紅魔戦記~カリスマの戯れ~   作:インスタントブルー

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ストレートですが、お気に入りのタイトルです。


長いナイフの夜事件

「…何故、私がやらなければならないのですか?

皆さんだけでも十分務まると思うのですが。」

 

1934年6月25日ベルリン近郊の研究室兼自宅にて

私、メリッサ・アインホルンは困惑していた。

尤も、それも当然の事ではあろう。

何せ、私の奇妙な同居人たるリリーが

私に新しい仕事を頼んで来たからである。

私は仕事に対して疑義を呈したが、

リリーは一歩も引かずに口を開く。

 

「まぁまぁ、そこを何とか…ね?

私だってこんな汚れ仕事にメリッサを

動員するとか正直分かりかねるけどさ、

上がどうしてもって言って聞かないんだよ。

だけど、仕事自体はただの“掃除”何だから、

魔法を使えば一瞬で終わるでしょう?」

 

…私は思わず溜息をついてしまった。

今回リリーが頼んで来た仕事と言うのは、

言ってしまえば粛清任務であった。

運悪く目を付けられてしまったのは、

突撃隊と呼ばれているらしい武装組織。

私は政治や権力闘争何かに一切興味は無いが、

国家に研究をサポートして貰っている以上

無下にも出来無いと言う現実もまた事実であった。

私は億劫さを一切隠さずにリリーに質問する。

 

「…確かにある種の“掃除”なのかもしれませんが、

魔法もそこまで万能ではありません。

少なくとも、清掃魔法では無理だと言えます。」

 

粛清を掃除呼ばわりする何て

非人道的な気がしなくも無いけれど、

別に私が死ぬ訳でもあるまいし、

そこの所は一旦割り切る事にする。

…とは言え、私は魔法研究が好きだから、

天国の様な家からは出たくないのだ。

私は遠まわしに仕事を拒否したい事を

リリーに対して伝えるが、

彼女は苦笑しながら口を開いた。

 

「まぁ、清掃魔法では無理かもね。

これは魔法の使えない私でも分かるよ。

…だけど、メリッサは色々魔法が使える。

魔女としてのメリッサに聞くけれど、

この仕事、可能か不可能で言えばどっち?」

 

「…勿論可能ですが。」

 

「そっか…。なら、参加して貰うね?

私も、メリッサなら出来ると思ってたよ。」

 

勝手に話を進めるリリーに対して

私は思わず頭を抱えてしまったが、

落ち込んでいてもしょうがないだろう。

私はすかさず釘を刺しておく事にする。

 

「可能か不可能かの二元論では無く、

単純に面倒であると言っているんです。

…大体、私は何をすれば良いんですか?

もしや、消えない炎で焼き尽くせとでも?

仮にそんな事をお考えなのでしたら、

正直余りオススメは出来ません。

あれって文字通り“炎が消えない”訳ですから、

使用後は高度な魔力処理と操作が必要何です。

もしもベルリンを灰にしたいのなら

正直それでも結構ではありますけれど。」

 

口にはしなかったが、私はベルリンが好きだ。

より厳密に言えば、ベルリン近郊の家が好きだ。

シュヴァルツヴァルトの森も悪くは無かったが、

こう言う近代的な雰囲気も別に嫌いでは無い。

しかし、そんな事を思考する私を横目にして

リリーはシリアスな表情をしながら口を開いた。

 

「…分かった。良い?心して聞いてね。

メリッサに担当して貰う任務だけど、

実はもう上が内容を決めているの。

言ってしまえば、“拷問”をして貰う。

まぁ、殺しても構わないとは聞いたから、

面倒ならその場で消しても構わないよ。」

 

…よりにもよって、拷問をやらせるのか。

私は瞬間的にその言葉が口から出てしまう。

 

「…幼女に拷問して貰える何て、

その突撃隊とか言う連中は変態ですね。

と言うより、それは最早ご褒美では?」

 

…別にそんな奉仕に興味は無いのだけど。

私はリリーの言う“上”に心底呆れてしまう。

…しかし、私の内心を知る筈も無いリリーは

何故か唖然とした表情で私を見つめ、

声を震わせながらそれを言った。

 

「メリッサ…どこでそんな事を覚えたの?

