安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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第6話 今回は──遂にあの子が! それはそれとして、投稿時間もうちょい早めにしようか……。進めるたびに見える私の悪癖が……。


淡い恋心

「安芸優樹入りまーす」

 

「おーお疲れー」

 

あれ、風先輩だけ──って、そうだった友奈達は今日来ないんだった

 

「友奈達は今日来ないのよね?」

 

「そうですね。なんか用事があるとかで」

 

「それじゃ今日はアタシ達2人だけか」

 

「そうですね……」

 

この展開、前にもあったな……。また前みたいに変な事聞いてこないか心配だ──いやまぁ……これから頼み事をするってのに、疑ってちゃ世話ないな……

 

「あれ、元気ないじゃん。どしたん?」

 

「いやぁ……実はですね──」

 

僕は風先輩に目下の悩みを相談した。

 

「うんうん……中間テストねぇ……そういや来週だもんねぇ……それで、苦手教科は?」

 

「教えてもらえるんですか!?」

 

自分で依頼しておいてアレだが、僕は驚愕した。風先輩は面倒見が良い人だが、勇者部の部長として忙しいからダメかもしれないと危惧していた。でもそれは杞憂だったようだ。

 

「そりゃ、可愛い後輩の頼みだからね〜 ……でも、東郷とか頭良さそうだけど頼まなかったの?」

 

「それも考えたんですが……既に先約がありまして……」

 

「もしかして友奈?」

 

「はい……頼めば一緒に教えてくれると思うんですけど、東郷さんただでさえ車椅子なのに、更に負担かけるのは忍びなくて……。」

 

「なるほどねぇ……わかったわ。そんな優樹の気持ちを汲んでアタシが一肌脱ごうじゃないの!」

 

そう言いながら風先輩が腕まくりをして力こぶを作った。

風先輩って結構筋肉あるんだな──いだっ!?

 

「優樹……?今失礼なこと考えなかったかしら?」

 

「聞く前に叩かないでくださいよ……」

 

結構鋭いなこの人は……。ちなみに余談であるが、例の懐中時計の件から僕と風先輩と友奈の距離はグッと近づいた。それぞれの名前の呼び方も、僕と友奈は犬吠埼部長を風先輩と。風先輩は僕と友奈の事を名前で呼ぶようになった。東郷さんはあの場には居なかったが、一緒にいるのは友奈なので言わずもがなだ。また勇者部としての結束が強まった

 

「で、優樹って苦手教科は何があるの?」

 

「文系……特に国語ですね……」

 

「ふむふむ……理数系は大丈夫なの?」

 

「そっちはなんとか」

 

僕の得意科目は理数系──その中でも数学だ。と言っても、文系に比べればマシというだけで、そこまで飛び抜けているわけではないが……。文系は本当にダメだ……滅びろ……。

 

「じゃあさ優樹、今日は依頼も無いし、この後ウチ来る?」

 

「そうですね──って、え?ウチっていうのは、風先輩の家ってことですか?」

 

僕は間の抜けた質問をした。

 

「そりゃそうよ。あ、この時間なら妹もいるけど大丈夫?」

 

「それは全然おかまいなく…」

 

「おっけー。じゃあ、早速だけど行こっか」

 

「よろしくお願いします」

 

風先輩の家か……ちょっと緊張するなぁ…。

 

* * *

 

「あがってどうぞー」

 

「お邪魔します」

 

風先輩の家は、学校からそこそこの距離だった。風先輩曰く、自分の部屋だと狭いかもとの事でリビングへ案内されると、風先輩はお茶を淹れると言って台所の方へ行った──が、どこかから視線を感じる……。

 

「……ちょっと気まずいな……」

 

姉さん以外で女性と関わる機会は、今でこそ勇者部であるが、それまではほとんど交流が無かったので、結構緊張してしまう。 僕の緊張を紛らわすために、感じた視線の方へ顔を向けてみると、視線の主は走り去ってしまった。

 

「おまたせ──ありゃ、樹?」

 

「……!」

 

お茶を淹れて戻ってきた風先輩が今しがた去っていった妹さんらしき人の名前を呼ぶと、さっきの視線の主であろう風先輩にそっくりな少女が後ろに隠れていた。

 

「風先輩──その子って……」

 

「アタシの妹の樹よ!ほら、挨拶」

 

「え、えぇ……えと……い、犬吠埼……いつきです……11歳です……お姉ちゃんの妹です……その……よろしく…お願いします……」

 

そう言うと少女は──樹ちゃんは風先輩の後ろに隠れてしまった。

 

