安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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ちょくちょく書いてても今回は結構長かったな……() 過去最高の8800文字超えとは… もうすぐ僕が一番楽しみにしてた回が……!




終わりのない友情

「少しチクっとしますよ」

 

「はい──っ?」

 

痛くない? 採血の注射なら少し痛いと思うんだけど……気のせいかな?

 

「どうしましたか?」

 

「いえ、なんでも」

 

バーテックスとの戦いの後、僕たちは検査のため入院となりました。

 

◆◇

 

『──昨日の工事中の高架道路が落下した事故の続報です』

 

『事故現場周辺で発生した火災は消し止められ』

 

『奇跡的に被害者はいませんでした。事故の原因については調査中で──』

 

「友奈と優樹も検査終わったのね」

 

「はい……って風先輩!その目どうしたんですか⁉︎」

 

「どうも……ってどうしたんですかその目⁉︎」

 

検査を終え、皆のいるホールへ向かった僕と途中で合流した友奈は、風先輩の左目に装着された眼帯を見て思わず声を上げた。

 

「ふっふっふっ……これは、先の暗黒戦争で──」

 

「バーテックスとの戦いで視力が落ちてるんだって」

 

「ちょっと夏凛!せっかく乗ってたのにさー」

 

「もしかして、バーテックスから何か…」

 

「まさか、あの時の……?」

 

あの巨大な火球を防いだ時に……何か……?

 

「違うわ。戦いの疲労によるものだろうって。療養すれば治るらしいわ」

 

「私たちも検査終わりました」

 

「東郷さん、樹ちゃん」

 

風先輩の現状を聞いていると、東郷さんが乗る車椅子を樹ちゃんが押して来ていた。

 

「樹、注射されて泣かなかったか〜?」

 

「……」

 

風先輩が聞くと、樹ちゃんは首を横に振った。

 

「…どうしたの?」

 

「声が出ないみたいです。勇者システムの長時間使用による疲労が原因みたいで。すぐに治るだろうとの事ですが」

 

「わたしの目と同じね」

 

風先輩に樹ちゃんが……。もしかして、僕も何かあるのかな……?

 

「えっと…すぐに治るんなら大丈夫だよね!お医者さんもそう言ってるんだし!そうだ!私たちバーテックスを全部やっつけたんだよ!お祝いしないと!」

 

「そうだね友奈」

 

そう言いながら、僕と友奈は売店で買ってきたお菓子やジュースをテーブルに広げた。

 

「じゃじゃーん!優樹君と売店で買ってきました!」

 

「ずいぶん沢山ね」

 

「買いすぎちゃったね……でも友奈と風先輩いるし大丈夫でしょ」

 

「ちょっと優樹⁉︎」

 

そんな感じでお祝いが始まった。

 

各々の好きな飲み物を取り風先輩の音頭で乾杯だ。

ちなみに僕は緑茶

 

「…!」

 

友奈の表情が一瞬こわばった気がした。

 

「そうだこれ!みんなに新しい携帯」

 

「前のは回収されたでしょ?メンテナンスとかで時間かかるみたいだからそれまでこれを使って」

 

そう言って風先輩から各人に新しい携帯端末が渡された。

 

「…あのアプリがダウンロード出来なくなってますね」

 

「本当だ」

 

「あれは勇者部専用だからね。もう戦う必要はなくなった訳だし」

 

「そっか。もう勇者になる必要はないんですね」

 

「風先輩、その…古烏たちは……」

 

僕は一縷の望みを風先輩に尋ねた。

 

「…ごめん、アプリは使えないから精霊は呼び出せない」

 

風先輩は少し悲しげに答えた。

 

「そうですか…せめてお別れくらいは言いたかったな」

 

「優樹君……私も牛鬼にちゃんとお別れしたかったな…」

 

古烏……いつも僕、頭つつかれてたけど、千景の良い遊び相手だったなぁ……。

 

