安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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犬吠埼樹 参戦 今回は結構な難産でした()


夢見る美しさ

「ハァっ!ハァっ!」

 

遅れちゃうよ…‼︎ 絶対に待たせちゃってる…‼︎

 

なんでこんな時に私は…‼︎

 

「あっ……来ちゃってる……!」

 

「ん? おーい樹ちゃん!」

 

「す、すみません優樹さん!お待たせしまし──きゃっ!」

 

「おわっと…!セーフ……樹ちゃん大丈夫⁉︎ 怪我はない?」

 

はわわわ……いきなり優樹さんにご迷惑を……‼︎

 

「ひゃ、ひゃい……だいじょぶです……」

 

あわわわわ……!!わたしは……!!わたしは……!!

 

「樹ちゃん、大丈夫…?」

 

「は、はい……あの……お待たせしてすみません……」

 

私がそう言うと、優樹さんは笑顔で答えました。

 

「僕も今来たとこだからさ、待ってないよ。それより、樹ちゃんが転びそうになった時に怪我をしなくて良かったよ」

 

「優樹さん……」

 

優樹さんはやっぱり……笑顔が眩しくて……優しい人です。

やっぱり私は……そんな優樹さんの事が──

 

「じゃあ、行こっか」

 

「っ!は、はい!」

 

今日は優樹さんと特訓です…!

 

◆◇

 

事の始まりは数日前に遡る

 

「これは……ここ!」

 

「あーんもう!!ストーリーが思いつかない!」

 

「ふっ……風……先輩……ぬぅ……大変そうですね……」

 

「アンタはなんで逆立ちで腕立てしてるのよ……」

 

「最初はなんとなくだったけど、これ結構効くよ夏凛……!」

 

「あっそう……」

 

「そういえばにぼっしーちゃん!」

 

「ん?」

 

「ちょっと待って、それ私のこと?」

 

「いいじゃない可愛いぞ!」

 

「ゆるキャラみたいなあだ名つけるな!」

 

僕も可愛いと思うけどな。でもそれを言ったらきっと夏凛は、また怒っちゃうだろうから言葉にするのはやめておこう。

 

ちなみに今は各々が自由に動いてる。東郷さんはホームページの確認と強化、風先輩はこの前の夏凛の誕生日の後に友奈の鶴の一声によって決まった文化祭でやる演劇のシナリオ作成、友奈は春の勇者部活動の新聞に写真を貼り、夏凛はさっきまで猫探しのポスター制作をしていたが今はニボシを食べている。僕は風先輩の手伝いをしながら筋トレ。今日は逆立ちしながらの腕立てに挑戦中だが……これすっごくキツい……風先輩が座る腕立ての方がまだ楽だ。樹ちゃんは──ん?

 

「よいしょっと。樹ちゃんどうしたの?何か悩み事?」

 

「ハァー……」

 

「樹?どうしたのため息ついて 優樹になんかされた?」

 

「してませんよ?」

 

「されてないよ⁉︎」

 

風先輩酷いなぁ……。

 

「あのね…もうすぐ音楽で歌のテストがあるんだけど、上手く歌えるか不安で占ったんだけど…」

 

樹ちゃんの占いの結果を見ると、一番上に置かれていたタロットは死神だった。正位置っていうんだっけ…?

 

「死神の正位置 意味は破滅……終焉……」

 

不吉だ……。

 

「気にしすぎは良くないわよ」

 

「そうだよ!こういうのってもう一度占ったら全く別の結果が……ね!」

 

風先輩と友奈が樹ちゃんを慰め、樹ちゃんはもう一度占いを──死神の正位置……もう一度……もう一……もう……

 

「はぁぁぁー……」

 

よ、四連続で……死神……あまりの結果に僕はなんて声をかけたら良いのかわからなくなった。

 

「い、樹ちゃん……そ、そうだ……特訓しよう特訓……!」

 

僕は咄嗟に思いついた事を口にしてた。

 

「特訓……ですか?」

 

「それ良いじゃないの!」

 

頭を抱えてた風先輩が立ち上がって叫んだ。

そして、黒板に文字を書き始めた。

 

「ハイこれ!」

 

風先輩が書いたのは、今日の活動だった。樹ちゃんを歌のテストで合格させるか。

 

「優樹の一言で思いついたわ!勇者部の活動は困ってる人を助ける事。もちろんそれは部員も当てはまるわ!」

 

咄嗟の思いつきだったが、採用された。なら僕が出来るのは全力でサポートする事だ。勇者部部員として。樹ちゃんの先輩としてだ。

 

「歌が上手くなる方法かぁ」

 

