安芸優樹は勇者である   作:三奈木イヴ

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神世紀299年の章は今回で最終話です。次回から結城友奈の章に入っていきます。今後ともどうぞよろしくお願いします!!


大切な思い出

「フゥ……フッ……ゥ……」

 

今日のトレーニングはランニングだ。

 

「休日に走るのは楽しいなぁ……」

 

普段の僕は自重を中心に筋トレばかりしているが、それだけだとバランスが悪いので、こうして時々走ったりもしている。今日は、とりあえず大橋方面へ行って途中で折り返す予定だ。流石に大橋まで行くのは遠過ぎるし僕の体力が持たないからね……。

 

◆◇

 

「ハァッ……ハァッ……ん?」

 

見覚えのある後ろ姿……

 

「おーい、風先輩!樹ちゃん!」

 

後ろから声をかけながら、少しスピードを上げた。

 

「ん──ぴゃぁっ!?って優樹か……驚かせないでよ」

 

「ゆ、優樹さん⁉︎」

 

「すみません、トレーニング中に見かけたのでつい。あっ、樹ちゃん久しぶりだね。こんにちは」

 

「は、はい……こんにちは……」

 

テスト勉強ぶりに樹ちゃんに会ったが、僕のことを覚えててくれたようで良かったぁ……。

 

「ウィース優樹!今日もトレーニング?」

 

「はい。今日のメニューは大体済ませたので走ってたんですよ。風先輩達はお出かけですか?」

 

「そうそう。ちょっとスーパーまで買い出しにね」

 

「それで樹ちゃんも一緒という事ですか。姉妹で仲が良いですね」

 

「でしょ?でも優樹、いくら樹が可愛いからってあげないわよ?」

 

「お姉ちゃん……恥ずかしいよ……」

 

「あはは……」

 

お姉ちゃん──か……。そういえば姉さん、昔に比べて大分変わったよな……。

 

「そういえば優樹、どこまで行くの?」

 

「え?あ、ああ…大橋方面を途中まで行って戻る予定です。」

 

「えぇ……凄いですね……」

 

「マジか…。結構な距離なのに凄いわねアンタ……」

 

ランニングコースを教えると、二人とも若干引いていた。なぜだ……楽しいじゃないか……

 

◆◇

 

「よし、この辺で戻るか」

 

風先輩達と別れてから1時間程経っただろうか。この辺りで往復する事にした。

それにしても──結構走ったなぁ……。きっかけがリハビリとはいえ、ここまでよく続いたよ本当に。

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

今のペースだと陽が落ちてしまいそうなので、速度を上げないとな。

 

「よっしゃあ、ラストスパート!」

 

◆◇

 

コンコン

 

「はーい」

 

「失礼します。乃木様、三ノ輪様」

 

「うん?その声は安芸先生か?」

 

「あー!安芸先生なんよ〜お久しぶりで〜す」

 

「ご気分はよろしいでしょうか?」

 

「へいへーいツレないよ〜もっと去年みたいに接して欲しいんよ〜」

 

「まぁまぁ、園子さんや。安芸先生も立場上仕方ないじゃないか」

 

「……本日は、担当の代理として、ご報告に参りました。時期は未定ですが、私が御二方の担当の神官になるよう辞令が下りました」

 

「マジか!」

 

「じゃあ、あっきーの事いつでも聞けるね」

 

「……それについては、基本的に致しかねます」

 

「まぁ、会いたいって言っても無理だしそりゃそうか」

 

「……」

 

「今回の辞令を持って、私と優樹は別々に暮らす事になります」

 

「なので、それまでの日常程度の事であれば」

 

「え?じゃあ、優樹のやつ一人暮らしになるってこと?」

 

「はい」

 

「……あっきーはそれで良いの?……先生はそれで良いの?」

 

「園子……」

 

「……優樹ならきっと納得するでしょう」

 

「……二人が良いなら、私は何も言わないけど」

 

「例え大赦が、わっしーやあっきーと会わせてくれなくても、なんとかしてみせるから」

 

◆◇

 

「……おはよ〜」

 

今日は眠いなぁ……。ちゃんと寝たはずなんだけど

 

「おはよう優樹」

 

「姉さん⁉︎」

 

