこまでいないからなんとかなるか……」
「……どうか、今日の依頼は筋肉関係だけでありますように…‼︎」
厄介な依頼が飛んでこないことを神棚に手を合わせても祈った
「じゃあ、学校行くか……千景、僕は部活に行くから、外出るなり寝るなり好きに過ごしててね!」
「みゃ〜ん」
◆◇
「おはようございまーす」
「おーおはよー優樹」
「おはようございます優樹さん」
今日は僕が一番かと思ったけど、それより早くに来ていた犬吠埼姉妹が出迎えてくれた。
「風先輩、友奈と東郷さんは?」
「友奈はまだ来てないわね。東郷は家の都合でお休み」
「なるほど……樹ちゃんは占い?」
なんとなく樹ちゃんの方を見てみると、机の上にカードを並べていた。確か──タロットだっけ
「は、はい!今日の依頼では無いんですが……何もしてないのもアレなので、せめて今日の事を占っておこうかと思いまして…!」
「なるほどね、それなら僕の依頼がどうなるか占ってもらっても良いかな?」
「は、はい!頑張ります!」
そう言うと、樹ちゃんはカードを切り始めた
「えー……優樹さんは──」
僕はタロットの事はよく分からないが、樹ちゃん曰く特に問題は無いそうだ。
「ありがとう樹ちゃん!」
「ひ、ひゃい…‼︎」
「ちょっと優樹!姉の前でイチャコラしない!」
「してませんよ……」
ただ占ってもらっただけなのに……
「お、お姉ちゃん……!」
「おはようございます‼︎ 結城友奈入ります!」
「友奈おはよー」
「おはようございます友奈さん」
「遅いわよ友奈」
「ごめんなさい風先輩、寝坊しちゃいました」
「まぁ、間に合ってるから良いけど…」
何はともあれ、これで今日は不在の東郷さん以外全員揃ったな
「そんじゃあ全員揃った事だし依頼行くわよ!」
『はい!』
◆◇
「失礼します」
今日の依頼者である男子生徒が入室した。
「すみません安芸先輩……俺の相談なんか聞いてもらって……」
先輩って事は、樹ちゃんと同じ1年生か
「いえいえ、勇者部のお悩み相談は大抵のことは聞くのがポリシーなので」
ちなみにこのポリシーは勇者部全員で決めたことだ。風先輩の提案で始まったが、どこまで相談を聞くかという話になった時に友奈と僕がなるべくと言ってみたら採用された。
今のところ変な相談は無い。恋愛相談はほぼ風先輩が担当してるらしいし、僕が担当する事は無いと思ってる。
「じゃあ、相談なんですが……これ、ちょっと他言するのは勘弁していただけると……」
「もちろん他言なんてしないよ。大体のことなら相談に乗れると思うけど、ただ僕は上手いこと言えるかわからないけどね……」
あはは、と誤魔化すように笑った
「あの……では、はい…。実は俺……」
男子生徒は顔を赤らめながら話を切り出した
「──同じクラスの犬吠埼樹さんの事が気になっているんです」
この手の話は担当する事が無いと思ってた時期が僕にもありました。
そして僕は今すぐこの場から逃げ出したくなった。
いやちょっと待って……これ僕の手に負えないよ……いやでも、依頼だからちゃんと話を聞いて判断しなければ……
「えっと……マジで?」
「は、はい……」
男子生徒は更に赤面して俯いた。そっかぁ……マジだったよ……!でもどうしようなこれ……万が一風先輩にバレたらヤバい案件じゃんか…!この男子生徒はともかく情報を隠した僕がヤバい……
「そっか………うん、それで樹ちゃんの事が気になるだっけ。これって恋愛相談って事で良いのかな…?」
依頼には真剣に取り組むのが僕のポリシーだ。僕にとって勇者部の活動は筋トレと同じくらい大事だから
「あ、はい……えと、確かに俺は犬吠埼さんの事が気になっています。ですが……正直、俺なんかじゃ高嶺の花ですし……。それで……どうすれば、この気持ちを諦める事が出来るんだろうって……」
諦める……か。さて、どうやって答えれば良いんだろうか
諦めるな、なんて無責任な事は論外。どう諦めるかか……
「えっとね……質問を質問で返すようで申し訳ないんだけど、どうして樹ちゃんを諦めようって思ったのかな」
「え……? そりゃ俺なんかじゃ手の届かないような高嶺の花ですし……それに……まだ確信は無いんですが、多分犬吠埼さん、誰か好きな人がいると思います……だから、俺には叶わぬ恋だなって……」
「え?」
あまりにも予想外な答えに僕は度肝を抜かれた。樹ちゃん、誰かそういう人がいるって⁉︎ ヤバいよ!ますます風先輩に知られるわけにはいかなくなっちゃったよ……!もしもあの人の耳に入ろうものなら間違いなく樹ちゃんが問い詰められるよ……
「今の話本当?」
「は、はい……あの、これも内緒に…」
「もちろんだよ。未来永劫、墓まで持ってくよ……」
「そこまでですか……ふふっ……」
「え?僕、何かおかしな事言った?」
