安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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やっとアニメ2話の内容が終わりました。
もう少し執筆の速度を上げれるようになりたい。



純真な心

6人の勇者が飛び出す。

屋上から別の建物へ、また別の建物へ。

そして海を越える。

 

「東郷さん……」

 

壁の外……彼女はなぜそんな場所に……。

 

「みんな、もうすぐだよ」

 

「園子、ここからは僕が先導するよ。」

 

居ても立っても居られず、僕は強く地面を蹴った。

 

「あっきー、前に出過ぎないでね…」

 

「っ……わかってる……」

 

あの時のような無茶はもうしない……。

無茶をして死にかけて、大切な人たちを悲しませてしまったから……。

 

「この先が壁の向こう……この先に東郷が……」

 

着地と共に、風先輩が一言呟いた

 

「……行こう」

 

僕たちは壁の向こうへ足を踏み込んだ。

壁越えと共に見えていた景色は炎の世界へ姿を変えた。

 

「……相変わらずの凄まじさね」

 

「あっ、レーダーに反応あったよ!」

 

「どこどこ!?あっ本当だ!東郷さんやっぱり壁の外にいたんだ!」

 

「ん?結構離れてない?これってどこなんだ──って、えぇ!?」

 

園子が端末のレーダーを確認すると、東郷さんの居場所が確認できた──のだが。

 

「わぁお……」

 

「もしかして……この先に東郷さんが……?」

 

「それしかない……よね?」

 

「で、でも……これって──()()()()()()()ですよね!?」

 

東郷さんがいると思わしき場所へ目をやると、真っ赤に燃える炎の世界に巨大なブラックホールが形成されていた。

 

「いなくなった後輩がブラックホールになっていたなんて初めてよ」

 

「まさか恋人がブラックホールになっているとは……」

 

「後にも先にもこんな事あるわけないでしょ!」

 

「みんな!来るよ!」

 

空から無数の星屑が出現した。

 

「相変わらず……うじゃうじゃいるわね!!」

 

風先輩の大剣が星屑を切り裂く。

 

「お姉ちゃん!」

 

風先輩の背後から星屑が襲いかかった。しかし、樹ちゃんのワイヤーが全てを縛りバラバラに切り裂いた。

 

「樹、ありがとね!」

 

「うん!」

 

今の樹ちゃんはもう、かつてのように風先輩の背中に隠れている樹ちゃんじゃない!風先輩と共に戦えるんだ!

 

「ハァ!」

 

夏凛の剣が星屑を切り捨てる。その動きは以前よりも更に素早い。

 

「良いねにぼっしー!それじゃあ私も!」

 

園子の伸縮自在の槍が、天を目掛けて高く伸びる。

そして空中を漂う無数の星屑に向かって放たれた横薙ぎがそれらを塵に変えた。

勢いは止まらず、もう一発と言わんばかりに槍を振り下ろした。

 

「待ってて東郷さん!すぐ行くから!」

 

友奈の鋭い拳が星屑に突き刺さる。更に蹴りを叩き込み彼方へ吹き飛ばす。星屑同士が衝突し合い、連鎖するように爆ぜる。

 

「来い!」

 

僕は大槌を具現化させ、向かってくる星屑を叩き潰す。

更に迫り来る敵を野球の要領で殴り飛ばした。

 

「まだだ!」

 

オーラを大鎌に変質させ、青白い刃を振り抜き、次々と真っ二つにしていく。2年前のように斬撃を飛ばすことは出来ないが、威力は段違いだ!

