安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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厄災は訪れた。
明日を求める勇者たちは
絶望に抗う


厄災は内より訪れる

意識を覚ますと僕は暗闇の中を落下していた。

上も下も見えずただ落ちる。

落ちる、落ちる─────。

 

「…………なんでぇぇぇぇぇ!?」

 

あまりにもおかしすぎる!

昨日は普通にご飯を食べてちょっと皆とボードゲームで盛りあがって寝ただけ。

ここに落下する要素は何一つ無い!

なら夢?そうか、夢か!

うんそれなら仕方ない!こんな支離滅裂な夢も見る時はある。

………いや絶対違う!

この浮遊感と風は間違いなく本物!

一体どうしちゃったんだ!?

 

『ひーふーみー……よし、全員いるな………』

 

声が聞こえたと思った途端、僕の目の前に突如見知った人が現れた。

逆さまになっているのに髪やコートがひっくり返っていない摩訶不思議な姿の黒花さん。

 

「夜分遅くにすまない…ってなんだこれ?……あぁ、オレの座標が狂ってるのか。ちょっと待てよ……」

 

すると瞬きの間に黒花さんの姿が元に戻った。

しかし髪や服装はなびくことは無い。

 

「改めてどうも。オレの認識が間違ってなきゃ全員ベッドの上でご就寝なのが最後の記憶だろ?それに関しては間違いないし、こうして落下しているのは夢の一部で正しい。ただし、夢の持ち主は『神樹』だがな」

 

それはどういう意味?と聞こうとしたけど声が出なかった。

まるで喉を取られたように発声すら出来ない。

 

「揃いも揃って同じ反応だな。なぁに心配することは無い。直に治る」

 

直にって無茶苦茶な…

それに揃いも揃ってって……まさか、皆も近くに!?

周りを見ても黒花さん以外の存在は見えない。

 

「上手くやれるといいが物は試しだ。使わせてもらうぞ…」

 

「何を言って…あれ?」

 

発することの出来なかった僕の口から声が出た。

先程までのが嘘のように自然と声が出て驚いた。

 

「優樹君…?」

 

「え、美穂さん…?それに、皆も…?」

 

落下する闇の中、美穂さん達と勇者部の皆の姿が光が灯ったかのようにハッキリと見えた。

皆この状況に唖然としているのか視線が定まっていない。

気づいた時には寝間着ではなく制服姿であり、降下した感覚が消え失せていた。

 

「おっ、成功だな。さすが夢の中。多少の無茶は許容範囲か」

 

「黒花さんッ!神樹の夢に取り込まれたというのは事実ですか!?」

 

「あぁ。オレも放り込まれたが人樹の影響で弾かれちまってな。だから『樹皮をぶっ壊して入った』。おかげで胸糞悪いことこの上ない」

 

またよく分からないこと言ってる…

チラリと美穂さんを見ると頭を抱えていた。

普通はやれないことを平然とされたらそうなる。

ほんと、お疲れ様です…

 

「この穴はどこまで続くのよ…」

 

「終着はある。こいつは樹海化する時に浴びる光みたいなものさ」

 

「それにしても趣味の悪い光景ですね…」

 

東郷さんの声に気づき、目線を暗闇に向けると何かが大量に浮いているのが見えた。

目が慣れると僕の頭が一度ズキリと痛む。

壁と思っていたのは生気を感じない白い肌をした人の身体が敷き詰められている気持ちの悪い物だった。

頭はどれも無かったけど手を伸ばしもがいているように見える。

 

「こいつらは抜け殻だ。魂を神樹に持って行かれた後の成れの果て。こいつらから負の想いだけが人樹の身体を構成している。まっ、お前らは気にするな」

 

途端、全てを包み込むような黒い光が目の前で放たれる。

やがて光が急速に萎み、跡形もなく消え、その中心に黒花さんが立っていた。

服装に変化はあまりない代わりに、全身からただならぬ気を感じた。

 

気味の悪い縦穴を落ちていくと、突然ドームのような空間に出た。

足元には人の頭蓋骨が大量に埋めつくしていた。

所々に根がせり上がっていることからここも樹海と同じとは分かるけど、頭蓋骨によって平らになっている。

 

「見えたな。あれが()()だ」

 

