初めての依頼からしばらくの時が経った
勇者部設立から数えると、大体1ヶ月ほどだったかな…?
「今日は有明浜ゴミ拾いよー!」
「はーい!」
「安芸優樹、このお役目!身命を賭して勤めさせていただきます!」
「あの……安芸君や?何故東郷みたいになっているんだい?」
僕の意気込みに犬吠埼部長が突っ込んだ。
いや部長さんや……これには深い訳があってですね……はい、特に意味なんてないです。
「いえ、特には……ただ、強いて言えばそれくらいの覚悟で挑もうと思いまして」
「活動に熱心なのは良い事だけど、そこまで気張らなくても良いんじゃないの…?」
犬吠埼部長は呆れたように言った。確かに一理ある。
「安芸君 その意気込みは、この国を守る為に必須な事よ! さあ、貴方も国防の道を──」
「はいはい!長くなりそうだから、始めるわよ!アタシと安芸で波打ち際やるから、二人は松林をお願い」
「はい!」
「了解」
「結城と東郷は、尖った物や折れた枝に気をつけてね」
「ういっす」
「はい」
「ああ、もうタオル首に巻いて、軍手も…!あとそれから、虫にも気をつけてよ?」
「おかんですか」
「母親ですか」
犬吠埼部長の行動に、僕と東郷さんが同時に突っ込んだ。
「いやぁ、アタシってこういう性分でさー家でもこんな感じなのよ」
「そういえば妹さんがいらっしゃいましたっけ」
「そうなのよー超可愛い妹がいてね これが超可愛くて超可愛いの」
「なるほど──超可愛いんですね」
「ちょっと……いや割と……んー結構ポンコツだけど、手のかかる子ほど可愛いってもんよー」
「それは凄くわかります」
「ほえ?」
犬吠埼部長のドヤ顔と共に語られる妹談に、友奈を撫でながら東郷さんがそれに共感した。それだと友奈が手のかかる子だと言われてるように聞こえるのは気のせいだろうか…?でも姉さんがたまにそんな感じなのでちょっとわかる。昨日もピーマン残したけど、それもまたね…。
それと……いつだったか、犬吠埼部長には妹がいると話してたことがあった。部長曰く超可愛いそうだ。話を聞いてる限りだと結構おっちょこちょいという印象を抱くのだが、それも含めての妹愛というのは良くわかった。
「ちなみに安芸、私の可愛い樹はあげないわよ?」
「あはは……僕はその辺まだよくわからないので…」
犬吠埼部長が冗談半分本気半分といったとこであろう顔でそう言われたので、僕は誤魔化すことにした。会ったことはないので、よくわからないのは嘘じゃないしね。
「そう…?そんじゃあ、ゴミ拾い始めるわよ!」
犬吠埼部長の一言で、今日の活動が始まった。
* * *
「安芸」
「はい?」
「実は別の依頼もここでやるから、ちゃちゃっと集めちゃうわよ」
「この筋肉にお任せください」
部長と僕は、テキパキとゴミ拾いを開始した。こうして探してみると意外と落ちてるものだ…。どんどんゴミ袋の容量が埋まっていく。
「いやあ、結構多いわねぇ」
「そうですね」
そういえば僕、犬吠埼部長と二人きりなの初めてだな
「ねぇ、安芸」
「はい?」
「向こうに結城達いるけど、こうやって二人きりなのって初めてじゃない?」
「そういえばそうですね」
まさか僕と同じこと考えてたとは……
「無言で作業してるのもアレだから、何か話さない?」
「良いですよ。でも僕、面白い話は出来ませんよ?」
「そんな事気にしない!せっかく後輩と二人きりで話す機会が出来たんだし」
「そういうもんですかね」
「良いんじゃないの〜? そんな事よりさ、安芸はどっち狙いなのよ?」
「?」
面白い話が出来ないという僕の懸念をよそに、犬吠埼部長はニヤニヤと表現するのが正しいであろう表情をして、よくわからない事を言い出した。どっち狙いというのは──ッ…!?
「な…何を言ってるんですか!?」
「おお…予想以上に良い反応がもらえたわ」
犬吠埼部長の思ってた反応がどういうものだったのかは知らないが、いきなり何を聞いてるんだこの人は……いや、まぁ……
「部長、僕はまだそういう事は考えてません」
「え〜?確かに勇者部作ってからそんなに時間経ってないけどさ、アンタも男なんだから多少はドキッとした事とかないの?」
「……」
正直無いことはない……。そりゃ僕も男だ…そういう時もある。どうしても目が行っちゃうしね……って
これ以上考えてると僕が使い物にならなくなってしまうな……
「さて、ゴミ拾いの続きをしましょうか」
「あっ、誤魔化した!」
僕は犬吠埼部長の追撃から逃れるべく、ゴミ拾いの速度を上げることにした。
* * *
「今日はこんなところかな」
「友奈ちゃんお疲れ様 もう夕方だし、残りは明日ね」
「部長ー優樹くーん!そっちはどうですか?」
この声は友奈か。って、もう夕方じゃないか
「ぶーちょー?」
「い、いやこれも依頼の一つだから……もちろん、ゴミ拾いは終わらせてから」
「友奈、東郷さん、お疲れ様」
今日はもう夕方だし、こんなところだろう……それはそれとして、依頼とは別の部長用のマテ貝多すぎませんかねぇ……。
「んじゃ、今日もお疲れちゃん うどん奢るから食べに行こっかー」
「やたー」
今日の勇者部の活動も終わり、犬吠埼部長の奢りでうどんを食べに行くことになった。やったね──ん?