「まずは歌声でα波が出せるようになれば勝ったも同然ね。良い音楽というのは、大抵α波で説明がつくの」

 

東郷さんはそう言いながら、両手で円を描くようにグルグルと回した。

α波……筋肉にも効果があるのかな……α波と筋トレで筋力増強!みたいな

 

「アルファ波…そうなんですか!」

 

「な訳ないでしょ!あと優樹も筋肉に効くのか試さない!」

 

樹ちゃんの言葉に夏凛のツッコミが炸裂した。そして僕の企みは打ち砕かれた。今度は家で試してみるか……。

 

「樹は一人で歌うと上手いんだけどね、人前で歌うのは緊張するってだけじゃないかな?」

 

「それなら習うより慣れろだね」

 

友奈の提案により、僕たちはカラオケへ

 

◆◇

 

『──』

 

「いえーい!みんなありがとう!」

 

トップバッターは風先輩だ。

いつも活発な風先輩らしい曲選で歌声も素敵だ──92点⁉︎

 

「風先輩上手ですね」

 

「へっへへ〜まぁね」

 

「そんじゃあ、2番手は優樹行ってみようか!」

 

え、

 

「──わかりました。」

 

真ん中くらいで歌おうと思ってたけど、指名されたならやるしかないな……。じゃあ、アレ行くか。

 

『──』

 

僕は最近聞くようになった曲を歌った。確か…大切な人達のために命をかけて戦った少女へ送る歌だっけ…?広瀬君がオススメしてくれた時に教えてくれたんだよね。僕はこの曲がとても好きだ。

 

──92点 風先輩と同じだ。

 

「……ゆ゛うきぐん……!良い歌声だっだよ……!」

 

「えっ、ちょっ、友奈…!」

 

歌い終わり席へ座ると、友奈が泣きながら迫ってきた。えっと……あったあった……

 

「友奈、ハンカチ……これで涙拭いて…」

 

「グスっ……優樹くんありがとう……」

 

「私……優樹さんの歌声初めて聞きましたけど、すごく綺麗でした…!」

 

「ありがとう樹ちゃん」

 

いつもは昔見てたロボットアニメの歌だったり流行りの曲とかでバラードは初めてだったけど……友奈が泣くとは思わなかったね……。ごめんね友奈…!

 

◆◇

 

「あの、優樹さん!」

 

「樹ちゃん?」

 

「樹、どうしたの?」

 

カラオケを出てそれぞれの帰路に着き、途中まで同じ方向の犬吠埼姉妹と歩いてると、樹ちゃんが僕を呼んだ。

 

「ごめんお姉ちゃん、私ちょっと優樹さんとお話ししたくて……」

 

「わかったわ、じゃあ私はその辺で待ってるから」

 

「うん」

 

樹ちゃんどうしたんだろう?

 

「ゆ、優樹さん…」

 

「どうしたの樹ちゃん」

 

一瞬の沈黙の後、樹ちゃんが言葉を紡いだ。

 

「こ、今週の土曜日なんですが、予定はありますか?」

 

土曜日……今週は部活は休みだから筋トレくらいだよな……?あとは夏凛の手合わせに付き合うくらいか……でも夏凛からは来れる時で良いって言われてるしな。だったら…

 

「特には無いけど…」

 

「……そ、それなら……わ、わたしが歌うところ……見てもらってもいいですか……?」

 

ん……?

 

「樹ちゃん?それってどういう…?」

 

「えと……その……そうです!特訓です!」

 

なるほど、特訓か。

 

「それってさっきみたいに?」

 

「は、はい…多分ですが私…優樹さんとなら歌える気がして…」

 

特訓のことを聞くと、樹ちゃんは、はにかみながらそう言った。樹ちゃんにとって僕がどういう扱いなのかわかないけど、僕なんかで良いのなら喜んで依頼を受けよう。

 

「わかったよ。僕なんかで良ければ喜んで」

 

「優樹さん……ありがとうございます」

 

「そんじゃあ、風先輩待たせてるし、続きはアプリの方で良いかな?」

 

「は、はい!すみません私のために時間使わせちゃって……!」

 

「そんな事ないよ。それじゃ、風先輩にもよろしくね」

 

「はい!優樹さん、また明日です」

 

「じゃあね」

 

◆◇

 

「お姉ちゃんお待たせ!」

 

「樹〜優樹との逢引きはどうだった?」

 

「お姉ちゃん⁉︎」

 

「ふふっ、続きは帰りながら話そっか」

 

「う、うん…」

 

もう……お姉ちゃんったら……

 

◆◇

 

「……樹はさ、優樹の事が好きなの?」

 

