合宿3日目 今日は個別鍛錬から始まった。
「ハァッ!ヤァ!」
園子は槍を振り、時には鋭く突き
「フゥ……フゥ……」
須美は動きながら弓矢を的に放ち
「フンッ!フンッ!」
銀は斧を振り回し
「…………」
僕は大鎌に溜める状態をキープしている。ちなみに結構キツい。
何故こんな事をしているのか。それは昨日の花本さんとの会話を思い出し、僕なりに試しているからだ。初めはイメージと同時に振ってみた。大鎌に宿る花は咲かず、斬撃は飛ばなかった。二度目はイメージにワンテンポ置いて振り抜いた。大鎌にブーゲンビリアが浮かび、斬撃が飛んだ。花本さんの言う通り、僅かな差とはいえ、遅れがあった。無数のボールがバーテックスの攻撃だとすれば、その僅かな差が危険を呼びかねない。その次は威力を上げる斬撃の状態でキープしている。多分この状態で攻撃すれば、初陣の時より威力は増すだろう。攻撃の際に溜めるのを必要とするのは僕の他には須美がそうだ。須美の弓矢は連射するか溜めて一撃を放つか。僕との違いは射程距離だ。僕も斬撃を飛ばせるとはいえ、距離だけで言えば須美には劣る。でも威力には自信がある。
「……ぐっ、ハァッ……!」
大鎌に溜めていたパワーが霧散した。
「ハァ……ハァ……」
あれを維持するのはキツいな……でも、感覚は掴めた。
もう一度だ!
◆◇
「では、始め!」
今日こそは!
「あっきー!」
「了……っ!」
失敗した──……っ!
「須美!」
「まだ大丈夫よ!」
園子のガードをすり抜けそうになるボール目掛け斬撃を飛ばそうと試み失敗した……と思われたが、須美が弓矢を連射する事によって防がれた。
「ナイスだよわっしー!」
「ありがとう須美……」
まだだ……まだ終わったわけじゃない。次だ。
そう考えていると、須美の射程距離に球が飛んできた。
「ここっ……あっ……!」
「大丈夫」
次は須美が外したが、そこは僕が飛び上がって斬撃を飛ばす事によってカバーした。これで須美への借りは返した。
「安芸くん……!」
「ナイスだ優樹!アタシも行くぞ……」
そう言いながら、銀が飛び上がった。
「行け!銀!」
「三ノ輪さん!」
「ミノさん!」
「これで──ゴール!!」
そのまま銀が──斧でバスをぶった斬った。
「よっしゃー!」
銀は達成感からガッツポーズをしていた。でも……
「あーあー……」
訓練の目的は銀を目標であるバスへの到達であり、決してバスの破壊ではない。
そしてその一部始終を見ていた姉さんから僕たち4人への……主に銀へ特大の雷が落ちた。
そんな事もあったけど、何はともあれ連携の強化は達成する事が出来た。これで合宿は終わりかと思いきや、あと2日ほど日程が組まれていたらしく、僕たちの勉強と個人の訓練という事になった。
◆◇
「改めて伝えるけれど、あなた達は4人で戦うわ。だから、1+1+1+1は4ではなく、100にするの。それが今回の連携訓練の目的だった。」
『はい!!』
個人の訓練に移る前に、姉さんから連携の目的を改めて教えてもらった。4ではなく、100にする。その言葉を僕の心に深く刻み込んだ。
「では、個別訓練を開始するわ。……そうだ、優樹だけは花本さんが指導するそうよ」
「僕だけ?」
「ええ、そうよ」
何故僕だけ……まぁ、花本さんにも何か考えがあるのだろう。とりあえず、頑張ろう。
◆◇
「では、よろしくお願いします」
「は、はい!」
翌日、僕は花本さんの元を訪れた。ちなみに須美、園子、銀の個別訓練は姉さんが見るそうだ。
「優樹君、訓練の前に一つ私からお話ししておきたい事があります」
「……ッ!」
花本さんが真剣な表情になり、空気がガラッと変わった。そんな姿に僕は思わず気圧された。
「昨日まではそれぞれの武器の扱いを上達させる為の訓練と4人での連携を前提とした戦闘訓練を行いました。」
「は、はい……」
「しかし、今から行うのは──
「万が一……?」
無意識に言葉を反芻していたけど、一体どういう事だろうか……。
「はい、バーテックスとの戦いにおいて、万が一という事があります。例えば
「──っ!!」
僕の脳裏には、あの天秤のようなバーテックスと戦った時の事が浮かんでいた。
「あの時は三ノ輪さんが決めてくれたから良かったが、下手をすれば全滅だ。そうなってしまえば、この世界はおしまいだ」
