安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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本当に遅れてしまいました……。申し訳ありませんでした!

今回から、のわゆ本編です。徐々に第3章の細かいところも着手しなければ…。


勇者になれたら

──2018年 9月1日

 

3年という時間はあっという間だった。

あの時は小学生だった俺たちも、今では中学生だ。

 

「よし、そろそろ行くか」

 

この時間だったら()()()も来てるだろうな。

 

◆◇

 

「はよーっす」

 

「こんな悪魔のブツ今すぐ成敗だ!!」

 

「ん……?」

 

教室へ入ると同時に聞こえてきた第一声がこれか……っていうか球子だな。一体何が──っ⁉︎

 

目の前に広がる光景を確認した瞬間、俺は目を閉じ、後ろを向いた。

 

何故なら────

 

「た、タマっちさん!揉まないでください!」

 

思春期の男にとって目に毒だったからだ。

 

「……おい、朝っぱらから何やってんだ」

 

後ろを向いたままの状態で球子達に声をかけた。

 

「か、景義さん!そんなとこに居ないで助けてください!」

 

「……勘弁してくれ」

 

「景義!このデカいモノをもぐぞ!手伝え!」

 

「なんでだよ……ていうか俺を巻き込むな」

 

ひなたは兎も角、球子は無茶苦茶言うな……。というかなんだよ悪魔のブツって……確かにひなたはデカい……。どことは言わないが……ていうかもげるもんでもないだろ!

 

「おい若葉!」

 

「わかってる!落ち着け土居!」

 

これで一安心。あとは若葉に任せよう。

 

「景義……」

 

「姉ちゃんおはよう」

 

「おはよう」

 

姉ちゃんが教室へ入るのとほぼ同時、もう一人が教室に飛び込んだ。

 

「おっはようございまーす!良かったぁ……まだ遅刻じゃなかった……」

 

「おはよう友奈」

 

「おはよう高嶋さん」

 

遅刻を免れる為、急いでここまで来たらしい友奈は、肩で息をしていた。友奈は時々こうして遅れそうになっている事がある。若葉に見つかるとうるさいが、今は球子の対処に追われてるのでまあ大丈夫だろう。

 

「今日は遅かったな」

 

「おはようかげくん!ぐんちゃん!実は昨日の夜テレビで見た技を練習してたら夜更かししちゃって……!縦拳!回し蹴り!」

 

「おいバカ!」

 

俺は咄嗟に横を向いた。

 

「ほえ?」

 

「その格好で回し蹴りなんてしたら下着見えるだろ……」

 

「あっ‼︎」

 

俺は目を逸らしたまま伝えたので、友奈の表情はわからない。でも流石に気づいたようだ。

 

俺以外は全員女子……今みたいに異性の俺にとって目に毒な出来事はしょっちゅうだ。良くないね。

 

──キーンコーンカーンコーン

 

「授業が始まるぞ。みんな、席に着こう」

 

「了解、リーダー!」

 

若葉の号令に友奈が敬礼を返した。

 

3年もここに居て今更だが、なんで勇者や巫女に混じって俺が所属してるんだろうか。

ここは本来であれば俺は居ないはずの場所だ。5人の勇者と1人の巫女が通う特別な学校で今は巫女のように神の声らしきものが聞けたり夢という形で少しだけ何かが見える俺も一緒に生活を共にしている。

 

最初にここへ来た時点で俺も生活を共にするように言われたから恐らく俺の能力は上にバレてるのだろう。それと一度だけ大社で花本と会った時、花本は俺の夢のことに触れてきた。夢のことは日記に一部を記しただけで()()()()()()()()はずなんだが。だけどあれから特に接触してこない辺り、今は静観といったところだろうか?

 

◆◇

 

──諏訪の通信が悪くなっている

 

若葉から伝えられた状況に、俺は最悪の展開を予想した。

 

バーテックスと呼ばれるようになった怪物達の襲撃によって、世界はほとんど滅びたはずだった。しかし、それに伴い出現した一部地域の結界。その力でここ四国を始めとしいくつかの地域を守っていた。

 

その一つが長野の諏訪だ。

 

若葉曰く、諏訪では『白鳥歌野』という勇者が一人で戦っているそうだ。諏訪との定期連絡をしている若葉やそれに付き添うひなたからある程度の情報は聞いている。何度か参加を打診されたが、俺はなんとなく避けている。神の声や夢のことはあまり知られたくないしな。

 