「あっ、そういえば……あの後どうやってバーテックスを倒したんですか?」

 

僕はあの時気絶しちゃったから詳しいことは知らないんだよね……。気づいた時には戦闘が終わってたし

 

「そういえば、優樹君と風先輩、気絶してたもんね。東郷さんに宇宙まで運んでもらって、満開した私と東郷さんで大きな御霊を壊したんだよ!」

 

「それで、落ちてきた友奈達を樹が満開してね」

 

友奈と夏凛が答えてくれた。なるほど、そんな事が……

 

「みんな頑張ったんだね」

 

「……ちなみに優樹は立ったまま気絶してたわよ」

 

「え、マジ?」

 

目覚めた時に立ってたのってそういう事だったのか……

 

「大マジよ。風を降ろして叫んだ後そのまんまね」

 

「ちょっと待って、あたしを降ろしたってどういうこと?」

 

それを聞いた風先輩は僕に詰め寄った。

顔が近い……

 

「ほ、ほらバーテックスの元気っぽい玉防いだ時に僕ら、やられちゃったじゃないですか。」

 

「その時に助けてくれたってわけね。ありがとう優樹」

 

「いえいえ…風先輩は大切な先輩ですから」

 

「っ!何言ってんのよもう!」

 

「ちょっ、痛──くない…?」

 

いつものように風先輩にヘッドロックをされてる時は結構痛いのだが、今は全く痛みを感じなかった。

 

「風先輩、ちょっと僕の頬引っ張ってもらえますか?」

 

抱いた疑問を確信に変えるために、僕は風先輩にお願いした。

 

「え、ええ…?なんでそんな事──」

 

「多分僕、勇者システムの疲労で痛みを感じないんです」

 

「わ、わかったわよ……。んっ!」

 

「──やっぱり。痛みを感じなかったです。」

 

その疑問は風先輩のおかげで確信に変わった。痛みを感じないってなんか怖いな……。

 

「痛みを感じないってなんか不気味ね……」

 

「そうですね…そのうち治ると思うんですが…」

 

今はなんとかこの状態でやってくしかないのかな……。

 

◆◇

 

「じゃあ、私は東郷さんを送ってから病室に帰ります」

 

「友奈、途中まで僕も良いかな?話したい事もあるし」

 

お祝いはお開きとなり、各々の病室へ戻るのだが、僕はその前に友奈に確認したい事があった。

 

「うん!東郷さんも良い?」

 

「ええ、私も優樹君とお話ししたいところだったからちょうど良かったわ」

 

友奈が東郷さんの乗る車椅子を押し、僕はその隣を歩いている。

 

「退院は明後日だって 早く学校に戻りたいなぁ…病院にいるのって退屈で」

 

「私は検査にもう少し長い時間がかかるみたい」

 

「僕も東郷さんほどじゃないけど、少し長引くみたい」

 

「そっか…。2人とも一緒に退院したかったね」

 

「そうだねぇ…。」

 

先生から退院の時期が皆より遅いと言われたけど、検査するとこあるのかな……。痛みが無い以外こんなにピンピンしてるんだけど

 

「──ところで友奈、どこか体におかしな所があるよね?」

 

「優樹君も気づいてたの?」

 

「うん、さっきジュース飲んでだ時に、一瞬ね」

 

東郷さんも気づいてたか。流石は友奈の事に一番詳しい人だ。洞察力が桁違いだ

 

「二人とも鋭いなぁ、でも大したことじゃないよ」

 

「友奈」

 

「友奈ちゃん……話して」

 

僕と東郷さんが言うと、友奈は観念したように話し始めた。

 

「味しなかったんだ。ジュース飲んでも、お菓子食べても」

 

「……」

 

「友奈にも……不調か……。」

 

「うん、でもすぐ治るよ。風先輩や樹ちゃんや優樹君と同じじゃないかな。でもお菓子の味がわからないなんて人生の半分損してるよ〜」

 

「……」

 

友奈はそう言って明るく振る舞っているが……。僕の目には不安そうにも写った。 風先輩、樹ちゃん、友奈そして僕……。もしかしたら東郷さんや夏凛にも何かあるのかもしれないな──ん?

