安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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皆様、4ヶ月ぶりでございます。
大変長らくお待たせいたしました。この度、私事でかなりの期間更新を止めることになってしまい、大変申し訳ありませんでした。
同時並行のあるてぃめっとはなんとか投稿する事は出来ましたが、こちらはかなりの時間を要してしまいました。

あと少しで終わってしまう物語ではありますが、最後までよろしくお願い致します。


決して離れない

「──さん」

 

「安芸優樹さん、聞こえますか?」

 

「──は、い……」

 

意識が覚醒して最初に見たものは、患者に問いかけをする医者の顔だった。

 

「あ、の……痛てて…」

 

「まだ安静にしてなさい。頭をうってるから、意識がはっきりとしてないだろう」

 

頭……。意識すると、ズキっと頭に衝撃が走る。

僕は確か……東郷さんを庇ってトラックに……

自分の身に起きた出来事を思い出す間もなく、医者が僕の現状をわかりやすく説明してくれた。

 

「……あの、東郷さん……は……」

 

僕が問いかけると、医者は淡々と答えた。

 

「無事だよ。ただ……ずっと君の名前を呼び続けていたよ」

 

僕の怪我は軽症らしい。だけど頭と肋を怪我しているから念のため入院を余儀なくされるらしい。それと一緒にいた東郷さんは無事だということを知った。でも……

 

「そう、ですか……」

 

東郷さん……僕の、せいで……

 

「……状況を聞く限り、君がいなければ彼女はどうなっていたかわからなかった」

 

僕の考えてることを見透かすように医者は言った。

その表情は……まるで苦虫を噛み潰したような顔だ。

 

「そう……ですか」

 

「ひとまず、君を病室に移そうか。お友達も来てるようだしね」

 

「は、はい……」

 

そうして僕は、看護師さんによってストレッチャーごと運ばれていった。

 

◆◇

 

「──っ!優樹くん!!」

 

「……東郷さん」

 

東郷さんの悲痛な声に僕は胸が締め付けられるのを感じた。

 

「優樹、アンタ大丈夫なの……?」

 

「うん、一応は……しばらくは入院だけど……」

 

正直なところ、僕の入院より東郷さんが心配だ。

……そうだ友奈、友奈はどこだろう?

 

「優樹……くん……」

 

噂をすればなんとやらというのだろうか。遅れて友奈が病院へやって来た。

 

「……友奈、東郷さんの事、お願いできる……?」

 

「えっ……う、うん……任せて」

 

恐る恐るとだが、友奈が承諾してくれた。

……良かった。とりあえずは一安心だ──

 

ブオオオッ!!

 

「!?」

 

「な、なんなのよ!?」

 

外から轟音が鳴り響く。

これは、車の駆動音──しかもこの音は……!?

 

どこか聞き覚えのある音に一人の顔が浮かんだ。

いや……まさかそんなはずが……

 

だって、あの人は──

 

「あ、あっきー……」

 

「だ、だいじょうぶか、優樹……」

 

「乃木、三ノ輪……アンタたちどうしたのよ!?」

 

数分して病院のエレベーターから出てきた園子と銀。しかし二人ともぐったりしている。

 

「は、花本さんに送ってもらってな……」

 

「なっ……!?」

 

「な、何……どういう事よ?」

 

銀の言葉に僕は驚愕で思わず目が開いた。まさか……まさか本当に……!?

 

「花本さんが……」

 

普段大赦に居るはずの花本さんが……?

聞き覚えのある轟音でもしやとは思ったけれど、本当に花本さんが出てきたなんて……!

