大好きな姉のため、大切な友達のため、そして世界のために……少年は戦う。
「……見えた」
僕は更に加速して、三体のバーテックスを追い越した。
随分と前に出られたな……
これ以上侵入を許せば……神樹様に辿り着かれてしまう。
でも……そんな事はさせない。
「……お前たちは僕の大切な人たちを傷つけた」
三体のバーテックスの前に立ち、大鎌を構える。
「僕はお前たちを絶対に許さない」
目の前の地面に線を引き、己の覚悟を叫んだ。
「ここから先は……通さない!!」
優樹が駆け出すと同時、矢を放つバーテックス──サジタリウスが大量の矢を優樹へ放つ。
「お前が矢を飛ばすのは……もう見た!」
僕の正面に迫る無数の矢に対し、斬撃を二つ、Xに飛ばしながら更に縦の斬撃を落とした。
「くっ……」
その甲斐もあり、無数に迫った矢は、ある程度迎撃出来たが、流石に全部は無理だった。負傷覚悟で突っ込み、防ぎ損ねた矢が頬や肩を掠りそこから血が流れる。
「まずは……お前からだ!」
そんな事お構い無しに優樹を六枚の板で押し潰そうとするキャンサーを更に前に踏み込む事で避け、後ろに回り込みながらキャンサーの胴体を切り裂いた。
キャンサーは前のめりに倒れ、追撃しようとした刹那、スコーピオンの薙ぎ払いが優樹に襲いかかる。だが……!
「その攻撃は……さっき見た!!」
食らえば致命傷になりかねない攻撃を──僕はバク宙でそれを避けた。
「よくも須美と園子をやってくれたな!!」
着地と同時、溜めの一撃をキャンサーにお見舞いする。
両断とまではいかないが、かなり深い。そして一撃に特化した矢を放とうとしたサジタリウスに斬撃を飛ばし迎撃した。
「銀が来る前に……終わらせる!!」
飛び上がり、そのままサジタリウスに肉薄し、連続で斬りつけた。
「終わりだ!」
サジタリウスにトドメの一撃を放とうとした刹那──
「っ!?」
サジタリウスの矢が──大鎌を振り下ろそうとした僕の右腕を貫いた。
「ぐぇっ……!」
貫かれた事を認識するより早く、目の前に広がったのはスコーピオンの胴体だった……。
「グッ……アッ……」
「ガハッ……」
スコーピオンの薙ぎ払いによって地面に叩きつけられ、その時に内臓を損傷したらしく、吐血した。
「くっ……」
身体に激痛が走る。貫かれた右腕は多分動かない。しくじった。あの板は反射板にもなるのか。痛い。辛い。苦しい。逃げ出したい。
いろんな事が脳裏をよぎった。
「ぐっ……ぅぅ……!」
痛みを堪えて立ち上がった。僕の脳みそは逃げろと警告している。でも僕の体はバーテックスの方へ進もうとしている。
それで良い。逃げるわけにはいかない。僕が逃げたら全てが終わる。
右腕はお釈迦だ。なんとか動かそうとしてみたが、揺らすのが精一杯だ。
左腕だけで大鎌を構え、大きく息を吸った。
「ごふっ……僕は……不死身だ!!」
血を吐きながら僕は叫んだ。そして樹海の地を砕かんばかりに踏み込んだ。
「銀が来る前に…………一体は倒す!」
たとえ……僕の命と引き換えになってでも!!
迫り来る無数の矢、僕は大鎌を滅茶苦茶に振り回してそれを防ごうとする。
だが──
「っ……」
当然、防ぎ切れるはずがなく何本かが僕に肉体に突き刺さった。両手でも防ぎきれないのだ、無理もない。だが、致命傷だけは避ける。
「まずは……お前からだ!」
回復中のキャンサーは放っておき、まずは僕を突き刺そうとするスコーピオンの攻撃を横に避け、カウンターで胴体を斬る。しかし、まだ断ち切れていない……。
「……もう一度だ!」
飛び上がると共に、溜めの斬撃を同じ箇所に振り下ろし、スコーピオンの胴体を分断した!
「一体目……!」
スコーピオンから距離を取るように後ろに飛び、キャンサーに斬撃を飛ばしながら僕は叫んだ。
「お前達にはわからないだろうがな…………これが人間様の!!気合いと!!根性と!!魂ってやつよ!!」
叫び終わると同時、またもや吐血した……限界なんてとうに迎えている。
あと少し……あと少しだけで良いから…………そうすれば、ありったけの力を振り絞ってコイツらを倒す……!
「っ……!」
もう一度踏み込もうとした刹那、キャンサーが矢を構えるのが見えた。
「っ……動け……動け……僕の体……!」
限界を超え、今にも倒れそうなこの体……今動かなければ死ぬ。
「……死んでたまるか!!」
大鎌に力を溜め、斬撃を放とうとした刹那────
「──優樹ィィィ!!」
僕の名前を叫ぶ声と共に、サジタリウスの胴体に一振りの斧が突き刺さった!
