紅魔戦記~カリスマの戯れ~   作:インスタントブルー

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飛べない馬はただの馬

「…貴方の提案書、読ませて貰ったわ。

その上で言わせて貰うのだけれど、

貴方の認識は時代遅れそのものだと思うの。

要するに、今回は不採用って事よ。」

 

1933年6月1日陸軍省にて、

私、フランドール・スカーレットは

私にわざわざ提案書を渡してきた

ヴァシレ・アタナシウ少将を召喚している。

…残念ながら知らせるのは良くない知らせだけど。

どうもこいつの認識は50年前で止まっている様で、

それは報告書のタイトルからして察する事が出来る。

“ルーマニア陸軍強化における騎兵の活用”

…ハッキリ言ってふざけていると思うのだけど。

私は陸軍大臣になってからと言う物、

ちゃんとニンゲンや陸軍、戦略や戦術について

パチュリーがくれた本で勉強したから分かる。

馬に乗って騎士が突撃する何て言うのは

銃器の発展と運用コストの増大によって

時代遅れの産物として扱われる様になったのだ。

まして、ルーマニア陸軍は増えた予算の殆どが

機甲師団に費やされる事になったから、

既存の師団の充足以外に新しい事をする余裕は

全く無いと言っても過言では無い。

しかし、こいつは引き下がる気が無いらしい。

 

「…しかし、現在のルーマニア陸軍には

槍兵師団何て師団があるではありませんか。

それと比べて騎兵師団は銃火器を装備出来る分

随分と近代的な師団であると思いますし、

そもそもこれは重戦車への注力によって

生産力的に兵員輸送車の供給が現実的では無い

ルーマニア陸軍の機動力不足を補う

現実的な策であると私は思うのですが。

それに、単純に騎兵は歩兵よりも速いですし、

明確に重戦車より小回りが効きます。

視界も確保しやすいですしね。

ルーマニアには山岳地帯や森林もありますから

この優位性は想像以上に大きいですよ。

無論、コストの高い重戦車と比べれば

低コストで数が揃う利点もあります。

要するに騎兵は“便利”なのです。

私としては、騎兵師団の増強は

是非とも採用して頂きたいのですが。」

 

…私は呆れた目でこいつを見る。

 

「…貴方は先の大戦で何を見たの?

輸送任務には使えていたかもしれないけど、

騎兵突撃は時代遅れになっていたでしょ?

私は突撃出来ない騎兵師団何かに

特段価値を感じたりしないわ。

別に輸送任務を重んじるなら

鉄道で十分間に合っているじゃない。

それと、槍兵師団が使う槍には須らく

自動追尾魔法がかけられているのよ。

貫通力こそただの鉄槍だけど、

歩兵突撃への対策と言う戦術的な

明確な利点があると思うわ。

要するに、槍兵師団は有用なの。

もしかして、貴方は私の懐古趣味だけで

あの師団があると思っているの?

だとすれば、それは心外と言う物よ。

貴方だって串刺しにされたくは無いでしょ?

それとも私に壊されたいのかしら?」

 

私が冷たい声で威圧しながら

不採用の理由を説明してやると、

こいつは顔を真っ青にしてしまう。

こんなんでビビる様な小者の分際で

よく私に意見具申出来たもんだな!

震え上がって固まる様子を見て、

私は思わず溜息をついてしまう。

 

「…兎に角、分かったらさっさと帰って

部下に訓練でも施して来なさい。

一応、機動力不足を補う策は

お姉様とパチュリーに話しておくから。」

 

私がそう言うと声一つ出さず

こいつは壊れた人形の様に首肯し

陸軍省を去っていった。

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 

「…と、こんな事があったの。」

 

そして翌日6月2日、私の姿は紅魔館の

大図書館内にあったと言う訳だ。

私の話を聞いて、パチュリーは

自らの見解を述べてくる。

 

「…まぁ、フランが判断した様に

騎兵が時代遅れなのは確かよ。

維持コスト、生産コストも

機甲師団よりマシとは言え

相応にかかって来る物だしね。」

 

マカロンを頬張りながら

私の見解に同意を示すパチュリー。

それ、私にも一個頂戴!