秘密を守る事を誓っただけなんだけどなぁ……男子生徒が急に笑い出した
「い、いえ……ふふっ……あっはっはっは!!」
笑い声は、部屋中に響き渡った
「あっはっは……はぁ……すみません安芸先輩、先輩に話聞いてもらったら吹っ切れました!」
相談者はひとしきり笑った後、そう言った。
「そう?あまり相談に乗れてなかった気がするけど、解決したかな?」
「はい!」
「なら良かった。君にもまた春が来る事を祈ってるよ」
「ありがとうございます!では安芸先輩、失礼します!」
「また悩み事があったら勇者部までよろしくね!」
相談者は退室した。本人は吹っ切れたって言ってたからこれで良かったのかな……。
「……それにしても、樹ちゃんがねぇ…」
誰かにそういう感情を抱いてるとは初耳だった。
というか仮に樹ちゃんに彼氏が出来ても風先輩が見定める!みたいな事言い出しそうだな……。
「とりあえず今日の相談者は彼だけみたいだし、部室戻るか」
風先輩も悩み相談の方だし、誰も居なかったら友奈の助っ人見に行くか
◆◇
「良い先輩だったなぁ……」
僕はさっきの会話を思い出しながら呟いた
犬吠埼さんは多分好きな人がいる。それはきっと──安芸先輩なんだろう。
僕は勇者部の人たちと大した接点は無い。犬吠埼さんもただのクラスメイトってだけだし、僕が一方的に気になる存在になったってだけのことだ。だけど、いつだったかな……偶然、誰かを思う顔をしてたのを目撃した事があった
クラスでは彼女に密かな想いを寄せる男は多かったけど、肝心の彼女はそういう仲の異性の生徒は居ない。
ならやっぱり、そういう事だろう……。僕の初恋は、簡単に打ち砕かれた。でも、安芸先輩だったら納得だな
相談を真剣に聞いてくれるし、見た目は中性的かもしれないけど、笑顔がカッコよかった。犬吠埼さんの想い人があの人だったら、僕も潔く諦める事が出来そうだ
「……あはは、納得したのに……勝手に惚れて勝手に諦めたってのに……キッツイなぁ……」
この気持ちは、多分一生忘れられないな……。
──俺も安芸先輩みたいな……安芸先輩みたいに優しい筋肉マンを目指そうかな…!
◆◇
お悩み相談室から約二週間──僕たちが勇者に選ばれてから1ヶ月半ほど経った
神樹様が作った防衛結界…「樹海」の中で人類の敵「バーテックス」を迎え撃つのが勇者のお役目
風先輩曰く敵は全部で12体だそうだ。12体のバーテックスを殲滅すれば、僕たちのお役目は終わる
だから──頑張らないと!!
「きた!」
「あれが5体目」
5体目のバーテックスは物騒な山羊の角のようなものを4本地に垂らした山羊座──カプリコーンバーテックスだ
「落ち着いて、ここで迎撃するわよ」
たまには斬撃で攻撃を試してみるか……
僕はオーラを頭に浮かんだままにイメージした
「優樹さん、その刀は」
「斬撃を試してみようと思ってね頭に浮かんだのを出してみたんだ」
なんでかな…凄く手に馴染む……日本刀の経験は無いはずなんだけど
「1ヶ月ぶりだからちゃんと出来るかな……」
「大丈夫だよ!なせば大抵なんとかなる!」
「まずは一番槍!」
腰を深く落とし、居合いの構えで思い切り地面を蹴った
「よし!斬った!」
高速で踏み込んだ一撃は、4本ある角のようなものを1本切断した。
「おお!」
「凄いです優樹さん!」
「ナイス優樹!このまま──」
もう一度地面を蹴ろうとすると、上空から何かが降り注ぎ爆発した
「!?」
「東郷さんが!?」
「……私じゃない」
「……⁉︎ じゃあ、一体誰が!」
辺りを見渡すと、赤い勇者服を纏った少女が佇んでいた
「フン!チョロい!」
「封印開始!思い知れ、私の力!」
少女はそのまま、武器であろう刀を投擲し、封印の儀を開始した
バーテックスから御霊が出たが、そこからガスが噴出された
「ちょっ……何これ、ガス⁉︎」
「けほっけほっ」
「見えないよ…!」
「ここだ……!」
「そんなもの気配で見えてるのよ!」
僕が御霊を斬ろうと踏み込む刹那、赤い勇者は御霊を真っ二つにした
「殲……滅!」
『諸行無常』
「はぁ」
「えっと……どなた?」
居合いの構えを解き、目の前の少女に尋ねた
「優樹君」
「友奈、みんな」
全員が合流すると、少女はため息をつきながら口を開いた
「揃いも揃って、ぼーっとした顔してるのね」
「こんな連中が、神樹様に選ばれた勇者ですって?」
「……本当なの?ハンッ」
「なんだって…?」
「な、なによ!?」
「いや、なんでも。そんで、君は誰?」
「あたしは三好夏凜」
「大赦から派遣された正真正銘正式な勇者」
「つまりあなた達は用済み」
「はい、お疲れ様でした──」
赤い彗星の如く現れた三好夏凜と名乗る少女 勇者部へ入部し、その瞳は何を見る
【次回】素敵な出会い