安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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本日より第三章のわすゆ編です。安芸優樹達はどのようにして戦い、どのようにして讃州中学に送られたのか……優樹の追憶の物語をどうかお楽しみください。


【第三章】安芸優樹の章
あきゆうき


神世紀299年 神樹様に選ばれた3人の少女がいた。

一人は乃木園子。初代勇者乃木若葉の子孫であり大赦のトップである乃木家の一人娘。

一人は三ノ輪銀。同じく大赦名家の一人娘。

一人は鷲尾須美。神樹様に選ばれ、大赦の名家である鷲尾家に養子として迎えられた少女。

 

そして──本来ならば選ばれないはずだった少年が一人。

その名は、安芸優樹

初代勇者土居珠子と伊予島杏を導いた巫女、安芸真鈴の子孫である。

 

◆◇◆◇◆◇

 

神樹館──それは神樹様を祀る組織、大赦の関係者の御子息、御令嬢が多く通う小学校である。

 

「おはよー」

 

「おはよ」

 

「Zzz……」

 

「zzz……」

 

「……安芸君?」

 

「ンガッ……」

 

ん……?せっかく寝てたのに誰が…………

 

「……なんだ鷲尾さんか、おはよう」

 

「……おはよう、もうすぐ先生が来るわよ?」

 

一瞬の間を感じたけど、まあいいや。

 

「ふわぁ……そうか、それならシャンとしなきゃだ」

 

僕は両腕をグーっと伸ばして意識を覚醒させた。

僕が眠そうにしてると姉さんに心配されちゃうから、気合い入れなきゃだ。

 

「ほら、乃木さんも」

 

「んー……おかあさんおはよ……」

 

園子寝ぼけてる……まあ、いつも通りか

 

「はい、皆さん席に着いて──」

 

姉さん……じゃなかった。安芸先生が教室へ来て、今日も授業が始まる……はずだったけど

 

「はざーっす!ま、間に合った……!?」

 

廊下から聞こえる騒がしい音や声と共に教室に飛び込むようにやってきたのは、クラスメイトの一人である三ノ輪銀だ。

 

「…………三ノ輪銀さん」

 

ポンっ

 

「間に合ってませんよ」

 

「いったー!先生ぶったー!」

 

安芸先生の出席簿アタック(ものすごく優しめ)が炸裂した。

この教室では割と見る光景なのと三ノ輪銀自身がクラスでも人気者である事もあり、教室にはドッと笑い声が響き渡った。

 

「おはよー優樹」

 

「おはよう、それにしても()()()

 

「まあ……ね」

 

毎日毎日ご苦労様です。

 

「──では授業を始めます。教科書の14ページを……」

 

いつものように授業が始まるはずだった──

 

「これは……」

 

「姉さん……だけじゃない……」

 

「みんな止まっちゃった……!?」

 

「わー止まっちゃった〜」

 

風鈴の音と共に時間が停止した。

動けるのは……僕たち4人だけ……。

 

「遂に来たか……お役目の時が」

 

「あ、あっきー……」

 

「……っ⁉︎」

 

園子の声に前を見ると、花びらと共に辺りを真っ白な光が包み込んだ。

 

────この時の僕たちは……このお役目がどんな結末を辿るのか、まだ知る由も無かった。

 

◆◇

 

これは、三人の少女と一人の少年の物語

神に選ばれた少年少女たちとのおとぎ話

 

「ここが……樹海」

 

「すっご……」

 

「これが神樹様の創った世界……」

 

「スピー……」

 

「こらこら園子、寝るな」

 

「ふえっ……⁉︎ あっ、あっきーだぁ……」

 

「はいはい、僕はここに居るよ」

 

こんなとこでよく眠れるなこのお嬢様は……。

 

「あっ!あれが大橋かな?」

 

そんな事を考えていると園子が前方を指差した。その方角を見ると、現実世界と同じ瀬戸大橋と思わしき巨大な橋が架かっていた。

 

「あそこから敵が渡ってくるのね……」

 

「そうだね」

 

「鷲尾さんとあっきー落ち着いてるね」

 

「事前に聞いていた事だから」

 

そう言って鷲尾さんはそっぽ向いてしまった。

 

「僕はいつも通りさ……」

 

僕はただ……為すべき事を為すだけ……。

 

「くぅー!私たちが勇者だなんて!興奮する!」

 

銀も平常運転だ。でもね

 