その中心にいたのは()では無く巨人だった。

先程見た頭のない死体が四つん這いになり何かに縋るように右手を伸ばし止まっており、身体と思しきところからは肋骨が飛び出ていたり所々出血跡があったりと痛々しい。

そして一番の特徴は足と手から地面に伸びる白い根。

巨人の周りを塗り替えるよう生えている根は足先だけではなく、腕や太ももからも垂れていた。

 

「あれが、樹……?」

 

「だったものだ。元は神樹の一部だったが、人の生への願いを過剰に吸い上げたことにより生まれた癌だ」

 

僕たちは長い降下を経て最深部へたどり着いた。

着地をすると頭蓋骨が簡単に割れる感覚と共に少し足元をすくわれる。

 

「再三言ったがオレたちの目標は人樹の伐採……いや討伐か。あれを絶命させれば御役目完了さ」

 

「御役目が終わるって言っても、あれ死んでるだろ…?」

 

人樹には首も無いし血も出ていない。

明らかに死んでいると見るのが妥当だ。

 

「それに泥も見当たりません。黒花さん、本当にこれが人樹なんですか?」

 

「状況からしてこいつが人樹であるのは間違いない。だが、あまりにも静か過ぎるのは違和感を感じる」

 

「端末のレーダーにも皆さん以外の反応はありません…」

 

「とにかくアレを倒せば解決なんでしょ?切り刻むなり燃やすなりすれば何とかなるわよ」

 

夏凜が変身し刀を構えた瞬間地鳴りがドームの中に響き渡る。

明確な敵意に呼応したのか骸骨を弾き飛ばしながら地中から這い出てきたのは12体バーテックス。

見た目はこれまでのと同じだが、全身が赤黒く人の手だけではなく胴体や足も生えていた。

 

「まさか全員揃い踏み…。満開抜きとはいえ手こずるのは確定かしら」

 

「1体につき2人で攻め、倒したら各自援軍として向かうしか無さそうです」

 

「でもアレの身体って泥だよね?触ったら取り込まれちゃうかも」

 

「それなら僕が…!」

 

「いやいや。ここはオレしかいねぇだろ」

 

前を向いていた黒花さんが声をあげる。

 

「この世界に来て何も出来てないんだ。鬱憤晴らしにはちょうどいい」

 

黒花さんはコートから取り出した黒い携帯電話をスナップをきかせ開くと即座にコードを打ち込む。

 

「────変身」

 

途端、全てを包み込むような黒い光が目の前で放たれる。

やがて光が急速に萎み、跡形もなく消え、その中心に黒花さんが立っていた。

服装に変化はあまりない代わりに、全身からただならぬ気を感じた。

 

「さぁてと。まずはテメェから下ろしてやるよ、弓野郎っ!」

 

応えるかのようにサジタリウスから放たれた無数の矢が一切の狂いなく僕たちの元へ降り注ぐ──はずだった。

矢は黒花さんの数メートル先で次々と撃ち抜かれていく。

 

「ワンパターン過ぎて見飽きてんだよッ!」

 

腕を組みながら吠える黒花さんの背後には無数の渦が浮かび、中から銃身が現れていた。

 

「あれが、黒花さんの武器…?」

 

「そう。あの渦の中に入ってる武器なら一切の制限なく使える。デメリットはあるけど負ける要素ないのがズルいよね」

 

渦は角度を変えながら弾を発射し、捌ききれなかった攻撃に対応している。

 

「そろそろ突っ込むか。こっちは好きにやらせてもらうから頼んだぞ」

 

渦から黒い刀を抜いた途端、黒花さんの姿が消えると同時に1体のバーテックスが3枚に下ろされた。

ワンフレームのうちに倒されたことにびっくりして目が離せない。

 

「黒花さん、本気なんだ…ならっ!」

 

美穂さんはそう言って変身し、人樹へ視線を向ける。

 

「これより私たちは人樹を叩く!皆、力を貸して!!」

 

「ちょっと待ちなさいよ!あの人1人にして大丈夫なの!?」

 

「既に人樹は私たちを敵と判断した以上時間は無い。少しでも現実への被害を減らすのなら本丸を叩くだけ!」

 

「でも、私たちが行っても間に合うんじゃ…」

 

「大丈夫。あの人なら何とかするよ。だってほら」

 

指差す先で二体の巨大なバーテックスが倒れている。

 

『オレを倒すだと?戯け!本気で倒したければこの3倍は持ってこい!』

 

遠くにいるのにハッキリ聞こえる強い声。

その声は僕の魂を強く揺さぶるほどだった。

 