私、メリッサは純粋だって信じてたのに…。」

 

…額を手で押さえるリリーに対し、

私は最早呆れを通り越して

嘆かわしさを感じてしまう。

彼女は真実を忘れてしまったのか?

 

「…どこで覚えたも何も、

教えたのは他ならぬ貴女ですよ。

寝る前とか色々話してくるじゃ無いですか。

…と言うか、私ももう15、16になるんです。

男女が一緒になって何をするかとか

男性がどんな生き物であるかくらい、

知っていない方が問題でしょう。」

 

…私がそうリリーに告げると、

彼女は記憶を取り戻したらしく

動きを取り戻しハッとした顔をする。

 

「…そう言えば、そうだったかも。」

 

「…かもじゃなくて、そう何です。」

 

…はぁ。その瞬間、私の口から溜息が溢れる。

やっぱり、今日は呪われているのかもしれない。

もう思考が面倒になってしまった私は、

拷問に使えそうな魔法が載っていそうな

魔導書を適当に本棚から取り出す事にした。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

「…レームはメリッサによる度重なる拷問の末、

ミュンヘンはシュターデルハイム刑務所にて死亡しました。

より正確に言えば、彼は廃人になる一歩手前で、

自ら拳銃を使用し自決を図ったそうです。」

 

「…そうか。朗報ではあるが、惜しい事をした物だ。

叶うなら、私も奴の最期を拝みたかったのだが。

…とあれ、“アレ”を有効活用した事は称賛しよう。

…私は今、気分が良い。下がって構わない。」

 

1934年6月30日、私、リリー・ヴァイスは

ベルリンにて吐き気を催す邪悪の1人である

上官たるラインハルト・ハイドリヒに

突撃隊を率いるレームの最期について

如何様な物であったか報告を行っていた。

彼は立ちながら手を後ろで組み、

背で威厳を私に示すかの如く空を見ている。

…つくづく、怪物の様な男であると思う。

結局、私の任務は、レームへの拷問に

メリッサを加担させる事であって、

この大変イカれた任務の目的は

メリッサが使う魔法の効果について

親衛隊が正確に把握する事にあったのだ。

 

…私が聞いた限り、メリッサが行った拷問は

親衛隊員すら恐怖する程常軌を逸していた様で、

魔法によって爪を剝がし、指を詰める何てのは序の口。

小規模ながらも高温な“消えない炎”でもって

吊し上げたレームを数時間炙り続けたメリッサは、

大量の針を1本ずつ魔法の力で正確に放ち、

レームのありとあらゆる場所に刺して行ったそうだ。

…そして遂に、針の数が数百本に及び、

いよいよ眼球が貫かれんとしたその瞬間、

レームは拳銃による自決を懇願、

レームがすぐにでも息絶えると感じた

現場の親衛隊員が最後の情けを

レームに掛けたとの事だった。

 

…彼等は、ベルリンにいる私に電話越しで

報告を行うに際して声を震わしていた。

曰く、レームの自決後メリッサが放った

“…案外耐えたな”とのフレーズが

耳に強く残ったとの事だそうだ。

 

…そして、私は決意したのだ。

懐から一筆したためた書類を出して、

私は長官にその言葉を告げる。

 

「…承知しました。しかし、退室前にこれを。」

 

「…ほう?」

 

私の言葉に、長官が振り向く。

私は書類を広げ、彼に突き付けた。

 

「私は、本日付でSDの外郭協力者を

正式に辞めさせて頂きます。」

 

…私は、思わず左拳を強く握りしめる。

途端、私の脳内にその半生が思い返された。

生まれつき、両親が居ない孤児であった事。

孤児院で育ち、常に愛に飢えていた事、

将来はごく普通に幸せな家庭を築き、

平穏な人生を送るつもりだった事。

好いた人間を落とす為に容姿を磨き、

内面で舐められない様勉学に励んだ事。

類稀な才能と愚直な努力によって、

私の人生は好転する事が約束されていた。

…しかし、人生そこまで甘くは無かった。

私の人生は、その日名も知らぬ人間から

スカウトを受けた事により歯車が狂いだす。

無論スカウトと言っても華やかな物では無く、

実態は単なる誘拐や強制連行の類だったけれど。

 