 

「東郷さん?」

 

「っ…⁉︎ どうしたの優樹君…」

 

「ああ、いや。何か考え事してたのか。ごめん」

 

「大丈夫よ。それより、優樹君に聞きたい事があるんだった」

 

「どうしたの?」

 

「私と友奈ちゃんがバーテックスの御霊を壊した後、女の子の声が聞こえたの」

 

「声…?」

 

それと僕になんの関係があるんだろう…?それに東郷さんだけじゃなくて友奈も…?

 

「ええ。そして『安芸君を頼んだわ』って。そう言ってたんだけど、何か心当たりとかってある?」

 

「えっ……友奈もなの?」

 

東郷さんの質問に僕はちょっと怖くなり、友奈にも尋ねた

 

「うん。 東郷さんと樹海に落ちる時に、東郷さんの花の中で私も聞いたよ」

 

二人とも同じ声を聞いた……か。でもなんで僕に…?そんなの心当たりが──まさか⁉︎

 

「心当たり──と言っていいのかわからないけど……僕が気絶してた時に一人の女の子と会っていたんだ」

 

僕は少し朧げになっている忘れられた勇者の記憶を引っ張り出した。

ほんの少し前なのに、もう薄れている。名前──なんだっけ

 

「確か……僕に忠告をしにきたって言ってたと思う」

 

「……ごめんね、その時の事がまるで夢だったかのように薄れてるんだ」

 

でも、一つだけ確かに覚えている事がある。

 

『生きることを諦めないで』

 

忘れられた勇者はそう言ってた。

 

「そうなの……。じゃあ、もしかしたら──」

 

「優樹君と私たちが聞いたのは、同一人物だったのかな?」

 

「そうだね──っとじゃあ僕も自分の病室に戻るよ」

 

「うん、優樹君 また」

 

「じゃあね」

 

僕は病室へ向けて歩き出した。

 

◆◇

 

コンコン

 

「? はーい」

 

病室の扉がガラリと開かれた──っ⁉︎

 

「優樹……」

 

「えっ⁉︎ な、なんで!?」

 

来客した人物に僕は目を見開いた

 

「なんでとは随分な挨拶ね」

 

「姉さん……!」

 

そこに居たのは、仕事で大橋の方にいるはずの姉さんだったのだから

 

「久しぶりね。あなたが入院したって聞いて、飛んできたわ」

 

「ごめん姉さん……」

 

また姉さんに迷惑かけちゃったな……。仕事忙しいのに…

 

「大丈夫よ。むしろ私の仕事のせいで優樹との時間を作れなかったわね。ごめんなさい」

 

「そんな…!姉さんは悪くないよ!」

 

「……そういえば、姉さん仕事は大丈夫なの…?」

 

「ええ、またすぐ戻らなければいけないけど、今は代わりの者がいるわ」

 

「そうなんだ……。」

 

やっぱり姉さん忙しいのに来てくれたんだ……。

 

「ごめんね、でも久しぶりに優樹に会えて良かったわ」

 

「姉さん……」

 

「……もうこんな時間ね……来たばかりだけど、帰るわね」

 

「本当だ、もう面会時間終わりか……。姉さん、忙しいのに来てくれてありがとう」

 

僕は姉さんを抱きしめながらお礼を言った。

 

家族の温もりというものを久しぶりに感じる事ができた。

 

「ええ、あまり会えなくてごめんね。」

 

「姉さんも仕事頑張ってね」

 

「ええ」

 

姉さんが病室を出て行った。

 

◆◇

 

「……優樹、強くなったのね」

 

