それと多分、一気に時が飛ぶと思いますがそれでも読んでいただけると嬉しいです。3年前の物語ってなんでこう難しく感じるんだ……。早くのわゆ本編に
×月×日 あれから夢の内容は思い出せなかった。とっさに書いたからそれだけ残っているが、大まかすぎてよくわからない。
「……優しく囁く姉ちゃん……か。俺が見た姉ちゃんは一体何があったんだろうな」
俺の知る姉ちゃんは、あまり感情を表に出さない。
そうする事で自分を守ってきたからだ……。
「……今は、高嶋もいるんだ。いつか笑ってくれるはずだ……。」
取り戻すんだ。あの頃の笑ってた姉ちゃんをもう一度……。
◆◇
「今日はここまでにしましょうか」
『ありがとうございました!』
もう何度目かの訓練が終了し、いつものように鷲尾先生と弥勒先生に挨拶をした。
毎日訓練訓練でしんどかったけど、明日は休日だ。
「かげくんお疲れ様」
「高嶋もな」
高嶋との訓練は正直言ってかなりキツい。
まだ俺が弱いってのもあるが、それ以上に高嶋が強い。この前、高嶋と乱取りをした時は俺が一方的にボコられた。さすが勇者だ。だがいつか一本取ってやる……。
それと教える神官もヤバい。特に弥勒先生……高嶋以上に強いし教え方も上手い。鷲尾先生とやり合ってた時は、弥勒先生にとって専門外の技術であるはずの格闘で鷲尾先生を圧倒していたくらいだ。あの人、素手なら最強なのでは……?
「そういえば、明日は休みだな」
「そうだね!かげくんはどうするの?」
「俺は姉ちゃんと出かけるよ」
久々に姉ちゃんと買い物だからな……!多分ゲームショップだろうけど、今からとても楽しみだ!
「そうなんだ!姉弟水入らずだっけ?楽しんでね!」
「ああ、そういえば高嶋はどうするんだ?」
「私は、特に予定が無いからトレーニングかな」
「おおう……ストイックだな……。」
もしかして、高嶋の強さは休日のトレーニングから来てるんじゃないか……?だとしたら弥勒先生も……?
俺も今度、姉ちゃんとの予定が無ければトレーニングするのもありかもしれないな。
「そうかな……?丸亀城をぐるぐる回るのも楽しいよ!」
「まあ、頑張れよ」
俺は道場を後にした。
◆◇
×月○日 待ちに待った休日だ!とは言っても、姉ちゃんと出かける以外特に予定は無い。まあ、姉ちゃんとゲームかトレーニングかな。
「さて、準備は良いかな。」
「景義?」
「すぐ行く!」
俺は日記を閉じ、部屋を飛び出した。
「お待たせ」
「大丈夫。行こう」
俺たちは目的の場所を目指して歩きだした。
◆◇
「いや〜姉ちゃんと出かけるのって久しぶりだな」
「……うん」
「……」
なんとなく辺りを見渡してみると、広がるのはいつもの光景──では、無いな。
「……なぜ四国なんだろうな」
俺はボソッと呟いた。
あの日に起きた大地震とそれに伴って世界各地に現れた化け物──大社よりバーテックスと名付けられた化け物達によって人間達の文明は壊滅した。
ただごく一部の地域では、まだ人間がいるところもあるらしい。この四国もその一つだ。鷲尾先生曰く神樹様と呼ばれる土地神の集合体のようなものが結界を貼っているそうだが……今、姉ちゃん達が無事なのもそのおかげらしい。
「景義……?」
「ん……どうしたの?」
「何か、考え事をしていたの?」
「……まあ、ちょっと」
風景を見て考え事をしていたら、姉ちゃんに声をかけられた。
ふと前を見ると、横断歩道が近づいていた。考え事をしながら歩くのは危ないな、気をつけないと。
◆◇
「それじゃあ、また後で」
「うん」
目的の場所に到着し、俺は姉ちゃんと別れた。
今日の目的は本屋だからな。あと弥勒先生のお使い。
「とりあえず……先にお使い行くか」
頼まれたのはテーピングとアイシングスプレー。なんで俺が……と抵抗したものの、今週は大社の仕事がどうしても外せないらしい。解せぬ……。
「まあ、姉ちゃんと出かけられたから良いけどな……」
あのおっさんいつか絶対に一発ぶちかましてやる……
そんなことを考えながら、薬局で買い物を済ませた。
「さて、テーピングとかは仕入れたから……本屋行くか」
今日の俺の目的は本屋である。
