紅魔戦記~カリスマの戯れ~   作:インスタントブルー

24 / 41
長かった1932年も、もう終わりです。戦記成分は少な目。


祝福と乾杯

「いよいよこれが最後の仕上げね。

準備はしっかりとして来たわ。

…それにしてもこの建物、

内装も存外立派だったのね。

肝心要の入居者が“アレ”なせいで

勿体無い感じはするのだけれど。」

 

「…お嬢様、間も無く会合が始まります。

申し訳ありませんが、お急ぎ下さい。」

 

「そうね。急ぐ事にしましょう。

私の時間は貴女と違って、

待ってくれたりしないのだから。」

 

1932年12月5日の昼過ぎ。

私、レミリア・スカーレットの姿は

ジュネーブの国際連盟本部内にあった。

前まで来た事こそあれ建物の内部まで

入った事は無かったのだが、

基本的に国家元首は来ない場所なので

別にそれ自体は珍しくも無いだろう。

私は咲夜に案内されて、席に座る。

開始時間ギリギリに座ったからか

皆前方や卓上の資料に目を向けており

私の事等誰も気にしてはおらず、

奇異な視線に晒される事は無かった。

間も無く、開会を告げる声が響く。

 

「…只今から満州地域の諸問題に関する議決、

及び予め申し出があった各関係国の

この問題に関する見解を伺おうと思います。

順番として、当事国、関係国の順番で

お呼びさせて頂ければと存じます。

まずは、中華民国の見解を伺います。

全権顧維鈞氏は前方へお進みください。」

 

英語とフランス語で同じ内容が告げられると、

顧維鈞と言うらしい中国人が前に出て来る。

私は彼の話を聞くまでもないと断じて、

真剣にメモを取ろうとしている咲夜に告げた。

 

「…悪いけど、呼ばれたら起こして頂戴。

最近いろいろしていて疲れているのよ。

生憎と、メアリーは休暇中だからね。」

 

咲夜の慌てた顔が見えた気がしたが、

彼女なら、私がコッソリ寝ている事も

隠し通してくれるに違い無い。

私は一瞬で睡魔に落ちていった。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「…お嬢様、起きてください。

そろそろ呼ばれるかと思いますよ。」

 

「……おはよう咲夜、その様ね。」

 

私が起こされた時、前方で演説していたのは

如何やら英国人の様であった。

まぁ、具体的な内容は知らないが

あれだけの根回しをやっているのだから

日本側の立場で話したのだろう。

彼の演説に拍手が贈られた直後、

事務総長の声が私を呼び出した。

 

「それでは…最後に、ルーマニア全権

レミリア・スカーレット氏から

本件に関する見解を伺おうと思います。」

 

呼ばれた私が前方に進むと

会場が一斉にざわつく。

まぁ、無理も無い話だろう。

大半の者にとってみれば

写真や書面上で私を知っていても

吸血鬼を生で見た事は無い訳であるから、

私の姿を見れば驚いてしまう筈だ。

…これも計算通りと言った所か。

今回わざわざ私が直々に

ジュネーブの国連本部まで

出張ってきた理由がこれなのだ。

咲夜が話すより私が話した方が

どう考えても印象に残る筈だろう。

ルーマニアの安全保障を

より一層確実な物とする為にも、

ここで満州地域の問題について

日本の有利になる様に裁定させたい。

間違っても中国やソ連を利する決定は

されないようにしなければならない。

取り敢えず、掴みは上々と言った所。

幸いソ連はこの場にいないから、

私が上手くやれば何とでもなる筈だ。

私はそんな思惑を抱き、

どうにも低い視線をカバーする為

30㎝程飛び上がり威厳を示す。

さぁ、始めようでは無いか。

大きく息を吸って、ゆっくりと…。

 

「こんにちは、各国代表の皆さん?

私こそがルーマニア王国女王、

レミリア・スカーレットよ。」

 

私はそう言うと、全体を見回した。

一面の静寂に包まれている。

行儀がよくて何よりである。

私は両手を大仰に広げ語りだす。

 

「…突然だけれど、ここの皆の中に

“差別された経験”を持つ方はいるかしら?