「あれは……」
「優樹、生きてるか!?」
僕の目の前に赤い勇者服を纏った少女が降り立った。
「銀……」
「須美と園子は大丈夫だ。あとはアタシに任せて、休んでて」
僕が返事をする間もなく銀は飛び出した。
まずはサジタリウスに突撃しながら投げた斧を回収し、着地と共にキャンサーの方へ
「よくもアタシの親友を傷つけたな!これはお返しだ!!」
矢の雨を掻い潜りながら、キャンサーの反射板を弾き、二振りの大きな斧を胴体に叩きつけていく。今は銀が一人で戦っている。一方僕は満身創痍だ……でも、無理やり動けるはずだ…………
銀はキャンサーを相手している。なら僕が相手するのはサジタリウスだ……!
「──っ!?」
サジタリウスの矢を放つ方向が、銀の方を向いている事に気づいた。
「まだ間に合う…………っ!!」
「絞り出せ……!残り全部!」
残り僅かな力を振り絞り地面を蹴る。
どうか……間に合え……!
「銀!!」
「!?」
キャンサーにトドメを刺そうとする銀を庇うように前に出た。
「っ…………」
放たれた矢が貫いたのは────僕の脇腹だった。
「ごふっ……」
「──優樹!!」
もう、限界だった。
傷だらけの肉体で加速した事によるダメージ、そして脇腹を貫かれた事による吐血で意識が朦朧とする……。
「まだ……だ……まだ……おわって……いないぞ……」
「優……樹……」
意識が……薄れていく……。
「うわあああああああああ!!!!!!!!!」
「ぎ……ん……」
叫び声と共にサジタリウスを滅多切りにする銀の姿がうっすらと見えた……。
「ご……め……」
それを見届けると同時、最後まで言葉を残せないまま、僕は前のめりに倒れ────てない……?
「優樹……おい!優樹!」
どうやら銀が残りの二体を撃退したみたいだ……。銀に肩を借り、支えられるような体制で僕はなんとか立っている。
せめてこれだけは伝えようと残された力でうっすらと目を開き、銀の目を見ながら言葉を紡ぐ……。
「無事……か…………よか…………」
言葉と共に体の力がスッと抜けた。膝から崩れ落ちるとこだったけど、銀に支えられながら樹海の地に横にされた……。鎮花の儀は……見届けられそうにないけど……銀が無事で良かった……。
「優樹……しっかりしろ!死ぬな!目を開けてくれ!
「……!」
『生きるのを諦めるな』
その言葉を聞いた瞬間、消えゆく意識が少しだけ反応を見せた。
どんどん暗くなる視界の中で、ほんの少しだけ銀の顔が見えた。
いつも元気な銀の顔は……涙で濡れているように見えた。
何かを叫んでいる。でも……よく聞こえない。
「ぎ、ん……」
僕の意識は──闇に落ちていった。
『おい……優樹!? 優樹!!!!!!』
◆◇
「銀……優樹君……」
「今、行くからね……」
銀に後方へ下げられた後、私たちは意識を失っていた。しばらくして目が覚めたけどバーテックスの攻撃のせいで体はとても痛い……でも私もそのっちもなんとか動ける。
「わっしー……二人とも大丈夫だよね」
「ええ……もちろん……だってあの二人なんだもの……」
そうよ……きっと大丈夫。今までだってバーテックスを倒してきたんだから……。
銀が走って行った方向へ歩いていると、血が点々と目標のように続いている。
「あっきー……」
「大丈夫よそのっち……きっと大丈夫……」
自分に言い聞かせるつもりでそのっちに言葉をかける。
きっと……きっと大丈夫──
「──っ!樹海が……!」
「戦いが終わった……? ミノさん!あっきー!」
樹海が白い光に包まれ、元の世界に戻っていく。
銀と優樹君の元へ行かなければ……!!
「ミノさん!あっきー!」
「優樹君!銀!」
大橋に戻った私たちは、銀たちのところに駆け寄った。
しかし、そこで見た光景は…………
「優樹……もうすぐ迎えが来るから……もう少し頑張れ……」
「え……?ゆ、優樹……君……?」
「あっきー…………?」
目の前に広がっている光景に、私たちは自分の目を疑った。
優樹君を抱え、涙を流す銀……黒の勇者服でわかりにくいが……血まみれで倒れている優樹君……
「優樹……君……」
私は……変わり果てた友達の姿に言葉を失った。
「あっきー……?」
「須美……園子……」
私たちの言葉に反応したのは、銀だった……。
◆◇◆◇◆◇
その後、駆けつけた花本さんによって、優樹君は病院に搬送された。
その間、私たちは……特に銀は変わり果てた友達の姿に涙を流した。
病院の先生からは……優樹君は重体だと告げられた。
生きるか死ぬか……そして目を覚ますかもわからない……。
でも…………優樹君ならきっと戻ってくる。
今はそう信じるしかなかった。
銀が優樹君に呼びかけるとことかまんまシンフォギアじゃね…?と書きながら思いました。シンフォギア良いですよ。無印から是非
そして……やっとここまで来ることが出来ました。銀を生存させる。そして幸せにする。当初、私が願った銀√の導入であり、私の目標を半分達成しました。とても長かったですが、銀を庇って重傷を負う。もしもこれが無ければ、この世界でも銀を失い、優樹が曇る展開もあったかもしれませんが……それでは意味がない。銀が生きてることにこそ意味があるのです。
第三章 あと何話続くのか……。11月中には終わらせるつもりで執筆します。