どっかで時飛ばさないとグダグダになるかもしれない。
×月×日 俺と姉ちゃんは、丸亀城に連れてこられた。
◆◇
「今日からあなた方にはここで暮らしてもらいます。
部屋は千景様がこちらで、景義様はこちらになります。」
「……はい。」
「わかった。」
俺たちはそれぞれの部屋に案内された。
丸亀城に設立された寮のようなものらしい。そして7つある部屋の内、俺と姉ちゃんを除いた5人も既に来ているそうだ。
……もしもそれが姉ちゃんを傷つける存在ならば……例え勇者であろうとも……。
◆◇
○月×日 今日から授業が始まる。その前に他の勇者達と自己紹介やちょっとした話をした。今のところ、村の連中のように姉ちゃんを傷つける存在では無いようだ。
「……行くか」
俺は日記を閉じ、教室へ向かった。
◆◇
「おはようございます!今日から皆さんの担任を務めます、鷲尾と申します。」
教室に神官らしき男性が入ってきた。
鷲尾先生……か。俺も姉ちゃんは教師にも碌な思い出は無い。だから見極めなければ……。
「……えー、今日から授業を担当するという事で、出席でも取ろうか。」
ふむ……掴みは至って普通の教師だ。自己紹介かとも思ったが、俺たち既に見知った程度の関係だしな。今更感もある。
「では、伊予島杏さん」
「は、はい……」
出席番号の若い順──50音順の最初に当たる伊予島が返事をした。
顔合わせで少し話した印象は、人見知りで俺を警戒しているようだ。まあ、俺も警戒してるからそれは構わない。現状は様子見だ。
村でこういうタイプのヤツは居なかった。居たとしても多分俺らみたいになるからな。あそこはそういう場所だ。クソッタレが……。
閑話休題
「次は、上里ひなたさん」
「はい」
上里ひなた。乃木若葉を導いた巫女らしい。らしいと言うのは、本人が巫女だと名乗っていたからだ。曰く、巫女というのは神の声を聞ける存在であるという。それと勇者を導いた巫女が三人いるそうだ。一人は上里ひなた、二人目は名前を聞いたが忘れた。そして三人目は、俺と姉ちゃんをここに連れてきた張本人の花本美佳だ。
第一印象は、おっとりとしているが、どこか圧を感じる気がする。そして基本的に乃木若葉と一緒に行動している。という事くらいしかわからなかった。現状、警戒。
「次は……郡景義君」
「……はい」
次は俺だ。勇者や巫女では無いのでここに居ないはずなのだが、何故かここにいる。理由は知らん。
ただ、俺が謎の声を聞けることは、上里だけが知っている。それを聞かれた時、直感で知られると面倒だと思ったので誤魔化そうとしたが、それは無理だった。今のところ、この事を知ってるのは俺と上里だけだ。『今のところ』ではなく、『今後も』であると俺としてはありがたい。巫女は大社所属だから連中に知られると厄介な事になりかねないしな。
「次は──郡千景さん」
「はい……」
次は姉ちゃんだった。姉ちゃんは基本的に感情を表に出そうとしない。それは自分を守るためにそうせざるを得なかった……。普段は家族として接する俺であろうとだ。だから俺は姉ちゃんの笑顔を
昔の笑ってた姉ちゃんを……俺が奪ってしまったから……。
「郡さんは姉弟なのか。それじゃあ、郡君と郡さんで呼び分けるよう心がけるよ。」
「……はい」
「はい」
姉ちゃんと俺が同時に返事をした。ぶっちゃけ名前なんざどうだって良い。ちゃんと『郡』と呼んでくれるだけで……。
「次は、高嶋友奈さん」
「はい!」
高嶋友奈。とにかく元気。郡をグンと呼び間違えていたものの、姉ちゃんが良いと言っていたので、俺も気にしていない。姉ちゃんだけじゃなく、皆とも仲が良いみたいで少し話した印象は、誰かを傷つけられるようなタマでは無かった。
現状、警戒の必要は無し。
「次、土居球子さん」
「はい!!」
土居球子。伊予島杏とは真反対の性格ではあるものの、いつも一緒にいるようだ。誰とでも仲良くなれるタイプらしく、姉ちゃんにも話しかけていた。
現状、保留
「では最後に……乃木若葉さん」
「はい」
乃木若葉。所謂、委員長タイプで堅物。大社から暫定的な勇者のリーダーを命じられている。そして居合が得意。恐らく勇者の中でも一番強い。多分姉ちゃんはこういうタイプが苦手だろう。
現状、警戒。
『きっと大丈夫』
そんな思いは抱かない。
『絶対大丈夫』
そう確信するまでは、人を信用しない。
姉ちゃんを傷つける存在で無い事を確信するまでは……。
もう、俺のせいで姉ちゃんに悲しい思いをさせたくないから……。
◆◇
「かーげくーん!」
「……高嶋」
授業が終わり、明日から始まる訓練の為にさっさと帰ろうとした俺の背中に声をかけたのは、勇者であること以外ほとんど不明の高嶋友奈だった。
「明日から遂に訓練だよ…!私、今からすっごくドキドキするよ!」
「さいですか……」
いつか来る戦いの為に、勇者達は訓練があるらしい。
鷲尾先生が言うには、敵を倒せるのは神に選ばれし勇者のみだそうだが……いかんせん信じられない。訓練とやらは俺も参加する事になったらしいが、一体何をするんだ…?
