紅魔戦記~カリスマの戯れ~   作:インスタントブルー

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翼と大砲

1932年6月5日の朝、帝国ホテルでの朝食の席で

私、アリス・マーガトロイドはメアリーが未だ

朝食を取りに来ないことに違和感を覚え、

すぐさま朝食を切り上げると

メアリーの宿泊する客室へと向かっていた。

当然部屋には鍵がついているのだが、

開錠魔法が使える私には無意味である。

これは不法侵入では無いのだと

自らの行為を精一杯正当化して、

部屋に踏み込むやいなや開口一番

 

「起きなさ………い。」

 

 

 

…私はその光景を見て絶句してしまう。

何せ、熟睡するメアリーと隼一が

あられもない姿で寝ていたのだから…。

…え、この2人ってそう言う関係だったの?

これは夢だ、うん、きっとそうだ。

こう言う時は頬をつねってみるべきだな。

 

 

……

 

…………

 

…私はショックを受けて頬をつねってみたが、

どうやらしっかりと痛みを感じている。

現実である事は確かそうだった。

 

…結局、1分程呆然としていたが、

色々と逡巡した末に私は決めた。

“見なかった事にしよう”…と。

私自身、そう言った事に興味が

全く無いと言えば流石に噓になる。

だからと言って、こう言った光景を

直視する程私は大人では無かった。

まぁ、きっとメアリーの事であるから、

遅刻したりはしないだろう。多分…。

 