 

「そ、そうなんよ……わっしーからあっきーが事故にあったって聞いて、速攻で連絡したんよ」

 

「とはいえなぁ、この夜道をあんなに爆走されるとは思わなかったよ……ここに来るだけでアタシも園子もボロボロさ……」

 

少し回復したらしい銀が肩をすくめながらそう言った。

──花本さん……最後に会ったのは、僕と東郷さんが園子達に会いに行った時だろうか……。その後は色々あって話を聞きに行く事は出来なかったけれど……

 

「……まあ、優樹が無事で良かったよ」

 

「銀……」

 

「須美の事は任せておけ、アタシと園子がちゃんと見ておくからさ」

 

銀からその一言を聞いて僕は安堵した。

今は恋人の精神状態が心配だけど、見守ってくれる人達がいるというのは、それだけで安心できるからだ。

 

「はい、では病室へ移りますね」

 

「……みんな、来てくれてありがとう。」

 

そうして僕を乗せたストレッチャーは病室へと運ばれていった。

 

◆◇

 

「じゃあみんな、暗いから帰りは気をつけるのよ!」

 

「わかってるわよ、園子と銀は東郷の事頼んだわよ」

 

「お任せあれ!」

 

「任された」

 

「じゃあ友奈ちゃん、また明日」

 

「うん、またね!」

 

病院の外で皆が別れ、それぞれの帰路についた。

東郷、園子、銀は花本の運転する車で三ノ輪家へ。

 

花本の車が街頭の向こうへ消えるのを見送り、友奈達はそれぞれの家に向かった。

 

◆◇

 

「……」

 

優樹くんの事故から2日後。私は、今、周りで起こっていること、私の状態をノートに綴っていた。

 

私の胸元にある烙印……天の神の力……。

誰にも言っては行けない。誰かに言おうとすれば……嫌なことが起きる。最初は言おうとしてやめた……それでも、些細な災難があった。改めて優樹くんにちゃんと言おうとしたら……優樹くんが事故にあった……。

 

「っ……」

 

胸が痛い……。まるで炎が燃えてるような熱を感じる。

 

でも……私一人が黙っていれば、みんなが平和なんだ。

もう、私たちの戦いは終わったんだ……。もう、誰も傷付いてほしくない。大切な親友が悲しむところなんて見たくないんだ。

 

「私が黙っていれば……」

 

胸を押さえながら、友奈は決意をした。

 

◆◇

 

「優樹くん、順調に回復してるそうで良かったわぁ……」

 

「ごめんね、心配かけちゃって」

 

「ううん……それは私の方こそ……」

 

病室の中でもいつものような甘ったるい雰囲気を醸し出す二人。

優樹と東郷だ。

──優樹の事故からしばらくが経ち、東郷の精神状態が落ち着き、優樹も軽めのトレーニングなら再開しても良いと病院から許可を受けている。

そうしてほとんど普段通りになった二人が揃えば、勇者部での部室のようになるのも必然だろう。

 

「ねぇ、優樹くん」

 

「うん?」

 

東郷さんの顔が赤くなり、僕と東郷さんの間にだけ、温度が増した気がした。

 

「キス、しても良いかしら?」

 

「っ……⁉︎ 」

 

その言葉に僕は思わず身を引いた。その瞬間──

 

「い゛ッ……‼︎」

 

体に刺すような激痛が走った。

痛みと共に僕が咄嗟に押さえたのは──事故でヒビの入った肋だった。

 

「優樹くん!」

 

「だ、大丈夫……だから……!」

 

口ではそう言っているものの、心の中では痛みのあまり大汗をかいている。

 

落ち着け……少しずつ、息をするんだ……。

 

息をするたびにズキッと痛みが走る。だが、それも徐々に治っている。

 

「ふ、ぅ……」

 

「……ごめんなさい、優樹くん……」

 

さっきまでとは裏腹に、東郷さんは申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「だい、じょうぶ。うん……もう大丈夫。」

 

ひとまず落ち着きを取り戻した。

 

「……東郷さん」

 

「……今はアレだけど……別に嫌とかじゃ、ないから……」

 

そう言いながら、思わず天井を見上げた。

今この瞬間は東郷さんをちゃんと見れない……。

 

「……そう、それなら────」

 

東郷さんの視線が、窓に移った。僕もそこに視線をやると──

 

「雪だ……!」

 

「綺麗」

 

窓の外には、チラホラと雪が降っている。

今のままだと積もらないだろうけど、それでも……。

 

「そういえば、今日はクリスマスね!」

 