「ごめんね優樹、この子人見知りでね。慣れれば平気なんだけどそれまではね……」

 

「なるほど……。樹ちゃん」

 

「っ……!!」

 

僕も自己紹介をしようと思い話しかけてみると、風先輩の後ろでビクッとしてるのが見えた。

 

「ああ…ごめんね…僕からも自己紹介しなきゃって思ってさ」

 

「ほら樹…顔だけでも出しなさい」

 

風先輩が促すと、おそるおそると樹ちゃんが前に出てきた

 

「……初めまして。僕は、安芸優樹です。12歳で、趣味は筋トレです。風先輩の後輩やってます。よろしくお願いします」

 

樹ちゃんを怖がらせないよう注意しながら、僕も自己紹介をした。

 

「樹ー?来年からアタシや優樹と同じ学校なんだから、今のうちに慣れときなさいよー?」

 

「う、うん……」

 

「ああ、そうだ。今日優樹を連れてきたのは、勉強を教えるためだったわね。樹も一緒に宿題やる?」

 

「ふぇ…⁉︎う、うん……」

 

おそるおそるながらも、頷いた。人見知りとは聞いてても僕ってそんなに怖いかな……。

 

「よし、じゃあ二人に勉強を教えるわよー!」

 

こうして、犬吠埼家の勉強会が始まった。

 

* * *

 

「優樹、ここはこうね」

 

「なるほど……」

 

「ぁの……お姉……ちゃん」

 

「どうした樹〜?ここね?ここは──」

 

風先輩──じゃなかった……風先生による勉強会は滞りなく進んでいる。

僕の場合は英語の文法等を教えてもらっているが、風先輩の教え方はとてもわかりやすい。正直諦めていたが、意外となんとかなりそうだ。

 

一方、樹ちゃんの方は宿題が主なので僕よりスムーズに進んでいる。

 

余談ではあるが勉強会が始まる前、風先輩はこの勉強会の間は先生と呼ぶよう僕に命令した。冗談だと思って風先輩と言ったら、頭に手刀が飛んできた……先輩怖いよ……。

 

そんな訳でこの時間は先生と呼ぶことになった。

 

それから2時間ほど経っただろうか。樹ちゃんは宿題を終えて、部屋に戻る──と思いきや、風先輩にくっついていた。その光景を見ていると、二人はとても仲の良い姉妹である事が窺えた。

 

* * *

 

「んー、良い時間だしそろそろ終わろっか」

 

「お疲れ様……でした……」

 

やっと終わった……疲れた……

 

「樹、すぐご飯作っちゃうからね──あっ、そうだ。優樹も食べてく?」

 

「へ?」

 

勉強会が終わり、少々グロッキーな僕に風先輩からの提案があった。

 

「いやあ、アタシ時間見てなくて、結構な時間になっちゃったしね」

 

「えぇ……でも、勉強教えてもらった上に夕飯までご馳走になるなんて迷惑じゃありませんか…?」

 

「何言ってんのよ、そんくらいお安いご用よ。」

 

風先輩が呆れたように笑った。……姉さんは今日、職場の人と話があるそうだけど……。

 

「……わかりました。樹ちゃんがよければ、御言葉に甘えさせていただきます」

 

「よっしゃ!樹は良い?」

 

「う、うん……」

 

「じゃあ、チャチャっと作っちゃうから、二人とも話でもしてて!」

 

そう言い残し、風先輩はキッチンへ引っ込んだ。

そういえば、今日の日課まだだったな……腕だけで良いか。

 

「樹ちゃん」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

驚かせてしまった。申し訳ない……。

 

「ちょっとこの場で、日課の腕立て伏せ済ませちゃっても良い?」

 

「は、はい…」

 

「ありがとう。ちょっと3分ほど待ってて」

 

樹ちゃんの許可も貰えたので、僕は日課の腕立て伏せ300回をこなす事にした。

 

「フッ……フッ……」

 

「……」

 

ここでやってるのもアレだが、樹ちゃんの視線を感じる……。ちょっと恥ずかしい ……速度上げよっか

 

「おぉ……」

 

あと何回だっけ……100か……。

 

「さっきからなんの音──優樹……」

 

「よし、終わった」

 

「何やってんのよ……まぁ、お疲れ様」

 

「風先輩」

 

「安芸さん……凄いです…!」

 

「ありがとう樹ちゃん。あと、僕の事は優樹で良いよ」

 

安芸だとたまに姉さんと間違われるんだよなぁ……。

 