「……そうだね。僕たちも頑張らないと!」

 

「よし、みんな武器は持ったわね?それじゃカチコミ行くわよ!」

 

「えぇ。邪魔するやつは全員斬る!」

 

「どのような行動をするか分からないので慌てず行きましょう!」

 

「うんっ。皆で乗り越えよう!」

 

「私たちの御役目を……果たす!」

 

僕たちはそれぞれ変身し人樹へ向かう。

本体はこの戦況でもまだ動かない。

 

「牽制やってみるの?」

 

「反応の有無を確認するにはいいかもしれません。今回は私が…」

 

「東郷さんはダメだよ。あの呪いは生半可なものじゃない」

 

「となると……私しかいないか。まっ狙いは決めてたけどさ!」

 

美穂さんのライフルから数発の弾丸が放たれ人樹へ撃ち込む。

狙ったところに当たり爆発が起こるものの多少皮膚がめくれただけ動く気配は無い。

 

「うへぇ…あの程度で済んじゃうかぁ。私の武器だけ威力軽減するとか有り得てきた」

 

「だとしても御霊があるのかすら怪しいわね…」

 

「なら近づいて倒すだけだよ。足元と人樹の身体には気をつけて」

 

根の上に立つと人樹の大きさとその異様な姿に圧倒される。

無機質と思っていた表層は人のような肌をしており、根も人の髪のような感触を靴裏から感じる。

 

「ハァッ!」

 

夏凜が刀を手首の辺りに振るう。

刃は白い肉を滑らかに切りつけるものの出血は無い。

舞うように刀を振るうも傷が増えるだけで変化は無い。

 

「それなら……どいて夏凜!」

 

今度は風先輩が身長の何倍もの大きさとなった剣を振り下ろす。

剣が胴体にぶつかると肉が潰れる音がよく聞こえた。

 

「クッ…!当たりはするけどやれてるかどうか…!」

 

「お姉ちゃん!手伝うよ!」

 

樹ちゃんのワイヤーが大剣に絡みつくと負荷がかかったのかどんどん沈んでいく。

 

「御霊に当たらなかったッ!どこにあるの!」

 

「だったら、こうするまでッ!!」

 

美穂さんが風先輩の作った傷穴目掛けビットの攻撃を続ける。

白い皮膚が削られる度黒い泥が傷口から飛び散る。

 

「やっぱり出てきた!」

 

「あれには絶対触れないでください!」

 

「風先輩!手を貸します!」

 

「悪いわね!」

 

友奈、夏凜、千景さん、珠子さんと僕は樹ちゃんの糸を掴み負荷をかけていく。

美穂さんの援護に東郷さんの狙撃銃と杏さんのクロスボウが加わり傷口付近の爆発が大きくなる。

これだと伐採じゃなくて解体だ。

 

「くぅぅ…!もう、少しッ!」

 

大剣が人樹の半分近くまでめり込み泥の噴出も増している。

このまま行けば自壊するのも時間の問題────。

そんな思考をかき消すかのように人樹の伸びていた右手が一度歪な方向に曲がった。

僕たちの間に緊張感が走る。

ここまでやったのだから動くはずがないと考えていたのだから尚更驚きと焦りが強まる。

右手を指いっぱいに広げると勢いよく自分の左胸を貫いた。

 

『!!!???』

 

唐突な出来事に僕たちは見入っていた。

胸元から滝のように溢れる泥の中から肉がちぎれる音と共に取り出したのは鼓動をする肉の塊。

所々四角くなっているがそれは紛れもなく『心臓』。

 

「……ッ!あれ!!」

 

「分かってる!ビット!」

 

遠距離のビットが蜂のような軌道を描きながら集中攻撃をする。

光線で心臓が焼けるが致命傷とはなっていないのか鼓動は止まらない。

 

「……なぜ人樹は御霊を引き抜いたのでしょうか」

 

杏さんがふと呟く。

 

「身体の入れ替えなら私たちの前でしなくてもいい…むしろ隙を晒してデメリットにすらなる。だとしたら別の何かが…」

 

「杏?」

 

「私たちの前だから出来た。バーテックスと勇者が集まるこの瞬間を待っていた……」

 

「ッ!マジかッ!?」

 

美穂さんの声でハッと顔を上げると、人樹が心臓を握り潰そうとしていた。

痛みを感じないのかどんどん力を込めている。

──グジャリ。

果実を潰した音と共に手の中で弾ける。

ほぼ同時に人樹の身体が水風船のように膨れる。

 