…結局、その日何も知らない私が任されたのは、

“SDの外郭協力者”と言う少々特殊な仕事だった。

尤も、外郭協力者何て言うのはあくまで建前で、

職務内容は正規職員と近しい物ではあった。

正規職員として採用されなかった理由は、

単に私が女性であった事が理由なのだろう。

その後、私は惰性と役得を目当てに

そのままSDの外郭協力者として

気に食わない仕事に歯を食いしばりながらも

今の今まで生きてきたと言う所で現在に至る。

 

…とは言え、それもこれも今日でおさらばだ。

私は、これ以上耐えられそうに無かった。

今や私の精神は、まるでダムが決壊し、

今にも濁流が溢れ出てきそうな状況に置かれている。

…私は、これ以上嘘をついて生きるのは御免だった。

最低限、人としての良心が私には残っていたのだ。

私は、メリッサ・アインホルンと言う15、16歳の少女を

“アレ”呼ばわりする様な腐った上官に首を垂れながら

凄惨な任務に少女を従事させる仕事を

これ以上したいとはとても思えなかった。

 

…しかし、私が辞表を見せたその時、

彼は極めて冷徹な声で言い放つ。

 

「…今更何を言うかと思えば、とんだ戯言だな。

残念ながら、君は既に知り過ぎている。

理解出来無いか?君に退路等用意されて居ない。

もし、君が今ここで職を辞すると言うのなら、

私は君を断頭台に送る事に一切の躊躇をしないだろう。

何なら、その前に拷問を加えても一向に構わない。

君の好みは、ファラリスの雄牛か?或いは、鉄の処女か?

何、安心してくれ給え。もしもその席があれば、

私直々に君の無様な死に様を見守ってやるつもりだ。」

 

…ラインハルトは、野獣の様な眼光で以て

私を突き刺す様に見つめると、言葉を続ける。

 

「…いずれにしても、君のこの辞表は受理しない。

レーム粛清の功に免じ今回この件は不問とするが、

精々、次は無いと心して置く事だな。」

 

…私は突き返された辞表を手にし、

この男の姿を改めて視認した。

そして、改めて確信する。

あの雨の日に自問した、問いへの回答を。

 

“ラインハルト・ハイドリヒは、

吸血鬼等遥かに凌ぐ怪物である“

 

…どれだけ貧しくても、どれだけ不運でも、

絶対に感じなかった“惨め”と言う言葉が、

今この瞬間の為に存在している様に思える。

その場に呆然と立ち竦む私の姿は、

まるで蛇に睨まれた蛙の様であった。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「…これまた、随分派手にやった物ね。

こう言うのが連中のやり方って訳?」

 

1934年7月5日、紅魔館内の大図書館内で

私、レミリア・スカーレットは

外務大臣の隼一からドイツ情勢について

上手く纏められた報告書を受け取っていた。

内容は端的に、突撃隊の粛清とその顛末である。

私が報告書を読んで溜息をついた瞬間、

親友たる紫モヤシ、パチェが息をする様に毒を吐く。

 

「…別に、大した事じゃ無いわ。

レミィの所業も大概でしょう?

それとも、自分の事は棚に上げて

ドイツに非難声明でも出す気なのかしら?」

 

魔導書から目を離さずに言うパチェと、

それに対しウンウンと頷いている隼一を前に、

私は少々自嘲気味に物を言った。

 

「…そうね。少なくともこの件において、

私には非難声明より祝電が似合っているわ。

勿論、この件に関しては静観するけれど。」

 

乾いた笑いを顔に浮かべ、

私は数年前の鉄衛団粛清を思い返す。

クーデターの時点からそうであったが、

私、咲夜、フランは粛正を強行し

夥しい数の人間を“食糧”へと変換した。

あの時は何とも思っていなかったが、

流石にちょっとやり過ぎた気はしないでもない。

何せ、私はあの後積極的に懐柔策を採用し、

共産党員を福祉省の職員に多数採用させた他、

ルーマニア正教会及び総主教を上手く懐柔し、

行政組織としての教会省を組織したりしたのだ。

鉄衛団も、もしかしたら上手く体制内で

活用する道があったのかもしれない。

尤も、あの時はソ連との取引もあった訳だから

あぁするしか無かった気はするのだけれど。

 

…そうして、私が数年前を思い返している中、

読書に明け暮れるパチェがまたも口を開く。

 

「…所で、現状ルーマニア内の反体制派は

粛清か取り込みが済んでいるのかしら?

