本日は高嶋さんの誕生日ですね。偶然にも更新日にお祝いできるとは…おめでとうございます。ぐんたか好きです。
「もう!もうすぐ始まるってのに、優樹のやつは何してるのよ⁉︎」
風の焦りが混じった声と共に、夏凛と銀が言葉を返す。
「こっちはだめね、全く出ないわ」
「アタシの方も連絡無し」
「優樹さん、風邪でもひいてしまったんでしょうか…」
「……」
「ゆーゆ?」
声をかけた園子の目には、友奈が何か悩んでるように映った。
「な、なんでもないよ…!」
友奈はハッとしながら答えた。
でも、一度気づいてしまうと、なかなか頭から離れない。
「友奈、大丈夫?体調でも悪い?」
「いえ…体の方は大丈夫です…でも…なんだかザワザワ……変な感じがしませんか?」
友奈の不安な表情を見て、風が一つの提案をした。
「……今日は中止にする?」
友奈の言葉から感じたのは、不安と疑問が混じった声だった。部員の状態を判断するのも、勇者部部長としての役目だ。
「……風先輩──」
ピコン
「風、優樹からメッセージよ」
友奈が何かを言おうとした刹那、全員の端末に鳴り響く通知と共に夏凛が端末を片手に言った。
そして風達は優樹にそれぞれメッセージを返信した。
「……そのようね。優樹には悪いけど……今日は中止にしましょう……」
「お姉ちゃん……」
「風、私から伝えておくわよ」
「二人とも、ここは新入りのアタシが──」
ピロンピロン
「……優樹?」
風が依頼を中止する判断をするや否や、風の端末に着信だ。
「──優樹、悪いんだけど今日は──」
『ハァッ!ふ、風先輩……すみません、5分で着きます……!』
電話越しに聞こえる優樹の声は、風の音と地面を蹴る音が聞こえてきた。
「ちょ、ちょっとあんた……走りながら電話してるの!?」
『すみません……!大事なお話があるので、スピード上げます!』
ピッ!
「切られた……」
「お姉ちゃん……優樹さん、なんて?」
「すぐに来るって。走って向かってるみたい」
「風、優樹は中止のこと知らないのよね?」
「え、ええ……なんか大事な話があるって切られちゃった」
「風先輩……すみません……」
「友奈が気にする事じゃないわよ。優樹もなんだかただ事じゃ無さそうだし」
今日の依頼を中止にしようと決めたのはあたしだ。
友奈にはなんの責任も無い。
それにしても優樹の言う大事な話って一体なんなんだろう?
「優樹さん……」
「とにかくあたしが謝ってくるわ。優樹来たら待たせといて……」
「ふ、風……先輩!」
風が扉を開ける直前、全力ダッシュの優樹が滑り込んだ。
「優樹!?」
「ハァ……ハァ……みんなごめん……」
「ゆ、優樹くん……大丈夫?」
「優樹さん……」
「あっきー!」
「すごいスピードだったな優樹」
「本当に5分で来たわね」
「……そういえば依頼は……」
「中止よ」
優樹が依頼の事を尋ねると、すぐに夏凛が答えた。
「……そう、なんだ……」
「一応言っておくけど、アンタのせいじゃないわよ。風がそう判断したんだから、責任を感じる必要は無いわ」
「夏凛……」
「終わったわよ。なんとか納得してもらった」
中止の旨を伝えた風先輩が僕たちの方へ歩いて来た。
「すみません風先輩……」
夏凛は責任を感じるなと言ってくれたけど、どうしても気になってしまう……
「夏凛が言ったでしょ、気にするなって。それより大事な話があるんでしょ?」
「……はい、部室でも良いですか?」
「ええ、みんなも良いわね?」
風先輩の問いかけに全員が賛同した。
◆◇
「……それで、一体どうしたのよ?」
部室へ戻り、話す機会が訪れた。僕はどう伝えるべきなのか。
一瞬ではあるが、言葉に迷った。
「──今から言うことを……落ち着いて聞いてください……」
僕以外の全員が息を呑んだ。
「今、僕たちが見ているこの世界は……なにかおかしくありませんか?」
チラリと部室の写真を確認すると、写ってるのは……友奈、夏凛、風先輩、樹ちゃん、そして僕の5人だ。
