安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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2年前の優樹君の話し方にブレが出ている気がする。実際どうなんだろうか……


ゆめのしずく

学校が終わり、勇者達の個別訓練も終わると、僕たちは姉さんに呼び出された。

 

「次の任務だけれど──」

 

次は何か……。僕は息を呑んだ。

 

「しばらく休んで、次に備えましょう」

 

「え?」

 

僕は聞き間違えかと思った。だが姉さんの次の言葉によって、それは気のせいだとわかった。

 

「しっかり休んで精神を安定させる事もお役目の内よ。ずっと気を張り詰めていたら、最後まで持たないわ。優樹は私のことを気にせず、優樹の好きなように過ごしなさい」

 

その言葉に僕たちの驚きは消え、代わりに上がったのは歓喜だ。

 

「やったー!何する何する?」

 

「イネス?イネス行く?」

 

「プールも良いね」

 

「おーそれ良いね!なあ、優樹と須美はどうするんだ!?」

 

「僕は──」

 

◆◇

 

「休む事もお役目の内……か」

 

休むと言っても……僕はいつも通り……かな?

今日は寝室の掃除だ。使っていたのが父さん達だった事もあり一時期やってなかったけど……埃が溜まるんだよね……。

 

僕は以前のことを思い出した。換気はしてたとはいえ、あんな風に埃が溜まるとは思わなかったよ……。

 

「よし、これで終わりっと」

 

あとはしばらく窓を開けて部屋の空気を入れ替えるだけだ。

 

「この後はどうしよ──!?」

 

窓を開けると、家の前に高級車が……更に言えば、窓から顔を出している少女の姿に僕は驚きを隠せなかった。

 

「そ、園子……!?」

 

「へーい、あっきー!この優雅なおやすみを満喫しようぜぇ!!」

 

「ちょっ、ちょっと待ってて!」

 

ひとまず落ち着こう。何故園子が居るとかは気にしないようにして、ひとまず落ち着こう。

 

ひとまず落ち着いて、僕はドアを開けた。

 

「園子……いきなりの出迎えは嬉しいけど、急にどうしたの……?」

 

「へいへーい!このおやすみをエンジョイしようぜ〜?」

 

翻訳すると遊びに誘いに来たって事で良いのかな……?よく見ると奥には須美も見えてるし。

 

「おはよう優樹君、私もさっき、そのっちに誘われたのよ。この後は銀も回収しに行くって」

 

「突然だよ……まあ、家事終わってるから良いけど」

 

「イェーイ!あっきー確保!」

 

いつも以上にハイテンションな園子を他所に、須美と話をした。そうして僕もそのまま車に乗せられ、出発した。

 

◆◇

 

「良いよ〜ミノさん!似合ってるよ〜!」

 

「こ、この服は……アタシには似合わないんじゃないか……?」

 

「そんな事無いよ〜ねぇ、わっしー、あっきー?」

 

「ぶはっ!!」

 

「わぁ〜そんな風に出す人初めて見た〜……」

 

やって来たのは園子の家──乃木家のお屋敷だった。そして何故か銀が着せ替え人形にされ、須美が鼻血をとんでもない勢いで噴出させていた。大丈夫か…?

まず最初に園子が着せたのは……なんと言えば良いのだろうか……普段の銀なら絶対にしないであろう格好だったけど……なんというか──

 

「可愛いよ、銀」

 

「なっ!?」

 

「だよね〜ミノさんは可愛いんよ〜」

 

僕はただ思ったままに感想を告げた。

 

「か、からかうなよ優樹……!」

 

「そんな事無いって」

 

「そうよ銀!最高よ!とても似合っているわ!」

 

須美はいろんな角度から銀を撮影していた。その手つきはまるでプロの所業だ。

 

「次行くよ〜」

 

「じゃあ終わったら呼んでね」

 

銀が着替えるので僕は退出した。

 

◆◇

 

「良いわ!写真は愛よ!今日はどんどん行くわよ!」

 

次々と変わる銀の衣装、普段はとても元気な少年を彷彿とさせる銀も可愛い衣服に身を包めば、とても可愛い一人の少女なんだと改めて理解させられる。なんて事を言えば、銀はきっと怒るだろうから口には出さないでおこう。銀は僕の数少ない友達だ。そんな存在を怒らせたくはない。

 

「す、須美……!いつまで撮影するんだよ!」

 

「まだだわ!まだまだ行くわよ!」

 

ドン!

 

「良いわよ銀!」

 

「これは無いだろ!」

 

「いや、ありよ!」

 

それを言われる銀の衣装はもはや銀の面影が感じづらいのだが……それも良いのでは無いのかと思う。

 

「良くない!」

 

◆◇

 

「むぅ……」

 

あれからしばらく、須美と園子の着せ替え人形になっていた銀は怒って奥の方へ行ってしまった。

 

「怒っちゃった」

 

「銀!良かったわよ!」

 

「何がだよ!!」

 

僕も何か言うべきかもしれないけど、逆効果になるかもしれないな……黙っておこう。

 

「じゃあ次はわっしーの番ね」

 

うん?

