安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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ギリギリでした……ごめんなさい。 今回は遂に……ヒロインレースに一つの爆弾が…!


隠しきれない愛

夏休みになりました。

 

僕たち勇者部は12体のバーテックス全てを倒したご褒美ということで、大赦はなんと合宿先を用意してくれたのです!

 

僕たちは今、太陽がいっぱいの海にいます

 

「眩しいなぁ……」

 

青い海、白い砂浜──いやあっついなぁ……。

 

僕は身体の傷を隠す為に羽織ってる上着──ラッシュガードをパタパタさせながら辺りを見渡してみた。 友奈は東郷さんを押しながら砂浜を走ってるな。

 

風先輩は……かき氷食べてると思ったら何してんだアレ……ポージング?

 

「何してるんですか……」

 

「おっ、優樹も来たか。今から夏凛と競泳するんだけど、アンタも参加する?」

 

おっと……そう来たか……。

 

「いやあ、僕、泳げないので……」

 

そう、僕は泳げないのである。普段から筋トレやランニングはやっているので得意ではあるのだが、いかんせん泳ぎだけはてんでダメだ。

 

「あらそう?じゃあ、あたしの華麗なる泳ぎを見せてあげるわ!私の女子力に惚れるなよ〜?」

 

「あはは…」

 

風先輩のセクシーなポーズにちょっとドキッとした気がした。

 

「何言ってんのよ風 こっちはもう準備万端よ」

 

「夏凛」

 

風先輩に勝負を挑む!と意気込んで砂浜を走りに行ってた夏凛が戻ってきたみたいだ。

 

「おっ、夏凛ちゃん遂に風先輩に勝負を挑むんだね!」

 

「そういえば、樹ちゃんは泳げるの?」

 

東郷さんが聞くと、樹ちゃんは指で少しと表現した。泳げるだけで僕は羨ましいよ……。

ある程度のとこで水に浮かんだり潜ったりは出来るけど、僕はその程度だ。

 

「そういえば風先輩、水泳得意なんですか?」

 

「もちろんよ、瀬戸の人魚と呼ばれたあたしの泳ぎをとくとご覧あれ!」

 

「……呼ばれてたの?」

 

『自称です』

 

自称なんだ……。でもまあ、風先輩大抵のことは出来るから水泳が得意でも不思議じゃないな。

 

「あの、風先輩何してるんですか…」

 

「あんまり女子力振りまくとナンパされそうだから…」

 

「じゃあ僕がしましょうか?」

 

僕は柄にも無い冗談を言ってみた

 

「二人とも何言ってんのよ」

 

「隙あり!」

 

「あっ、ちょっ待てぇ!」

 

僕の冗談に、夏凛が反応し、その隙に風先輩が飛び出した。

おおっ……速いなぁ……

 

「おおっ始まった!こっちも行こう!すみませーん」

 

友奈が海の家の介助さんを呼び、友奈たちも海に入った。

 

僕?泳げないので砂浜で拳立て伏せをやってる。初めてだけど結構拳が痛い…

 

「友奈ちゃん、これ押し花に使えそうじゃない?」

 

「本当だ!ありがとう東郷さん」

 

「」

 

「樹ちゃんのそれも使えそ〜!ありがとう」

 

「?」

 

◆◇

 

「よし、優樹どう?抜け出せそう?」

 

「愚問ですね風先輩……勇者は気合いと根性です!」

 

僕の鍛えた身体はどこまで行けるのかという風先輩の提案と僕がそれに乗った事によって首から下を埋められることになった僕は、全力で脱出を試みた。

 

「うおおお!!」

 

「おおっ……少しずつ上がってる……!」

 

気合いだ!腕さえ出せればあとは行ける…!うおっしゃー!!