「皆逃げてッ!」

 

咄嗟に武器を消しひたすら後方へ走る。

間もなくして限界に達した人樹の身体が黒い泥を撒き散らしながら破裂した。

 

◆◇

 

ギリギリだったとはいえ泥の濁流に呑まれること無く離れることが出来た。

 

「おい。これはどういう状況だ」

 

「黒花さん!?バーテックスは?」

 

「人樹が破裂する前に霧みたいに消えた。ったく何が何だか分かったもんじゃねぇ」

 

「人樹が白旗上げた…わけないわね」

 

「どう考えても本番でしょ」

 

人樹の残した泥の池の上に、1人の女の子が浮かんでいた。

色素の無い白い肌と短い髪が黒い池に反射し独特な光景を生み出している。

 

「あれは……。まさか、模倣したとでも言うのか…?」

 

黒花さんが口元に手を当て女の子をじっと見つめる。

 

「模倣データは神樹からくすねたか…だとしてもあんな歪な腹はしねぇだろ…」

 

「何か知ってるんですか?」

 

「ありゃ………神さ」

 

「神…?」

 

間の抜けた回答に思わずコケてしまいかけた。

そりゃ人樹っていう神から生まれたんだから当たり前──ん……?人樹は人の生きたいという願望から生まれた存在。

そこに神の介入する余地は無い…。

 

「まさか、人樹は『神』を産み出そうと…!?」

 

「そういうこった。神降ろしに必要だったのは『バーテックス』と『現人神』の力。前者は神樹を経由して回収出来るが、勇者の力はお前ら由来のもの。だからここで待ってたのか」

 

「私たちは人樹の上で踊らされていたと?」

 

「そうなるな。そして用が済んだらどうなるかも分かるだろ」

 

その言葉に答えるかのように女の子の浮遊がピタリと止む。

開かれた紅い眼は私たちをはっきりと捉えていた。

蛇に睨まれたかのように私の全意識は女の子に向けさせられた。

舞い降りた足が池に波紋を作る光景はとても美しいと感じてしまう。

 

『──問おう』

 

その声は女の子から発せられたとは思えないほど重々しく無機質だった。

 

『貴方たちの生きる意味は、なんですか』

 

これまで何度も聞かされた問い。

私は嘘偽りない答えを遠くにいる彼女へ向け答える。

 

「………私は、夢を叶えるために生きています。いつか、炎の無い外の世界へ行き旅をする。当たり前だったことをしたいんです」

 

「僕は、何気ない明日を過ごすために生きています。皆といる普通の日々が僕の守るべき場所なのだから」

 

私に続いて優樹君も答えた。

その言葉にブレは無く心の底から思うのが伝わる。

 

『………そのような考えは、認める訳にはいきません』

 

彼女は私たちの答えを正解として認めなかったらしい。

突如現れた()を地面へ振るうと人樹の肉片が意志を持ったかのように集まり形成していく。

まるでバーテックスを作る星屑みたい……。

 

『彼らは残したくても残せず、生きたくても生きられませんでした。貴方達ににそれを言う資格はありません』

 

背後に生まれたのは天を見上げるほどの龍。

空間を劈く咆哮はこれまで聞いた事のない程の声量。

 

「ううぅ…!何なのよこれ!」

 

「これが神の力とでも…!?」

 

「コイツをこの空間から出したら私たちの敗北……そうですよね黒──」

 

背後を振り向いた私は、()()()()()()()()()()()()()を見て頭が冷えるのを感じた。

 

「黒花さんッ!!」

 

先程までの威勢が嘘のようなくらい衰弱していた。

膝立ちになり呼吸も大きく乱れている。

 

「まさか、オレの許容を越えるとは…」

 

「黒花さん何を…」

 

「前に泥を食らったって言ったよな…あれは言葉通り、体内に取り込んだ。こうでもしなきゃオレは飲まれて消えてたのさ…ぐっ…!?」

 

髑髏を黒く染めながら再び吐き出す。

力を使った反動なのかもしれないけど……このままだと……!