「銀、これは遊びじゃない」

 

「わかってるって」

 

適当だな……まあ良いか。

 

「──ね、ねぇ……」

 

「……ッ!」

 

大橋の前にある鳥居のようなものから、水のような球体を持つ異形の存在が現れた。

 

「あれが……バーテックス……」

 

姉さんから聞いてはいたが……。あれが、僕らが倒すべき人類の敵……アイツがここを通り神樹様に辿り着けば……世界は無くなる……。

 

「お役目を果たしましょう」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

「ああ」

 

勇者になるためのアプリを起動させるには初回だけ祝詞を唱える必要があった。

4人で祝詞を唱え、解放された変身する為のシステムを起動させる。

 

バーテックスの存在は、人類が神樹様に護られてるおかげで知ることはなかった。それを知るのは一部の存在でありその一例が勇者だ。

僕たちは神樹様に選ばれた。なぜ男である僕が選ばれたのかはわからないが。

 

システムが起動すると、端末から発せられた光が僕たちの全身を包み込む。黒のインナーと共に黒い羽織が僕の身体に纏われた。そして戦う為の武器が具現化された。

その武器は──刃が赤黒い()()だ。

 

「これが……勇者……」

 

辺りを見渡してみると、二丁の大きな斧を持って興奮している銀が視界に入った。

 

「凄いなこれ……!」

 

「わぁ……あっきーが真っ黒だー」

 

園子の言うように、僕の姿はインナーも含めてほとんど黒だ。カラスか何かなのか……?

 

「ほう……それにしても……」

 

そう言って銀の目線が鷲尾さんの方へ

 

「ちょ、ちょっと……」

 

「これは中々……」

 

「鷲尾さん似合ってるよ」

 

銀……なんだかオッサンみたいだよ……

 

「あっ、優樹今失礼なこと考えただろ!」

 

え、読まれた……⁉︎ って、こんなとこで話してる場合じゃない

 

「そんな事より、行くよ」

 

僕は誤魔化すように飛び出した。

 

「あっ優樹!アタシも行く!」

 

「わっ、二人とも待って〜!」

 

銀と園子もそれに続いた。

 

「ちょっと三人共!」

 

後ろから鷲尾さんの声が聞こえたが──

 

「オラァッ!」

 

大鎌で球体を切り付ける。

 

「もう一丁!」

 

そして銀も斧で続いた。

だが──

 

「浅い!」

 

「この程度じゃ回復するのか」

 

二人で切りつけた球体は次の瞬間には傷が消えていた。

手応えは確かに浅かった……でもこんなすぐに再生するのか……!?

 

刹那、敵からの反撃である小さな水球が無数にこちら目掛け飛んできた。

 

「チッ……邪魔!」

 

僕の大鎌はただ切り付けたり刈り取るだけじゃない

 

「食らえ!」

 

敵の飛ばしてくる複数の小さな水球を大鎌のもう一つの能力で防いだ。

 

「おー、やるなぁ」

 

「斬撃を飛ばすことも出来るみたいなんだよね」

 

イメージと共に大鎌から花が浮かんでいた。

その花は──ブーゲンビリアだ。

 

「ん……?」

 

「ミノさん、あっきー逃げて!」

 

「なっ……!」

 

敵が水のようなものを溜めた攻撃をしかけた。判断が遅れ、被弾するかと思われた。しかし園子が前に出たことにより防がれた。

 

「園子!」

 

「ごめん……ちょっと持たな──」

 

「うわっ!」

 

勢いよく向かってくる水流は僕達を弾き飛ばした。

 

「三ノ輪さん!乃木さん!安芸くん!」

 

「痛え……」

 

グッ……マズい……鷲尾さんが一人だ……!

 

「……ッ!」

 

水流による攻撃が鷲尾さんを掠めた。ヤバい、間に合え……!

 

「ちょっと待てぇ!!」

 

鷲尾さんは恐怖に気圧されたのか動けていない。これじゃ的にされる!

