安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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今回から西暦編となります。優樹君の視点は文化祭の演劇「明日の勇者へ」からしばらく後になります。


【第二章】郡景義は勇者でない
千景と景義


「忘れてた訳じゃ無かったけど……ようやく落ち着いたなぁ」

 

以前、姉さんから自分の部屋の書籍を確認してと言われてから結構時間が経ってしまった。ようやく落ち着いたけど、本当にいろいろあったからね…

 

「今日は部活もお休みだし、ゆっくり確認できるな」

 

姉さんから聞いた限りでは、かなり重要そうだったけど…一体何があるんだ…?

 

そんなことを考えながら、僕は姉さんの部屋に入った。

 

──時々掃除とかで入ってたからそこまで埃は溜まってないな。

 

「えっと…引き出しと本棚って言ってたけど……とりあえず引き出しから確認するか…」

 

本棚の方でも良かったのだが、生憎姉さんの本棚はいろんな書籍があるのでどれが目的の書籍かわからないんだよね…。

そんな訳で引き出しを開けると、中に入っていたのは一冊の古い書籍だった。

 

「これ…かな。タイトルは無いみたいだけど…」

 

表紙を開くと最初のページにはこう記されていた。

 

『これを読んでるのは乃木か花本か。それともどちらかが託した家の人間であると信じてこれを書く。読んでるのが大赦や上里で無い事を祈る』

 

乃木に花本…どちらも知っている…。そういえば園子は大丈夫なのかな……。いやそんな事より…これを書いた人は大赦や上里家でないことを祈るって……

 

僕はそのまま次のページを開いた。

 

『これが見つかったって事は、俺はもう死んでるんだろうな。まあそれは構いやしない。千景が…姉さんが死んだ今となっちゃ俺の人生なんざ死んだようなものだからな。なんて言ってたら若葉辺りに殴られそうだな』

 

これを書いた人はお姉さんが居たんだ。理由はわからないけど亡くなってしまったと。それにしても…千景か。最近見てないけど、元気かな…。

 

少し前から見かけなくなった白猫を思い出しながら続きの文章に目を落とした。

 

『ひとまずは俺の名前を書くか。俺の名前は郡景義 ()じゃないぞ?()だからな?間違えるなよ?』

 

郡…聞いたことない苗字だ。少なくとも大赦関連では無いのかな…?だとしても何故、乃木家や花本家が……

 

『西暦という一つの時代の終わりを見届け、神世紀の始まりを生きた一人の愚か者だ』

 

愚か者……。一体何があったんだろうか……。

次のページに目を落とした。

 

『ああそうだ。日記も託しておくが、読もうが捨てようが好きにしろ。これに書かれてるのは俺が死ぬまでの()()()()()()くらいだ』

 

日記…?もしかして姉さんが言ってたもう一冊か…?

大まかな歴史……なら日記も探した方が良さそうだ。

 

そう考えた僕は、姉さんの本棚からそれらしきものを何冊か取り出した。

 

「この中には無い──ん?」

 

引っ張り出した書籍にそれらしきものは無かったけど、パタンと倒れた厚みのある書籍に違和感を感じた。

 

そして違和感を感じたその書籍を手に取った。

 

「これは…」

 

そこに記された内容は────神世紀のものではなかった。

 

『2015年7月30日 世界はとんでもないことになったらしい』

 

僕はそのまま日記ともう一冊の書籍を合わせながら読み進めていった。

 

◆◇

 

全国で大地震が起こった。

 

他は知らないけど、少なくとも高知でこんなに大きいのはここ最近無かったはずだ…!

 

「やばい…!」

 

俺はすぐさま机の下に潜り込んだ。……そうだッ!姉ちゃんは…⁉︎大丈夫なのか⁉︎

 

揺れが収まると同時、俺の頭に姉の場所が流れ込んできた。ここに行けって事なのか?というか姉ちゃん家に居ないのか⁉︎

 

「今は夜だけど……いや、関係ないな」

 

どうせ俺は居ない者と同義だ。姉ちゃんを待つべきかもしれない…。だが、ここに居たらあのクソ親父が帰ってくるかもしれない。

 

そう考えた俺は、家を飛び出した。

そして流れ込んできた場所──どこかの神社へ向かって走った。

 

◆◇

 

外が騒がしい。やれ物が落ちただの、やれアイツは大丈夫かだの夜だってのにまるで昼間のようだ。

 

そんなのどうだって良い。俺はとにかく行かなきゃ…!

 

頼む……姉ちゃん、無事で居てくれ…!