 

「優樹君頑張れ!」

 

「気合いよ優樹!」

 

「頑張って〜」

 

『ファイトです!』

 

「ありがとうみんな──って、東郷さん凄いな……」

 

『すごい!!高松城』

 

穴から抜け出そうともがきながら辺りを見渡してみると、東郷さんが砂で高松城を作っていた。

 

「どこでそんなスキル覚えたのよ…」

 

夏凛がツッこんだ どうやってあんな正確にお城作れるんだろう…僕も気になるな──おっ

 

「ぬんっ!」

 

僕の右腕が地上へ出た

 

「おおっ……凄いわね……というか腕太!」

 

「それは……筋トレの……賜物ですよっ!!」

 

風先輩の言葉に、僕は左腕も持ち上げながら答えた

 

「優樹君頑張れ!」

 

「両腕が出たんなら……気合いと根性で…!」

 

「成せば大抵なんとかーーーなる!!」

 

僕は両手を地面につけて全力で身体を引っ張り出した!

 

ズルズルと、僕の身体は砂の檻から抜け出した

 

「わっ、すご…」

 

「これが筋肉……ですよ風先輩!ハァ……流石に疲れました」

 

「お疲れ様、優樹君」

 

「ゼェ……ゼェ…ありがとう東郷さん……」

 

全力で動き続けたからとても疲れたな……

 

◆◇

 

「楽しかったぁ」

 

「私もうお腹ぺこぺこだよ〜」

 

「夏凛かじって我慢しなさい」

 

「本当に食いつくな!」

 

あのちょっと風先輩何言ってるんですか……? 友奈も本当に食いついてるし……

 

夕方になるまで僕たちは海や砂浜で遊んだ。もうとにかく遊び尽くした。スイカ割りをしたり、東郷さん主催の宝探しだったりと楽しい時間を過ごした。楽しい時間ほど過ぎるのはあっという間というけど、本当だな──っと?

 

「東郷さん?」

 

「……優樹君」

 

東郷さんが綺麗な夕陽を眺めながら黄昏ていた。どうしたんだろう?

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと考え事をね…」

 

「そうなんだ」

 

悩み事かと思ったけれど、僕の杞憂だったみたいだ。

 

「優樹ー東郷ー旅館に戻るわよ」

 

「今行きます」

 

「はい」

 

◆◇

 

「う、うわぁ〜すごいご馳走…!」

 

「あの〜部屋間違えてません?あたし達にはちょっと豪華すぎるような……」

 

「とんでもございません。どうぞごゆっくり」

 

そう言い残し、女将さん達は帰って行った。

旅館へ戻り夕食の時間になると、用意されていたのは「豪華」という枕詞が付く食事の数々だった。そして各席の手前にはドンと蟹が鎮座していた。

 

「蟹だぁ!蟹だよ!ご無沙汰してます、結城友奈です!」

 

「いや、マジか…すごいなぁ……。」

 

「私たち好待遇みたい」

 

「ここは大赦絡みの旅館だしお役目を果たしたご褒美ってとこじゃない?」

 

「じゃ、じゃあ…食べちゃってもいいと…!」

 

「風先輩、よだれよだれ!」

 

風先輩がすぐにでも食いつきそうな勢いだ──あっ…!

 

『でも友奈さんが……』

 

樹ちゃんのメッセージを見て、僕たちは言葉を失った。

 

「おおっ、このお刺身のコリコリとした歯ごたえたまりませんねぇ」

 

「ん〜♪ このツルツルとした喉越しもいいね〜」

 

「もう友奈ちゃん、いただきますが先でしょ」

 

「そうだった、ごめん」

 

味がわからなくても、食感や喉越しなどあらゆる手段で食事を楽しもうとする友奈を見て、みんなが驚いたり笑ったりしながら豪華な夕飯が始まった。

 

「いや〜やっぱり蟹は美味しいわね〜」

 

『うんうん!』

 

「最高ですね」

 

「場所的にお母さんを私がするので、ご飯のおかわりをする人は言ってね」

 

「東郷が母親か……厳しそうね……」

 

「門限を破る子は……柱に磔りつけます」

 

「厳しいオカンか」

 

風先輩がツッコんだ。

 

「でも、東郷さんなら良い母親になりそうだね」

 

「っ……優樹君ったら……」

 

東郷さんが顔を赤ながらそっぽを向いてしまった。

……僕何か変な事言ったかな……?