或いは、“差別した経験”を持つ方は?」

 

私はそこで一度言葉を切り、

各国の代表の態度を見る。

悔しそうな顔をする者もいれば、

ふてぶてしくしている者、

バツが悪そうな顔の者もいて印象的だ。

それを見て、私は話を続ける。

 

「…皆、思い出す事が出来た様ね。

差別の対象が誰だったのか、

どんな属性を持っていたのかまで

私には分からないけれど、

貴方がそこに存在している限り、

確実に目にした事があるでしょう。

…何故私がこんな話をしたのかと言うと、

残念ながら、人間が人間である限り

差別が無くならないと思ったからよ。

だけど、前進させる機会は確実にあった。

1919年2月13日、国際連盟委員会において

勇敢な日本人がこの問題を公に告発し、

“人種的差別撤廃提案”を行ったわ。

…残念ながら、提案は却下されたけれど。」

 

私は悲しそうな表情をして一度話を切ると、

日本の代表が座る方を見つめる。

いつになく真剣な表情をしながら、

私を見ているのが伝わってくる。

対照的に、英国の代表の表情は

非常に苦々しい物である。

私はそれだけ確認すると、

この話の続きを語りだす。

 

「…知っていると思うけど、私は吸血鬼よ。

貴方達人間の多くに言わせれば、

“残酷で凶暴な怪物”と言った所かしら?

…確かに吸血鬼は人間よりも強いけれど、

流石にそれは偏見だし、差別その物よ。

理由無き虐殺は許されざる行いであると、

現に私は信奉しているからね。

…私は数百年間の時の中で、畏れられ、

人間から迫害される生活に耐えてきた。

だけど、私は女王となり権力を得た今でさえ、

人間に差別の報復何てしていないわ。

それは一体何故か、皆は分かるかしら?」

 

一瞬の間をおいて、述べる。

 

「…私が、差別をしないからよ。

ルーマニア政府には、様々な者がいるわ。

私の妹は当然吸血鬼だし、

中国から来た武術家の妖怪とは

かれこれ随分と長い付き合いになるわ。

魔女に至っては、3人もいるのよ。

…そして、私の自慢の従者ね。」

 

…私は瞬間指を鳴らす。

最早彼女にとって、

それだけで十分なのだ。

次の瞬間、感嘆の声が漏れる。

各国の代表団全員の前に

一斉にグラスに並々注がれた

シャンパンが出されたからだ。

 

「…私の従者、十六夜咲夜は

時間を停止させる事が出来るわ。

あれでも彼女、人間らしいわよ?

だけど、事情を知らない者が見れば

彼女は差別されてしまいかねないわ。

自分達の預かり知らぬ所で

何をされるか分からない人間と

関わりたい者は少ないでしょう。

悲しいけれど、これが現実よ。」

 

私は今日一番悲し気な目で、

英国代表の座る席を見つめる。

仮にも同盟国であるので

大っぴらには言いにくいが、

思うところがあるのは確かだ。

…まぁ、今日の所はこれで良い。

私はこの話を締めにかかる。

 

「…さて、そろそろ本題に入りましょう。

結論から述べさせて貰うならば、

ルーマニア王国は大日本帝国の

満州地域での軍事行動を容認するわ。

理由は、私達が日本を信用しているからよ。

日本は先日、私達ルーマニア政府の

少々変わった職員を快く受け入れたわ。

差別が如何に醜い物であるかについて、

全世界で最も理解している国家でもある。

…そして、貴方達各国の代表団は

日本の行動の結果成立した満州国が

掲げた理念を知っている?

満州国は、“五族協和の王道楽土”

と言う理念を掲げているのよ。

満州族や大和民族だけじゃなく、

他民族との共生を目指し、

楽園を築かんとしているの。

私は世界一寛容で、受容的で、

開放的な日本をここに称賛するわ。

…私の話を聞いて、日本と言う国が

称賛に値すると考える代表の皆は

グラスを高く掲げて頂戴?」

 

私がそう言った瞬間、

中華民国代表を除いた

多くの国の代表がグラスを掲げる。

英国代表に咲夜が予め頭を下げて

協力を促していたお陰もあって、

最終的には中華民国を除く

全ての国家の代表がグラスを掲げた。

私は最後に皆にこう言った。

 

「…ご清聴ありがとう。

それじゃあ、この演説の最後に

代表する各々の国の母国語で、

乾杯の言葉を叫びましょう!