 

~~~~~

 

 

「こちらが、ルーマニア空軍が誇る

最新鋭の輸送機になります。

戦闘機から武装の類を取り外し、

かつ内部空間を広くとっております。

その為サイズが大型化しており

滑走路の規模感の関係上翼が

滑走路からはみ出しておりますが、

戦闘機の方では幅までしっかり

この滑走路に納まります。」

 

1932年6月5日昼頃の東京飛行場、

私、十六夜咲夜は日本の航空関係者として

今回の内部見学会に選ばれていた

戦闘機パイロットだと言う源田実と、 

技術者だと言う堀越二郎の前で

ルーマニアが誇る最新鋭輸送機の

内部までの公開を行っていた。

常識的に考えると最新鋭輸送機の内部等

軍事機密その物ではあるのだが、

ルーマニア空軍の最新鋭機は

もれなく魔法技術が使われており

他国に模倣は不可能と思われるので

公開する事が可能なのである。

参加者が2名だけであるのは、

こちら側が希望したからだ。

余り大人数だと面倒極まる。

私があれこれと思考を巡らせつつ

輸送機の大まかな説明をした所で、

技術者の堀越二郎から質問が飛ぶ。

 

「…失礼ですが、伺わせて下さい。

戦闘機の容貌はこの輸送機と

ほぼ同じと考えて構いませんか?」

 

「ええ。構いません。本機は

戦闘機のサイズを大きくしただけなので、

戦闘機の容貌はこの輸送機を

丁度縮小した様な形状です。

1人乗りになる関係上多少全長が

短い形状にはなりますが。」

 

私の説明に堀越は興味深そうに

改めて期待形状に目をやっている。

これは源田に関しても同様の様だ。

 

「…私はルーマニア空軍が開発した

凄まじい性能を誇ると言う

最新鋭戦闘機の噂をかねがね

方々から伺っていましたが、

その姿形や具体的な性能等の

情報が全くありませんでしたので、

驚きを隠す事が出来ません。

私が見た所、本機は所謂

ジェット戦闘機なのですね。」

 

ジェット戦闘機…か。

私は技術者では無いから

詳しい所は知らないのだけれど、

パチュリー様から聞いた話では、

速度を上げようと検討した結果

自然とこうなったのだとか。

私は今回の訪日に備えて

きちんと事前に戦闘機について

知識を習得してきたので、

スラスラと説明していく。

 

「厳密に言えば違うのですが、

恐らくその解釈で問題ありません。

そもそも、ルーマニアは1910年世界で初めて

ジェットエンジンを搭載した航空機を

製作した国家であり、ジェット機に関しては

一日の長があると言えると思います。

勿論初のジェット機と言っても

エンジンはレシプロエンジンを採用した

モータージェットでしたし、

飛行自体も失敗に終わりました。

ですが、私達は失敗から進化を遂げて、

現在のルーマニアの戦闘機は

驚異的な性能を誇っております。」

 

まぁ、私は自信満々で解説を加えるが、

別にパチュリー様は1910年の

世界初のジェット機から何かしら

ヒントを得たと言う訳では無い。

魔力を火力として噴出する事で

推進力とする事を考えた時に

どう考えてもエンジンは後ろになるので

結果としてジェット機の様な

容貌になったと言うだけの事である。

パチュリー様から予め聞き出していた

スカーレットデビルの設計秘話を思い出した私は

すっかり感心した様子の2人に質問する。

 

「…所で、お二方は件の戦闘機の

機体性能が気になるのではありませんか?

流石に全ては公開出来ませんが、

言える範囲の情報は今この場で

お伝えさせて頂きます。」

 

「是非、教えて下さい。」

 

堀越は案の定食いついて来る。

技術者であるならば当然だろう。

私は早速説明を始める。

 

「まず、私達の最新鋭戦闘機は

世界最速であると御理解下さい。

まず、最高速度は1500㎞です。

しかも、これは機体強度にかかる負荷を

考慮しての数字でありますので、

いざとなれば出力はもっと増します。

更に、最大上昇限度は18000mです。

又、これだけの高性能機を操縦する

パイロットにも配慮がなされており、

旋回時のGや高高度での低温等を

軽減する機能がついている他、

近いうちに装備の更新が入り、

後程ご覧頂く航法システムを

採用する見込みとなっております。

武装については機密につき

詳細は差し控えさせて頂きますが、

どれをとっても間違い無く

