安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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第2章でやりたい事はまだ残っている。あと何話でわすゆ編に到達できるか……。


みんなの笑顔

あの後、俺たちは実家で1泊してから香川へ帰宅した。

 

それからの姉ちゃんは前よりも真剣に訓練に取り組み始めた。きっかけは多分、アイツらが肯定してくれたからだろう。いや……アイツらだけじゃない。天恐でボロボロになったお袋もだ。

 

俺は……姉ちゃんを止めるべきだったのかもしれない。

アイツらは()()()()()()()()()()()()()()()()だと。自分たちの事しか考えてないんだと。そう伝えるべきだったのかもしれなかった。今となっては後の祭りだが。ああやって幼い時から姉ちゃんを肯定してくれる人が俺しか居なかったから……姉ちゃんは誰かから必要とされる事を己の価値観としているんだ……。

 

「俺は……どうすれば良いんだよ……」

 

考えても答えは出なかった。日記を見返してみても、書いてあることは変わらない。

 

「かげくん!」

 

「……友奈」

 

俺は今、病院に来ている。先の戦闘で切り札を使った友奈が検査入院になったからだ。

 

「思ったより元気そうだな」

 

「検査入院だからね、でも切り札って体に凄く負担がかかるんだって」

 

「そうなんだ」

 

そんな力を宿して戦っていたのか……勇者ってのは

 

「なぁ、友奈」

 

「どうしたの?」

 

俺は、俺の中に浮かんできた想いを友奈に打ち明けた。

 

「勇者ってのは、どうすればなれるんだ?」

 

そう尋ねると、友奈は頭に?を浮かべてそうな表情で首を傾げた。

 

「勇者に?うーん、よくわかんないや」

 

「そうか……。」

 

そんな気はしていた。勇者や巫女というのは神に選ばれた少女がなれるものと聞いている。だが俺は男だ。巫女と同じような事ができる訳のわからない存在だが、勇者になることは叶わないのか……?

 

「でも、なんで急に勇者のことを?」

 

「変なこと聞いたな。もし俺もみんなと一緒に戦えたら姉ちゃんの事を守れるんじゃないかって────思っただけだよ……あれ、友奈は?」

 

さっきまで俺と話していたはずの友奈が居ない。

 

「友奈?」

 

友奈の名前を呼んでみるものの、返す声は無かった。

 

「……まさか」

 

俺は友奈の端末へ連絡した。

 

『はい高嶋です』

 

「もしもし友奈、今どこ?」

 

『か、かげくん……もしかして抜け出したのバレちゃってる……?』

 

やっぱそうか……。戦いが始まって病院を抜け出したみたいだ。

 

「いや、まだ俺しか知らないよ。でも、バレたらヤバそうだし早めに戻ってこいよ」

 

『は、はい……すぐ行きます……。』

 

友奈の言葉が終わらないうちに電話を切った。

あっちは多分大丈夫だろう。俺は……友奈が帰ってくるまでの時間稼ぎだ。

 

◆◇

 

後日、俺は大社に呼び出しを食らった。

理由はまだわからない。特にやらかした覚えも無い。

 

「日記は念のため隠しておくか」

 

万が一誰かに見られたら面倒だ。といっても書いてるのはほぼ3年前の事だが

 

日記の一時紛失により、記録は一時途切れてしまった。まあ、特に気にすることではないんだが……。どこにあったんだっけな

 

「景義さん」

 

「悪いひなた、すぐ行く」

 

ベッドの下に日記を放り込み、部屋を飛び出した。

 

◆◇

 

「ひなた」

 

「はい、どうしましたか?」

 

「なんで俺呼ばれたの……?」

 

「わかりません、とにかく景義さんを連れてこいと仰られましたので」

 

「マジでなんだよ……俺、思い当たる節無いぞ」

 

「行ってみればわかりますよ」

 

マジでなんなんだろうな。最近は神託みたいなやつも来なくて代わりに夢で変な光景ばかり見させられてるし

 

「景義さんは……」

 

「なに?」

 

「……すみません、なんでも無いです」

 

「そう……」

 

何かを言おうとして辞められた。気になるから辞めてくれ……。

 

◆◇

 

「では、私はここで」

 

「ありがとうな。あとはなんとかするよ」

 

大社へ到着すると、ひなたはやる事があると言って先に入って行った。本来なら俺はどうすれば良いんだと悩むところだが……今回は案内──というか用がある奴がいる。

 

「郡様……お久しぶりでございます」

 

「よう花本」

 

それはどこからともなく現れた巫女──花本美佳だ。

 

「大社とは聞いてるが、実際はお前が呼んだんじゃないのか?」

 

「……何故そう思いに?」

 

とぼけてきたか。まあいいや

 