 

「優樹あんた……」

 

「優樹君…?」

 

「ゆ、優樹…!」

 

『……!』

 

「えっ、本当に僕何か変な事言いましたか……⁉︎」

 

◆◇

 

「ああ゛〜いいお湯ね〜疲れが吹き飛ぶわ〜」

 

風のオッサンのような感想が浴湯に響いた。

 

「そうですね〜」

 

「たしかに生き返るわね」

 

何故か端の方で湯船に浸かる夏凛が言うと、それに気づいた風が言った。

 

「夏凛なんでそんな端にいるのよ」

 

「べっ別に…⁉︎ 偶然よ偶然」

 

「ははぁ〜ん……?」

 

何かに気づいた風が立ち上がり、夏凛に自分の身体を曝け出した。こんな光景は優樹にはとても見せられない光景だ。

 

「もう、女同士なのに何照れてんだか」

 

「べ、別に照れてないし!」

 

「これだけ広いと泳ぎたくなっちゃうよね」

 

「うふふ、ダメよ友奈ちゃん」

 

「ゔっ…!」

 

かなりの広さを誇る浴湯で泳ぐ友奈に、東郷が手を水鉄砲の要領でお湯を飛ばした。

そしてその時、風と樹の目線は東郷の方へと向いていた。

 

「……え、えっと…どうしましたか?」

 

「いやぁ〜へ……へへ……普段何を食べれば、そんなメガロポリスな感じになるのか……コツとか教えていただけると……」

 

ドーンと浮かぶ東郷のメロンに風が聞くと、樹もそれにうんうんと頷いた。

 

「ふ、普通に生活しているだけです」

 

「いやいやぁそんな謙遜を〜」

 

「今のうちに…」

 

「お背中流しますよ〜」

 

「ひゃ〜〜〜!!」

 

「背中流すの上手いってお母さんにも褒められたこともあるんだよ〜任せて」

 

「ちょっ、くすぐったいってばぁ〜!」

 

勇者部しかいない女性浴場には、主に夏凛の叫び声が響き渡った。

 

◆◇

 

「……楽しそう……なのかな……?」

 

男性浴場に一人、ボーッと湯船に浸かっていると、壁の向こうから叫び声が聞こえてきた──この声、夏凛か

 

「漫画やアニメだとこういう時に覗きをする展開とかあるんだろうけど、生憎ここは壁越しに声が聞こえるだけで壁の向こうの様子は一切わからないからなぁ…」

 

まあ、仮に覗けたとしてもしないけど。

 

「でも、声結構聞こえるんだなぁ……。メガロポリス…?」

 

向こうから聞こえてきた謎の単語に僕は首を傾げた。

 

まぁ、いいか。僕しかいないみたいだし、傷のことも気にせずのんびりと浸かろう。

 

◆◇

 

「諸君、こういう旅行や合宿の場で女5人…何をするかわかってるわよね?」

 

なんの手違いか、優樹の部屋も皆と一緒の部屋なってしまった。でも、優樹は気まずいと言ってさっさと押入れに引っ込んでしまった。そのついでで疲れたから寝るとも言ってたので、多分もう寝入ってるだろう。

 

「えっ…?今までの訓練やお役目で辛かった事を出し合うとか?」

 

「違う」

 

「この国の在り方についてです!」

 

「それも違う!」

 

あたしがしたいのはもっと別の話!!

