「ごめん東郷さん、もう一度聞いても良いかな?」
「うん、私が車椅子なのは、1年前に事故遭ってしまって。それから記憶も一部失っているの」
どうやら今の言葉は聞き間違えじゃ無かったらしい。東郷さんの足は事故によるもので、更には記憶を一部失っているらしい……
「そういうことだったのか……。友奈は聞いてなかったの?」
「う、うん。流石に車椅子の理由を聞くのはね……」
「まぁ、それもそうか」
流石に親友とはいえ、理由を聞くのも憚れられたか。車椅子の時点で何かしらがあるとは思っていたけど……記憶か。僕と同じだ……
「こんな事言っちゃ不謹慎だろうけど、僕と東郷さんの事故は実は一緒だったりしてね」
ちょっと雰囲気が重たくなってきたので、せめてもの抵抗をしてみたけど……逆効果だったかな
「そう……かしら?」
「ごめん、適当言った」
「何それ」
東郷さんは、うふふと微笑んだ。 最初の印象で苦手意識があったけど、東郷さんはこんな風に笑う人なんだな
僕は認識を改めた
「そんなわけで今は記憶が無いけど、東郷さんに友奈、改めまして、これからもよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそ改めてよろしくね。友奈ちゃん、それから……優樹君」
「私も改めて、東郷さん、優樹君!私の方こそよろしくお願いします!」
「そういえば東郷さん、僕のこと名前で──」
「ええ。私たち、まだ出会ったばかりだけど改めてよろしくってことで……私も友奈ちゃんみたいに良いかしら?」
「うん、良いよ。えっと東郷さんで良いよね…?」
「ええ、友奈ちゃんにカッコいいって言われたこの苗字が好きだから……」
「そうですか……」
何か不穏なモノを感じた……やっぱり僕、東郷さんの事ちょっと苦手だよ……!姉さん助けて……!
「ただいま〜女子力王の帰還よ!」
「風先輩おかえりなさい!」
「お疲れ様です犬吠埼部長」
「おかえりなさい」
「なになに?私が席外してる間に三人の友情が深まったか?青春してるわね〜」
うん?
「犬吠埼部長、見てました?」
「んー?何のこと?」
そう言う先輩の顔は誤魔化すような笑顔だ。この人、途中から見てたな…?
「ちなみにどの辺りから…?」
「東郷が安芸を名前で呼んだ辺りから──あっ」
あっさり引っかかった。てかやっぱり見られてた……いやまあ、僕としては、見られて困ることでもないけど…
「犬吠埼先輩?」
「風先輩、帰ってきてたのになんで入ってこなかったんですか?」
「あはは、ごめんね二人とも……盗み聞きするつもりは無かったんだけどねぇ……アタシとしては、1年達が青春してるとこに割って入るのもなってね」
青春ってなんだろう……?それはそれとして、犬吠埼先輩が持っている沢山の紙はおそらく、勇者部の宣伝ポスターだろう。結構刷ってきたようだ。
「いえ、僕は全然」
「優樹君が良いのなら私も気にしません」
「私もです!」
「そういえば先輩、その紙がそうですか?」
「ええ。今日の活動は、このポスターを掲示する事よ!先生からも許可は取ってるし、これ貼ってクラスでも宣伝してもらえれば、校内はなんとかなるでしょ」
「なるほど……」
「では、行きますか」
「はーい!」
* * *
それから数日が経過した。
「神樹様に拝」
「さよなら」
「行こうか」
「よう安芸、部活?」
「広瀬君!そうだよ」
ホームルームを終え、いざ部室へ行こうとすると、この数日で話すようになった、野球部の広瀬君に話しかけられた。
「なんだっけ?勇者部……だっけ?」
「そう!勇者部だよ」
「うん、名前の響きは良いがやっぱり不思議だな」
「まあ、最初は僕も思ったけど、もう慣れたよ」
まだちゃんとした活動は出来てないけど、きっと居心地の良い場所になる予感がする。何故かはわからないが、そうなる気がした。
「じゃあ、俺も行くわ」
「頑張って」
僕は広瀬君を見送った。それじゃあ今度こそ行こうか
今日は初めての依頼が来たらしい
「友奈、東郷さん」
「うん!」
「ええ!」
* * *
「結城友奈はいりまーす!」
「同じく東郷入ります」
「同じく筋肉マン入ります」
「はいはーい──ってちょっと待てい!!」
友奈と東郷さんに続いて入ると、犬吠埼部長の声が部室にこだました
放課後早々に元気だな、流石犬吠埼部長だ。僕も見習わなければ
「部長、どうされましたか?」
「どうしたじゃないわよ安芸!普通に入ってきなさいよ普通に!」
普通に…?何を言ってるんだろう…?
「何を言ってるんだろって顔しない!」
???