 

「どこだ…⁉︎」

 

道標は浮かんできてるからわかる。だが、本当にここなのか⁉︎ いや、今は信じるしかない…。

 

導かれるままに、俺は走った。

 

◆◇

 

「姉ちゃん!」

 

「景義……」

 

「あなたは…」

 

目的の場所に辿り着くと、そこには崩れた神社と何か刃物のような物を手にした姉と知らない女の子が──⁉︎

 

今のは…⁉︎

 

「景義⁉︎ 大丈夫⁉︎」

 

手にした得物を持ったままの姉ちゃんが俺の両肩を掴んだ。

 

「ぁ…うん…大丈夫…それより、この子は…」

 

「ぇ、うん…この子は…はな──」

 

花本美佳(はなもとよしか)……でしょ?」

 

「──⁉︎ な、なんで⁉︎」

 

なんで名前がわかったのか。多分、そう聞きたいのだろう。

はっきり言ってしまえば、俺にもよくわからなかった。

ただ、流れ込んできた。それだけだ。

 

「あなた達は……神様……?」

 

「「はぁ!?」」

 

◆◇

 

大きな地震が起きてからしばらくの時が経った。

俺は、あの日からたまたまあった分厚い本に日記を付けるようにした。

と言っても、地震が起こった日とその翌日は思い出しながらだったが……。それからは流れ込んだものを──導かれるように書いていた。花本美佳と出会った事やその後家に帰った事とか。

 

そして、俺たちの家に変な人たちがやって来た。

 

神社の人たちのような服を着たおっさん達と隣にはあの時出会った少女が佇んでいた。

 

「なんだよ……おっさん達……」

 

俺が問いかけると、一番前のおっさんが口を開いた。

 

「我らは大社に務める者です。神樹様と若き巫女達のお告げにより、あなた方をお迎えに上がりました。」

 

「……は?なんだよ迎えって」

 

コイツらの言葉に俺は警戒した。もしかしたら姉ちゃんを傷つける存在かもしれないからだ。

 

美佳(よしか)

 

「はい」

 

「君は……あの時の」

 

警戒を感じ取られたからだろうか、話を始めたおっさんの近くに居た美佳と呼ばれた少女が前に出された。

 

「お久しぶりでございます。勇者様達を丸亀城にお迎えしに来ました。」

 

「勇……者?」

 

姉ちゃんが聞き返した。てか、勇者達って……

 

「なんだよ、まさか俺もそっちに行けってか?」

 

「はい……郡千景様と郡景義様……あなた方には香川の丸亀城まで来てもらいます」

 

「拒否権は……無いか」

 

まあ、姉ちゃんが承諾すれば俺は文句は無い。そういやクソ親父どうしたんだ?

 

「なあ、俺は姉ちゃんが良いなら構わないんだが、一応保護者のクソ親父はどうするんだよ」

 

「景義……」

 

「姉ちゃん、俺は絶対にアイツを許さないからな。」

 

「……うん。私は……良いよ。いこ」

 

「ん、じゃあ俺も行くよ」

 

「ありがとうございます。それと、お二人のお父上には既に話を通しております」

 

神官のおっさんが言った。

 

「はっ!あっさり承諾しただろう!」

 

「はい。人類の為のお役目とお伝えしたら、二つ返事で了承してくださりました。」

 

二つ返事か。まあ、どうでも良いけど。

 

「それで、すぐ行くの?」

 

「はい、お二人の準備が整い次第ですが」

 

「だってよ姉ちゃん」

 

「うん……じゃあ、荷物まとめてくるね」

 

「りょーかい」

 

「そんじゃ、そう言う事で。」

 

俺と姉ちゃんは、部屋に引っ込んで、自分の物をカバンに詰め込んだ。

 

「ウォークマン……。これだけは絶対に持っていかないとな。」

 

コイツは俺を支えてくれた相棒だ。……まだ両親が仲良かった頃に買ってもらった大切な物だ。

今となっちゃ、両親には会いたくもないが……コイツが無かったら、今頃俺はどうなってたか見当もつかなかった。

 

「あとは、本くらいか」

 

まあ、これは何冊かあれば良いだろう。

準備はこんなもんか。

 

◆◇

 

「景義」

 

「姉ちゃん、早かったね」

 

「うん……。ねえ、私たちもうこの家に帰れないのかな」

 

姉ちゃんはどこか寂しげな声で言った。

 

「そう……かもな。でもまあ、良いんじゃないか?村の奴らだって俺らがいなくなって清々してるだろしな」

 

「うん……。」

 

「行こう、姉ちゃん」

 

「うん……お願いします」

 

「はい、安全運転であなた方をお送りします。」

 

俺たちは、生まれ育ったこの高知の家を後にした。

じゃあな、クソッタレな我が家。

じゃあな、クソッタレなこの村。




今後の投稿は、毎週日曜日または毎週木曜日を目標にさせていただきます。のわゆ編の次回予告ってどうしような……。

オリキャラ紹介
郡景義 郡千景の弟で11歳(バーテックス襲来時) 高知出身で村での扱いは原作の千景と同じ。自分を傷つけるのは構わないが大好きな姉を傷つける事は絶対に許さないと村の人間を憎んでいる。
バーテックスの襲来と共に巫女と同じようなものが見えるようになったイレギュラー。見えるものは、人の名前や神樹様のお告げ。名前が見えるが死神の目と違い寿命は見えない。両親がアレな為、千景を何よりも愛している。過去に千景を守りきれず傷つけられた事が負い目になっているが、千景はそれを知らず、普通に大切な家族として接している。
趣味は音楽と読書でボヘミアンラプソディをよく口ずさむ。千景の影響でゲームもするが、格闘ゲームが苦手。
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