「今日のことを俺に伝えたのはひなただ。仮に本当に大社の上が呼びに来たのなら、鷲尾先生やオッサンが来るだろ。前に呼ばれた時がそうだったし」

 

一度だけ大社に来た時は鷲尾先生から伝えられた。上が呼んでるから行くぞと。あの時は何の用だとビビったね。

 

「……そうでしたか。そうです、私が上里さんにお願いしました」

 

「なるほど。で、何故ひなたも?」

 

「用事です」

 

「ふーん」

 

「郡さまはお元気でしょうか?」

 

「姉ちゃんならいつも通りだよ。会いにこれば良いのに」

 

「……会いに行く決心ができません……。」

 

「こうやって俺は呼び出せるのに?」

 

「それは……」

 

「すまん……俺は別だったな」

 

「はい……。」

 

うん、気まずい。やっぱ俺、コイツのこと苦手かもしれない。

 

「ああ、そうだ。花本、ちょっと良いか?」

 

「はい?」

 

「巫女ってどうやって神の声を聞いてるんだ?」

 

そう聞いてみると、花本は目を丸くした。困惑されてる……?

 

「郡様も聴こえるのでは……?」

 

「いや、最近は専ら無い。時々聞こえてたんだがな」

 

最後に聞いたのはいつだったか……割と最近だったが、それが最後だったのか……?いや、夢という形で見せてきてるなアレは。

 

「そうでしたか……私たち巫女は神樹様へのお祈りと共に神託が授けられます。上里さんは時々下りてくる事もあるそうです」

 

「俺も同じだったな。ひなたのように時々下りてくるやつ」

 

そういや、初めての神託?もそんな感じだったな。花本と姉ちゃんの場所が流れ込んできて、さらに花本の名前も一緒にな。

 

「そうでしたか……。」

 

しかし、祈るか……。声が聞きたきゃ神に縋れってか?まあでも、後で試してみるか。勇者になれる可能性を探すためにも……。

 

◆◇

 

それからの俺は普段の稽古に加え、祈る事が日課になった。

どうすれば勇者になれるのか──大切な人を守る事が出来るのかと問いかけ続けた。

 

しかし、その問いは返ってこなかった。

側から見た俺は、さしずめ愚か者といったところだろうか。

 

もっと言うならば "勇者になる事を願う愚か者" といったところだろう。

 

祈る姿は誰にも見せなかった。例えそれは……姉であっても。

 

戦いの合図は時が止まる事だという。

勇者以外は全ての時間が停止し、樹海と呼ばれる特別な空間でバーテックスと戦っているそうだ。

 

──戦いは激化し、球子が腕を脱臼した。

 

バーテックスにはうどんが通用しないらしい。そもそもアイツら飯食うのか?と思ったのは内緒だ。

 

またある日は久しぶりに友奈と組み手をやった。やはり勇者として戦っている経験もあるのか、友奈はとても強かった。間合いを詰める速さも三年間受け続けてなおも成長する突きや蹴り。俺は受けるので精一杯だった。

 

「ハァ……友奈、また強くなった?」

 

「うん!バーテックスと闘い始めてからさらに強くなったと思う!」

 

「マジかよ……。」

 

「もっともっと強くなって、みんなを守るんだ!」

 

言い終わると同時、強く踏み込んだ。

繰り出されるのは──回し蹴り⁉︎

 

「あぶ……グェッ!」

 

友奈の回し蹴りを避け損ねた。そしてその蹴りは俺のこめかみに突き刺さり、俺の意識を刈り取った。

 

◆◇

 

「……げくん!」

 

「かげくん!」

 

「!」

 

見知った天井だ……。道場だ……。

 

「ゆう……な」

 

「良かった、目が覚めて……ごめんねかげくん!」

 

「いや、それは良いんだが……」

 

何故俺の上に見えるのが天井ではなく今にも泣きそうな友奈の顔なんだろうか

 

「友奈、俺は大丈夫だから泣かないでくれ……」

 

「で、でも……思いっきり蹴っちゃったし……」

 

そんな強かったのか……。

 

「ま、マジかよ……いや、大丈夫だ。多分、脳震盪だろ?しばらくすれば動けるようになるさ」

 

今はまだグラグラするが、程なくして治るはずだ。

 

「それにしても、友奈は本当に強くなったな」

 

「うん……強くなってみんなを助けられるようになりたいんだ」

 

「俺もだよ友奈。俺も強くなって、大切な人を守れる自分になりたい」

 

だから俺は、強くなる事を目指すし、神に祈ったりもする。

 

もう、大切なものを失わないために。




神に祈れって見たり描いたりすると『神は留守だよ』と返したくなります。
目標は8月中に第二章を完結させる事です。あくまで目標ですが……。
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