貴国日本の航空機と比較しても

優れていると確信しています。」

 

…私の行った説明に対して

堀越は熱心にメモを取っていたが、

終始目を丸くし続けている。

一方、源田は少し鼻息を荒くし

興奮している様子だった。

やはり、技術者と乗り手では

同じ説明をしても受け取り方は

少々異なる物なのだろうな。

興奮している源田は私に質問をしてくる。

 

「…それは凄まじい性能ですね。

しかし、それだけの高性能機では

操縦も難しいのでは無いのですか?」

 

懸念材料を聞いている筈なのに

表情は至って明るい源田。

まるで、仮に操縦が難しい機であろうとも

自分なら乗りこなせるとの

絶対の自信を持っている様に見える。

尤も、源田の懸念は杞憂なのだが。

 

「心配は無用です。私は操縦をしないので

あくまで伝聞にはなってしまいますが、

寧ろ操縦が容易だとの評判ですから。

何でも、玩具の様だと皆言っています。

旋回用のハンドル、射撃用のボタン、

エンジン出力を調節するダイヤル以外に

速度計や高度計等の計器類があるのみで

パイロットの負担は最小限です。

更に言えば、つい最近の小規模改装で

航法システムの追加に当たって

姿勢制御装置も追加する予定だそうですから、

長距離の任務に従事する際や非常時等にも

パイロットの負担を軽減出来ます。」

 

私はペラペラと情報を公開しているが、

全く心配する必要は無い。

これは最早ルーマニアにとって

軍事機密に当たる様な内容では無いからだ。

何せ、これらの基幹技術は全てが

魔法によって支えられているのだ。

設計思想ぐらいは参考になるかもしれないが、

正直それすらも相当怪しいだろう。

私が調べた限りの情報によれば

日本の航空技術は列強諸国の中だと

最下位争いをしている様な惨状だ。

設計思想だけ取り入れた所で

まともな戦闘機は設計出来ないだろう。

 

…まぁ、自慢はこれくらいにしておこう。

私はメモを取り終えた堀越と先程の話を聞き

少し残念そうにしている源田に向かって声を掛ける。

 

「…それでは、お二方には輸送機内を

我が国のパイロットと見学して頂きます。

普段このパイロットは先程説明した

戦闘機のパイロットをしているので

詳しい質問にも答えられる筈です。

私は最低限の知識こそありますが、

やはり現場を知る者が答えた方が良いでしょう。

私と違い日本語は話せないので

英語での対応となります事をご了承下さい。」

 

私が言葉を切ると2人は首肯し、

輸送機内へと乗り込んでいった。

私には、機内へ乗り込む彼等の姿が

一流の技術者とパイロットでは無く

純粋無垢な少年の様に映った。

 

 

---------

 

 

「初めまして。ルーマニアで海軍大臣を務めています、

アリス・マーガトロイドと言う者です。

本日は短い時間ですが、宜しくお願い致します。」

 

1932年6月5日の昼頃、東京の海軍省内の一室にて

私、アリス・マーガトロイドはメアリーと隼一と共に

海軍大臣である岡田啓介と向かい合っていた。

私が流暢な日本語で挨拶をしたので、

メアリーは兎も角、隼一は気まずそうである。

翻訳魔法によって通訳は失職中だ。

私が左手を差し出すと、岡田も握手に応じる。

 

「こちらこそ、よくぞいらっしゃいました。

立ち話も何ですから、どうぞお掛け下さい。」

 

岡田はそう促し、私達3人は

昨日座った様な高級な椅子に座る。

岡田の座る椅子よりも高級そうだ。

私は早速岡田に声を掛ける。

 

「お心遣い感謝致します。

我が国は海軍において世界から

大きく遅れを取っておりますので、

世界三大海軍国と名高い帝国海軍を

今日と明日に視察出来る事は

これ以上無い有効な機会です。

様々な事を教授して頂けますと幸いです。」

 

私はそう言って軽く頭を下げる。

今日と明日と言う短い期間だが、

私は帝国海軍から少しでも多くの物を

ルーマニアに持ち帰らないと行けないのだ。

結局どれだけ本を読んだ所で

私は海軍についての現場経験が無い上に、

ルーマニア海軍は未だに脆弱なのだから。

しかし、岡田は思いもよらぬ事を言う。

 

「私達が教授出来る事に関しては

惜しみなく教授しましょう。

私達としても、貴国の海軍からも

勉強させて頂ければと思います。」

 

私は目を丸くして驚く。当然だ。