それと同時に、私の中で罪悪感が込み上げてきた。

 

「行くように言ってくれた二人には感謝しなければね」

 

私は、病院を後にした。

 

◆◇

 

「音楽でも聞いて一息つこうかしら」

 

「……?」

 

左耳に違和感を感じた私は、イヤホンを左耳だけに挿入して音楽を流したが──

 

「……聞こえない」

 

音を大きくしてもそれは変わらなかった。

 

「私も皆みたいになっている……」

 

風先輩の左目の視力、樹ちゃんの声、友奈ちゃんの味覚そして優樹君の痛覚に私の左耳の聴力……

 

「一時的なもの──なら良いのだけれど…」

 

◆◇

 

「フフん♪ どうよこれ」

 

部室へ入ると、風先輩と樹ちゃんだ!風先輩は黒の眼帯を付けている。

 

「風先輩!超カッコいいです!」

 

「ふっふっふ、イケてるでしょ」

 

「あれっ?夏凛ちゃん来てないんですか」

 

『かりんさん何か用事でしょうか?』

 

「樹ちゃん、そのスケッチブック」

 

「声が戻るまでの応急処置よ」

 

『これで話せます お姉ちゃん提案です』

 

「なるほど」

 

いつか治るまでの応急だもんね。きっと大丈夫!

 

「今日は3人か…学祭の劇について話したかったんだけどな」

 

「ハッ 演劇! そうでした!」

 

私から提案したことなのにうっかり忘れちゃってた!

 

「まあ、勇者活動が一大事だったから忘れてたでしょ?」

 

「えへへ、その通りです…」

 

風先輩はなんでもお見通しだなぁ…

 

「まあでも、3人だけじゃ話し合いもあんまり意味ないし、何か他のことを──」

 

◆◇

 

コンコン

 

「はい」

 

「東郷さん、僕だけど」

 

「優樹君?どうぞ」

 

「やあ東郷さん」

 

僕は東郷さんの病室を訪れた。 どうしても確認しないといけない事があったからね。

 

「優樹君、どうしたの?」

 

東郷さんは、パソコンを閉じながら用件を尋ねた。

 

「ちょっと聞きたい事があってね」

 

「単刀直入に聞くよ。東郷さんも体のどこかおかしくなってるよね」

 

僕はいきなり本題に入った。

 

友奈たちが退院した後、僕は体のどこかがおかしくなった人たちの共通点を考えてみた。すると、夏凛以外が先の戦いで満開を使用してたのではないかという結論に至った。

ただしその時は、東郷さんだけはわからなかったので、こうして確認に来たのである。

 

「……どうしてそう思ったのかしら?」

 

「夏凛以外の不調が起きてる人たちは皆、満開を使用している」

 

「夏凛ももしかしたら不調を起こしてるかもしれないけどね」

 

僕がそう言うと、東郷さんはパソコンを開いて画面を見せてくれた。

 

「これは──」

 

そこに表示されてたのは、体に不調を起こした人とその症状それとその期間等だった。

 

「優樹君……」

 

「東郷さんは左耳か……そして現状、回復の兆しは無しと…」

 

「まだ確信は無いのだけれど、後で風先輩にも聞いてみるわ」

 

「わかった──」

 

『東郷さん!私だよ!』

 

友奈?

 

「東郷さん、お見舞い来たよ──あれっ、優樹君だ!」

 

「やぁ友奈、ちょっと東郷さんに用があったからね。」

 

「こんにちは友奈ちゃん」

 

「こんにちは東郷さん!なになに?何かお話し?」

 

「そんなところ。それより来てくれてありがとう」

 

「東郷さんと優樹君が学校にいないと楽しさが当社比3割減だよ〜」

 

「それはそれは…」

 

「夏凛ちゃんも部活に来なくて3人しか居ないからできる事も5割減だよ」

 

「ふふ、随分減っちゃうのね」

 

