紅魔戦記~カリスマの戯れ~   作:インスタントブルー

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望み

「…そう言えば、中々遅かったわね。

あの男はかなりの切れ者な訳だし、

もう少し早くコンタクトを取る物と

すっかり思っていた訳だけれど。」

 

1932年1月12日。私、レミリア・スカーレットは

紅魔館内の執務室で咲夜が提出してきた

様々な報告書に目を通している。

その報告書の1番上にあったのは、

イタリア王国の首相を務めている

ベニート・ムッソリーニからの手紙だった。

賢人の彼らしく文面は堅苦しい物で、

私やルーマニアへの賛辞を並べた後に

ルーマニアへの訪問を願い出る内容だ。

国力に勝るイタリアの首相が

私を招待する手紙を出したのでは無く

ルーマニアへの訪問を希望した辺り、

例の件を気にしているのかもしれない。

例の件とは、祝辞の件である。

イタリアは私が女王に即位した時

祝辞を送らなかった国家の1つだったのだ。

尤も、イタリアはカトリックの総本山

バチカンを領内に抱えているし、

幾らルーマニアが正教の国でも

吸血鬼の女王即位に祝辞等は

とても考えられなかったのだろう。

ましてや、私の女王即位は

ラテラノ条約発行から1年程の時期だったし。

そんな風にジッと考察する私に、

咲夜が質問を投げかけてきた。

 

「しかし、彼は無神論者だと聞きます。

カトリック教会としてもその事については

重々承知していそうな物だと思いますが…。」

 

咲夜を見て、私はまだまだだなと思う。

 

「常に本音で政治を出来る人間何て

世界中どこを探してもいないわよ。

仮にも専制君主の立場にいて

好き勝手振る舞える私ですら、

多少は妥協をしているのよ?

特に外交はかなり気を遣うわよね。

あの男はかなりの切れ者だから、

そんな三流の意地の張り合いは

避けるタイプだと思うわよ?

…まぁ、取り敢えず訪問には

喜んで歓待する旨を書いて

返答する事にしましょう。

この報告書を読んだら

早速私直々に返信を

書いてあげようかしら。」

 

近い将来訪れるであろう

ムッソリーニとの邂逅に思いを馳せ、

私は報告書の次のページへと目をやる。

…如何やら経済の各種統計の様である。

 

「…1931年の経済成長率は+2.1%だったのね。

大恐慌に世界中が苦しむ中でよく達成した物だわ?」

 

多種多様な経済統計をチェックしていくが、

幸いポジティブな統計が殆どを占めており

私は胸をなで下ろしている。

咲夜は都合の悪い統計も躊躇せず

提出してくるタイプの人間なので、

この辺りは信用して構わないだろう。

 

「発電所の建設、送電網の構築、

高速道路、鉄道の建設、兵士の増員によって

失業者が激減した事が大きそうですね。

ルーマニアは農業従事者が多い国なので

既に完全雇用を半ば実現させ、

人手不足に陥りかけているとすら聞きます。

去年10月の始めに立案した計画で、

1ヶ月で最低限必要になる人員の確保、

次の1ヶ月で地盤等の調査を

何とか終わらせましたから、

今年漸く着工にこぎつける訳ですが、

それでもこの経済成長率な訳ですから…

今年は更なる伸びが期待出来そうです。」

 

咲夜が笑顔で今年への希望を語ってくれる。

実際、今年は更に伸びる事だろう。

世界中がマイナス成長や低成長に喘ぐ中で

+2.1%を記録出来た事は望外の成果だ。

まぁ、実際の所ルーマニア経済は

私達がいる限り際限なく成長をするのだが。

資金こそ殆ど持ち出していない物の、

咲夜、美鈴、アリスを除いた

私達の仕事は大抵が無給であり、

半ばボランティア組織みたいな物だ。

しかも、仕事に必要な資材等は

錬金術で量産している物であったり

アリスの人形で加工した物であったりと

何とか安く揃えている訳だ。

生産効率は世界屈指だろう。

…それはそうと、私は咲夜に

気になっていた事を聞く。

 

「…そう言えば、クリムソンの象徴たる

バベルの塔は月末に完成だっけ?」

 