「──!?」

 

お姉ちゃんの一言に、私は思わずお姉ちゃんの方を振り向いた

 

「やっぱりそうだったのね」

 

「お、お姉ちゃん……やっぱりって……?」

 

もしかして……気づいてたの……⁉︎

 

「そりゃ、樹の事ならなんでもわかるわよ。……それと優樹への態度とか見てればすぐわかったわよ。」

 

「……‼︎」

 

そんなにわかりやすかったの私……⁉︎ 優樹さんへの気持ちがお姉ちゃんにバレてたってことは……他の人は……⁉︎ 他の人にはバレてるの…⁉︎

 

「ちなみに多分、私以外誰も気づいてないわよ。特に優樹」

 

「そ、そうなの…?」

 

気づいてるのはお姉ちゃんだけだった。優樹さんに知られてなくて良かった……。

私がホッと安堵のため息を吐くと、お姉ちゃんが言った。

 

「アイツは優しいし気配りも出来るけど、恋愛とかそっち方面にはてんで弱いからね。密かに想われても直接言われないと気づかないわ。」

 

「ちょ、直接……」

 

それってつまり……優樹さんに──って

 

「そういえばお姉ちゃん、いつから気づいてたの…?」

 

「去年からそんな気はしてたのよねぇ…」

 

きょ、去年……そんな前から……

 

「とは言っても、アンタが優樹に惚れたのって結構最近でしょ」

 

「……!」

 

どこまでもお見通しなんだな……お姉ちゃんは……。

 

「……うん、私は多分……優樹さんが好き」

 

いつからだったのか……この気持ちは……。最初は淡い憧れのようなものだったけど……いつの間にか……勇者部で過ごす内にその気持ちは強くなっていた。

お姉ちゃんは気づいてないけれど、東郷先輩もきっとそうだ……頼れる先輩が、とても強力なライバルになっちゃったな…。

 

「そっか…。アイツなら安心して任せられるわね」

 

「お姉ちゃん…?」

 

「樹!デートはいつ!?」

 

「お姉ちゃん⁉︎」

 

◆◇

 

そんな訳で今に至る。

 

今日はあくまで特訓です…!お姉ちゃんはデートと言ってたけど、デートじゃありません……。デートじゃない……よね……。

 

「特訓とは言ったものの、カラオケだしな…樹ちゃん先歌う?」

 

「す、すみません…まだ緊張するので…優樹さんから良いですか?」

 

「おっけー」

 

私がそう言うと、優樹さんは曲を入れて歌い始めました。

 

『Get up! Get down闘いの時──』

 

優樹さんが歌ってる曲は、この前のバラードとは真反対の曲調ですが、とてもカッコいいです…!

 

「ふぅ……やっぱこの曲も良いな」

 

「優樹さん、カッコよかったです…!」

 

「ありがとう樹ちゃん」

 

お礼を言うと同時に、マイクを渡した。

 

「……はい」

 

緊張はするけど、不思議と肩の力が抜けてる気がする。

 

誰かが見ているわけじゃない。ううん。優樹さんがいる。でも大丈夫。この人だけならきっと……いつものように……

 

『──』

 

◆◇

 

「凄い……!」

 

樹ちゃんが緊張せず歌っているのを見たのは初めてだけど、風先輩の言う通り上手い──いや、とても綺麗な声だ……。

 

僕は、樹ちゃんの歌に聴き惚れていた。

 

勇者部のみんなで来た時は、緊張で歌えていなかったのだが、ここでは──樹ちゃんのステージだ

 

◆◇

 

「……歌えた……!」

 

「樹ちゃん!歌えたじゃん…!とってもよかったよ…!」

 

「優樹さん……!」

 

「樹ちゃんの歌、とても良かった……綺麗な歌声だったよ…!」

 

「ゆ、優樹さん…⁉︎」

 

「樹ちゃんは、今みたいにもっと自分に自信を持っていいと思うんだ。」

 

自信を持つこと……。

 

まだ優樹さんの前でしか歌うことは出来ないけれど、歌のテストに合格出来るように頑張らなきゃ……。

 

優樹さんが言ってくれたように、自分に自信を持って……。

 

──いつかこの想いも伝えられるように

 

だから今は、幸せな時間を大事にしていこう。

 

 

 

──でもこの時は、あんな事になるなんて、私たちには知る由もなかった。

 

■の■が■■■■■■■■──




次回は優樹君が歌ったあとのカラオケやその後の勇者部など書ききれなかった部分をやる予定です。
優樹君が歌った曲について。
バラードは「たましい」です。銀ちゃん……
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