夏凛部活に来てないのか……。何か用事なのかな……

 

◆◇

 

「そっか…東郷さんは左耳が聞こえなくなってるんだ…」

 

「大丈夫、すぐ治るよ!めいっぱい戦ったんだし!」

 

「そうね、ちょっと体が悲鳴を上げてるのかしらね」

 

「また明日も来るね!優樹君も!」

 

「ええ」

 

「ありがとう友奈」

 

僕は明後日で退院だ。準備とかしなきゃな

 

「それじゃあ、僕も戻るよ」

 

「ええ、優樹君 また」

 

「うん、また」

 

◆◇

 

「もしもし」

 

『優樹、東郷から話は聞いたわ』

 

「満開に後遺症があるかもしれないって話ですか?」

 

『ええ』

 

東郷さんは、もしかしたら満開に後遺症があるのでは?と言ってたけど、仮にそうだとしたら夏凛だけが無いのも納得だ。

 

『それについては今、大赦に確認中よ。夏凛には連絡はしてあるからそっちも返信待ち』

 

「……ありがとうございます。すみません、不安を煽るような真似しちゃって……」

 

実際のところ断言は出来ない。大赦からの返答次第だ。

 

『ええ……。それと、例の件だけど行ってきたわ』

 

「ありがとうございます風先輩 それで、どうでした?」

 

『アンタのベッドでスヤスヤ眠ってたわ。まるで心配無いとでも言うかのように』

 

「そうですか、それなら良かった……」

 

風先輩が退院する時に、僕は千景の事を依頼していたのだ。

僕の部屋にいる時に樹海化が始まって部屋に放置しちゃってたので様子を見てきてほしいと。

窓は千景が入ってきた時から開きっぱなしだからご飯とかは大丈夫なはずだ。風先輩にも確認してもらったしね。

 

『優樹も明後日退院ね。申し訳ないけど、あたしはその日、外せない依頼入っちゃったから友奈を寄越すし一緒に部室に来てね』

 

「了解しました。では、おやすみなさい」

 

『はーいおやすみ』

 

風先輩からの電話が切れた。

明後日か……病院だと筋トレできないから早く退院したいなぁ……。

 

◆◇

 

そして2日後

 

「友奈」

 

「優樹君!お疲れ様!」

 

僕はロビーで待機していた友奈に声をかけた。

 

「あれ、東郷さんは?」

 

「調べ物があるから来れないって」

 

「それは残念」

 

「そういえば、あれから夏凛って部活来た?」

 

以前お見舞いに来た時に、夏凛が部活に来てないと友奈から聞いていた。

 

「ううん、全然。SNSにも返信無くて、授業が終わったらすぐ帰っちゃうんだ」

 

「そう……。」

 

すぐ帰るんなら……あの場所行ったら居るかな……居たら話聞いてみよ

 

「じゃあさ友奈、ちょっと有明浜行かない?」

 

「優樹君何か用事?」

 

「多分だけど、夏凛がいるからさ」

 

僕がそう言うと、友奈がパァッと笑顔になった。

 

「行こう優樹君!」

 

「わっ…ちょっ!」

 

友奈が僕の手を引いて走り出した。

 

◆◇

 

「夏凛ちゃーん!」

 

「夏凛」

 

「って、おうっ⁉︎」

 

「友奈!」

 

有明浜で夏凛を見つけ走り出し、石につまづいた友奈を抱き止めた──っ‼︎

 

「ゆ、優樹君⁉︎」

 

「ご、ごめん友奈!」

 

転びそうになった友奈を受け止める為とはいえ、友奈の身体を抱きしめてしまっていた。

 

「ちょっ!友奈、優樹!」

 

「久しぶり夏凛」

 

顔を赤くしながらも、冷静っぽく挨拶してみせた。

 

「なにやってんのよ二人とも…」

 

「退院したから夏凛の様子を見に」

 

「部活へのお誘い!最近夏凛ちゃんが部活をサボりまくってるから」

 

「……」

 

「このままだとサボりの罰として、腕立て500回腹筋3000回スクワット10000回させられることになるんだけど」

 

「桁おかしくない…?」

 

とんでもない回数だけど、いざとなったら僕がもらおうかな…?