それじゃあ、行くわよ!!!」

 

 

…私の掛け声に従い、

色々な言葉の乾杯が響く。

直後、日本代表が行った拍手が

会場を包み込んだタイミングで、

私は後方にいる咲夜の元に戻った。

 

取り敢えず、これで態度を保留にしていた

中小国代表の心を掴んだに違い無い。

今回の吸血鬼や差別に対する演説は

抽象的かつ欺瞞にまみれた内容だったが、

この際事の真偽は大した問題にはならない。

私からすれば、あの演説で重要なのは

最後にグラスを掲げさせる瞬間だけなのだ。

あそこでグラスを掲げてしまった以上、

議決での行動には制約がかかるだろう。

それに、一応今回の反差別的な演説は

大国が偉そうに振る舞う外交の場で

普段虐げられている中小国の代表にとって、

多少なりとも刺さる筈だ。

軽んじられる悔しさと言う意味では

共感する余地は大いにあると思う。

自国で差別が横行する大国にしたって、

差別に反対する演説に国連で

反対の意思を堂々と表明すれば

己の倫理観を問われる事位は分かる筈で、

取り敢えず英国の動きに追従するだろう。

私はただ、議決結果に期待を込めた。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「議決の結果を発表致します。

日本の満州地域からの撤退案について、

賛成1、反対は43。よって、

本議案は正式に否決されました。」

 

…その後の議決結果は、

考え得る限り最良の物だった。

棄権すら出ないとは思わなかったが、

想像以上に演説が効いたらしい。

と言うか、効き過ぎで心配な位だ。

冷静に考えられる人間はいないのか?

私が大きく溜息をついて立ち上がると、

咲夜が心配そうに声をかけてくる。

 

「…お嬢様、浮かばれないお顔を

されている様にお見受けしますが、

いかがなさいましたか?」

 

 

咲夜の頬が心なしか赤いのは、

酒に酔ったからだろうか?

あれは掲げる為の物であって

何も律儀に飲まなくたって。

取り敢えず、私は口を開く。

 

「…別に、大した事じゃ無いわ。

私が私である限り、そう言う物よ。」

 

「…すみません、私には意味が。」

 

私達はすっかり日が暮れてしまい

日傘が不要になった外に出る。

私は国連を一瞥すると、一言。

 

「…暫くは御免ね。」

 

私の姿は、苦笑する咲夜と共に

夜闇へと溶けていった。

 

 

 

--------

 

 

 

「二人とも、おめでとう。

人生最高の日に祝福を♪」

 

「…冷静になって考えてみると、

そう言うのは吸血鬼から

言われる物じゃ無い気がする。」

 

「あのなぁ…。君って人は…。

申し訳ありません、陛下。」

 

「良いのよ。今日は無礼講。

それに、主役は二人なのだから。」

 

1932年12月24日の夕刻、

私メアリーは紅魔館では

毎年恒例となっているらしい

クリスマスイブのパーティーに

皆と一緒に参加していた。

“らしい”と言ったのは、

私が初参加だからである。

一昨年や昨年のパーティーでは

外国から色々な人を呼んだらしいが、

今年は身内のみで極めて小規模な開催だ。

何でも、咲夜さんに言わせれば

こっちの方が普通なのだとか。

…とは言え、今回のパーティーが

身内のみの開催となった理由は

私達にある訳であるが。

そう、今日のパーティーは

私達の結婚式も兼ねているのだ!

…尤も、式と言うには余りにも

形式が守られていないけれど。

精々、私達の服装が

ドレスとタキシードなだけだ。

 

「ほら、レミリアさんも

こんな風に言ってくれてるし、

今日だけ今日だけ♪」

 

「…まぁ、別に良いけれどね。

振り回されるのは慣れてるし。」

 

溜息をつきながらも

頬を赤く染めている隼一。

…そんな私達の後方から、

余り耳にしない声が聞こえる。

 

「二人とも、結婚おめでとう!

これ、結婚祝いに渡したくて。」

 

「フランさん!結婚祝い、

ありがとうございます!!!」

 

「妹様、ありがとうございます。」

 

そう言って私達はラッピングされた

結婚祝いをフランさんから渡される。

 

「開けても良いですか?」

 

「開けないと意味無いじゃない。」

 

フランさんに促され私が中身を確認すると、

隼一用と思われるネクタイが数点と…

これは一体何なのだろう?