帝国海軍とルーマニア海軍何て

比較する方が大分どうかしている。

 

「ご期待は非常にありがたいのですが、

私達から教授出来る事があるでしょうか…。」

 

無論、こんなリアクションになる。

それでも、岡田は微笑んで返した。

 

「他国の海軍組織の内情について

見識を深めたいですからな。

何も、艦船の出来不出来や

艦隊の規模、実戦的な戦術だけが

学ぶ対象では無いでしょう。

…例えば、貴国の兵学校について

ご教授頂いても構いませんか?」

 

成程、言われてみればその通りだ。

私はルーマニア海軍の近代化の為に

帝国海軍の設計や戦術等を

是非とも学びたいと考えていたが、

そもそも設計や戦術を実際に考える海軍士官は

海軍兵学校で教育されているのであって、

ここがしっかりしていない事には

海軍発展の未来は決して訪れ無いのだ。

そして、その教育方針は千差万別であるので

小国ルーマニア海軍の兵学校の方針の中にも

帝国海軍の発展のヒントがあるのかもしれない。

勉強熱心で真面目な岡田に感心しつつ、

私はルーマニア海軍兵学校について説明する。

 

「ルーマニア海軍兵学校は全国の

16歳から18歳の男女を対象として

入学者を募集している学校です。

尤も、女性受験者は殆どおらず、

試験成績が芳しくない為

合格者に女性はいないですが…。

そんなルーマニア海軍兵学校は、

1930年の国家体制刷新によって生まれた

新しい学校になりますね。

ルーマニア海軍は規模が小さく

募集人員が非常に少ない為

志望者数の割に昨年度の倍率は

10倍弱程度を記録しており、

今年の倍率も恐らくはその程度でしょう。

入学試験では遠泳、数学、英語を課していますが、

今年からは新たに美術と小論文を加える予定です。

ルーマニア海軍では海軍軍人一人一人が

一流の国際感覚、分析力、作戦立案能力、感性を

持っている事を重視していますから、

海軍兵学校では教育方針として、

生徒一人一人の自主性や個性と

事実に基づく合理的思考能力を

伸ばしていく事を掲げています。

…恐らく、こんな所でしょうか。」

 

岡田は終始、私がした話を

目を丸くして聞いていた。

 

「…日本の海軍兵学校とは

まるで違う事に大変驚きました。

まず試験科目について聞きたいのですが、

貴国にある海軍兵学校では

美術を試験科目に採用する一方で、

砲撃や水雷に欠かせない物理が無いのですね。

理由を伺っても構いませんか?」

 

「美術を試験科目に採用した理由は、

感性がそのままに現れるからです。

美術の試験では時間内にテーマに沿った

絵を描かせる問題を出題する予定なのですが、

絵と言うのは画力の有無に関わらず

センスの有無をハッキリ示します。

こればかりは後天的な努力で

どうにかなると言う物でも無いので、

先天的な才能が受験者にあるかどうかを

試していると捉えて頂きたいです。

…ルーマニア海軍兵学校は

採用人数が非常に少ないので、

合格した生徒の殆どが将来は

現場の艦長か海軍省勤めになる筈です。

その時に、美術に優れた物を優先的に

艦長に配属する計画があります。

戦略は兎も角、戦術は才能ですから。

また、物理を試験で見ない理由は

単純に我が国の海軍では不要だからです。

ルーマニア海軍には戦艦が無い上に、

詳細は軍事機密になるのですが、

砲弾や魚雷は特殊な技術の採用によって

敵艦を自動で追尾してくれます。

また、整備や損傷修復等の業務も

特殊な技術を採用する事によって

自動化する事に成功しました。

よって、物理学は不要と判断しました。

そもそも試験科目には数学もありますから、

計算能力が低い士官が量産されたりは

しない物であると私は思っています。」

 

…私は長々と説明をする。

又、特殊な技術の採用とは

無論魔法の事に他ならないのだが、

ここでわざわざそうであると言及はしない。

砲弾や魚雷に追尾魔法をかけ、

ダメージコントロールや整備等の業務を

人形に任せる事によって自動化していると

岡田に説明した所で理解はされないだろう。

岡田は私の発言を落ち着いて聞いていたが、

話がひと段落すると質問を続けてくる。

 

「…成程、理解しました。

幾らか気になる点もありますが、

軍機でしたら仕方ありません。

私が次にお聞きしていきたいのは、

自主性や個性を重んじる事で