私は咲夜から何も聞いていないけれど。」

 

魔導書のページをめくりながら問うたパチェに

私は最近咲夜から受けた報告と同じ内容を説明する。

 

「えぇ、私が最近咲夜から受けた報告によると、

現状のルーマニアに表立って活動する反体制勢力は

“ほぼ”存在していないと聞いているわ。」

 

「“ほぼ”?じゃあ、いるって事じゃ無い。

誰が喧嘩を売っているのか分からないけど、

気を見計らって消さねばならないわね。

咲夜はどうするつもりって言ってた訳?」

 

パチェは私の説明の細かい部分が気になったのか、

パチェは魔導書から目を離して私に問うた。

そして私が答えようとしたその瞬間、

眼前に突然咲夜が現れ、口を開く。

本当に、タイミングまで完璧だ。

 

「お嬢様、恐れながら、私の口から

この件は述べさせて頂きたく思います。」

 

「構わないわ。」

 

「…それでは、説明させて頂きます。

実は、内務省では先日国内で多発する

不審な事件について調査を進めていたのです。

通報を行った現地住民の言う所によれば、

あらゆる場所で小物が“浮いている”との事で。

そこで私達が直々に捜査を行った所、

確かにそうした事象が幾らか確認出来ました。

犯行動機や犯人像に関しては一切が不明ですが、

これだけ大規模かつ怪しい事件です。

何らかの悪意が介在する可能性は高いでしょう。

現状ルーマニア国内でこの様な不可思議な事象を

物理的に遂行可能なのは恐らく私達だけですから

内務省は国外から来た者による犯行であると推測し、

丁度昨日外務省にも情報を提供した次第です。

…所で、外務省はもう当たりをつけていたりするの?」

 

咲夜はパチェに対して事態を説明すると、

後ろでシリアスな表情をしながら佇む

外務大臣の隼一へと話を振る。

咲夜から話を振られた隼一は、

ゆっくり一息ついてから語りだした。

 

「…結論から申し上げさせて頂きますと、

外務省としては当たりをつけております。

無論、私達の憶測の域を未だ出ない事は

ご承知おき頂く必要があるかと存じますが。」

 

昨日の今日でもう当たりがついているのかよ。

信じられない程仕事が早い隼一を前に、

私のみならず、咲夜やパチェも息を吞む。

私は意を決し、隼一に対して真意を問いただす。

 

「…分かった。憶測で構わないわ。

外務省の見立てを教えなさい。」

 

私の問いに対して、隼一はワンテンポ置いて答える。

 

「…外務省としては、今回の件に関して

バチカンの犯行を疑っています。」

 

神妙な面持ちで述べる隼一。

意外な連中が槍玉に上がり

私や咲夜は目を丸くするが、

パチェは隼一に対し鋭く指摘を加える。

 

「…バチカン?まさか、有り得ないわよ。

かつてあれだけ魔女狩りを推し進めた連中が、

私達に魔術を用いた犯行をするとでも?」

 

パチェは、彼女にしては珍しく

感情を乗せて隼一に対し迫る。

しかし、隼一は一切動揺を示さずに

ただ淡々と憶測の説明を再開した。

 

「…おっしゃりたい事はよく分かります。

私としても、信じ難いと言うのが正直な所です。

ただ、咲夜さんからお借りした事件資料には

興味深い写真が幾つか添えられていました。

さて、こちらの写真をご覧下さい。」

 

そう言って、隼一は数枚の写真を取り出す。

私達が写真に目を向けると、

隼一は改めて説明を加えてくる。

 