 

「もう、埒があかないわね!」

 

「そうだねぇ……どうやってあのブラックホールまで行こうか」

 

夏凜の抗議するような叫びと僕の疑問を他所に、園子が空へ飛び上がる。

 

「それなら船で行こうよ!満開!」

 

「なっ!?」

 

園子の宣言と同時、灼熱の世界に大きな蓮の花が咲いた。

 

「園子⁉︎ あんた、満開使っちゃったらバリアが……!」

 

新しい勇者システムになり大きく変わった事は精霊バリアと満開だ。

 

まずはバリア。敵からの攻撃を受けると満開ゲージが1枚ずつ減っていく。

 

次に満開。満開は変身した時からゲージが全て溜まっているが、満タンでなければ行使できない。そして満開を使用するとゲージが0になる。そして消費したゲージは回復しない。この状態で攻撃を受ければ命に関わる事になる。

 

その代わり、前のシステムには存在してた散花が消えた。

もう体のどこかが動かなくなる事はなくなったのだ。

 

そして園子はここで満開を使用した。

2年前の最後の戦いで見た大きな船が空に浮かんでいる。

 

「大丈夫!前のやつはバリア無かったから!これでわっしーのとこまでひとっ飛びだよ!さあ、みんな乗って乗って!」

 

「もう、しょうがないわね!」

 

全員が飛び上がり、園子の船へ乗り込んだ。

これで……東郷さんの元へ……

 

「園子、頼んだよ」

 

「うん!任せてあっきー!それじゃ、いっくよー!!」

 

灼熱の世界で一隻の船が動き出した。

東郷さん……必ず助けるから……。

 

◆◇

 

「──ッ!!」

 

「ふ、吹き飛ばされる……!」

 

「みんな乗り物酔い大丈夫⁉︎」

 

「酔いより吹き飛ばされるんじゃないかな!?」

 

「中で一体何が起きてるんだろう……」

 

猛スピードで進む中、強い風圧が僕らを襲う。今はなんとか踏ん張っているけど、気を抜けば吹き飛ばされかねない。

 

「……どうやら囲まれてるみたいだ」

 

なんとか片手でしがみつきながら端末を確認すると、僕たちの周りには複数のバーテックスが出現していた。

 

まるで──あのブラックホールを守っているかのように。

 

「優樹くん、私を東郷さんのところへ行かせて!」

 

「絶対に東郷さんを連れて帰るから!お願い!」

 

友奈の強い決意に僕の脳裏には2年前の自分が浮かんだ。

今の友奈は……あの日、決死の覚悟をした僕だ。そして今の僕はあの時の銀だ……。

 

いや……友奈は僕のようなことはしないはずだ。死んでも助けるではなく、絶対に生きて帰るって言うはずだ。

ならば僕は……

 

「友奈…………わかった。東郷さんのこと、絶対に助けてあげて」

 

「うん!必ず連れて帰るよ!」

 

「園子!」

 

「りょーかい!」

 

園子の船が形状を変える。僕らが乗り込んでいる場所はそのままに翼が出現し、まるで不死鳥のようだ。

 

「友奈、ちゃんと帰って来なさいよ!部長命令!」

 

「友奈さん……お願いします!」

 

「あの中じゃ何が起きるかわからないわ。気合いよ!」

 

「ゆーゆ、私からもわっしーの事、お願いするよ!」

 

風先輩、樹ちゃん、夏凜、園子が友奈に発破をかける。

 

「はい!行きます!」

 

そして友奈はブラックホールへと飛び込んだ。

 

◆◇

 

「……須美」

 

アタシは戦いに出れないから、こうして待ってることしか出来ない。アタシはそれが歯痒くてしょうがない。

 

大切な親友がヤバい時だってのに、アタシはどうすればいいんだ……!!

 

「優樹や園子がいるんだ。みんな絶対に帰ってくるはずだ」

 

それだけじゃない。友奈も夏凜も風先輩も樹もいる。

仲間が沢山いるんだ。

 

「神樹様……どうか優樹達を助けてやってください……」

 

アタシはもう一度神樹様に祈りを捧げた。

 

◆◇

 

「東郷さん……!」

 

私はブラックホールを突っ切る。

一緒にバーテックスも侵入してきたけど、ものすごい圧力によって小さくなって消えてしまった。

 

「……っ、バリアが……」

 

精霊バリアが1枚ずつ、徐々に削れていく。

もしも0になってしまったらと考えると、怖くなってしまう。

 

でも、私は諦めない。

 

絶対に忘れないって言ったのに……

私はまた……東郷さんもいる日常が……!いつもの楽しい毎日を送りたい!