普段は音楽を聴く方が好きなので読書はそこまでなのだが、最近読んだ小説の作者である瀬戸内煉瓦先生の作品はとても良かった。結構前の人だから新作には期待出来ないが、もしかしたらあるかもしれないという一縷の望みを持って来たのだが、あれは良いものだ……。
閑話休題
「あれってまさか……」
本屋のあるフロアまで行き、いざ本屋へ向かうと、そこには見覚えのある後ろ姿があった。
「……伊予島?」
「郡……君?」
声をかけてみると、やっぱり伊予島だった。
こんなとこで知り合いと会うとは思わなかったけど、この辺で出かけるとこなんてここくらいだもんな。
「あ、あの……郡君……本好きなんですか……?」
「んー……まぁ。」
そこそこ好きなので嘘は言っていない。うん。
そう答えると伊予島の距離が近くなった。
「あ、あの!どんな本が好きなんですか⁉︎」
「近いよ……。まぁ、強いて言えば瀬戸内煉瓦の作品かな……。」
俺がそう答えると、伊予島の反応がさらに強くなった。
「瀬戸内先生ですか⁉︎ 私も大好きです!」
「そ、そうなんだ……。」
なんか普段見てる伊予島とは全く違うな。いつもはずっと本を読んでるか土井と一緒にいるとこを目撃するくらいだったから、なんだか不思議に感じてしまう。
「伊予島は本が好きなんだな」
「はい、私にとって本は生きがいなんです……!読書をしていると心が落ち着いて安らぐんです」
「ふーん?」
心が安らぐ……か。俺とって心が安らぐのは何だっけか。
姉ちゃんと過ごしている時。それと音楽を聞いてる時……。
本を読んでる時は……瀬戸内先生の場合は安らがないな……内容が内容だし。
「なら伊予島のオススメとかあったら教えてくれないか?」
今日の目的は瀬戸内先生の作品だが、無ければ適当に何か買うつもりだったが、本好きの伊予島が居るのなら、何か参考になるかもしれない。……正直、心のどこかでまだこの少女を警戒してるのかもしれない。だが少なくとも1ヶ月以上同じ環境で過ごしていれば、少なからず人柄はわかる。伊予島は絶対に大丈夫だ。というかコイツは誰かを傷つけられるタマじゃない。だからといって積極的に関わるわけではないが。あくまで今回は特別だ。
「……そ、そうですね!でしたら、中へ入りましょうか」
「そうだな」
いつまでも店先で話してたら迷惑だしな。
俺たちは本屋へ入店した。
◆◇
「それじゃあ、俺はここで」
「はい、私はもう少し居ますね。あっ、もしもタマっちに会ったらよろしくお願いします」
タマっち…………あぁ、土居の事か。
「わかった。オススメの作品教えてくれてありがとうな。」
「い、いえ……!本好きな人がこんな身近にいるとは思いませんでしたから……!」
「ん、それじゃあな」
「はい」
あれから伊予島におすすめの小説を教えてもらった。
当初の目的だった瀬戸内先生の作品は、まだ俺が買っていない古い作品があったのでそれを購入させてもらった。そして伊予島からオススメされた長谷建太という作家の作品も購入した。帰った後に読むのが楽しみだ。
「俺の用事は終わったし、姉ちゃんのところ行くか」
◆◇
「景義、今日はありがとう」
「……姉ちゃん?どうしたの急に」
買い物を終え寮に帰る道中、突如姉ちゃんが言った。
「景義が誘ってくれなかったら、これは見つけ出せなかった。だから、そのお礼」
そう言って姉ちゃんは、持っている袋を揺らした。
姉ちゃんが見つけたのは、世間では所謂クソゲーと呼ばれる代物だった。普段そんな作品をやる事はないのだが、姉ちゃんは時々こういう作品を怖いもの見たさで買う事があった。
「……まぁ、昔の作品だし大分アレだと思うけど……楽しんでね」
「うん……」
この後は帰って音楽聴きながら本でも読むかな……。
明日も休みだからまだ大丈夫だ。まだ飛べる。
……姉ちゃんの笑顔はまだ取り戻せていない。
でも、いつか必ず……。高嶋の力を借りてでも……。
次回 第5話【水の様に、花の様に】
景義が購入した小説の作家名は瀬戸口廉也氏と長岡建蔵氏から取らせていただきました。千景が購入したゲームは、たけしの挑戦状です(この頃ならまだありそう)