「……はい」
あの痛みは……忘れることは無いだろう。須美達に迷惑をかけて……姉さんを心配させてしまった。
「それだけじゃない。もしもの話だが、この先
「……」
否定は出来ない。物事に絶対はない。僕が思い浮かばないだけで、花本さんが言った事以外にも想定すべき事はあるだろう。
「でも、心配はいりません。それら全てひっくるめて、私が君を強くしてあげます」
そう言いながら、花本さんは右手を差し出した。
「花本さん……」
僕は差し出された手を取った。
「よろしくお願いします」
僕は……僕の大切な人たちを守りたい。友達を。家族を。その為には、とにかく頑張るんだ。
◆◇
「おーい、生きてるかー」
「なんとか……」
「あっきー大丈夫?」
「壮絶ね……」
花本さんの個別指導は物凄く大変だった。でも、少しは強くなれた気がした。合宿は明日が最後だ。
「須美達は平気なの……?」
「いや〜疲れたぞ」
「う〜ん、手のひらにマメが出来ちゃったよ〜」
そう言って園子は両手を見せた。おおう……小さな手に見事なマメだ……。
「私も疲れたわ。でも、もっと強くならなければ」
「そうだね……」
「そういえば、花本さんの特訓って何やったんだ?アタシ達とは別の場所に居たみたいだけど」
「…………思い出したくない」
せめて今は忘れたい……!足が棒みたいだよ……!
「その顔見るだけでキツかったのが見えてきたよ……」
「あはは……」
今日はもうご飯食べてお風呂入って寝よう……。
◆◇
「あれ、花本さん」
「ん、お疲れ様です。優樹君は今からですか」
「花本さん今日はお風呂早いですね」
須美達と夕食を食べてすぐ温泉まで来たけど、既に花本さんが入っていた。
「ええ、準備がありますので」
「準備……?」
まさか明日の訓練……?いやでもほぼ今日と一緒らしいからそれは無いか……?
「合宿は明日で終わりなので、上への報告資料ですよ。これが面倒なんですよね……」
花本さんはどこか遠くを見つめていた。お仕事お疲れ様です…………。
「大変……なんですね。大赦の事もあるのに、僕たちの合宿まで……」
なんだか申し訳なく思う……。
「いや、それは良いんだけどね。私より真鈴さんの方が大変だからね」
「姉さんが……」
やっぱり、姉さんはとても大変なんだ。なら一層僕が頑張らなければ
「あの子からいつも君の話を聞かせてもらってるよ。自分のせいで苦労かけてるとも」
「そ、そんな事……!」
むしろ僕の方こそ……
「今後は──」
「今後は私も勇者たちのサポート役に付きます」
花本さんが唐突に話題を変えた。
「サポート……ですか?」
「はい。既に行われている勇者の訓練に私も時々ですが参加する事になりました」
「そう……なんですか。では、よろしくお願いします」
「こちらこそ。改めて、よろしく頼むよ」
◆◇◆◇◆◇
「さて、今日は合宿最後の夜だ。思い出話しようよ」
「良いね〜ミノさん」
「もうこんな時間なのよ?明日も早いのだから寝た方が──」
「それも良いけどさ、こういうのも将来楽しかったなって話題に出来ると思うんだよね」
「おっ、優樹良い事言うじゃん!」
「そういえば、今日のあっきーは付き合いが良いね〜」
訓練……という名の特訓はつつがなく終了し、あとは寝るだけ──というところで、銀に捕まった。初日みたいに引っ張られそうになったが、今日は僕の意思でやって来たのだ。理由は特に無い。
「気分だよ。親睦を深めるって姉さんも言ってたしね」
「合宿ももう終わりだけど、優樹と須美の親睦は深まったのか〜?」
「み、三ノ輪さん!?」
須美は何故か顔を赤くしていた。何故だろうか。
「むにゃ〜」
声のした方を見ると、ニワトリのパジャマを着た園子がぐっすりと眠っていた。
「はやいな!?」
この一瞬で寝たのか……凄いな園子……
「うーん……園子寝てるし、僕も帰ろうかな……」
「じゃあね。おやすみ」
銀が止めてた気がするけど、さっさと部屋へ戻った。
こうして、僕らの合宿は終了した。
次回は合宿後からカプリコーン戦辺りまでやれたらなと……。もしかしたら短くなるかもしれないし長くなるかもしれない。ガバだらけではありますが、適宜修正します……。