だが、ここ3年で諏訪の結界は縮小した。

当初は諏訪湖を覆うほどの大きな結界だったそうだが、今となってはかなり小さくなり、人間の居住地域はゴッソリと消えたそうだ。ノイズも酷くなり、この通信もいつまで続けられるかわからないと若葉は言っていた。

 

「……俺に力があれば……」

 

俺は自分の無力を呪った。

 

◆◇

 

「〜♪」

 

何度も聞いたメロディを口ずさむ。

今日はボヘミアンラプソディだ。

 

コンコン

 

「ん?はーい」

 

こんな時間に来客か……。姉ちゃんか友奈か────

 

「景義……すまない」

 

「若葉……こんな時間にどうしたんだ」

 

ドアを開けると、そこに居たのは若葉だった。

ちなみに今は夜だ。いつもひなたと一緒だと思ってたんだが、なんで一人?

 

「……相談したい事があってな。上がっても良いか?」

 

いきなりの提案に俺はため息を吐きながら答えた。

 

「お前なぁ……別に良いけどな、本当はこんな時間に男の部屋に一人で来るのは良くない事だからな?」

 

「わかってる……さっきひなたにも言われた」

 

「そうか……」

 

ナイスひなた。とりあえず、茶でも出すか。

確か麦茶があったはずだ。

 

◆◇

 

「んで?何があった」

 

「実はな……」

 

お茶を出し、若葉に何があったか尋ねると、若葉はポツポツと語り出した。

 

曰く、自分はみんなに自分の意見を押し付けているのではないかというものだった。

なんでそんな事がと思い聞いてみると、どうやら今日の昼飯の時に何かあったらしい。俺は別件で昼飯行ってなかったから知る由もなかった。

 

「ふーん…………まぁ、仕方ないんじゃないか?」

 

「え……?」

 

これから語るのは俺の意見だ。俺なりに思った事をそのまま伝えるつもりだが……上手く言えるかな……。

 

「いつ始まるかわからない戦いを前に不安になっているのは仕方がない。そして若葉は仮とはいえリーダーとしての考えってのがあるんだろう?」

 

「……そ、そうだが」

 

「俺は…………俺やひなたはお前達みたいに直接あのバーテックス共と戦う事が出来ない……。だから俺は己の無力を呪ってるし、多分同じくらい不安に思ってる。」

 

不安と共に自虐の言葉を呪詛のように呟いた。

 

「俺は弱い。大切な家族を守れない俺なんて……なんの価値も──」

 

俺の後悔を遮るように若葉が真剣な目つきで言葉を紡いだ。

 

「そんな事ないぞ景義、あまり自分を卑下するな!」

 

「若葉……」

 

「……郡さんが時々とはいえ、ああやって笑顔を見せてくれるのは、景義が居てくれたからじゃないのか?ならそれは弱さじゃない。景義にとって姉の笑顔を取り戻すという一つの生き方じゃないんだろうか」

 

「生き方……」

 

いつだったかの若葉の言葉を思い出した。

 

『『何事にも報いを』それが乃木の生き様だ』

 

俺が若葉の相談に乗っていたはずなのに、いつの間にか俺が若葉に話を聞いてもらっていたな。……なら俺から言える事は──

 

「若葉」

 

「うん?」

 

「──ありがとう。俺にとっての生き方ってのを教えてくれて。それとな、勇者としての重責ってのはやっぱあるだろうが、それでも俺はお前がリーダーに相応しいと思うよ」

 

「景義……」

 

「でもな、もうちょっと肩の力抜いても良いんじゃないか?球子辺りが同じ事言ってると思うけど、お前結構な堅物だぞ」

 

「なっ……⁉︎ そ、そりゃ今は有事なのだから仕方がないだろ⁉︎」

 

「いや、有事じゃなくともお前はそういうタイプだろ」

 

◆◇

 

それから数週間が経過した。

 

「……っ!」

 

時間が停止し、アラームが鳴り響いた……!────来る。

 

私は側に置いていた武器を手に取り、来たる戦いの光に目を凝らした。

 

「──景義、あなたは私が守るから」

 

◆◇

 

「……ここが」

 

神樹様とやらが作り出した世界──樹海化

まずはみんなと合流しなきゃ……。

 

「ぐんちゃん!」

 

「高嶋さん」

 

声をかけられた方を見ると、乃木さん以外の3人が揃っていた。みんな武器を持っている……。やっぱりここは夢じゃなかったのね。

 

「良かった、じゃあ若葉ちゃんのところへ行こう!」

 

「ええ」

 

「おう!」

 

「はい……!」

 

◆◇

 