「本当だ。という事は、ホワイトクリスマスか」

 

東郷さんに言われて思い出した。

今日は12月25日──クリスマスだ。

 

「優樹くんとお付き合いしてから、初めてのクリスマス……」

 

「……ごめんね、こんな形になっちゃって……」

 

そう言うと、東郷さんは首を横に振った。

 

「ううん。私は優樹くんの側に居られるだけで十分だから。それが病院でも……。」

 

「……そっか。ありがとう……。」

 

「でも、来年は優樹くんと過ごしたいわ……。2人っきりで……」

 

「東郷さん……!?」

 

思わず東郷さんの方へ顔をやると、頬を赤らめながら微笑んでいるのが見えた。

そんな顔を見てしまい、僕も顔が熱くなってしまった。

 

「……来年、か……」

 

来年も、再来年も、その先も……僕は東郷さんと一緒なんだ。

 

「……でも、年が明けて4月になれば、風先輩は卒業しちゃうんだね」

 

来年という言葉から、この先の事が浮かんできた。

春になれば、3年生の風先輩は学校を卒業する。そして……僕たちが3年生になる。

 

「……ええ、でも風先輩ならなんだかんだ理由をつけて勇者部に居座りそうね」

 

「……ははっ、あり得るね」

 

風先輩ならきっと……『アタシは勇者部OGなんだから、いつまでも勇者部員よ!』なんて言って、部室で過ごしてそうだ。

 

「でも、風先輩の卒業まではもう少し時間があるわ。」

 

「うん、それまでいろんな事をしたいね。初詣とか」

 

大晦日までには退院出来るといいな……。

いや本当に……姉さんが家に帰ってるかもしれないし……!

 

「……優樹くん、安芸先生の事考えてる?」

 

「な、なんでわかったの……!?」

 

「優樹くんの考えてることは大体わかるのよ」

 

「え、えぇ……?」

 

困惑の声を上げたものの、ちょっと思い当たるな……。

 

「おーい、バカップル!見舞いに来たわよ!」

 

そんなことを考えてたら、夏凜がやって来た。

バカップルて……

 

「あれ?友奈は来てないの?」

 

「いいえ?夏凜ちゃんと一緒じゃなかったの?」

 

「私は1人で来たわよ。てっきりそっちにいると思ってたから」

 

「こっちはまだ東郷さんしか来てないよ。樹ちゃんは学生コーラスで風先輩も付き添いだしね。」

 

樹ちゃん、お見舞いを優先してコーラス変わってもらおうとしていたけど、そっちに行ってくれて良かったよ……。僕が怪我したせいでオジャンになっちゃったら申し訳なさすぎるから……。

 

「友奈……どうしたのかしらね?」

 

ポツンと夏凜の独り言が病室に響いた。

 

◆◇

 

──それから数時間後

 

「……」

 

僕は病室で物思いに耽っていた。

……あれから友奈が来ることはなかった。もちろん見舞いに来る義務などは無いのだから、気にする事はないはずなのだが。

 

……最近の友奈は、少し様子がおかしい気がした。

本当に気のせいかもしれないけれど、ついこの間の──僕が事故にあった時も、友奈の表情に微かな違和感を感じたりした。

 

思い返せば……東郷さんを救出した辺りからどこか様子がおかしかったのかもしれない。

 

でも……確信は持てない。

 

東郷さんや園子辺りに相談してみたいけど、無駄に心配をかけるわけにもいかない。

 

…………手詰まりだ。確信が持てない以上、取れる手段が思いつかない。

 

「……考えてても仕方ないや。寝よう……。」

 

時刻は0時を当に過ぎている。早く寝ないとね……。

 

僕は傷の回復に努めるべく、夢の世界へ旅立った。




前回の投稿で4.5話くらいでと申し上げましたが、もしかしたら前後する場合がありますのでご了承ください。

それから、今後の投稿頻度ですが今と変わらず不定期でやらせていただきますが、なるべく早く……具体的には2.3週間を目安に投稿出来たらと考えております。あくまで目安ではありますが……よろしくお願いします。
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