「あの…部長」
「ん?」
「どこからか子供の泣き声が聞こえたような」
「……言われてみれば確かに」
「それは二人にしか聞こえない泣き声でした」
「ひえぇぇぇ…!!」
「うぇっ……!?」
東郷さんが怖い顔をしながらそう言った……っていたわ
「友奈、そこに……」
「あっ!」
木の影に隠れていた女の子に話を聞くと、どうやら松林に懐中時計を落としてしまったそうだ。
「鎖で繋いでたのに切れちゃって……お父さんの形見だからずっと持ってて……」
「そっか…」
「部長!探すの手伝いましょう!」
「おーけい……!」
「めっちゃ泣いてる──!?って優樹君も!?」
だって辛いじゃないか…!親を亡くして形見をずっと持ってるだなんてさ…!僕も両親居ないから良くわかるよ!絶対見つけてみせる…!
それから僕たちは松林の中で懐中時計を探し始めた。
しかし中々見つからずに、ただ時間だけが過ぎ去ってゆく。
* * *
「見つかりませんね」
「時間も時間だし、今日はここで終わりましょう」
「えっ!?あとちょっとだけ」
「この辺りは灯りも少ないし夜は危ないの」
「アタシは勇者部部長!みんなの安全が第一なの!」
辺りはもう暗い。懐中電灯などの灯りを使わなければ危険が伴うだろう。犬吠埼部長の判断に僕は頷いた。
「部長、その子は僕が家までお送りします。」
「安芸……良いの?」
「この辺りは暗いですし、部長も女性ですから。それなら男の僕が動かないでどうするんですか」
僕は犬吠埼部長を説得した。このまま終われば、この子は今日を不安に過ごすことになる。そんな思いはさせたくない。
「じゃあ…お願いするわね?」
「はい」
* * *
「あのさ」
「うん……」
「絶対に見つけてあげるから」
「うん……」
絶対という言葉は容易に使うものでは無いとわかってはいる。わかってはいるが、今回は容易ではない覚悟だ。
僕も親を失う辛さを知っている。それで姉さんが苦労していたのを見ている。だから尚更だ
「ここ…だから…」
「うん。じゃあね」
「ありがとうお兄ちゃん……」
女の子は家に帰って行った。
「……そんじゃあ、行くか。ここでやらなきゃ筋肉が廃る」
僕は目的の場所へ走り出した。
* * *
「どこだろう……」
暗がりの中、たまたま手元にあったライトを頼りに、懐中時計を探していた。
「あれ?光…?」
すると、自分以外の動く光を認識した。
「ぴゃーー!!」
「ぴゃーー!!」
「うわっ!」
近づこうとした刹那、2つの叫び声がこだまし、僕は尻餅をついた
「結城に安芸……なにしてんの?」
「私は学校に忘れ物しちゃって……そういう部長と優樹君は?」
「僕は、懐中時計を探しに──って犬吠埼部長、泥や傷が付いてますが大丈夫ですか!?」
「これが、勇者!」
「へ?」
犬吠埼部長への心配をよそに、友奈は笑顔で何か言っていた。
「部長、優樹君!私も探すの手伝いますよ!」
「本当に!?でもこんな時間だよ?僕1人でなんとかするって」
「優樹君と部長だっているんだからなんとかなるよ!」
友奈……
「わかった。部長はどうしますか?」
「……アタシがやらなきゃ誰がやるっていうの?早く見つけてあの子を安心させましょ」
「「はい!」」
* * *
「……あった」
「あったぞ!!」
「本当!?」
「優樹君やったね!」
見つけた…見つけることができた!良かったぁ……
「お手柄ね安芸!」
「ありがとうございます部長、早速届けに行きましょう」
「そうね、結城、行くわよ!」
「はい!」
* * *
「遅くなりましたが、これ」
懐中時計を女の子に手渡した。
「……!ありがとうお兄ちゃん!」
「わっ…」
すると女の子は、涙を流しながら飛び込んできた。
「本当に……本当にありがとうございます」
女の子の母親がお礼を言ってくれた。
「いえ、これも勇者部の務めですから」
こうやって困ってる人を助けるのが勇者部の活動の一環だ。
きっと、こういう事の積み重ねで依頼も来るのだろう。時にはこのように失くしたものを探すなんて事もある。
僕は、勇者になれたのかな。
「もしもお困りごとがあれば、讃州中学勇者部までお願いします!」
次回どうしよう……そろそろ結城友奈の章入りたい。どれだけ長くても10話までには入りたい。