「若葉ちゃん!あれっ!もう変身してる!」

 

「常在戦場だからな」

 

「……戦うのね」

 

怖い……けれど、戦わなかったら……弟を守れない。

今度は私が、景義を助ける

 

「みんな、準備はいい?私たちはーー!!勇者になーーる!!」

 

高嶋さんの言葉を合図に、私たちは変身をした。

でも──

 

「ご、ごめんなさい」

 

伊予島さんだけが……変身できなかった。

 

「気にすんな、タマ達だけで十分だ!」

 

「う、うん……」

 

「……伊予島、私たちに任せておけ」

 

乃木さんが刀を抜き、敵の大群へ飛び込んでいった。

 

「勇者達よ!私に続け!」

 

そんな姿を見た私は……伊予島さんに対してついて出そうになった言葉を飲み込んだ。

 

『足手纏い』と……。

 

それは違う…………。私だって守るべき者が居なければ動けたか────っ!

 

「……伊予島さん」

 

「ち、千景……さん……」

 

「貴女が……守りたい人を思い浮かべたら良いかもしれない……わ」

 

「……っ」

 

それだけ伝えると、私は大鎌を敵に構えた。

 

……怖い。動けない……。だけど私には……景義がいる……!だから……!

 

眼前に出現した敵に大鎌を振るった。

敵は真っ二つになり消滅した。

 

「出来た……私にも……」

 

これなら……頑張れる。

 

「土居さん後ろだ!」

 

「っ!」

 

間に合わない──っ!?

 

もうダメかと思ったその時、土居さんの背後の敵に矢が刺さった。

 

「千景さんに言われたように……タマっち先輩を助けないとって思ったら……変身できちゃった」

 

「ナイス千景!」

 

「……!」

 

二人の声を無視して敵に突撃した。

 

◆◇

 

「凄いよね若葉ちゃん。先頭で敵を引きつけて、一番多くの敵と戦っている」

 

「ええ……」

 

あんな大立ち回り、私はきっとできない……。悔しいけど、本当に凄い……。

 

「ぐんちゃん……!」

 

「あれは……」

 

無数の敵が重なり合い、大きな板のような姿に変化した。

 

あれが……進化体……。

 

「杏!」

 

「はい!」

 

「っ……あっぶねぇ!反射板かよ!」

 

「私の拳も弾かれちゃった!」

 

伊予島さんの矢も高嶋さんの拳もあっさりと弾かれてしまった。あんな硬い敵……どうやって……

 

「一回で効かないなら……百回だって!千回だって!」

 

「高嶋さん……!」

 

飛び出した高嶋さんの姿が変化した。

 

それは、勇者達の切り札であった。

高嶋が宿したのは、暴風を具現化した精霊その名を──

 

「一目練!」

 

防風の如く繰り出される無数のパンチは反射板の進化体を徐々に削っていく。

 

「千回連続!勇者……パーンチ!」

 

千回目にも及ぶパンチには流石の進化体も耐えきれなかった。着地をした高嶋さんがこちらにピースサインをした。

 

「友奈のやつ──」

 

「若葉!!危な……」

 

「……ッ⁉︎」

 

隙をつくようにバーテックスが襲いかかってきた。しかし、その牙は通ることがなかった。

 

「……まずいな。食えたものではない」

 

「えぇ……」

 

乃木さんはバーテックスを断ち切ると共に一部を齧りとっていた。

 

「タマ……これから若葉を怒らせないようにする」

 

「私も……」

 

こうして、勇者達の初陣は終わった。




当日の7時に投稿出来ない時は、その日中に投稿出来るよう頑張ります!

すみません、いろいろと忘れてました。次回予告はありませんが3年経った今の郡姉弟について。

景義 姉以外への警戒心がとても強いが一度心を許せば普通に接してくれる。(身内には優しい子) 郡が二人いて紛らわしいから名前で呼べと伝えてるので皆、景義を下の名前で呼んでいる。勇者達やひなたの評価は今となってはそこそこの好感度(友達程度)

千景 この世界では弟という存在のおかげで原作よりは自分の殻に閉じこもっていない(それでもある程度は出てこない) 名前に関してはノーコメントの為、郡と千景どちらでも気にしていない(当ユニバース) 初陣の時は仲間の勇者への当たりが強かったが、景義を守りたいという思いから原作ほど当たりがキツくない(杏へのアドバイス等) 過去に景義が千景を守りきれなかった事を負い目に感じてることにまだ気づいていない。

もしも追加事項あったら設定集に貼り付けます。
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