「どういう事……?おかしい事って──」
「……僕たちが見せられているこの記憶は──嘘なんです……」
「──っ!!」
部室が静まり返り、唯一友奈だけが何かを思い出したように目を見開いた。
「……そうだ……私……絶対忘れないって約束したのに……」
そして──友奈の頬を涙が伝った。
「友奈まで……ねぇ、どういう事──」
「私……優樹くんと約束したんです……なのに私は……!」
「この部室にはもう一人仲間がいたんです。
『!!?』
「須美……」
銀が思い出すように名前を呟いた。
「そういえば……わっしーはどこ?」
「そうよ、東郷は……っ!?」
園子と夏凛は名前を口に出してハッとした。
「もしかして……優樹がこの間の模擬戦で芯が無かったのも……」
「多分そうかも……」
僕は……僕の大切な人のことを忘れていた……。
忘れないって誓ったのに……なんで……。
「東郷……あんた今、どこにいるのよ……」
「東郷先輩……」
「フーミン先輩、私ちょっと用事ができました」
「奇遇だな園子、アタシもだ」
園子と銀が身支度を整え、どこかに連絡している。
「すみません風先輩、僕も人と会う用事が出来ました。」
おそらく東郷さんのことを忘れているのは僕たちだけじゃない。だから、会って聞かなければならない。
「……わかったわ。みんなも今日は解散しましょう。明日また話をしましょう」
こうして今日の部活はお開きになった。
◆◇
「園子、銀」
「あっきー、やっぱり来たね」
「ま、優樹が人と会う用事といえば、行き先はアタシ達と一緒だもんな」
「……そうだね」
校門で園子と銀と合流した。
どうやら目的は一緒のようだ。
「今回の件は向こうも記憶から消えているんだと思う。それは話を聞いてみないとわからないから、あっきーはそのつもりでいてね」
「……わかった」
園子の言葉に僕は頷いた。
「それにしても、やっと解放されたと思ったのになぁ……全く嫌になっちゃうよ」
「……姉さん」
当分会えないと思ってたのに……。
「ミノさん、あっきー」
「うん」
「行こう」
園子が呼び出した迎えの車が到着した。
僕たちは乗り込み、大赦本部へと出発した。
◆◇
「……本日はどのようなご用件でいらしたのですか?乃木様、三ノ輪様そして……安芸様」
大赦本部の最奥──かつて園子と銀が祀られていた場所へ案内されると、仮面を装着した一人の神官がやって来た。
「おおう……会うや否やそのスタンスかぁ……せっかくの姉弟の再会なんだから、もっと楽に行こうよ」
「今日はね、どうしても確認したい事があって来たの。あっきーも同じ」
「久しぶりだね、姉さん……」
「……」
「安芸先生、私たちと話してた時みたいにしてよ」
「アタシからも頼む、せっかくの姉弟の再会なんだぞ」
「姉さん……」
「……ええ、久しぶりね……優樹」
仮面を装着したまま、姉さんは僕の名前を呼んだ。
「あなた達がここに来たという事は、何かが起きているという事ね。私に答えられる範囲であれば答えるわ」
◆◇
「……という訳です」
「……そうなんだ」
園子が今回のことをいくつか確認すると、姉さんは淡々と答えてくれた。
曰く、大赦としては今回の件は知らない……正確には記憶が無いということ。今後、勇者システムのことは誤魔化さないし嘘をつかないこと。そして……東郷さんのことを思い出したのはおそらく姉さんだけであるそうだ。
「……アタシ、大赦のことは信用できないけど、安芸先生の言葉なら信じるよ」
「僕も……姉さんは唯一の家族だから。大赦としてではなく、家族として姉さんを信じるよ」
「……」
「安芸先生、私も二人と一緒に先生のこと信じています。それでは……」
僕たちは姉さんの元を後にした。
◆◇
「東郷のことで少し調べてみたけど、この学校にも在籍してない事になってたわ」
「何よそれ……まるでタチの悪いいじめみたいじゃない!」
「大赦なら何か知ってるかもしれないけど……」
