安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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お待たせしました。
そういえば第1話より時が進んでるとはいえ、景義君のキャラがぶれているように感じますが、皆様的にはどうでしょうか…?


水のように、花のように

「……」

 

今日はいつもより早く目が覚めてしまった。

時計を見ると朝の5時だった。

 

「……目覚めちゃったな」

 

普段はもう少し寝ているのだが、目が冴えてしまった。

今日は休日だってのに……。しゃーない、起きるか。

 

「ったく……せっかくの休日なのに……」

 

悪態を吐きながらも、ベッドから起き上がった。

今日は特に予定が無い。先日買った本でも読むか……?

 

「……道場行ってみるか」

 

何故そう思ったのか、自分でもわからなかった。

多分、直感だろう。まぁ、藪蛇にならなければ良いけどな。

 

◆◇

 

「……ん?こんな時間に誰か居るのか?」

 

道場から微かにチンという音が聞こえた。この音は……刀か……?

 

俺は音のする場所へ足を運んだ。

道場の扉は開かれており、そこに居たのは1人の少女だった。

 

「乃木……」

 

「ん……郡か」

 

居合でもしてたのだろうか。乃木は刀を納めこちらを向いた。

 

「どうしたこんな朝早くから」

 

「それはこっちのセリフだ。」

 

乃木の問いを問いで返した。

 

「私は日課の朝稽古だ。今はこんな状況だが、やらないと落ち着かない」

 

「さいですか……俺はそんな大した理由じゃないよ。ただ目が覚めたから来ただけ」

 

「そうか。ところで郡」

 

「なに?」

 

凛とした表情だった乃木の顔が徐々に不安そうなものになっていた。

 

「私って……郡さんに嫌われてないか……?」

 

「郡さん……?あぁ、姉ちゃんの事か。」

 

確かに嫌ってるかもな。いや、どちらかといえば好感度の問題か?

 

「まぁ……苦手意識はあるんじゃないか?」

 

「そ、そうなのか……⁉︎」

 

俺が答えると、乃木は項垂れた。表情がコロコロ変わって面白いな。

 

「……姉ちゃんもそうだけど、俺だってお前のことを警戒してたからな。お前が姉ちゃんを傷つける存在じゃないかってな。」

 

「わ、私がそんな事するわけないだろ!」

 

乃木が全力で否定した。

 

「まあ、そうだろうな。でもな、それとこれとは別なんだ」

 

「べ、別だと……⁉︎」

 

「ああ。ぶっちゃけ俺のことはどうでも良いんだ。ただ、乃木みたいなタイプは苦手ってだけだし。姉ちゃんは訳あって中々他人に心を開かないからな。身内の俺はともかく高嶋が異常なだけで基本的には誰にでもあんな感じだよ。」

 

まあ、姉ちゃんが心開いたとしても乃木みたいな委員長タイプは苦手かもしれないが……それは黙っておこう。

 

「そ、そうなのか……それは安心して良いのだろうか……?」

 

「さぁ……?多分良いんじゃないの……?」

 

まあ、知らんけど。少なくとも乃木含めてアイツらは大丈夫なはずだ。あとは姉ちゃんから心をひらけば何も問題は無い。それがいつになるのかは知らないが。

 

「そういや、それ模擬刀か?」

 

乃木の持つ白い鞘の刀について尋ねた。さっきの音は恐らくこの刀だったのだろう。

 

「いや、これは生大刀(いくたち)──私がひなたに導かれた時に手にした武器だ」

 

そう言いながら乃木が刀を鞘から抜いてみせた。勇者の武器というだけあって、神秘を感じる。自分で言ってなんだが神秘ってなんだよ……。

 

「なるほどな……姉ちゃんでいう大葉狩がそれになるって訳か」

 

あの日、姉ちゃんが神社で手にした大鎌──大葉狩も乃木の生大刀のように何かを感じた。これも変なもんが見えるせいなのか……? 

 

「おや、珍しい来客ですね」

 

「げっ……」

 

俺の背後から知ってる声が聞こえた。恐る恐る後ろを振り向くと、そこには道着姿の鬼が居た。

 

「げっ、とは随分なご挨拶ですね景義君」

 

「……おはようございます」

 

「はい、おはよう。乃木さんも朝からご苦労様です。」

 

「おはようございます弥勒先生、今朝から精が出ますね」

 

俺は朝からここに来るというのは初めてだったので知らなかったが、乃木と弥勒先生はこうしてよく会っていたようだ。クソッ……藪蛇だったか……。

 

「乃木さんはともかく──」

 

「うぉっ……」

 

咄嗟に背中を向け、逃げ出そうとした俺の襟首を掴みながら、先生は言った。

 

「景義君はこんな時間に珍しいですね」

 

「ちょっ……力強……」

 

せめてもの抵抗をともがいてみたが、やはり逃げ出せなかった。やっぱこのオッサン強すぎる!