今日は日曜だからといつもより1時間ほど遅く起床して、リビングへ降りると、いつもなら居ないはずの姉さんが挨拶を返した。

 

「久しぶりね優樹」

 

「姉さん……最近忙しそうだったけど、大丈夫なの……?」

 

いつも仕事が忙しくて家に居ないはずの姉さんが居るというのはなんとも不思議に感じてしまう。それだけ姉さんと一緒に居られなかったということか……。

 

「ええ、今日はお休みを貰ったわ。それと、優樹に話があるわ」

 

「話?もしかして、姉さんにも春が訪れたとか?」

 

「優樹が冗談なんて珍しいわね。いいえ、違うわよ。」

 

ちょっとふざけてみたが違ったか──いや、姉さんの表情から察するに真面目な話っぽいな

 

「ごめん姉さん、それで話っていうのは──」

 

「期日はまだ未定だけれど、私は、この家を出る事になりました」

 

「──え?」

 

姉さんの一言に僕は驚きを隠せなかった。

は?え?出る?家を?なんで?どうゆうこと?

 

「どういう事だよ姉さん!家を出るって……」

 

「ごめんなさい優樹…職場から辞令があったの。本部がある大橋の方へ異動するようにと」

 

「そんな……結構遠くじゃないか……久しぶりに姉さんに会えたと思ったのに……また会えなくなるのかよ……」

 

僕は……僕の心に宿った想いをつい吐露してしまった

 

「優樹……」

 

「っ……姉……さん」

 

姉さんが、僕の事を抱きしめてくれた。その温もりに涙が出そうになったが、必死でそれを堪えた。

 

「……ごめんなさい優樹、いつも貴方に苦労をさせてしまって……。」

 

姉さん──苦労なんて……むしろ僕のせいで……

 

「ううん……。僕の方こそ……姉さんのおかげで今の僕があるのに……いつもありがとう」

 

姉さんへの恩は返しても返しきれない。たった二人の家族になってしまってから、姉さんは大変だっただろう…。

僕が見る姉さんの姿は、いつも通りの姿を見せてくれる。でも本当は疲れているのかもしれない。僕のせいでいつも苦労させちゃっている。だから──姉さんには安心していてほしい

 

「優樹……強くなったのね……。」

 

「姉さん……僕を育ててくれて本当にありがとう……。姉さんが帰ってくるまで、僕はこの家を守ってみせるから…!」

 

「ええ、お願いするわね。優樹」

 

いつまでも姉さんに甘えているわけにはいかないんだ。

姉さんが家を出ても、心配させないようにしなくちゃだ。その為に僕は頑張るんだ…。

 

◆◇

 

それから姉さんの異動日までは早かった。中々会えなかった分、姉さんと過ごす時間は幸せなひと時だったと思う。いろんな話もした。とは言っても、姉さんの職場の事はあまり話せないらしく、主に僕の学校生活や勇者部の事だったが、それも楽しい時間だった。しかし、幸せな時というものはあっという間に過ぎ去るものである。

 

「優樹……家の事は頼んだわよ。もしも何かあったら、すぐに連絡して。困った事でも」

 

「うん……。姉さんも、体には気をつけてね……。」

 

「ええ、じゃあ行くわね」

 

「うん……。姉さん、頑張って」

 

「優樹、ありがとう……三好君、お願い」

 

「はい」

 

三好と呼ばれた男性が運転する車に姉さんを乗っけて、目的地まで出発した。姉さんと離れるのはとても寂しい。でも、僕もこのままじゃいられない。もっと強くならなくちゃいけないんだ……。いつか姉さんが帰って来られる家を──ただいまって言える家を守るために…!