「あたしには何も知らないって……あたし達、また騙されてるんじゃ──」
「それはありません」
部室の前から聞こえて来た会話に割り込むように扉を開いた。
「優樹……あんたどこ行ってたのよ……」
「すみません風先輩、僕ら大赦本部で話聞いて来ました」
「わっしーのことを私とミノさんが話せる位の人たちに聞いてみたけど、みんな知らないって震えてた」
「どうやらこれしかないみたいだよ」
そう言いながら、園子がジュラルミンケースを机に置いた。
「……それは」
「勇者……システム……」
ケースを開けると、風先輩と夏凛が言葉をこぼした。
「園子と銀が頼んだら出してくれましたよ」
「優樹……アンタもそっち側なの……」
「僕も一応先代勇者ですから」
ケースに入ってる端末の数は6個。しかしそこには5個しか入っていない。
「ここって……東郷さんの端末が……」
「わっしーは多分、壁の向こうにいる。勇者システム同士の位置情報に反応が無かったから、間違いないはず」
「じゃあ、変身して東郷さんのところへ行けば!」
そう言いながら、友奈が端末に手を伸ばそうとすると──
「待って、友奈……」
「風先輩……」
「ねえ……乃木、勇者になったとして、もう代償とかは無いの?」
「うん……大赦はもう、勇者システムのことを誤魔化さないって言ってくれたよ」
風先輩が友奈を止め、園子にシステムのことを尋ねた。
園子の答えは僕と銀も側で聞いていたことだ。大赦はもう、僕たちを騙したりしない……。
「僕は行きます。元勇者だからじゃない。大切な人を助けるために」
「わ、私も!」
「待って二人とも……私は部長として、みんなをおいそれと変身させたくない。だから……勢いでなんてのはやめて」
風先輩の言いたいことはよくわかる。かつて大赦の命令で僕たちを勧誘し勇者になり、何も聞かされないまま散花を経験した。そしてその内回復すると嘘をつかれ、一度は大赦を潰そうとまでした。そんなことがあれば、大赦を信じられないのは無理もない。
「私は大赦から……信じられる人からもう誤魔化さないと聞いて、今度こそ信じようと思った。納得してやる事だから、私は行くよ」
「僕もです。僕は僕の意思でもう一度勇者になります」
僕はケースから自分の端末を手に取った。
「優樹……乃木……」
「風先輩、私も考えました。
優樹くんとそのちゃんなら信じられます!だから行きます!」
友奈が端末を手にした。
「ま、勇者部部員は同じ部員が探さないとね!」
続いて端末を取る夏凛。
「……お姉ちゃん。私も行くよ」
樹ちゃんも取ると風先輩が声をあげた。
「あーもう!部長をおいていくんじゃないわよ!」
「風先輩……」
「あたしだって東郷が心配。大赦は信じられないけど...みんなは信じてるから」
風先輩が最後の一つを手に取った。
「そういえば……銀さんの端末は……?」
「ああ、それは──」
「優樹、アタシから説明するよ」
「頼むよ」
樹ちゃんが銀の端末について尋ねると、銀がそれに反応した。
「アタシが前に使ってた端末は、夏凛に受け継がれたんだ。そして新たな勇者システムは神樹様の負担になるから作れないんだってさ」
「だから悪いけど、アタシは留守番だ」
「三ノ輪……」
そう言いながら笑っているが、銀の本心は歯痒いだろう。
銀は誰かのために無茶を出来る子だから……本当なら自分も行きたいはずだ……。
「優樹、須美のこと頼んだよ」
そんなことを考えてると、僕の両肩に銀がポンと手を置いた。
「……わかった。銀、必ず東郷さんを連れて帰る」
「三ノ輪、ここは頼んだわよ。」
「はい、お任せください」
「よーし、それじゃあみんな!行くわよ!」
『おう!』
風先輩の号令で僕たちは勇者システムを起動した。
2話連続で展開が終わってないのは申し訳ない限りです…。
次回で話が進められるよう執筆します…。
プロットの作り直しは諦めました。とにかく頑張って執筆していきます。