魔導書である事は確かなのだが。」

 

不思議そうに見つめる私に、

フランさんは説明を加えてくる。

 

「…その魔導書には、演算魔法の

術式が幾つか載っているわ。

貴女が無謀にも転移魔法を

研究しているって聞いたから、

パチュリーにお願いして

図書館から持ってきたの。

ルーマニアの兵器に使われる

自動追尾機能や航法システムも

演算魔法を応用した術式が

組み込まれていたりするのよ?」

 

私はその言葉に目を丸くする。

 

「と言う事は、転移魔法の計算が

演算魔法で解決するって事ですか?」

 

私が問い返すと同時、

フランさんは微妙な表情をする。

 

「う~ん…。それは難しいかも。

演算魔法を使ってるパチュリーが

挫折したって位だから。

だけど、この本で勉強して

何かしら発見出来たら

もしかしたら使えるかもよ?」

 

そうだような…。流石にそこまで

転移魔法は甘い物では無いだろう。

私はフランさんに改めてお礼を言う。

 

「ありがとうございますフランさん。

きちんと読ませて頂きますから。

…所で、フランさんって

魔法に詳しいんですね。」

 

「皆忘れてるみたいだけど、

これでも私は魔法少女何だよ?」

 

「え、そうなんですか!?」

 

…私がそう言った側から、

フランさんは向こうに行ってしまう。

私は隣でマイペースに

ネクタイを吟味する隼一を小突き、

手を振っているアリスさんの方へ向かう。

 

「…二人とも、改めておめでとう。

メアリーがいなくなってから、

随分と家が静かになってね。

人の有難みを実感したわ。

結婚祝いだけど、はいこれ。」

 

そう言ってアリスさんが

差し出したのは二本の万年筆だった。

私達がそれぞれ手に取ると、

アリスさんが解説を寄越してくる。

 

「そのペンはすごく便利でね?

持ち主が念じるだけで

自動で字を書いてくれる

魔法がかかっているの。

手を離せない時とかに

メモを取る事が出来るし、

何よりとっても楽なのよね。

それと、魔力消費が少ないから

魔女以外にも使う事が可能よ。」

 

それを聞いて今度は隼一が目を丸くする。

 

「…それは、本当ですか?私が?」

 

「えぇ、本当よ。それに隼一の場合、

一般の人間の中では魔力が相当多い方よ。

私達魔女みたいに好き勝手使える程

量がある訳では無いでしょうけど、

ほんの小さな魔力使用量で済む物なら

問題無く使えると思うわ。」

 

「成程…勉強になります。」

 

…私としてもそれは初耳だった。

そう言われてみれば、

“確かに”って感じだけど。

 

「アリスさん、ありがとうございます!

それと、良かったね隼一!

これで仕事が楽になるよ!」

 

私が満面の笑みでそう言うと、

隼一は苦笑しながら

 

「その分仕事が増えるだけだよ。」

 

と言い放った物だから、

アリスさんも私も吹き出してしまう。

…そんな中、後方から男性の声が響く。

 

「お二方とも、おめでとうございます。

私からはこれを是非お二方に。」

 

そう言って男、改め福祉大臣のデジは

抱えている物を渡してくる。

 

「大臣、これは…。」

 

「デジで構いませんよ。

これは、ベビーベッドです。

…社会福祉の究極の理想は、

揺り籠から墓場までの人生に

社会が一定の責任を持つ事です。

その最初の一歩となる理念を、

是非お受け取り下さい。」

 

「デジさん、ありがとうございます!」

 

…そっか、私もいよいよ母親か。

こうやって目にするだけでも、

少しだけ実感が湧いてくる気がする。

 

…そして、ベッドを隼一が抱えている中、

パチュリーさん、美鈴さん、レミリアさんが

三人…厳密には魔女、妖怪、吸血鬼だから

単位が“人”はおかしいのかな?

兎も角、揃って私達の前にやって来た。

パチュリーさんが口を開く。

 

「二人とも、結婚おめでとう。

私から渡すのはこれよ。」

 

そう言って、パチュリーさんは

私に袋を差し出してきた。

 

「あの…中には何が?」

 

「まぁ、見れば分かるわ。」

 

私はパチュリーさんに促され

中身について確認する。

 

…そこには、真っ青のローブ、

真っ青な三角帽子に加えて

杖と思われる木の棒があった。

成程、如何にもそれらしい。

 

「…貴女、格好が余り

魔女らしく無いからね。

せめて格好だけでも

真似してみたらと思って。

実用性は…まぁ、あるにはあるわ。

正直取るに足らない程度だけど、

一応魔法をかけておいたから

無いよりはあるでしょう。」

 

説明するパチュリーさんの顔は

少しだけだが赤くなっていた。

パチュリーさんはあぁ言うけれど、

私の事凄く考えてくれたみたい。

それは色一つとっても明らかだ。

紅い国で青い装いを贈る時点で。

私はパチュリーさんに微笑む。

 

「ありがとうございます!