「もういいや……。結城と安芸はそこ座って。今日は勇者部創設してから初めての依頼よ」
犬吠埼部長はこめかみを抑えながらそう言った。
「おお!遂に!」
「この時が来ましたか…!この国を守るお役目を」
「部長、初の依頼はどんな事を……」
「今から説明するわ。」
そう言って、犬吠埼部長は黒板に写真を貼った──って、猫…?可愛いなぁ…
「実は、依頼っていうのは、この猫の捜索よ」
「可愛いですねぇ」
「私は車椅子ですが…友奈ちゃんと協力して必ずや見つけてみせます!」
「この筋肉にお任せあれ」
初の依頼は行方不明の飼い猫を探す事になった。小柄な黒猫で、クロという名前らしい 首輪は着けてるみたいだがこの辺結構、猫多いから大変だな……。
「それじゃあ、早速行きましょう、飼い主の方にはアタシから連絡しておくわ」
* * *
「どこだーい……」
依頼の現場へ行き、犬吠埼部長の案で部長、僕、友奈と東郷さんの三手に別れて探す事になったのだが……いかんせんこの辺りは猫が多い。目的は黒猫ではあるのだが、見つかるのは首輪をしてない野良猫ばかりだ。
「確か……青い首輪だよね…?」
依頼主である飼い主から伝えられた特徴を反芻しながら、猫の行きそうなところ──路地裏などを探してみるが……あれ?
小柄な黒猫で青い首輪──もしかして!
「クロちゃんかい?」
「ミャー」
まるで、そうだと肯定するかの様にチリンと首輪の鈴を鳴らしながら、僕の方へと近づいてきた。
「にゃー」
「ッ!」
クロちゃんを驚かせないように、僕は静かにゆっくりとしゃがみ込むと、クロちゃんがぴょんと、僕の頭に飛び乗った。
「ははっ…僕の頭が好きなのか?」
「にゃーん」
ちょっとした冗談を飛ばしながら、勇者部のグループチャットに報告をする。
優樹『クロちゃん見つかりました』
僕はとりあえず、事前に決めていた集合場所に向かうとしよう──ってもう返信来た
Fu『本当!?保護した!?』
優樹『今僕の頭に乗ってます』
Fu『じゃあ、そのまま集合場所までよろしくね』
東郷『友奈ちゃんにも伝えました。これより集合場所へ向かいます』
友奈『東郷さんから聞きました!優樹君の頭見てみたい!』
優樹『了解です。今向かってます』
友奈の声で驚かなきゃ良いけど…。クロちゃん今は頭の上で眠ってるけど、気をつけていかなきゃな。
「頼むから、大人しくしててな〜」
「ミャ〜」
僕の願いは、デカい欠伸で答えられた
* * *
「おっ、安芸来たわね」
「その子が」
「優樹君の頭の上に…!!」
友奈が目を輝かせている。これは早く依頼主の元へ行った方が良い気がしてきたな……このままだと、僕の頭ごとわしゃわしゃされかねない……猫が驚くかもしれないしそれだけは回避しなければ……!!
「じゃ、じゃあ依頼の猫も見つかりましたし、報告に行きましょう」
「そうね、行きましょうか」
「はーい!」
「ええ」
* * *
「クロ…!!」
「みゃお!」
依頼主の家へ向かうと、自分の家へ帰れた喜びからか、クロちゃんが僕の頭から飼い主さんの腕の中へ飛び移った。
「この子を見つけてくれて、本当にありがとうございました…!」
「いえいえ、このような困りごとを解決するのが、讃州中学勇者部の活動ですから!」
「その通りです。部長として、初の依頼を無事に解決出来て良かったです!今後もお困り事があれば、是非勇者部ホームページまで」
「ええ、その時はまた、お願いしますね。またウチのクロに会いにきてくださいね」
「はい!その時は是非!」
「それでは、失礼します」
「さようなら!」
依頼主の家を後にした。今回、初の依頼ではあったが、無事に見つけることが出来て本当に良かった。これで、勇者部の依頼が増える事になりそうだ。
* * *
「いやあ、皆、本当にお疲れ様!特に安芸、お手柄だわ」
「いえいえ、偶然見つけただけですから」
「私達も探してたけど、見つかって本当に良かったですね」
「猫を頭に乗せた優樹君はとても可愛かったわ」
帰りの道中、犬吠埼部長がオススメのうどん屋を奢ってくれる事になり、今はそこに向かうところだ。どんなとこだろう……。可愛いのは僕じゃなくて猫だ。きっとそうだ…うん。
「こうやって今日みたいに依頼を受けて、勇者として頑張るのって気持ちが良いですね」
友奈が言う。
「そうね友奈ちゃん、これも国防に繋がるわ」
東郷さんが
「ええ、これからも頑張りましょう!まずは、かめやでうどんを食べて英気を養いましょ!」
犬吠埼部長が
「いつかこの筋肉を活かせる日を」
そして僕が
4人の勇者部での活動は、まだ始まったばかりだ。頑張ろう!!
次回どうしよう…() 現状は木曜投稿ではありますが、今後ともどうぞよろしくお願いします