「はい、担当からはそう聞いています。

尤も、空間を拡げる作業は一日で済むので、

専ら模型の完成待ちと言った所です。」

 

…そう聞いて、私は思わずにやけてしまう。

いよいよ、いよいよクリムソンが

世界首都として、人々に知れ渡るのだ。

私は近い将来訪れる、歴史上最も発展した

ルーマニアの姿を見る事を楽しみにしていた。

私がそんな顔をしているのとは対照的に、

咲夜は不思議そうな顔で私に尋ねる。

 

「…所でお嬢様。つかぬ事を伺います。

かねてから気になっていたのですが、

この館の財産はどの様に築かれたのですか?」

 

…まぁ、野暮な事を聞くものだ。

咲夜はこう見えて少し抜けているし、

私が女王になってからと言う物

財政を全部担っている訳だから

自然と気になったのかもしれないが、

普通こう言った質問は避ける物だ。

とは言え、別に隠す様な事でも無いので

私は肩を竦め、実態を咲夜に教える。

 

「…地代で稼いでいたらしいけど、

殺しで稼ぐ事も多かったみたいね。

吸血鬼らしいとは思うけど、

私が当主になってからは禁止したわ。

妖怪は畏れを必要とする生き物だけど、

一々殺すと私達は恨まれるから

人間が作る商品が手に入らなくなるし、

何より私達を畏れる人間の数が

一気に減っていってしまうのよ。

例えとしては余りに自虐的だけど、

病原菌みたいな物かしらね。

感染すると直ぐに死に至る様な

危険性の極めて高い病原菌は、

他の人間に感染する前に宿主の人間が

いなくなってしまう物だから

その内淘汰されてしまうのよ。

妖怪稼業だって、程々が重要ね。

そんなこんなで紅魔館も

一時期は赤字経営に陥ったけど、

最近はパチェの錬金術のお陰で

何とか上手くやっているって訳ね。

…と言うか、経理をしているのだから

当然知っているとは思うのだけど、

そもそも紅魔館は大した支出が

無いと思わないかしら?」

 

私の問いかけに咲夜は手を口にやって

少々考え込んだ後に答えを述べる。

 

「言われてみれば、確かにそうですね。

収入は微々たる物であるのに、

支出は少ない印象を受けます。

支出は食費が殆どで、偶に衣料品。

それ以外の支出は極稀です。」

 

「…ま、そう言う事。それに、

食事や衣類はどうしても困ったら

家財を売り払うなり節制するなり

多少面倒だけど魔法で精製するなり

幾らでもやりようがある訳だからね。」

 

私の言葉に、咲夜が気まずそうに私見を述べる。

 

「…支出と言えば、私の給金の高さは

財政的に問題では無いのですか?

国家予算の3%が私個人の為に

使用されている状態は不健全ですし、

お金を使う機会も外食する時位ですから

私自身はもっと低くても良いのですが。」

 

…私は戯ける咲夜に溜息をつくと、

左手で咲夜の顎を持ち上げ

ジッと見つめながら、

それらしく述べてやる。

 

「…咲夜、私は忠節に報いる当主なの。

文字通り全ての時間を私に捧げる

一番の忠臣がそこにいると言うのに、

適切な報いを与えないのは当主失格よ。

大体、今のルーマニアの経済は

咲夜がその半分を回していると言っても

全く以て過言では無い訳だし、

私からすれば、咲夜はもっと

給金を貰うべきとすら思うわ。」

 

私はそう言うと、咲夜の唇を奪う。

私の今の発言を受けても尚

彼女が言いそうな事が分かったからだ。

白い頬を真っ赤に染める咲夜に言う。

 

「…念の為予め忠告するけど、

もし私といるだけで十分等

そんな事を考えているとしたら、

その考えはさっさと捨てる事ね。

咲夜は優秀なメイド長である前に、

私の家族であり、所有物なの。

要は宝石とかと同じ括りなの。

宝石は常に磨いて輝きを

失う事が無い様にして欲しいし、

傷一つ付けられるのも許せない。

兎に角、咲夜は私の近くに

常にいて欲しい存在よ。

奉仕の精神は十分に受け取っているわ。

もしも貴女が私に報いたいと思うなら、

もう少し主人の気持ちも汲んで欲しいわね。」

 