 

「鷲尾さん!死ぬぞ!」

 

僕は鷲尾さんの襟首を掴み後ろへ飛んだ。

勇者になった事で力は強くなっているらしく、スッと後ろへ飛ぶことが出来た。

 

「あっ……あ、安芸……くん……」

 

「大丈夫かい?」

 

見た感じ、さっきの水流のかすり傷くらいだけど、万が一があっては遅い。

 

「う、うん……」

 

「あっきー、鷲尾さん!」

 

「二人とも大丈夫か!?」

 

園子と銀も合流した。

 

「僕は大丈夫」

 

「わ、私も」

 

良かった……とりあえず怪我は大丈夫なようだ。

 

「にしても……どうするんだ?アタシの斧と優樹の大鎌なら行けるだろうけど、あの水流がヤバすぎる」

 

「……そうだね」

 

アレさえどうにかすれば……

 

「うーん……あっ!ピッカーンと閃いた!」

 

「本当か園子!?」

 

「うんうん、これなら勝てるよ!」

 

バーテックスはどんどん神樹様に近づいている。ここは園子の作戦に従おう。

 

◆◇

 

「それじゃあ、行こう!」

 

作戦が開始された。僕の役割は──遊撃だ。

 

「鷲尾さん!」

 

「ええ!」

 

僕の飛ぶ斬撃と鷲尾さんの弓矢がバーテックスへ被弾する。

するとこちらの攻撃に気付いたバーテックスがさっきみたいに水流でこちらに反撃してくる。ここまではさっきと同じだ。だが……作戦通りだ。

 

「あっきー!」

 

「行くよ!」

 

僕は水流を避け走った。この水流は園子の方へ向かって行くが……

 

「う、うわぁ……ミノさん!」

 

「おう!」

 

園子の武器は槍であり傘のように開いて盾にもなる。

そして園子一人ではあの勢いを止めるのは厳しい。だが、銀と鷲尾さんも合流した。

 

「ここで止めるぞ!おーえす!おーえす!」

 

「ほら、鷲尾さんも!」

 

「え、えぇ……!?お、おーえす……」

 

僕はバーテックスめがけ走っている。よし……後ろ

 

「さっきはよくもやってくれたな!もらっとけ!」

 

僕は斬撃を飛ばす時のイメージをし、それを大鎌に留めた

 

「こんな事も出来るんだよ!」

 

そして──両脇にあった水球の片割れを切り裂いた。

 

「まだだ!」

 

これだけではすぐ再生してしまうから、もっと……もっとだ!

 

「おおっ……水流が弱まってきた!押し返すよ!」

 

「おう!勇者は根性!」

 

「せーのっ!」

 

水流が途切れた。反撃の時だ!

 

「銀!トドメ行くよ!」

 

「よっしゃあ!突撃!」

 

銀が突撃すると同時に敵が大量の水球を放った。

 

「鷲尾さん!」

 

「任せて!」

 

鷲尾さんの弓矢と僕の飛ぶ斬撃で水球を撃ち落とした。

 

「ナイス須美!優樹、行くぞ!」

 

銀の斧から牡丹を模した炎が浮かび上がった。

 

「おりゃあ!」

 

僕と銀は飛び上がり、巨大な水のバーテックスへ肉薄した。

 

「ハァ──セイヤー!」

 

銀の斧と僕の大鎌が大きな水の塊を切り裂いた!

 

「ん……花びら……?」

 

なんとか地面に着地すると、目の前に花びらが舞った。

 

「敵が消えてる……」

 

「これって──鎮花の儀……?」

 

鎮花の儀──バーテックスと戦う勇者たちがある程度のところまでバーテックスを削ると、神樹様の力によって大橋の向こうへ追い返す儀式である。

 

「ってことは、撃退……したんだ」

 

「……やったぁ!」

 

「やったねミノさん!」

 

銀と園子がハイタッチしている。

 

「……鷲尾さん」

 

「安芸くん……」

 

「初陣、なんとか勝利だね」

 

「……うん」

 

特にハイタッチとかそういうのは無かったけど、重症者などは出る事なく、初の戦いに白星を飾ったのだった。

 




安芸優樹(2年前のすがた) この時既に両親と死別している上に安芸先生は忙しいのでゆゆゆ編とあまり変わらない生活をしている(まだ筋トレに目覚めていない) 須美とは顔合わせが初会合のため苗字呼びをしている。園子と銀との関係は次回で……。来週も多分7時は間に合わないです申し訳ありません。一応11日投稿目指します。

武器の詳細と花忘れてた!! 武器は大鎌 斬撃飛ぶのはシンフォギアのきりちゃんイメージしていただければ!(分裂はしません)それと斬撃飛ばすのを内に留める事で斬撃自体の威力が上がる。優樹に宿る花はオレンジのブーゲンビリア 花言葉は秘められた思い
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