 

◆◇

 

「……良かったんですか?」

 

「何の事かしら?」

 

「とぼけちゃって……。優樹君のことですよ」

 

「……」

 

「やはりあの時のことが負い目になってますか?」

 

「そう……ね。例え家族であっても、アレは隠さねばならなかった。」

 

「そうですね。でも僕個人としては、事前に伝えた方が良かったと思ってます。」

 

「三好君」

 

「わかってます。それが世界の為であったことは。でも、優樹君達がああなったのは、僕も負い目を感じてますよ。」

 

「そう……。」

 

◆◇

 

「父さん、母さん、姉さん いってきます!」

 

姉さんが大橋へ行ってから、しばらくの時が経った。

今日は、讃州中学の入学式の日であり、学年が変わる日だ。

僕と友奈と東郷さんは2年になり、風先輩は3年になる。

そして──風先輩の妹の樹ちゃんが入学する日でもある。

あれからも時々会う機会があったのだが、僕と話す時はちょっと怖がられてるような気がする。それでも初めて出会った時よりは話せるようになったのだが……。勇者部の皆と行動する内に普通に話せるようになりたいな。

 

「優樹君おはよう!」

 

「おはよう優樹君」

 

「友奈に東郷さん、おはよう」

 

いつものように、二人と挨拶を交わした。 こういう日常も幸せなひと時だという事を姉さんの件で知った。

 

「あっ、そうだ!風先輩が入学式の後、部室に集合だって!」

 

「わかったよ」

 

風先輩の事だし、多分樹ちゃんの紹介かな?

 

◆◇

 

「はーい、全員揃ったわね」

 

「風先輩、どうしたんですか?」

 

「もしかして新入部員とかですか?」

 

「おっ、東郷鋭い!そう!実は新入生から1人!勇者部に入部するわ!いいわよー」

 

風先輩が合図を出すと、おそるおそると樹ちゃんが部室へ入ってきた。

 

「樹ちゃん、リラックスしてこ」

 

「緊張しすぎよ樹!リラーックス」

 

「は、はい……い、犬吠埼樹です。よ、よよよよろしくお願いします…!」

 

樹ちゃんが緊張で震える中、自己紹介をした。頑張って樹ちゃん

 

「樹ちゃんよろしく!」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「風先輩、優樹君は樹ちゃんと面識があるようですが──」

 

「ああ、それね。色々あって、時々会ってるのよ。ただまぁ当の樹は未だに優樹に慣れてないっぽいけど」

 

「まぁ、そのうち慣れますよ」

 

僕は淡い希望を呟いた。

 

「まぁ、アタシの妹にしては女子力低いけどそれ以外は中々よ。占いとか出来るし」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

「おーすごいや!あっ、そうだ……占いが好きなら──これあげるよ!縁起物だよ」

 

そう言って、友奈はポケットから四葉のクローバーのペンダントを樹ちゃんに手渡した

 

「わあ……かわいい…!で、でもっ…いきなりこんなものをいただくわけには……!」

 

「じゃあ、あとで私を占って!」

 

「……はい!」

 

最初は遠慮していた樹ちゃんだったが、代わりに友奈を占うならということで納得してくれた。

樹ちゃんの占いは僕も受けたことがあるが、これが結構当たるんだよなぁ…。

 

「樹ちゃん」

 

「は、はい?」

 

東郷さんがどこからともなくマジックで使われそうな帽子を取り出して、白布を掛けた。タネも仕掛けもありませんね──

 

「はい!」

 

ッ⁉︎タネも仕掛けも無いはずの帽子から鳩が飛び出てきた!一体どこから!?

 

「す…すごい!どうやったんですか?」

 

「知りたい?」

 

樹ちゃんの緊張は和らいだようだ。僕も何か披露できれば良かったけど、生憎僕には今のところ筋トレしか無いからな……。既に見せてるし

 

「風先輩、樹ちゃんの緊張解けましたかね」

 

「ええ、優樹もありがとうね」

 

「いえ、僕は何も出来てませんから。」

 

「いやいや、優樹が居るだけで樹の緊張は少し解けていたわ」

 

「本当ですか?結構苦手に思われてそうですけど」

 

「それは多分──いや、ごめん何でもないわ」

 

???

 

「それじゃあ、新しく樹を加えた5人の新生勇者部!!頑張っていきましょう!!」

 

『おー!!』

 

新生讃州中学勇者部の始まりだ!!

 




大まかに決まってても悩むところはまだ沢山ある……。本当にどうしような

今更ですが、優樹君の特徴(忘れてました) 顔はほぼ眼鏡を外した安芸先生
髪は肩よりちょっと下くらいのとこで纏めてる(ブラックラグーンのベニーが近い) 顔はそんな感じで結構筋肉が付いてる(成長期だからね)
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