私の発言を受け、咲夜はコクコクと

縦に首を振り続ける機械の様になる。

…ちょっとやり過ぎたかもしれない。

私としても恥ずかしかったし。

 

「…はい、この話はこれでおしまい。

いつも通り仕事に戻って頂戴。」

 

私が多少雑に言い放った言葉が

放心状態の咲夜に届くまでには、

時間を停止出来る咲夜を以てしても

幾らかの時を要する必要があった。

 

 

----------

 

 

…と、とうとう来てしまった。

1932年1月13日の昼時、

私、メアリー・レーガンは

パチュリーさんから教わった

ブカレスト郊外にある

アリスさんの自宅の前で

1人何と無しに佇んでいた。

このままノックをするだけなのだが、

存外私はかなり緊張している様だ。

しかし、私は遂に意を決し…

 

「…あら?見慣れないお客さんね。

一体私に何の用があるのかしら?」

 

…私は思わず転びそうになる。

私は後ろを振り返ると、

絶世の美女がそこには立っていた。

まるで御伽噺から出て来た様な出で立ちは

精巧に作り込まれたビスクドールを

凌駕している様にすら感じられる。

その存在が幻想と言われたとしても

納得してしまいそうな容姿を観察する。

今の所は表層しか分から無いが、

パチュリーさんに聞いた話からすれば、

彼女こそがブクレシュティの人形師、

“アリス・マーガトロイド”その人である事に

最早疑いの余地は一切無かった。

 

「…余り見つめられると照れるわね。」

 

おっと、いけない。私の悪いくせだ。

先ずは名乗る所からだろうな。

 

「初めまして!私の名前は

メアリー・レーガンと言います。

気軽にメアリーと呼んで頂きたいです。

アイルランド出身の魔女でして、

アリスさんの弟子になりたくて来ました!

これ、パチュリーさんからの推薦状です。」

 

私がそう言うと、アリスさんが困惑しながら

差し出した推薦状を受け取り読んでいく。

…もしかして、話が行って居なかったのか?

折角ルーマニアまでやって来たのだ。

何とか彼女の弟子にならないと。

私が少し不安を覚える中、

アリスさんは推薦状を読み終えて、

私に言葉をかけてくる。

 

「…そうね。まぁ、いきなりの事だから

聞きたい事は幾らかあるのだけれど、

立ち話も何だし上がっていきなさい。」

 

アリスさんはそうやって鍵を開ける。

…無論、開錠にも魔法を使用して。

私がアリスさんに続いて室内に

足を踏み入れたその瞬間、

甘いお菓子の香りが私の鼻に入ってくる。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「…それで、貴女は一体何なのかしら。」

 

私、アリス・マーガトロイドは

自身を“メアリー・レーガン”と名乗る

魔女を自称する少女を家に招き、

テーブル越しに向かい合っていた。

身長は私の方が高いけれど、

椅子に座ると同じ位の高さで

少しだけ誇らしくなった。

マカロンを振る舞ってみたら、

彼女は目を輝かせて飛びつく。

彼女の事は殆ど知らないが、

妹が出来た様な錯覚に陥る。

 

…そんな彼女は私の師でもある

パチュリーからの推薦状を

持参していた様なのだが

これが本当に困ってしまう物で、

推薦状には彼女がパチュリーの課題に合格した

才能に満ち溢れる優秀な魔女の卵である事、

そして彼女の氏名と容姿の特徴等の事項が

簡単に書かれていただけだった。

…真面目な話、パチュリーは今すぐに

手紙の書き方を勉強すべきだろう。

本ばかり読んでいて知識が偏っているのだ。

或いは、敢えて雑な手紙を書いたのか。

パチュリーの場合は後者の方だろうな。

そう私が思案しながらメアリーに質問すると、

彼女は困惑した顔で答えを述べてくる。

全く、困っているのは私の方だ。

 

「何なのと言われると難しいです。

ちょっとだけ“本物”の魔法が使える

珍しい人間ですとしか言えないですね。

ルーマニアには本物の魔女がいると

方々から聞いていた物ですから、

弟子入りしたくてここに来ました。

…パチュリーさんは私の魔法を

ある程度認めてくれたみたいなので、

もし弟子にとって頂ければ

お役に立てる事もあるかもしれません。」

 