 

『私たちの元へ来るというのなら救ってあげます。苦しんで生きることに意味なんてありません。さぁ、共に溶けましょう』

 

「そんな甘い話が通用するかッ!」

 

私は怒りに任せ彼女の元へ一直線に飛ぶ。

鞭と剣が一瞬にして交わり、火花を散らしながら下がらせる。

 

「生きるのが苦しいなんて知ってる!だから人は手を取り合うんだ!」

 

「愚かですね。頑張っても報われない事もあるのを知っているでしょう」

 

「それは我儘だ!──ッ!?」

 

急ブレーキがかかったような減速で姿勢が崩れる。

その隙を見逃さんとばかりに鞭が伸びる。

盾で直撃は回避したけど衝撃は殺せなかった。

泥を撒き散らしながら転がりつつ姿勢を整える。

しかしここは敵地のど真ん中。

泥は私の足に即座に絡みつく。

 

『おや。これは面白い展開じゃないか』

 

「……ッ!よりによってあんたか!」

 

私は軽く足を払い調子を確認する。

違和感はあるが動ける。

あとはこのうるさいのを止めれれば…!

 

『君のピンチに来たのにつれないね』

 

「はッ!それがッ!!」

 

独り言を放ちながら剣とビットを駆使し翻弄する。

 

『周りをよく見たら?』

 

「なッ!!」

 

敵から距離を離し背後を向くと、龍がとぐろをまきながら勇者部の皆へ襲いかかっていた。

雷と豪雨が局地的に降り注ぐそれは災害そのもの。

 

『君はいつも突っ走って気づいた時には手遅れ。その性格直すべきだと思うけど』

 

「黙れぇぇぇ!!」

 

大ぶりの剣戟で圧倒するも敵は無表情で合わせるだけ。

無駄のない動きと正確な間合い。

コイツ…出来る!

 

『そこは冷静か。それじゃ復習の時間だ。数分前、君が彼女へ向けて放った言葉を思い出そうか』

 

いきなり何を言って…?

ビット操作に加えこの状況でかなりキツイのにまだ何かさせるの?

 

『はぁ…つれないね。正解を知りたければ横に避けろ』

 

「は………ッ!?」

 

「ッ!!」

 

直後、背後に強い圧を感じ咄嗟に避ける。

私の居た場所に振り下ろされたのは大剣。

 

「美穂さんッ!!」

 

「ゆ、優樹君!?」

 

池の中に躊躇無く飛び込んできた優樹君。

着地とともに苦痛の声を口から漏らすも、眉間に皺を寄せながら盾を出し防ぐ。

 

「そうだッ!皆は!!」

 

「今は大丈夫!大変な状況だけど何とかなってる!」

 

「ここは大丈夫だから優樹君はあっちを──」

 

「千景さん達から託されたんだ。『美穂さんを助けて』ってッ…!」

 

「ッ……!」

 

敵の鞭で押されながらも盾で耐え凌ぎながら言葉を紡ぐ。

 

「だから僕はその想いに答えるために来た。それに勇者はいつだって助け合いなんだからね」

 

「…………馬鹿だなぁ。こんな時に忘れるなんて」

 

あんな啖呵切ったのがアホらしいったらありゃしない。

今こそ手を取り合うべきなのに私はまた1人を望んだ。

もう……1人じゃないってのに。

 

『理解できて結構。悪いがさっさと倒してくれると大いに助かる。この呪いは不味い』

 

「アンタってほんと敵か味方か分からない」

 

『勘違いにも程がある。僕は君の敵だよ。でも君が余所者に倒されたら僕の力が格下と思われる。それは絶対にあってはならないだけさ』

 

「………………ありがとう」

 

どこかで戦う律儀な宿敵と彼女と戦う優樹君に礼をし敵を睨む。

今度は怒りじゃなく決意を込めて。

 

「まさか呪いを受け入れるとは思いませんでした。ですが貴方たちの負けは変わらない。ここで惨めに足掻いて無力さを知りなさい」

 

「なら言葉通り足掻いて見せつけなきゃね。神様の裁きなんて跳ね除けられるってことをさ!」

 

「貴方たちが残した思いも、これから起こる責任も、全て背負って僕たちは明日を描く!」

 

僕は鎌を構え堂々と放つ。

私は剣を構え堂々と放つ。

 

「「そのために、ここで乗り越えてみせる!!」」




【次回予告】
今も!これからも!!勇者であり続けるんだああぁぁぁぁーーーーー!!!
██、あなたの思い確かに受け取った!
私は████。██の勇者よ
グッドラック、です!

次回 其の拾 キボウノヒカリ
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