「アンタウチの可愛い樹を誑かさないでよ?」

 

「あはは……」

 

笑って誤魔化す事にした。

 

* * *

 

「できたわよー運ぶの手伝ってー」

 

「はい、すぐ行きます」

 

「はーい」

 

日課を終え、樹ちゃんと話をしていると、夕飯が出来上がったようだ──って

 

「えっと……なんですかこれ…?」

 

「女子力うどんよ!」

 

「女子力……」

 

女子力うどんと呼ばれたソレは、うどんの上に大量の揚げ物が乗せられていた

 

「優樹男の子だしこんくらい余裕でしょ?」

 

「ええ…まぁ…」

 

多分行ける……だろう。いや、先輩の手料理だし残すわけには行かないな

 

「お姉ちゃん……いつもよりはりきってるね」

 

「久しぶりに家族以外の人とだからね。つい」

 

「ま、まぁ、うどん伸びちゃいますし、食べましょ」

 

「それもそうねーそんじゃ、手を合わせて、いただきます」

 

「「いただきます」」

 

揚げ物が大量に乗っていて、うどんに辿り着かない。

 

「美味しいですね」

 

「美味しいね!お姉ちゃん」

 

「いや〜たまにはこういう夕飯も良いものね」

 

「そういえば、風先輩っていつ頃からこんな風に料理を?」

 

「……んー、去年かな」

 

そう言った風先輩の顔は一瞬悲しげに見えた。辛い事を聞いたのかもしれない

 

「……すみません」

 

「なんで謝るのよ」

 

「いえ、ちょっとマズい事聞いたかなと…」

 

「優樹……さん……。」

 

「樹ちゃん?」

 

「お姉ちゃんは……私のために頑張ってくれたんです……」

 

「それって……」

 

「樹…」

 

「ッ……」

 

風先輩はやっぱり……

 

「風先輩って、なんだか僕の姉さんにそっくりですね」

 

「……え?」

 

「優樹?」

 

「ああ、すみません。ちょっと思い出しちゃいまして」

 

風先輩を見ていると、どこか昔の姉さんを彷彿とさせる時がある。姉という共通点からだろうか?

 

「お姉さんの事?」

 

「はい」

 

「優樹……さん、も…お姉ちゃんいるんですね」

 

「うん、とっても優しい姉さんなんだ」

 

風先輩と樹ちゃんみたいに、いつも一緒にいる訳じゃないけど、とても大事な人なんだ……。

 

「優樹さん……お姉さんが大事なんですね」

 

「あぁ……!そうなんだ!」

 

樹ちゃんの言葉に、僕の顔は自然と緩んだ

 

「っ…!!」

 

「それにしても、美味しいですね風先輩」

 

「ふふっ…ありがとう!まだ沢山あるから食べなさい!」

 

* * *

 

「ごちそうさまでした」

 

「ごちそうさま」

 

「はーい、お粗末さま」

 

風先輩あの体のどこにあんな量入るんだ……。とんでもない量だったぞ…!?

 

「優樹?何か失礼な事考えてないかしら?」

 

「い、いえ!何も!」

 

僕は身の潔白を訴えた。というか心読めるのか風先輩は…?

 

「もうこんな時間か……。すみません風先輩、僕はこの辺で」

 

「ん?もうこんな時間…。遅くまでごめんね優樹 あと、テスト頑張って」

 

「こちらこそありがとうございました!また部活で」

 

「樹ちゃんも、またね」

 

風先輩と樹ちゃんに別れを告げた。

 

時間が時間だからちょっと急がなきゃ…。

 

「優樹さん…また…来てくださいね」

 

「うん!じゃあ、お邪魔しました」

 

* * *

 

優樹が帰ってしばらく経った犬吠埼家では──

 

「樹──って、顔赤いじゃない!」

 

「っ…!お姉ちゃん」

 

「どしたの!?熱は──無いか…よかったぁ…。

 

「お姉ちゃん」

 

「ん?」

 

「その……優樹さんって──」

 

「アイツがどうしたの?」

 

「い、いや!なんでもないよ!」

 

「ほんとにー?何かあったらお姉ちゃんに相談してよー?」

 

「う、うん…」

 

優樹さんの、あの優しい笑顔を見たら……胸がキュッとしたのはなんでなのかな…? また…優樹さんに会えると良いな…。

 

私は胸に宿ったよくわからない感情を押し込めた

 

 




もう少しで、結城友奈の章入ります。ゆゆゆ編の武器どうしような……。
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