一生大切にしようと思います!」

 

「…ま、そうしなさい。」

 

それだけ私に言うと、

パチュリーさんはそそくさと

後方に下がってしまった。

それと間を置かずに、

今度は美鈴さんが口を開く。

 

「お二方ともおめでとうございます!

私からは、これを隼一さんに。」

 

そう言って、渡したのは…え?

渡された隼一も驚いている様子だ。

 

「これは…満州の水餃子と

烏龍茶の茶葉ですか。

よくこんなの仕入れましたね。」

 

「入手ルートは秘密です。

まぁ、敢えて言うとするなら

昔馴染から調達した感じですね。

隼一さんは日本人何ですよね?

でしたら、東アジア圏の物を

偶には食べたくなるかなと。

…おっと、心配しないで下さいよ?

予めパチュリー様に頼んで

保存魔法をかけてありますから。」

 

「それは…心遣いありがとうございます。

嫁と一緒に有り難く頂きます。」

 

「いえいえ、お気になさらず。

それでは、私はこれにて!」

 

…美鈴さんは爽やかに下がっていった。

直後、改めてレミリアさんが口を開く。

 

「…さて、結婚祝いを

受け取る気分はどうだったかしら?

私と咲夜からも家は贈ったけれど、

実はもう一つ、渡す物があるのよ。」

 

…私達は突然レミリアさんから

そんな事を告げられた事で

脳内でクエスチョンマークが

大量生産されたのだが、

考察する暇も無く咲夜さんが現れ

如何にも高級そうな黒い箱を

二種類私達に差し出して来る。

 

「…中を開けてみなさい。」

 

レミリアさんに促されるまま

箱を開いたその中には…

緋色のガラス玉が煌めていた。

レミリアさんが口を開く。

 

「それは、スカーレット家の伝統で、

紅魔館の身内、その中でも特に

私に忠誠を誓った者になった証に贈る物よ。

私と対等な関係になったパチュリーや

私の妹であるフランにもあげていないのよ。

美鈴は私の母親から貰ったそうだし、

私が贈ったのは咲夜にあげて以来ね。

…メアリーも隼一も、ルーマニア政府内で

立派な貢献をしてくれていると思うし、

これを貰うに値すると思うわ。

そして、貰ったからには私への

永遠の忠誠を約束しなさい。

私も、忠誠を誓う者に対しては

全身全霊で報いると誓うわ。」

 

…レミリアさんの表情は、

いつになく真剣な物であった。

私もそれに応える事が義務だ。

 

「…私は、レミリアさんの為なら

全てを賭ける覚悟があります。

私の望みの殆どが叶ったんですから。

恩を仇で返す真似はしません。」

 

「…私も陛下に誓います。

私の故郷は日本にありますが、

私の祖国はルーマニアにあります。

陛下の為、ルーマニアの為

全身全霊で尽くすと約束します。」

 

隼一も私の言葉に同調し頭を下げる。

 

…厳かな空気が場を包み込む。

しかし、その空気を弛緩させたのは

他ならぬレミリアさんだった。

満面の笑みを見せて、言い放つ。

 

「さ、シリアスな空気も終わり。

今日は全力で飲み明かすわよ!!!」

 

そう言って、咲夜さんがグラスを用意し

酒を思いっ切り注ぎ始める。

それを見て、皆がいよいよ騒ぎ始めた。

 

…妊婦は酒を飲ま無いと主張した

私の声は、喧騒に掻き消えてしまう。

けどまぁ、これもまた一興か。

どうせ治癒魔法をかければ

胎児への悪影響何て消えるのだし。

レミリアさんの音頭に乗って、

私達はグラスを掲げる。

 

「「1932年に、乾杯!!!」」

 




レミリアの演説…内容は欺瞞にまみれているし、指摘したらキリが無いでしょう。それでも、彼女にはカリスマがあります。演出まで仕掛ければ、それだけで十分成立してしまうのです。

魔法少女フランドール…死に設定過ぎて逆に有名なのでは?

ベビーベッド…デジの贈った、案外一番実用性のあるプレゼントかもしれない。

満州の水餃子…私事で恐縮ですが、以前書いた通り私の曾祖父が満鉄で技師をやっていたんですよね。当然私の祖父も曾祖父と幼少期を過ごした物ですから、祖父の家で餃子と言えば専ら満州の水餃子でした。個人的にも馴染み深いです。

緋色のガラス玉…完全な独自設定ですが、個人的に好きな設定です。

妊婦に酒…絶対に真似しないで下さい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。