「私がお見せしているこちらの写真は、

事件資料に添えられていた写真の一部です。

…尤も、一部と言っても半分以上になりますが。

よくご覧になって頂ければ分かりますが、

こちらの写真にて浮いている小物と言うのは

聖餐用の皿である“パテナ”では無いでしょうか。

こちらはマリアが刻印された“メダイ”でしょう。

こちらは“ロザリオ”。恐らくカトリック由来です。

その他、こちらの瓶は携帯用の聖水瓶でしょうし、

小型燭台に関しては若干の違いこそあれ

4つも写真の中に確認されています。

…そして、極めつけにこちらの写真をご覧ください。」

 

隼一はそこで一度説明を中断すると、

懐から新しく写真を取り出してくる。

皆、目が写真に釘付けになっている。

 

「…こちらの写真で浮いているのは、

どうやら小さな布切れである様です。

一見しただけでは分かりませんが、

右下の模様をよくご覧下さい。」

 

…皆、言葉を失ってしまった。

何せ、そこに描かれていたのは

他ならぬバチカンの国章だったのだから。

私達が唖然とする中で、隼一は続けた。

 

「…と、これが外務省の拙い憶測になります。

尤も、これらの写真に証拠能力はありませんし、

これらの写真を以てバチカンの関与を断定する事は

些か早計であると言う事は百も承知しております。

…しかし、我々ルーマニア王国は現実問題として

バチカンとは対立する関係に置かれている事も

また否定出来無い事実と言えます。

バチカンが悪意によって我々に対する

この様な奇妙で超常的な犯行を計画した可能性も

決して否定されるべきではありません。それに…。」

 

…皆が隼一の言葉に対し圧倒され、

一様に聞き入っている。

そして、隼一はタメを作って

その言葉を口にした。

 

「これは外務省の公式見解としてでは無く

あくまで私個人の考えで言わせて頂きますが、

仮にバチカンが魔術を行使する為の

何らかの手段を持っていたとしても

一切おかしくはないと考えます。

思考の根拠は、皆様方の存在にあります。

陛下は吸血鬼で、当然妹様も同様です。

魔女は3名、実用水準の魔力を有している

幼いアシュリーンやエライザも含めれば

国内に5名程存在する計算になります。

咲夜さんは人間ながらも時間を操れる他、

美鈴さんも高い身体能力を有する妖怪です。

…さて、改めて考えてみてください。

教義で否定されているからと言って、

バチカンに魔女がいない確証を抱けますか?

ルーマニアにせよ、一応は正教の国家であり

魔女は教義的には問題になる存在です。

最早、教義は魔女がいない理由には

なりえない物であると私は考えています。」

 

…隼一の推理は単なる憶測だ。

しかし、私は如何にも納得してしまう。

私がカトリックについて考え様とした矢先、

咲夜が顔に若干の焦りを浮かべながら口を開く。

 

「お嬢様、私はアリスと妹様に要請してきます。

大至急、異端調査局の人員の一部を

バチカンにも派遣する計画を立案する様にと。

お嬢様としても、それで構いませんか?」

 

「…まぁ、一先ず落ち着きなさい。

物事には冷静に対処しないと駄目よ?

取り敢えず、異端調査局は私では無く

陸、海、空軍の管轄になる訳だから、

アリスとフランが許可をすれば

私の許可は一々取らなくて結構よ。

だけど、一応私個人の見解として

咲夜への支持を表明しておくわ。

アリスやフランにもその様に伝えて置く事。

それじゃ、先ずは海軍省へ急ぎなさい。

アリスは確実にそこにいる筈だわ。」

 

「畏まりました。」

 

…そうして、咲夜は一礼しその場から消えた。

暫しの間喧騒に包まれた大図書館内は、

今や空気が重苦しく滞留していた。




長いナイフの夜事件…1934年6月30日から7月2日にかけて、ナチ党が行った突撃隊に対する粛清事件。粛清された人員こそ史実と同じだが、レームに激しい拷問が加えられる等その経過は史実とは異なる。余談だが、印象に残る歴史用語の一つだと作者は思う。

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