…私に最後の一個となっていた

マカロンを惨めにも奪取され

ジト目のパチュリーを無視して

私はパチュリーに質問を続ける。

 

「だけど、陸軍の強化を考えるなら

物量を揃える事も重要になるでしょ?

重戦車が騎兵より生産しにくいのは

残念だけど事実な訳だし…。

そこで、新型重戦車の設計が出来たら

アリスの人形を陸軍でも使って

戦車を大量生産したいのだけど、可能?

もし可能なら、騎兵師団の増強をせずに

機動力不足をある程度補えると思うの。」

 

私の質問に対して相変わらず

パチュリーはジト目だったが、

一瞬思考するそぶりを見せた後

残酷な現実を突きつけて来た。

 

「…結論から言うと、それは無理な話ね。

重戦車生産の為の人形を確保する為には

最低でも3年は必要でしょう。

今アリスは慢性的な人形不足解消の為に

人形を増やす為の人形を作る作業に

日夜追われている最中なのだけど、

増えた人形は戦艦と戦闘機の生産工程に

全て借り出していると言う有り様なのよ。

陸軍に回すのは戦艦が建造を終えて

海軍で使用している人形が

失業してからになるでしょうね。

…言いたい事は色々あるでしょうけれど、

こればっかりは諦めなさい。

戦艦建造に忙しい今この瞬間に、

槍兵師団の専用槍作成を助ける

人形を融通してくれるだけでも

私達は感謝しなきゃいけないの。

アリスは確かに優秀で優しいけど、

今は海軍大臣としての立場があるからね。」

 

3年…別に私にとっては

取るに足りない時間だけど、

大半のニンゲンにとっては

長い時間だって事は知ってる。

機甲師団を増やせば良いって

何と無く思っていたけれど、

これは想像以上に大変そう。

…だけどそんな事を考えていた時、

私の頭に名案が思い浮かんだ。

つまり、重戦車量産の方法が。

 

「…あれ、突拍子も無い事を聞くけど、

パチュリーって“複製魔法”は使えるの?

もし使えるならそれで生産力の問題って

全部が解決すると思うんだけど。

ほら、魔導書にもあったじゃん!」

 

私だって、魔法少女の端くれとして

前々から魔導書を読んでいるのだ。

確かに“複製魔法”と言う魔法が

存在する所を見た事がある。

確か凄く難しい術式だったから

あの時の私は実行しなかったけど。

私が一縷の望みをかけて聞いてみると、

パチュリーは面倒そうに口を開く。

 

「…まぁ、“使えるのか、使えないか”

この二択で言えば、私は“使える”側よ。

だけど、複製魔法は術式が高度過ぎる。

正確で緻密な魔法陣の書き出しに最低一週間、

儀式の為に必要な素材の希少性から

素材集めに最低でも半年から一年かかる。

…今の説明で何と無く分かったでしょう?

大概の物は魔法で複製するよりも

実際に作った方が断然早いのよ。

しかも、この目安となる必要期間は

私が日夜研究して魔法陣の簡略化に

日々取り組んだ事によって成し遂げた数字なの。

そして、ここまで簡略化するのに5年は要したわ。

“実用的な”複製魔法の研究が完成するのは

どんなに早くても10年後って所じゃないかしら?

…どうしても手早く機動力を確保したいなら、

大人しく騎兵師団でも作ったらどうなの?

別に突撃は兎も角としても、仮にも馬よ。

駄馬位にはなってくれるでしょ。」

 

「そんな…。今更騎兵何て作っても

活躍出来ないと思うんだけど。」

 

私は嘆くが、パチュリーは素っ気無い。

 

「あら、補給の維持は大切よ?

たかが駄馬、されども駄馬よ。

大体、国中線路まみれでも無いのだし、

鉄道だけで補給は不可能でしょう。

ヴァシレが言う様に小回りも利くしね。

別に突撃任務が封じられたって、

間違い無く活躍出来る筈だけれど?」

 

「突撃も出来ない騎兵だ何て、

騎兵とは言わないと思うのだけど。」

 

…私がぶっきらぼうにそう言うと、

パチュリーはデカデカと溜息をつく。

 

「…そこまで言うのなら、

“突撃出来る”騎兵の為に自分で働きなさい。

仮にも魔法少女何だから出来る筈よ。

多少は私も力を貸してあげるから。」

 

「“突撃出来る”騎兵…?