…まぁ話を聞く限り悪意は無さそうだから、

今は取り敢えずそれで良いだろう。

彼女が人間であると言う事が

ハッキリしただけで問題は無い。

冷静になって考えてみれば、

今メアリーに身の上話をされた所で

何をどう判断すれば良いかも分から無いし、

私自身初対面のこの段階で

余り込み入った話もしたくない。

 

それにしても、“お役に立てる”ね。

大した自信では無いか。

少し彼女の技量を試してみよう。

 

「…ふーん?具体的にどう役に立つの?」

 

「色々手伝える事もありますし、

さっきも言った通り、幾つかは

既に“本物”の魔法を使えます。

自信のある魔法に限って言うなら、

パンを出す魔法、病気を治す魔法、

鷲になる魔法辺りですかね。

結構便利じゃ無いですか?」

 

…それを聞いて、私は露骨にテンションが落ちる。

確かに便利そうな魔法を使う物だが、

私にとっての必要性は低そうだ。

私の顔を見て不安そうになったメアリーに

私は実情を一応説明しておく。

 

「…そうね。まず前提として、

貴女が知らないのは無理も無い事よ。

私達…と言っても私とパチュリーに

限った話にはなってしまうのだけど、

私達は厳密には人間では無いのよ。

捨食・捨虫の法を使用した結果、

食事、睡眠は全く以て不要だし、

老化も病気も縁遠い物なのよ。

詰まる所、パンを出す魔法とか

病気を治す魔法は意味が無いのよね。

鷲になる魔法は…何に使うの?

大体、そんな魔法があった何て

初耳なのだけど、どう覚えたのよ。」

 

メアリーは見るからに落胆する。

これはちょっと意外な反応だ。

てっきり私が人間で無い事に

驚く物であると思ったのだが、

彼女はあくまで、私から自信のある魔法を

否定された事がショックらしい。

まぁ、ルーマニア王国は

吸血鬼の女王がいる国だし

彼女自身人ならざる者に

さして抵抗が無いのかもしれない。

 

…多少罪悪感を抱いた私は

一応彼女の魔法を再検討するが、

大して結論は変わらなさそうだった。

鷲になる魔法はいざという時の

偵察任務位には使える気が

しないでも無かったが、

私の場合それこそ小型人形を使えば

偵察任務に当たらせる事が出来る。

 

「…そうですか。そうなると、

私の事を弟子にするのは嫌ですか?」

 

メアリーは目を潤ませながら

上目遣いで私に聞いてくる。

…彼女の頼みはパチュリーの頼みでもあり

断ったら面倒極まりなさそうなので

別に彼女の望まぬ結論を出す気は

最初から無かったのだが、

少々の罪悪感が精神を苛む。

私は彼女を安心させる様に答える。

 

「安心しなさい。弟子には取るから。」

 

私の台詞に彼女が胸を撫で降ろすと同時に、

私は気になっていた事を続ける。

 

「…だけど、私は何を教えれば良いの?

私は弟子を取った事はまだ無いし、

貴女が望む物もまだよく知らないのよね。」

 

「望む物…ですか。」

 

「そう。望む物。」

 

「なら、白馬の王子様が欲しいです。」

 

…抑揚の無い声で平然と発せられる

俗っぽい回答に思わず私はむせてしまう。

余りに突拍子の無い言動が

彼女の特徴なのだろうか?

ともあれ、私が聞きたい答えは

そう言った類の物では無いのだ。

今の答えはジョークだったろうし。

人体錬成でも試みるなら別だろうが…。

 

私は気が抜けた場を仕切り直そうと

椅子から立ち上がると、

手を組み後ろを向きながら、

メアリーに改めて問い掛ける。

 

「そう言う意味では無いのよ。

…改めて聞かせて貰うわね。

メアリー・レーガン。貴女の望みは何?」

 

…パチュリーは彼女に対して課題を提示したらしい。

具体的な内容は聞いていないし

推薦状にも特段の記載は無かったが、

十中八九魔女としての能力試験だろう。

であれば、私がするのは適性検査。

一口に魔女と言っても十人十色であり、

当然私とパチュリーでもそれは異なる。

私がパチュリーの弟子になった際にも

パチュリーに聞かれた質問だ。

答えの無い質問と言うよりは、

人生を賭けて真剣に考えたのなら

あらゆる答えが正解となり得る質問である。

私が彼女の顔を見つめると、

どう回答するか逡巡していたメアリーは

意を決した様に望みを伝えてくる。

 