「あれ?ぐんちゃんは?」
「先に帰ったよ。部屋に行けば居るんじゃね?」
多分今頃、ゲームでもしてるんじゃないか?明日から訓練始まるし
「そうなんだ……ぐんちゃんとお話ししたかったけど……後でお部屋に行こうかな」
「まあ、良いんじゃない?高嶋なら姉ちゃんも喜ぶよ」
今のところ、姉ちゃんとマトモに話せるのは、高嶋くらいだからな。最初はかなり警戒してたが……。姉ちゃん、心を開いてくれて本当に良かった……。高嶋は今のところ姉ちゃんを傷つける存在じゃないから……俺も安心できる。
「高嶋はさ、姉ちゃんのこと好きか?」
「うん!でも、ぐんちゃんだけじゃなくて、皆が大好きだよ!」
「そっか……。」
まだ出会ってそこまでなのに高嶋は凄いな……。俺はまだ、他のヤツらを警戒してるってのに
「そんじゃ、俺も行くわ」
「うん!また明日ね!」
高嶋の言葉に手を振って応えた。
……この後の行き先はもう決まっている。
◆◇
コンコン
「開いてますよ」
ガチャ……
「よう」
「景義さん、さっきぶりですね」
「そうだな。そういや乃木は?」
「日課の居合です。呼んできましょうか?」
「冗談だろ。この話だけは知られるわけには行かない」
できればここに居たくはないのだが、
顔合わせの後で上里にバレた時は、同じような力だからわかると言ってたが、俺にはよくわからん。というか、そもそも俺は男だから本当ならそんな事無いはずなんだがな。
「……そうですね。とりあえず、お茶淹れますね」
「いや、良いよ。用が終わったら姉ちゃんのとこ行くから」
「……本当に千景さんが大事なんですね」
「ああ……。だけど俺は……姉ちゃんを守りきれなかった。だから今度こそ──いや……忘れてくれ」
余計なことを喋ってしまった……。
「……わかりました。それで、いつからなんですか?」
「────7月30日。多分、全員が勇者の武器を見つけたであろう日からだ。」
特に兆候も無く、本当に唐突だった。
「同じですね……。私もバーテックスが襲来する直前に見えました」
「俺は地震が収まってすぐだ。姉ちゃんの居場所と花本美佳の
「そういえば、あなた達を導いたのは花本さんでしたか」
「ああ。そういえば、俺と姉ちゃん以外も巫女に導かれたんだったな。」
「はい。若葉ちゃんが私で、珠子さんと杏さんは、安芸さんが導きました。」
ああ、そうだ。そんな名前だったな。確か──安芸真鈴だったか?前に土居達が言ってたのを思い出した。
「なるほどな。」
「そういえば、俺はこれからどうすれ良いんだ?」
「……それは、どういう意味ですか?」
上里は怪訝そうな顔で聞き返してきた。
「勇者は勇者としての訓練、巫女は巫女としてのやる事があるんだろ?そんで、俺はどちらでも無い存在だ。俺も訓練があるとは聞いてるがどういう扱いなんだと思ってね」
特に何も無いのであれば、俺は姉ちゃんの側にいるつもりだ。もちろん、姉ちゃんが許可すればだが。
「あぁ、その件ですか。でしたら、鷲尾先生から知らされるはずですよ。」
「了解……。そんじゃ、俺はそろそろお暇するよ」
用は済んだ。なら異物の俺はさっさとこの場から消えるべきだ。
「はい、また何かあればいらしてくださいね」
「……善処する」
◆◇
「……景義さん」
あなたは一体……何者なんですか……?
男性であるあなたが私たち巫女のように視えているのは何故ですか……?
勇者である千景さんを見出せたのは……花本さんの名前が視えたのは一体……。
景義は村の事もあり、他人への警戒心がとても強い。でも一度心を開けば一気に変わる。のわゆ本編の高嶋さんへの千景みたいに……。
現在は高嶋さんの好感度がとても高いので、ひなた相手に話す時みたいに淡々としていない。
【次回予告】
アクセルボ○バー
かげくん!今日からよろしくね!
俺は……姉ちゃんを守る。
……夢にしては……リアルだったな……。
其の参 臆病な愛