そんな事が出来るの?」

 

…私が質問すると、パチュリーは

先程まで読んでいた本を閉じて

私の目を見て話し始める。

 

「これはあくまで私の思い付きだから

話半分で聞いて欲しいのだけど…

フラン、貴女は“ペガサス”って知ってる?」

 

「勿論知ってるよ!翼がある伝説の馬でしょ?

一体それがどうしたって言うの?」

 

「…簡単な話。伝説を具現化すれば良いの。

“翼”と“馬”を錬成魔法の応用で合成し、

疑似的なペガサスを作る。各種魔法の使用で

品種改良を重ねに重ね、短期間で確実に

繁殖可能な個体を数百体作るのよ。

馬の数は指数関数的に増やせるから、

私の概算がもしも正しければ

3年から4年でペガサス騎兵3個師団が

あっという間に出来上がるって寸法ね。

…突撃に使えるかどうかは保障しないわ。

恐らく空からの騎兵突撃に対して

敵軍は不慣れで動揺もするだろうから

初見じゃ早々防げないと思うけど、

ペガサスとは言ってみても

ベースとなる生物が馬である以上は

結局機銃を上に向けられたら

それだけで終わってしまう話だから。

…もし本気でやると言うのなら、

全部自分と陸軍の部下でやりなさい。

少なくとも魔法は全部自分で使うのよ。

私も術式の構築位は手伝ってあげるから。」

 

ペガサス師団…凄くメルヘンチックで

カッコイイかもしれないな。

私も最近暇だったし、頑張ってみよ。

それに何よりこんな事が出来れば…!

 

「…私、やってみる!

ペガサス師団を作って、

お姉様に自慢したいからね!」

 

「…はいはい、発案したのは

フランじゃなくて私だし、

単なる思い付きに過ぎないけどね。

取り敢えず、錬成魔法の応用の載った

魔導書を幾らか見繕っておくから、

分からない事がもしもあったら

遠慮なく私に聞き出しなさい。」

 

「分かったよ、パチュリー。」

 

私がそう言うと、パチュリーは

自分で魔導書を探しに行ってしまった。

…そう言えば昨日美鈴に聞いた話によると、

小悪魔は未だに折檻されているらしい。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「パチュリーさん、こちらが

貴女宛てに届いたお手紙になります。」

 

「…そう。ありがと。随分と増えた物ね。」

 

1933年6月5日紅魔館の大図書館にて、

私、宇佐見隼一は外務省からの報告で

紅魔館を訪れたついでとして、

世界各地から届くパチュリーさん宛ての

手紙の束を本人へと手渡していた。

パチュリーさん曰く、手紙の送り主は

ルーマニアの噂を聞きつけた全世界の

“自称”魔女が殆どであるらしい。

余りにも数が多くなり過ぎたので、

現在は彼女への手紙は外務省で

一括管理する事にしているのである。

…それもこれも、手紙を送りつけて

魔女として認められたメアリーの影響も

大いにあるのだろうから、

自分は余り不満を言える立場でも無い。

束の上の方から読めているか怪しい流れ作業で

中身に目を通すパチュリーさんがぼやく。

 

「…それにしても、紛い物が多過ぎて

本当に困ってしまうわね。

別に神秘として秘匿しようだ何て

今更思ったりはしていないけど、

神秘の何たるかすらまるで知らない

連中が世界には溢れ過ぎなのよ。

それもこれも、貴方の嫁のせいね。

ま、さっさと燃やしてしまいましょう。」

 

手紙を読むべく落とした視線を

立っている私の目線まで上げて

私を困らせるパチュリーさん。

 

「私にそんな事を言われても困ります。

メアリーを制御する何て不可能ですよ。

それは仕方のない事であって、

この世の摂理と言う物なのです。」

 

「…堂々と情けない事を言って。

大げさに世界の理を語らないで頂戴。

すっかり尻に敷かれてるのね。」

 

「…面目ない。」

 

…少々気まずい沈黙が流れる。

けどまぁ、仕方無いだろう?