 

「でも、今日部活に来れば全てチャラになります。さあ、来たくなったよね?」

 

「…ならない。元々、私は部員じゃないし…それに」

 

「もう行く理由が無いわ」

 

「理由か…。」

 

「夏凛、君が勇者部に入ったのは、勇者として戦う為だと思ってないかい?」

 

「思うも何も……最初から──」

 

僕は夏凛の言葉を遮りながら言葉を紡いだ。

 

「最初はそうだったのかもしれない。けど今は違う。友奈がいて、東郷さんがいて、風先輩に樹ちゃんに僕、そして夏凛がいて皆で楽しくしながら人に喜んでもらう為に活動していくのが勇者部の活動だよ。」

 

「そうだよ夏凛ちゃん!バーテックスなんかいなくても、勇者部は勇者部だよ」

 

「でも、戦いが終わったんだから……今の私に居場所なんて…」

 

居場所か……。

 

「勇者部五箇条!悩んだら相談!」

 

友奈が叫んだ

 

「戦いが終わったら居場所が無くなるなんて事はないんだよ!」

 

そのまま友奈は言葉を紡ぎ続ける

 

「夏凛ちゃんがいないと部室は寂しいし、私は夏凛ちゃんと一緒に居るの楽しいよ!優樹君はどう?」

 

突然僕に話題が振られたけど、答えは一つしかないな。

 

「僕も友奈と同意見だよ。勇者部で皆と過ごす時間は楽しいしかけがえのないものだと思ってるよ」

 

「それに、僕は皆の事が大好きだよ」

 

「……ッ」

 

「優樹君……う、うんっ!私も夏凛ちゃんの事も皆の事も大好きだよ!」

 

◆◇

 

「──結城友奈帰還しました!」

 

「安芸優樹退院しました!」

 

「おかえり〜おっ、夏凛も来たのね!」

 

「ゆ、友奈と優樹がどうしてもって言うからよ…!」

 

夏凛は恥ずかしそうにそう言った。 ツンデレだなぁ……。

 

「それと、差し入れです」

 

友奈が持っていた差し入れ──シュークリームの箱を開けた

 

『これ、駅前の有名店のやつですよね!』

 

「樹ちゃん正解!」

 

「…でも、友奈は味わかんないんじゃ…」

 

「あれ?気づいてたんですか?」

 

「ごめん友奈…樹に優樹も…私が勇者部の活動に巻き込んだせいで…」

 

「こんなのすぐに治りますよ!風先輩気にしすぎです」

 

「私は望んで勇者部に入ったんですから」

 

『私も』

 

「僕もですよ」

 

初めは男手が欲しいって言われたからだったけど、僕は勇者部に入って良かった。

 

「ってわけで、結城友奈は今後風先輩からのごめんは一切聞きません!」

 

「同じく安芸優樹」

 

『私も』

 

「……ありがと」

 

戦いを終えた勇者部は改めて一つになったかな。

 

あとは、東郷さんが退院すれば完璧だ。

 

「さっ、早くシュークリーム食べましょう!風先輩が餓えて死んじゃうと思って買ってきたんですから!」

 

「ふふっ…」

 

「ちょっ、私が24時間お腹空かせてると思ってない⁉︎それと優樹今笑ったでしょ!!」

 

『違うの?』

 

「げっ樹まで⁉︎」

 

「──と言いつつシュークリームに真っ先に手を伸ばすのね」

 

風先輩らしいな

 

「くっ……鎮まれ!私の右手!私の中の獣が暴れ出す!」

 

『獣(女子力)』

 

樹ちゃん……少し見ない内に言うようになったなぁ……。

 

「全く、アンタ達は…」

 

それから皆でシュークリームを食べたけど、流石有名店だ。

 

◆◇

 

差出人:三好夏凛

宛先:大赦

件名:申請

バーテックスは殲滅され任務は終了しました。

今後の処遇なのですが、讃州中学に留まることを許可していただけませんでしょうか?