 

「……っ!!」

 

気づけば真っ黒な空間を抜け出していた。

ここは……って、私!?

 

不思議な……灰色の景色を見渡していると、自分の体が視界に入った。

 

「これって……幽体……離脱?」

 

今の私は……魂だけになってるってことなの……?

とにかく……東郷さんを探さなくちゃ……

 

『そのっちと銀が転校してきてからしばらく。

大赦にとって想定していない事態が起きた』

 

これは……東郷さんの記憶……?

 

『私が結界の一部を壊してしまったことで、外の火の手が活性化してしまってるのだ』

 

『このままでは炎が世界を飲み込む。大赦が進めていた反抗計画を凍結し、現状を打破する必要があった』

 

やっぱり、今のは東郷さんの記憶だ!東郷さん、中にいるんだね!

 

『火の勢いを弱めるには、西暦の終わりに行われた巫女を捧げ天の神の許しを乞う生け贄の儀式『奉火祭』しかない』

 

奉火祭……

 

『今、大赦でお役目を果たしている巫女たち数人が生贄のお役目に選ばれた。でも、私でも代わりに生贄になれる』

 

大赦の仮面を付けた人が、東郷さんに頭を下げる光景が見える……でも、この人って──

 

『私は勇者でありながら巫女の力も持つ唯一無二の存在だとか。悩むまでもない。結界に穴を開けた私が、そのことを償えるなら...…私一人で、優樹くんや皆が助かるなら』

 

東郷さんはいつも突っ走るなぁ……。自分をいないことにしちゃうなんて

 

でも、約束したから

 

東郷さんを一人にしない!させない!!

 

「だから!何度でも助ける!」

 

刹那──目の前の光景が姿を変えた。

先ほどまでの灰色の世界じゃない。いや……灰色の世界であることは変わらない。でも……ここはどこかで……。

 

「──東郷さん!」

 

東郷さんはすぐそこにいた。だが東郷さんは大きな鏡のようなものに囚われていた。

 

そして──背後には大きな炎が……。

 

「酷い……すぐ助けるから!」

 

友奈は東郷の元に駆け寄り、鏡から東郷を引っ張り出そうと試みる。

 

「東郷さん……帰ろう!みんなが……優樹くんが待ってるよ!」

 

友奈が力を入れ東郷を引っ張る。

徐々に鏡から東郷が分離されているが……背後の炎が友奈を焼きつくそうと燃え上がる。

 

「うっ……わぁぁぁぁ!!!!」

 

友奈の胸元に炎の紋様が刻み込まれていく。

そして対象人物を失った鏡は中央からひび割れていき、音を立て割れた。

 

◆◇

 

「ゆーゆ!!わっしー!!」

 

僕たちが迫り来るバーテックスを迎撃していると、突如ブラックホールが崩壊し、友奈と東郷さんが重量に従い落下していく。

 

「全速力!!」

 

そして園子の船が全速力で友奈たちを回収し、炎の世界に背を向けた。

 

「友奈……東郷さん……」

 

「ん……あれ、いつのまに……?」

 

声をかけると友奈はすぐに目を覚ました。

 

「よくやったわ友奈!東郷を助けたわね!」

 

「よかったです……本当に……」

 

「園子!みんな無事に帰るわよ!」

 

「うん!みんな、しっかり捕まってて!」

 

バーテックス達はもう追ってこないみたいだ。

園子の船から振り落とされないようにしがみ付き、元の世界へと戻って来た。

 

「すぐに病院へ!」

 

「ここからは走るわよ!」

 

「優樹、東郷頼める?」

 

「行けます!」

 

風先輩から東郷さんを受け取り、お姫様抱っこの要領で走り出した。

 

「友奈、大丈夫?」

 

「は、はい!大丈夫です!」

 