「私の望みは、誰かの役に立つ事です。

今まで、日陰でささやかに生きてきましたが、

そうした生活は孤独に満ちた物でした。

友人と言える友人だっていませんし、

私が生きている意味何て

何処にも無い様な気がしていました。

…だけど、折角魔法が使えるのなら、

魔法で誰かの役に立ちたいです。

拗らせた承認欲求かもしれませんが、

それが私の望んでいる物です。」

 

覚悟を決めた力強い瞳を見せ

見事に言い切ったメアリー。

パチュリーや私の望みと違い、

どうも彼女の持つ望みは

自己完結しない物である様だ。

 

…私は先程あらゆる答えが正解だと

述べた様な気がするが、

如何やらそれは間違いだった様だ。

これなら、まだ白馬の王子様が

欲しいと言う方が良かった気はする。

ハッキリ言って余りに浅いので

望みとして適切とは言えないが、

禁忌を冒して錬成さえすれば

白馬の王子様は出来上がる訳だし。

メアリーは魔法の才能に満ちていると

パチュリーは推薦状に書いていたが、

魔女の素質はまるで無かったみたいだ。

少なくとも捨食・捨虫の法は

彼女にとって必要の無い物だろうし、

恐らくは取得する事も出来ないだろう。

私は思案しつつ、メアリーに答える。

 

「…そう。なら、私の指導方針は明確ね。

貴女には簡単で実用性が高い魔法を

ありったけ教えていく事にするわ。

それと、貴女の能力が活かせる職を

どうにか用意してあげましょう。

幸い、貴女の祖国とは違って

この国は魔女に寛容な国だからね。

レミリアに掛け合ってみましょう。」

 

私がそう言うと、

メアリーは目を丸くする。

…そんなに驚く事だろうか?

 

「レミリアって…女王様ですよね?

あの可愛らしい吸血鬼さん。

アリスさんにそんな事が?」

 

…言いたい事を察して

私はメアリーに説明する。

 

「私は海軍大臣なのよ?

少なくとも私の公的身分は

怪しい魔女では無いの。

もしかして、知らなかった?」

 

私の言葉にメアリーは

顎に手をやり考えた後、

漸く思い出したようだ。

 

「…そう言えばそうでしたよね。

私、すっかり忘れていました。

大臣なら、女王様にも会えそうですよね。」

 

あくまで、メアリーは私の事を

海軍大臣では無く魔女であると

認識している様だった。

もしかすると、いや、もしかしなくても、

メアリーに必要なのは魔法では無く

社会的な常識なのではなかろうか。

…私は今後の事を思って億劫さを感じると、

それを紛らわす様にマカロンを口に放った。

 




ベニート・ムッソリーニ…イタリアの政治家、独裁者。イタリア社会党で活躍した後に新たな政治思想ファシズムを独自に構築し、国家ファシスト党による一党独裁制を確立した傑物。あのチャーチルをして、「多くの人々がそうであったように、私はあれほどの危険や重荷を背負いながら、彼の礼儀正しく飾り気のない物腰や、落ち着いていて冷静な態度に魅了されずにはいられなかった」と言わしめ、ガンジーからは「祖国の発展を望む、私欲のない政治家である」と評された。私個人の評価も極めて高い人物だが、致命的な問題があった。それは、彼が”イタリア”の指導者だった事だ。未だに彼の扱いが思いの外悪くない事も、彼の能力の高さ故の事では無いだろうか。

ラテラノ条約…1929年2月11日にローマ教皇庁がファシスト政権下のイタリア王国と締結した政教条約である。バチカン市国の建国はこの条約に則った物。

メアリーの能力を生かせる職…アリスやパチュリーには役に立たないかもしれないし絵面こそ地味だが、メアリーが自信のある魔法は恐ろしく有用な物。現状彼女がそれを”便利な魔法”と言う程度の認識しかしていないのは相当勿体無い認識。
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