 

『コイバナとか?』

 

「そう、樹正解!」

 

やっぱこういう場といえば恋バナでしょ!というわけで

 

「じゃあ、優樹もいないわけだしぶっちゃけちゃうわ」

 

あたしは優樹がいると出来ない日頃から気になっていた事を皆に投げた。

 

「あんた達、優樹の事どう思ってる?」

 

「!」

 

「⁉︎」

 

「はぁ⁉︎」

 

『お姉ちゃん⁉︎』

 

うむ、皆わかりやすい…いや、夏凛だけよくわかんないけど

 

「いやぁ、優樹って勇者部唯一の男子部員じゃない?だから、実はこっそりと誰かと良い感じなのかなって」

 

「ちなみに風先輩は…?」

 

「あたしはアイツの事、良いやつだって思ってるわよ」

 

「私は──って樹ちゃん⁉︎」

 

「樹!?」

 

「目を回しちゃってるよ!」

 

友奈が答えようとしたら、樹が顔を赤くして目を回しちゃった……。

 

「ごめん、一旦この話はやめましょうか。」

 

「そ、そうですね」

 

「は、はい…」

 

「ええ」

 

◆◇

 

「それじゃ、電気消すわね」

 

「おやすみなさーい」

 

「おやすみなさい」

 

優樹と夏凛と樹は既に寝ちゃったから、返してくれたのは友奈と東郷だけだ。

 

……ぶっちゃけさっきの話……あたしは優樹の事をどう思っているんだろうか……。樹の想い人で、多分友奈と東郷も良く思ってるのだろう。夏凛も多分そうだけど確信には至らない。あたしは……よくわからない。同年代の男子とか子供っぽく見えるし。まあ、考えても仕方ない。寝よう

 

あたしは、布団に入り、夢の世界へ旅立った。

 

◆◇

 

「ん……風ってば寝相悪っ……自分の布団に戻れ…」

 

「んー…えへへ…」

 

「もうっ…」

 

「樹ぃ〜声治ったんだね〜良かったね〜」

 

「……しょうがないわね……」

 

◆◇

 

「ん……」

 

知らない天井──あっそうだ、ここ押入れだ。

何かの手違いで皆と同じ部屋になっちゃったけど、そんな事を気にする暇もないまま押入れで寝ちゃってたんだ。

 

「んー……」

 

確か廊下から海が見れたよな……寝る前に確認したんだ。

目が覚めちゃったし、ちょっと見ていくか

 

僕は押入れから出て、皆を起こさないようにゆっくりと──おや、先客だ。

 

「やぁ。東郷さん」

 

「優樹君……おはよう」

 

「おはよう東郷さん」

 

東郷さんは何かを考えるように、普段から着けてるリボンを手に巻いていた。

 

「肌身離さずだね、そのリボン」

 

「ええ、私が事故で記憶を失った時に握り締めていたものらしいの」

 

「……それだけ大切なものなんだ」

 

「ええ、誰のものかわからないけど、とても大切なもの」

 

「そんな気がして…」

 

「そっか…」

 

「ねぇ、優樹君……ちょっと…」

 

「ん、どうしたの──っ⁉︎」

 

東郷さんの手招きに従い、近寄ると、東郷さんの両手が僕の身体に絡みついた

 

「あの……東郷さん…⁉︎」

 

「優樹君……」

 

「は、はい……」

 

東郷さんは僕を抱きしめたまま、徐に言葉を紡いだ

 

「私、ずっと……優樹君に言いたかったの……。」

 

えっ……何かしたっけ僕……

 

「あの時──初めてバーテックスと戦った後、私を守るって言ってくれたわよね」

 

「う、うん」

 

あの時……か。乙女座の後の……。

 

「あの時ね、私、凄く嬉しかったんだ。そして、それ以上の気持ちも持ってしまった」

 

「東郷さん……それはどういう……?」

 

「優樹君や勇者部の皆と過ごす日々が本当に楽しかった。時々だけれど優樹君や友奈ちゃんと3人で過ごす日々が本当に幸せだったの」

 

「いつの日だったか……私はあなたに抑えきれない気持ちを抱いていたの」

 

「あの……東郷…さん?」

 

僕は東郷さんの言葉の意図がわからず、聞き返すと、衝撃的な言葉が返ってきた。

 

「優樹君──私は……あなたの事が──」

 

東郷さんの言い放った言葉に、僕は思わず目を見開いた。




【次回予告】
あなたが好きなの 
東郷さん……
僕はどうすれば……
優樹が休むなんて珍しいわね
……優樹君!

【恋の苦しみ】
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