統率の取れた規律のある海軍を

運用する事が出来るのかどうかです。

指揮系統が曖昧になっていた場合、

軍は非常に弱くなってしまう物と

私は心得ているのですが。」

 

「自主性や個性を重んじるとは、

何も全てを自由にさせる事で

放任する事を意味してはいません。

自らの個性を伸ばす事に加えて、

他者の個性を尊重する事も

同時に学ぶ物と考えてください。

兵学校の生徒は卒業後士官として

いずれは部下を持つ様になります。

その時、部下の個性を把握出来れば

適材適所での人材配置や

個人に応じた指導が可能になります。

また、戦場においては敵の個性を知る事が

とても大切な事であると思います。

敵の長所や短所を分析した上で、

的確に弱点を攻撃する事こそが肝要であり、

常日頃からその癖をつけておく事が

いざという時に役に立つのでは無いかと。」

 

…私の回答を聞きながら岡田は唸る。

 

「…成程、よく分かりました。

本当に話を聞いて正解でした。

参考になる点もありましたからな。

貴国の海軍兵学校は日本のそれと

負けず劣らずの教育をしている様です。」

 

「恐縮です。」

 

にこやかに語る岡田。

如何やら、私の説明に

満足してくれたらしい。

 

さて、岡田は満足したのだ。

折角日本の海軍大臣と面会しているのだから、

有益な情報を引き出さねばならないだろう。

私からも岡田に質問する。

 

「こちらからも質問をさせて下さい。

岡田大臣から見た際にルーマニア海軍の

課題とは具体的に何でしょうか?

率直にお答え頂ければ幸いです。」

 

岡田は私の問いの答えを

少しばかり考えると、口を開く。

 

「…私は貴国の海軍の内情に

詳しい訳ではありません。

ですが、確実に不足している物は

戦闘経験であると存じます。」

 

「戦闘経験……ですか。」

 

…てっきり具体的な艦隊編成等の戦術面や

艦船の武装や数量、設計思想等を

指摘されると思っていた私は目を丸くする。

岡田は話を続けてくる。

 

「如何にも、戦闘経験です。

それは、訓練だけでは得られない

特有の物がありますからな。

帝国海軍では月月火水木金金の精神で

日夜猛訓練に励んでおりますが、

それでも実戦で得られる経験より

得られる物は格段に少ない。

それでも、数こそ減っているとは言え

帝国海軍の軍人の一部には

先の大戦や日露戦争の経験者がいるのです。

しかし、貴国の海軍にはその経験を持った

人材が然程多くない物と考えられます。

この差は多少の艤装の優位や乗員の訓練度を

時に覆す可能性すらある物です。

是非とも、心得て置くと良いでしょう。」

 

…岡田の言葉は私に重くのしかかる。

確かに、現在のルーマニア海軍には

先の大戦の経験のある人間は殆どいないのである。

又、ルーマニア海軍は先の大戦で

目ぼしい活躍をする前に

戦術的敗北を喫しているので、

戦闘での勝利経験と言う意味で言えば

海軍の内に誰一人いない訳だ。

こればかりはどうしようもないのだが、

確かに明確な課題であり、弱点だ。

帰国後何らかの策を打ち出さねば。

私は感謝の意を伝える。

 

「…ご回答ありがとうございした。

今回のお話は大変参考にさせて頂きます。

私は岡田大臣に指摘されるまで

まるで気づきませんでした。」

 

「参考になったのであれば幸いですよ。

…明日は横須賀を見学されるとのお話を

方々から伺っていますから、

じっくりと見ていくと良いでしょう。

特に、横須賀にある艦艇の中では

“長門”何かは迫力があるかと。」

 

長門…確か戦艦だった筈だ。

大口径主砲と高速性を備えた

世界を代表する戦艦の1つであると

マリウス辺りが言っていた気がする。

…よくよく考えてみれば、

ルーマニア海軍は貧相で

戦艦等保有していない訳だから

私は戦艦を見た事が一度も無いのか。

百聞は一見に如かずとも言うし、

明日の横須賀見学は大型艦を中心に

見てみるのも良いかもしれない。

 

「教えて頂きありがとうございます。

明日の横須賀見学は訪日前から

楽しみにさせて頂いておりました。

ルーマニア海軍は小型艦が主体ですので、

大型艦に特に注目して行こうと思います。」

 

「それは何よりですな。

是非、期待していて下さい。」

 

岡田はにこやかにそう言った。

 