 

「えぇ、私の番──えっ?」

 

どうやら聞き間違いじゃなさそうだ。

 

「これとか似合うんじゃないかな〜?」

 

そう言いながら園子が手に持っているのはドレスだ。確かに似合いそうだ。

 

「い、いや……似合わないんじゃないかしら……」

 

「いやいや、着てみないとわからないぞ?」

 

断ろうとする須美だがそうは問屋が卸さない。先ほどまで着せ替え人形にされていた銀がノリノリだ。じゃあ僕は外に出るか。

 

◆◇

 

「おおっ、良いじゃん須美!」

 

「かわいいよわっしー」

 

「うん、とても似合ってる。普段とは違うイメージだけどこういう姿の須美もかわいいよ」

 

「かっ……!?」

 

須美の衣装は銀の時より色合いが明るくなったドレスだ。須美といえば和というイメージはあるものの、実際に袖を通してみると随分印象が変わるのかもしれない。もしもカメラがあったら撮影してたかも──って、園子が既に撮っていた。

 

「うんうん、じゃあ()()()()()()()!」

 

「次は僕か────!!?」

 

「な、何故、僕まで……!?」

 

せめてもの抵抗と言わんばかりに質問をした。

すると園子は満面の笑みを浮かべながら言った。

 

「あっきーならきっと似合うと思うんよ〜」

 

「えぇ……」

 

「優樹、アタシや須美もやったんだ。園子が言うんなら間違いない」

 

銀の手が僕の肩にポンと置かれた。ああ、もうなるようになれだ……。

 

余談ではあるが、この時の僕の格好は生涯封印すべきだと今でも思っている。須美のカメラにも映してないからね……!!絶対に女装なんてしないんだからね!!

 

◆◇

 

ある日の学校にて

 

「須美のそれって何?」

 

トイレから戻ってくると、須美たちが黒板で何か絵を描いていたのだが……須美だけ何か異様だ……。

 

「優樹君、この艦隊は──翔鶴型航空母艦の二番艦 瑞鶴よ!」

 

「凄いな!?」

 

「でしょう!?旧世紀……昭和の時代に数々の戦いで活躍した我が国の空母よ!敵との戦いで囮となって最後まで頑張ったの……!」

 

須美が早口気味に語ると、黒板の空母に対して敬礼をした。

 

「須美ってやたらそういうのに詳しいよな」

 

銀の言う通りだ、僕も同じことを思う。

 

「将来の夢は歴史学者さんだから」

 

「真面目か!」

 

「でも、須美らしくて良いと思うよ」

 

「三人は何か夢があるの?」

 

「私は〜……小説家とか良いなって思って、時々サイトにも投稿してるんだよ〜」

 

!!

 

「園子、今も書いてたんだ」

 

「そうだよ〜あの時のあっきーのおかげだね〜」

 

「いや……あの時は……」

 

園子が小説を書き始めたのは……何年か前のこと。僕の目の前から人が居なくなる事に怯えていた時の僕に、友達になったばかりの頃の園子が見せてきた物語が始まりだった。

 

「そのっちは時々独特な感性があると思っていたけれど、納得ね」

 

「だな」

 

「あっ、そうだ!三人とも小説の登場人物に出演してほしいな〜優しくて頼れるミノさんに真面目で時々面白いわっしーにハリネズミみたいにトゲトゲしてるけど実は家族思いなあっきー!」

 

「時々面白い……?」

 

「つまんないよりは良いじゃん」

 

「ハリネズミ…………」

 

あの頃の僕、そんなにトゲトゲしてたのか……。

 

「やっぱその頃の優樹、気になるんだよな〜」

 

「そ、そんな事よりさ、銀の夢ってどんななのさ?」

 

あの頃の僕の話題を誤魔化すように銀に尋ねた。

 

「また誤魔化したな〜まあ、いいけど。幼稚園の頃は皆や家族を守る美少女戦士になりたかったな」

 

「良い心がけよ!国を護る正義の味方!それは少女の憧れよね!」

 

「お、おう……」

 

違う……違うぞ須美……!多分そうじゃない……!

 

「じゃあ、今の夢は?」

 

「え?あー……うん、えへへ……」

 

僕が今の夢はと聞いてみると、銀の頬が少し赤みを帯びた。

 

「銀……?」

 

「なんで照れるの?」

 

園子が聞くと、銀ははにかみながら語り出した。

 

「いや〜…………家族って良いもんだから…………その、家庭を持つのもありかなって…………?その、つまり……」

 

「お……お嫁……さん……?」

 

「なんちて!」

 

照れ隠しのように銀は笑った。

 

「銀……!とっても素敵な夢じゃないか」

 

「そうだよ!ミノさんならすぐに叶うよ!」

 

「白無垢が楽しみね!」

 

そう言いながら須美と園子が銀にくっついた。

 

「な、なんだよ……くっつくなよ〜!」

 

「今度、あっきーとミノさんで小説を書いてみるね!」

 

!!?

 

「やめろー!」

 

「待って園子……僕をネタにするのは構わないけどせめてシチュエーションは変えて……!」

 

「え〜?」

 

この時、放った一言が後で本当になるとは、この時の僕はまだ知る由もなかった。




次回も日常やります。青いカラスは多分出てこない。
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