「つまりあなた達は用済み」
「はい、お疲れ様でした──」
「……それは一体、どういう了見だい?」
いきなりやってきたと思いきや用済みと言われちゃ、こっちも黙ってられないよね。
「な、なによ……」
「それってさ、君1人で残りのヤツらを始末──」
「あ、あの!大赦から派遣されたって事は、これから一緒に戦うって事ですよね?」
「樹ちゃん」
「ま、まぁそうなるわね!でも勘違いしないでちょうだい!アレくらい完成型勇者の私が殲滅してみせるわ!」
樹ちゃんの介入により、その場は落ち着いた
◆◇
「戻ってきた…か」
「なんなのよアイツ!いきなり出てきたと思ったらめちゃくちゃ言って!!」
「お姉ちゃん落ち着いて……」
「でも、新しい仲間って考えるとワクワクしますね!」
「そうね友奈ちゃん」
「樹ちゃん、さっき割り込んでくれてありがとうね」
あの時、樹ちゃんが割り込んでくれなかったら、僕は何を言い出すか自分でもわからなかった…。だから本当に助かった
「い、いえ!なんだか不穏な空気になりそうでしたので!」
「あはは……でも本当にありがとう、もう落ち着いたから大丈夫だよ」
「さっきの優樹怖い顔してたわよ」
「えっ、本当ですか」
そんな顔しちゃってたのか僕は……って、そういえば彼女、三好って名乗ってたけど────いや、まさかね……
「優樹のあんな顔初めて見たわ」
「お恥ずかしい…」
「優樹君も怒ることあるんだね」
「お恥ずかしい…」
僕は未熟者だから、この事に触れられたらこれしか言えないよ……
◆◇
「さて……帰るか」
なんとなく有明浜に行きたい気分だった。
帰りに寄ってくか
「んー、走っていくか」
トレーニングも兼ねてやるか
◆◇
「ハァ……ハァ……着いたぁ」
学校から有明浜まではそこそこの距離があった。ゴミ拾いで来ることはあったけど、走ってここまで来るのは久しぶりな気がする──ん?
「あれは……」
息を整えて砂浜の方を見ると、そこには樹海で僕たちを用済みと言った少女が、2本の木刀を持ち素振りをしていた。
「……綺麗だ」
僕はその光景に見惚れていた
剣の振り方を見ていると、何かの型を繰り返しているようだった
「速い……そして綺麗だ……」
僕は、もう少し近くで見ようと歩み寄った
「……何?」
「おっと、怪しいものじゃないよ?」
いつの間にか近づき過ぎたようだ。彼女に木刀を向けられ、僕は両手を上げながら敵意が無いことを示した。
「誰かと思ったら、あの時の……」
彼女も僕の事を覚えていたらしい。良かった、僕なんか眼中にも無いと思ってたけど
「……なんでここに居るのよ……」
彼女の僕を見る目は、怪しいものを見るような目だった……
「そう警戒しないでよ。ただの寄り道」
「……アンタあの時、剣を使ってたわね」
「そうだね」
「……」
「おっと……」
木刀を投げ渡された
「実力を見せなさい」
「は?」
「私と手合わせしろって言ってるのよ!」
そういう事か。まぁ、僕はただの筋肉だけどやれるだけやってみるか
「良いよ。でも、もしも僕が勝ったら──友奈達の事をもう少し見てやってくれないか」
「は?どういう意味よ」
「君は僕たちは用済みだと言ったね」
「そ、それがどうしたのよ」
これは筋肉ジョーク無しの真面目な話だ。
「彼女達は決して弱くない。君が来るまでの4体は僕たちで撃破してきたんだ」
「だから、僕はともかく彼女達を認めてあげてほしいんだ。頼む」
そう言って僕は、頭を下げた
「ちょっ……!頭下げてんじゃないわよ!わかった!わかったから!……調子狂うわね…」
「まぁ、次に会うのはいつになるかわからないけど、その為にも勝つよ」
「上等じゃない!」
「じゃあ、やろうか」
互いに構えを取り、駆け出した
「……速い」
二刀流での素振りを見てた時にも思ったが、見るのと実際に体験するのは全く違う──1本になっても速い……受けるので精一杯だ
「そんなモノなの!?異例の男の勇者ってのは!!」
「速いねぇ……ヨイショぉ!!」
受けの合間に一撃が精一杯だけど、どこか隙があるはずだ……間隙をついて、木刀を弾き飛ばす…!
「せやぁ!」
僕に目掛け上から振り下ろされた一撃を全力で弾き飛ばした
「僕の勝ちだね」
「ッ……!」
木刀を弾き飛ばし、首へ寸止めして勝利を宣言すると、彼女は悔しそうに僕を睨みつけた
「……次は絶対に負けない……!!」
「次があるのか……。あっ、思い切り弾いちゃったけど手、大丈夫?」
「このくらい平気よ」
「なら良かった。あと、僕が勝ったから──」
「わかってるわよ」
◆◇
「──今日から皆さんのクラスメイトになる三好夏凜さんです」
「三好さんは両親の仕事の都合でこちらに越してきたのよね」
「…はい」
「編入試験もほぼ満点だったなんて凄いわ」
「いえ…」
次に会うのは樹海だと思っていたけど、まさかこんなに早く出会うとは……だって昨日の今日だよ……?