「あっきー!わっしーはいつもの病院へ!私はミノさんに連絡しておくから!」

 

「わかった!」

 

◆◇

 

「須美!」

 

「銀、早かったね」

 

「園子が迎えを頼んでたみたいでさ。ここまであっという間だったの」

 

「園子らしいね」

 

事態はある程度落ち着き夕方。

あれから僕たちは東郷さんを病院へ運び、先生から説明を聞いた。東郷さんの状態は、かなり生命力を吸われてて、本来であれば既に死んでいたらしい。

 

「なぁ……須美は大丈夫なのか……?」

 

「先生が言うには大丈夫らしい。でも、いつ目を覚ますかはわからないそうだ」

 

「……そっか」

 

「でも、須美が生きてて本当によかった……」

 

「そうだね……」

 

本当に……よかった。もしも万が一の事が起きたらなんて考えると、胸の奥が締め付けられるような感じがする。

だけど今は……大切な人を取り戻せた今があるんだ。

 

◆◇

 

「──」

 

「東郷さん、目を覚ましたよ!」

 

「わっしー!」

 

「須美!」

 

「ここは……」

 

「病院だよ」

 

「ゆう……き……くん」

 

「あんた数日寝てたのよ」

 

「風……先輩……みんな……助けて……くれたの……?」

 

「うん!」

 

友奈が強く相槌を打つ。

 

「でも……このままじゃ世界が火に……」

 

「事情は聞いたよ。火の勢いは安定して、もう生贄は必要無いそうだよ」

 

「……まさか、代わりの人が……?」

 

「違うわ。東郷普通なら死んでるくらいの生命力をごっそり取られたんだって」

 

「それでお役目を果たしたんじゃないかって、僕たちは考えてるよ」

 

「アタシはただ祈ることしか出来なかったけど……須美が戻って来てくれて本当によかった……」

 

「どこも異常無しだそうです」

 

「……東郷さん、ごめん……忘れないって言ったのに」

 

「私も……東郷さんのこと何日か忘れちゃっててごめん」

 

「私の方こそごめんね……そんなに心配させちゃって……」

 

「仕方ないよ、多分僕も同じ立場だったらそうしてた。」

 

「まあまあ、お互い様って事で良いじゃないの。私たちも忘れてたんだし」

 

「それでも……みんな思い出してくれた。夢じゃないのね」

 

「優樹くんのおかげだね」

 

「優樹くん……大好きよ……」

 

「っ……!」

 

唐突に大好きと言われ、僕は思わず目を逸らしてしまった。

 

「優樹、顔赤いぞ〜」

 

「見せつけてくれるわね〜」

 

「ほらほら〜あっきーもわっしーに言う事ないのかな〜」

 

園子……みんなの前で言うのはまだ恥ずかしいけど、男を見せる時……なのかな。

 

「東郷さん」

 

「はい……」

 

僕は東郷さんの目を見て言葉を発する。

 

「東郷さん、愛してるよ」

 

「──っ……‼︎」

 

東郷さんの頬が真っ赤に染まり、俯いてしまった。

自分で言っておいて、僕の顔も真っ赤になっていた。

 

「ゆ、優樹……見せつけてくれるなぁ……」

 

「良いね〜良いよ〜あっきー」

 

「ゆ、優樹……くん……」

 

「……っ⁉︎」

 

「あ、あんたね……!」

 

「やるわねぇ……優樹」

 

どうしよう……顔が上げられない……!

でも、僕は東郷さんが好きなんだ。

 

「そ、そうだ!やっと全員揃ったし、いろんなイベントが目白押しだよね!」

 

「そうだね、ゆーゆ!クリスマスとかお正月とかいっぱいだね〜」

 

「それは……とても楽しくなりそうだ」

 

友奈が無理やり話題を切り替え、僕たちもそれに乗っかった。

 

クリスマスに年末そしてお正月など本当にたくさんだ。

こんな風に楽しい毎日が続けば良いな。




ギリギリになってしまった。
毎度ながら申し訳ありません。
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