~~~~~

 

…その後、私は会談時間の殆どを

岡田から彼自身の日清、日露、

そして先の大戦での戦闘経験や、

その戦闘経験から彼が得た

戦場での何たるかを聞く時間に割く事にした。

 

戦闘経験がこんな事で補えるとは

私も流石に考えてはいないが、

聞かないよりは遥かに良いだろう。

いざという時の引き出しは

少しでも多くしておくべきであるから。

 




源田実…帝国海軍の軍人。戦闘機パイロット、航空参謀を歴任し、戦争中は真珠湾攻撃を立案・指導した強硬な航空主兵論者。戦後は航空自衛隊に貢献し、参議院議員としても活動した。かのブルーインパルスの生みの親。先見の明を持った聡明な人物であり、書きたい事があり過ぎて、正直ここに書ききれる様な人物では無い。作者の源田に対する評価はただ一言だけ、“稀代の天才”である。現場でも参謀でもその優れた能力と才覚を発揮したばかりか、戦後には政界進出まで果たしているのだから。その天才性故、戦前には理解者が少なかった事が残念でならない。

堀越二郎…某映画でも有名な、零式艦上戦闘機(通称零戦)の設計者。因みに、彼や零戦は戦後高く評価されているが、実の所零戦は大東亜戦争初期には既に旧式化が始まりキルレでは米英の戦闘機を相手に若干負けていたらしい。少なくとも圧倒していたと言う訳では無いらしく、戦争初期に限定しても互角に渡り合っていたと言う評価が精々である。尤も、当時の日本の技術力や基礎工業力の低さを考慮すると、零戦を設計した堀越は超一流の仕事をした事に疑いは無いだろう。零戦その物も、中国戦線では大戦果を挙げていた時期もあった名機であったと作者は思う。

進化するスカーレットデビル…パチュリーは航法システムを完成させ、姿勢制御装置を設計中である。彼女だってただ本を読んでいるのでは無く、きちんと様々な研究を並行して行う事によってルーマニアの技術力を向上させているのだ。

岡田啓介…日本の海軍軍人、政治家。この時点では海軍大臣。軍人らしい英雄譚が皆無であり、晩年に口述した『岡田啓介回顧録』にも軍人の伝記にありがちな豪快なエピソードはない。しかしこのことは岡田が豪傑を気取ったりすることのない常識人であったことを強く示唆している。又、岡田と親しかった藤田尚徳(海兵29期、海軍大将)によると、岡田は海軍きっての記憶力を持つことで知られていた。岡田はメモを一切取らずに、複雑なデータや文書の所在を正確に記憶していたそうで、岡田の卓越した記憶力を、藤田は「一種の天才であったと思う。」と評している。当作品においても、アリスの長々とした語りに一切メモを取っていなかった。

ルーマニア海軍兵学校で美術の入試…卒業後は艦長になる者が多いので、戦術の才能がある者を集めようと言う狙い。実際の戦場では計画や学校での授業通りに物事は進まないので、的確に状況を把握し、すぐさま自らの行動を決定する応用の能力が求められる訳だが、アリスは美術でもってこれを判断しようとしている。正直前代未聞にも程がある試みであるし、上手く行くかどうかは未知数。

美術の入試の採点基準…感性が優れていると感じられた作品には高得点が付けられる。主観100%にも程がある客観性のかけらもない採点基準だが、これはもうそう言う物としか言えない。受験生は可哀想である。

優れた芸術…作者の好みの芸術の殆どは、ヒトラーから退廃芸術とレッテルを貼られそうな物です。例えば、所謂新即物主義的な絵画(特にドイツ画家の作品)とかは好きな作品が多いですね。物事を冷徹に、ありのままに、飾らずに描く作品群です。正直、相当好みは分かれると思います。それはさておき、これはあくまで作者の持論に過ぎませんが、“美”の本質が儚さである事を理解している方こそがセンスのある人間であると感じます。また、そうした感性を尊重している事が伝わってくる作品を名作だと思います。虚勢を張って強がるのでは無く、自らの弱さを受け入れている人間や作品に私は“美”を見出します。勿論、美術には画一的な正解等ありません。自らが好きな作品を楽しむ事がやはり一番でしょう。

長門…帝国海軍の戦艦。姉妹艦「陸奥」とともに帝国海軍の象徴として、長く日本国民から親しまれた。建造所は呉海軍工廠だが、横須賀鎮守府の配属であったそうだ。作者はミリオタでは無いので、有識者の皆様は色々教えて下さい。

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