あんな事言った翌日にこれだもん……。僕は顔から火が出そうだよ……
◆◇
「まさか昨日の今日で会うとはね……僕は君が転校してくるって聞いてなかったけど」
「き、聞かれなかったからよ!」
「うん?昨日なんかあったの?」
「いえ風先輩、特に無いです」
「べ、別に何も無いわよ!」
「息ぴったりだ」
「と、とにかく!私が来たからには、完全勝利よ!」
「なぜ、このタイミングで? 最初からいてくれても良かったんじゃ……」
「私だってすぐ出撃したかったわよ!でも『大赦』は二重三重に万全を期している 最強の勇者を完成させる為にね」
「最強の勇者」
「そ。あなた達先遣隊の戦闘データを得て完璧に調整された完成型勇者 それが私よ!」
「それに私は、戦闘のための訓練を長年受けてるわ!」
「そうなんだ、よろしくね夏凜ちゃん!」
「いっ、いきなり下の名前?」
「嫌だった?」
「……名前なんて好きに呼べばいいわ」
「ようこそ勇者部へ」
「ちょ、部員になるなんて一言も」
「違うの?」
「違うわよ!私はあくまで──」
「三好さん、昨日のこと覚えてる?」
僕は三好さんだけに聞こえるように小声で聞いた
「っ……わかったわよ……。私、三好夏凜は勇者部に入部します」
良かった、覚えててくれたようだ
友奈たちを見てやってほしい──その心は、監視などという立場ではなく、友奈たちを仲間という立場で見てほしかったからだ。最初こそ用済みなどと結構な言われようだったが、剣を交えて少し話してみると、プライドは高いけどただのツンデレという印象だった
「優樹、やっぱり何かあったでしょ?」
「ありませんよ」
あくまで誤魔化すつもりだ
「とりあえず、何をすれば……ってぎゃーーー!!!」
『諸行無常』
何事かと目線の先を見ると、三好さんの精霊が牛鬼にかじられていた。精霊だけど喋ったり涙流したり感情豊かだな
「な、な、な、何してんのよこのくされチキショー‼︎」
『外道め!』
「外道じゃないよ牛鬼だよ!ちょっと食いしん坊君なんだよね」
牛鬼はすぐ他の精霊に噛み付くんだよなぁ……僕の古烏もよく頭つつくけど
「じ、自分の精霊のしつけくらいしなさいよ!」
「それが勝手に出ちゃうんだよね」
「はぁ?アンタの端末壊れてるんじゃないの⁉︎」
『外道め!』
「牛鬼にかじられてしまうからみんな精霊を出しておけないのよね」
「そういえば、この子喋れるんだね」
「ええ、私に相応しい強力な精霊よ」
「あっ、東郷さんと優樹君には3体いるんだよ」
「はい」
「ほいっと」
友奈に言われ、僕と東郷さんは精霊を具現化させた
「ちょっ、痛い痛い!」
いつもの事ではあるが、また古烏に頭をつつかれた
「優樹君またつつかれてる…」
牛鬼は古烏の事は、かじらないけどこうなるからあまり出したくないんだよね……
「まあ、精霊の事は置いておいて!三好さんっていう新たな仲間もできた事だし、頑張っていきましょう!」
「おっ、いい事言うわね優樹!うりうり」
「ちょっ、風先輩…!当たって……」
「お姉ちゃん……」
「あらあら」
「な、なによこれ……」
新しい部員が入ったからか、今日は一段と騒がしい。精霊達も出てきてまるで百鬼夜行だ
「そういえばさ、まだこっちに来たばっかなら、うどん食べに行かない?かめやって店が美味しいんだよ」
「わ、私は馴れ合うつもりはないわよ…!」
「あれ、もう帰るの?」
三好さんはカバンを取ると颯爽と部室を後にしてしまった
◆◇
「──夏凜ちゃんも一緒に来れば良かったのに」
「頑な感じな人ですね」
「心を開いてくれれば良い子だと思うんだけどねぇ…」
「フフフ…ああいうお堅いタイプは張り合いがいがあるわね」
「お姉ちゃん……」
「張り合う前提なんですね」
「あっ、そうだ」
「優樹、アンタあの子と何かあったでしょ」
「ングッ…!」
マズい、変なとこ入った…!
「ゲホッ……ゲホッ……!」
「だ、大丈夫!?」
「失礼しました……。で、なんでしたっけ」
一応とぼけようと試みた
「部室でのあの子と優樹見てたらさ、何かあったん?って思って」
「……昨日いろいろあったんですよ。詳しい事は言えませんが」
手合わせだけなら言っても良いんだけど、友奈たちの事をお願いしたのはね……流石に知られるわけにはいかない
「そう、優樹が言いたくないならあまり深くは聞かないわ」
「ありがとうございます」
◆◇
「ハァッ!!」
有明浜で、昨日みたいに剣を振る 確かに昨日は不覚を取った。でも、もう負けるつもりはない!!
「安芸優樹……次こそは勝つ!」
それから辺りが暗くなるまで剣を振り続けた
鍛錬で出た汗をタオルで拭い、大赦から支給されたマンションの部屋へ帰宅した
「いただきます」
コンビニ弁当とサプリさえあれば必要な栄養素は取れる。効率的だ
「安芸優樹……なんなのよ本当に……」
大赦からは結城友奈より勇者適正が高い歴代最高値の上、男の勇者だというイレギュラーとは聞いているけど……あのパワーは規格外だった。
悔しいけど、アイツに勝つなら力勝負じゃダメだ。スピードで攻めればあるいは……。
「……勇者部か」
本来なら馴れ合うつもりはなかった。ただ監視のためだった……でも、私は負けた
「確かに負けたけど、私は──」
悔しい気持ちは晴れぬまま、私は眠りについた
ゆゆゆ初めて見た時、夏凜ちゃんはデレたら可愛いだろって思いながら視聴してたら本当に可愛かった
樹ちゃんの歌の回書くの楽しみ(次の次以降と思われる)