出会いからして私とメアリーは…

その、まぁ、あんな感じだったし。

パワーバランス何て明らかなのだ。

さっさと目的を果たそうと

私が大図書館を後にする旨を

パチュリーさんに伝えようとしたその時、

 

「あら、今日はパチェだけじゃないのね。」

 

「陛下、ここにいらっしゃったのですね。」

 

…丁度陛下がいらっしゃった。

定例報告はこの場で済ませれば良いか。

私が脳内で用件を思い出していると、

陛下はパチュリーさんに話し掛ける。

 

「パチェ、いきなり押しかけて悪いけど

その手紙を燃やすのは少し待って欲しいわ。

強い運命を混じる手紙が混じっているの。」

 

「…そ。このやり取りは2回目よ。」

 

パチュリーさんはそう言うと手紙の束を

再び私に押し付けて来たので

私は再びその手紙の束を抱える。

すると、陛下がその束の中の

真ん中辺りに紛れた一通を取り出して、

パチュリーさんの面前に差し出した。

 

「…回収は済んだわ。残りの手紙については

煮るなり焼くなり好きにしてくれて良いから。」

 

「分かったわ。じゃ、それは外務省で

適当に処分しておいて頂戴。」

 

「…分かりました。」

 

この一瞬の間のやり取りで、

私は体よく面倒事を押し付けられる。

…別に慣れているから良いけれど。

取り敢えず、すべきは定例報告だな。

私は陛下へと話しかける。

 

「…陛下、今この場を借りて

定例報告をしても構いませんか?」

 

「別に良いけれど、

そんな改まった表情で

何か新しい情報でもあるの?」

 

「えぇ…。実は、ドイツのルーマニア大使館から

少々気掛かりな情報が入っていまして。

何でも、連中が魔女を大規模に集めて

訓練を行っていると言うのです。

情報の確度からするに信憑性は低いのですが、

どうも魔女の育成計画がある事自体は

決して噓とも言えない様でして…。

警戒はしておくべきかもしれません。」

 

私がそう言うと、顎に手を当てて

しばしの間考え込む陛下。

一体何を考えていらっしゃるのだろうか。

 

「…そう。分かった。気を付けるわ。

私が思うに、魔女の育成計画自体は

確実に存在していると見て良いでしょう。

流石に大規模と言うのは偽りでしょうけどね。

兎に角、報告ありがとう。

今後も、ドイツ情勢はくれぐれも

目を離さない様にお願いするわ。」

 

「御意。」

 

私が言葉と共に頭を下げると、

陛下は途端に話題を変えてくる。

 

「…それより、最近メアリーとはどうなの?

アシュリーンが生まれてすぐだと言うのに

直ぐに2人目まで授かっちゃうんだから。

やる事やるのは別に結構な事だけど、

ちゃんと子育てはしている訳?

偶に咲夜を手伝わせているらしいじゃない。

あの子もあの子で仕事で忙しいのだから、

偶には隼一も子育ての手伝いをしなさいよ?

外務省の仕事は官僚にも出来るけど、

子育てはメアリーと隼一にしか

出来ない仕事なのだから。」

 

ちょっと心配そうな陛下。

これは…弁明の余地が無い。

 

「これは…申し訳ございません。」

 

私は再び頭を下げて謝罪する。

咲夜さんは陛下のお気に入りなのだ。

余り世話になり過ぎてもいけないだろう。

…しかし私がひたすら謝罪を続ける中、

私を擁護する声も聞こえてくる。

 

「…まぁ、今日に関して言えば、

隼一が持って来た手紙に免じて

許してあげても良いんじゃない?