 

「理由なんてどうでも良いでしょ……今日は休日なんですし俺は帰る……」

 

「待ちなさい、こんな朝早くに出会ったのも何かの縁。朝稽古です」

 

嘘だろ……。

 

「えっ、ちょ、待って……」

 

「乃木さんも来ますか?」

 

「弥勒先生が良ければ是非」

 

「……!」

 

乃木も参加する事が確定し、俺は抵抗を辞めズルズルと引きずられていった。だってただでさえ弥勒のおっさんもいるのに乃木までいちゃあもうどうしようもないからな……。ちくしょうめ!

 

◆◇

 

「かげくーん?」

 

「……開いてるよ」

 

「お邪魔しまーって!かげくん大丈夫!?」

 

「……おはよ」

 

あの後は大変だった…。弥勒のオッサンにしばかれて、乃木にもしごかれて……というかなんであんなに強いの……?高嶋並じゃない……?

 

「ど、どうしたの⁉︎」

 

「朝早く目が覚めたんで道場行ったら、弥勒のオッサンと乃木がいた……」

 

()()()()()聞こえる高嶋の声に答えた。

 

朝早くから稽古を付けてもらった後、俺はベッドに戻る余裕もなく床に突っ伏していた。普段あそこまでやってないんだが……あのオッサンやけに張り切ってたな……

 

「そ、そうなんだ……」

 

「そういや……どしたの?」

 

わざわざ俺の部屋来るって事は、トレーニングのお誘いとかか?

 

「う、うん……この辺走ろうと思ったからかげくんもどうかなって……」

 

「……行こうか。いつにする?」

 

なんとか床から起き上がりながら、高嶋に向き合った。

 

「だ、大丈夫……?」

 

「……ああ」

 

なんやかんやで俺は高嶋とランニングをする事になった。まぁ……たまにはこういうのも悪くないな。それはそれとして弥勒のオッサンはいつか倒す。

 

◆◇

 

「高嶋」

 

「どうしたのかげくん?」

 

「高嶋はさ……もしも未来が見えたりしたらどうする?」

 

この時の俺は、どうしてこんな事を聞いたのか。

 

その理由は()()までわからなかった。

 

「……未来?」

 

「そう、未来。例えば誰かが辛い思いをする未来が見えたとか」

 

この時の俺は、何を思ってこれを聞き、高嶋はどういう思いで答えたのだろうか。

 

「もしもそれが未来だってわかったら、どうにかして助けるかな」

 

そう答えた高嶋の顔は一瞬だが、曇って見えた。

 

「……だな。」

 

「かげくん?」

 

「ああ、いや気にしないでくれ。変なこと聞いて悪かったな」

 

「うん? じゃあ、ランニング頑張ろう!」

 

「おうよ」

 

未来が見える──か。一体何なんだろうか。

俺は何故そんな事を聞いたんだろうか。

 

「いっくよーかげくん!」

 

「ちょ、高嶋待って……!」

 

俺は高嶋の背中を追って、走り出した。

 

◆◇

 

「なんであんな事聞いたんだろうな……。」

 

早朝の高嶋とのやり取りを思い出してみると、違和感を感じた。

まるで俺が俺ではないよう感覚だった。

 

未来────それはこの世界ではどうなるかわからないもの

 

怪物共の襲撃に勇者や巫女達の覚醒

 

そして何故か俺まで変なものが見えるようになった。

以前、上里に『巫女には何が見えるのか』と聞き、俺が見えているのは()()()()()()だという事がわかった。

 

だが、『夢』に関してはわからない

 

まさか……本当に未来だったりしてな。

だとしても、夢のことはほとんど覚えていない。

神様は俺に何をさせたいんだ……。

ただの傍観者って訳にはいかないだろうが、理解出来ない。

 

「……寝よう。考えてても埒があかない」

 

今は疲労を回復させる為に寝なければな……。

ベッドに入ると、10分も立たないうちに夢の世界へと誘われていった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

────運命の歯車は回り続けている

 

────その者が辿る結末は出会う人によって変わる

 

────それは良くも悪くも…………

 

 

『あ……あぁ……やっと……やっと笑ってくれたな……』

 

『姉……ちゃん……れが……ま……る』

 

『若葉、あとは頼んだぞ』

 

『美佳、必ず届けてくれよ』

 

『じゃあな』




少しずつ時を飛ばしてのわゆ本編行かなきゃ…。今のうちに言っておきますが、景義は他の方々の二次創作のように神様とか神様の使徒的なやつじゃないです。ただのイレギュラーです。
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