 

送信っと……。

 

戦いに関係なく私がここにいて良いのなら……。

 

私は勇者部の皆を顔を思い浮かべた──ッ……

 

「優樹…」

 

あいつが変なこと言うから……意識しちゃうじゃないの……‼︎

 

でも、皆が大好き──か。言ってくれるじゃないの……。

 

私はあいつの事──って!何考えてるのよ!

 

◆◇

 

「あっ、東郷さん!」

 

看護師さんに車椅子を押されながら東郷さんがやってきた。

今日は東郷さんの退院日だ。グループで各々が労っていたのだが、風先輩はお勤めご苦労様とまるで監獄にでも入ってたかのようだった。

 

「あとは私が」

 

「ありがとう友奈ちゃん」

 

「ここは私の定位置だよ」

 

看護師さんと代わった友奈が言った。 初めて友奈たちと会った時から、東郷さんの後ろは友奈だ

 

「東郷美森勇者部に帰還しました!」

 

東郷さんがビシッと敬礼をした。

 

そして風先輩も応えた

 

「ご苦労である!東郷准尉!」

 

「全く、変な奴らね」

 

『退院おめでとうございます』

 

「東郷さん退院おめでとう。それと、お疲れ様」

 

◆◇

 

「これで勇者部メンバー全員復活だね!」

 

「ああ……。」

 

夕陽が綺麗だ。そして、夕陽から見える街並み──僕たちは

 

「──この街を僕たちは守ったんだよね」

 

僕が

 

「──」

 

樹ちゃんが

 

「普通の人たちは私たちの戦いなんて、何も知らないんだけどね」

 

夏凛が

 

「そうね、でも皆がいなかったらこの世界は無くなっていた。ここに住む人たちは……死んでた」

 

風先輩が

 

「初めての戦いの時──すごく怖かった……。怖くて逃げたかったけど、逃げなくて良かった。優樹君が励ましてくれたおかげね」

 

東郷さんが

 

「優樹君には、みんなが助けられたよ。だから今度は、優樹君が困った時は、私たちが」

 

友奈が

 

僕は僕なりに行動してきた。勇者部の部員として、筋肉として──それがみんなの助けになれたのなら、僕にとってこれ以上ない幸せだ

 

──ピロリン

 

メールの音だ──風先輩と夏凛が同時に携帯を除いた。

 

『申請は受理されました。三好夏凛 あなたは卒業まで讃州中学で勉学に励みなさい』

 

「夏凛、何か嬉しいことがあったのかい?」

 

「べっ別に喜んでないから!」

 

『勇者の身体変調と満開の関連性に関しては調査中です。しかし貴方達の肉体の異常は見つかっておらず、変調は一時的なものと思われます』

 

「……」

 

「そういえば、もうすぐ夏休みだよ!何しようか」

 

『山でキャンプ』

 

「……う、海に行く……とか……」

 

「夏祭りも楽しみね」

 

夢みたいな戦いは終わったら僕たちは日常に戻る

 

「──花火もやっとく?打ち上げ花火100連発ぐらい!」

 

「いっそのこと全部やっちゃいましょうよ!」

 

勇者にならなくても勇者部は続いていく

 

時間はいくらでもあるんだ




結城友奈 ヒロインレース参戦!
そして次回 √分岐


【次回予告】
夏休みになりました 僕、泳げないので… 私の女子力に惚れるなよ〜 メガロポリス…? 優樹君──私は……あなたの事が──

隠しきれない愛

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