ほら、私は内容を読んだわ。

確かに感じる物があるわね。

レミィもこれを読んでみなさい。」

 

そう言って、便箋をひらひら振るパチュリーさん。

それを手に取った陛下は、中身を改め始めた。

失礼だが、私も後方から確認させて貰う。

そこには、この様な内容があった。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

親愛なる魔女様へ

 

このような突飛なお願いをお許しください。

私の名はエスター・ブラウンと申します。

貴女様のことは、宣教師の方から聞き及びました。

彼は、あなた様が真に力ある“知の魔女”であり、

自らとは異なる者たちにも

等しく慈悲を示される方だと語っておりました。

 

この手紙には、私の最も大切な娘、

エライザの写真を同封しております。

彼女は私の身体から生まれましたが、

その肌は生まれながらにして真っ白でした。

我が夫はそれを“呪い”と見なし、

私を問い詰め、家を去りました。

周囲の人々も娘を“人間ではない”と囁きます。

 

私たちは今、町の片隅で身を寄せ合い、

教会の施しで何とか命を繋いでおります。

娘はまだ幼く、何も知らぬまま

人々の目を避けて暮らしています。

 

私にはもう、この子を守る力がありません。

ですが、どうしても伝えたかったのです。

私の娘は呪われてなどおりません。

ただ、白いだけなのです。

 

もし、もしも……あなた様が、彼女の肌に宿る“呪い”が

本当にあるかどうかを見ていただけるのでしたら……

どうか、この子に救いの手を。

 

あなた様が異国にお住まいであること、

見知らぬ女からの頼みであること、重々承知しております。

けれど、それでも、願わずにはいられません。

 

神が、あなた様のご慈悲を祝福されますように。

 

―――エスター・ブラウン

モンバサ市、セント・メアリー小教区裏、赤い屋根の家より

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

「…これまた、びっくりね。珍しいわ。」

 

写真に驚きを隠せない陛下に対し、

パチュリーさんが説明を加える。

 

「…まぁ、そうね。だけど、白い肌の娘が

黒人の両親から産まれる事は別に言う程

珍しい物でも無かったりするのよ。

それに、ヨーロッパなら兎も角

向こうでは迫害されると言うのも分かるわ。

西欧の白人国家が我が物顔で

アフリカを植民地にしているからね。

…肌の色に罪は無いと言うのに、

この母と娘は余りに悲劇的ね。」

 

…説明するその口振りは

非常に淡々とした物であったが、

陛下の方を見やるパチュリーさんの目は、

本気でこの母と娘に同情している様だった。

 

「…それで、どうするのよ、レミィ。

見てしまった以上、私達は関わっているの。

見て見ぬ振りは許されないわよ?」

 

「無論、そんな事はしないわ。

ルーマニアは須らく開かれた国だもの。

何せ、吸血鬼、咲夜、魔女、妖怪、日本人が

同じ政府内で仕事をしているのだから。

悲劇的な運命等私は認めないわ。」

 

パチュリーさんの問いに陛下は即答する。

…吸血鬼や魔女と同列に並べられる

咲夜さんの異常性は伝わって来たな。

私は陛下に対して質問する。

 

「…と、すると具体的にどう致しますか?

パチュリーさんがアフリカへと言うのは

少々現実味に欠けるでしょうから、

両名をルーマニアへ招く形でしょうか。」

 

「…ま、そうなるでしょうね。

ここには折角隼一がいるのだから、

今ここで直接指示を出すわ。

英国大使館を通じてロンドンへ

この少女と母親を保護する意向を

ルーマニアが持っている事を伝えなさい。

背景情報については、開示して構わないわ。

英国は仮にも同盟国な訳だし、

開示を拒んで不興を買うのも嫌だしね。

それと、もし何か要求されたとしたら

多少は“積んで”も構わないわよ。

手段を選んでいても仕方無いしね。」

 

“積んで”か。まぁ、そう言う事だろう。

その思い切りに私は驚いたが、

頭を下げて新しい仕事を受領する。

 

「…畏まりました。」

 

「宜しくね。全力で頼むわ。

私はね、成功率100%の博打に

賭ける事を厭わないのよ。」

 

私は陛下の本気度を改めて実感し、

そそくさと図書館を離れながら考える。

そう言えば、手紙、どうしよう……と。

 

 




ペガサス師団…凄く少女趣味的でメルヘンチック。空飛ぶ騎兵突撃師団と言うとロマンはあるが、実の所ペガサスは飛べるだけでただの馬なので、視覚的インパクトの割には多分弱い。政治的効果はありそうだし、奇襲には使えそうだけど。

ブラウン親子…今後詳細が語られます。英領東アフリカの産まれです。
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