紅魔戦記~カリスマの戯れ~   作:インスタントブルー

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久し振り?の日常メイン回です。


白い絶景、黒い絶景、青い絶景

「!?……何だ、咲夜さんですか。

いきなり大臣室直通とは、恐れ入ります。」

 

「何だとは何よ失礼ね。

それと、一体いつになったら

慣れてくれるのかしら?

流石にそろそろ慣れて欲しいんだけど。」

 

1934年9月10日、外務省の大臣室に

私、十六夜咲夜は訪れていた。

コーヒーを嗜みながら報告書に目を通す

宇佐見隼一の姿はとても様になっているが、

多忙を極める私と違い余裕がありそうな辺り、

メアリーの疲労回復魔法の便利さを実感した。

…と、私がそんな事を考えていると、

隼一は視線を上げながら私の問いに回答する。

 

「…恐らく、後100年もすれば

絶対に驚かなくなるでしょう。

それまで暫しお待ち頂きたいのですが。」

 

…私は思わず顔を引きつらせてしまった。

全く、こいつはよくもまぁ戯けた事を。

とは言え、やられっぱなしは癪に障る。

私はわざとらしく溜息をついて言ってやる。

 

「…流石に長過ぎ何じゃ無いかしら?

それに、無理なら無理って言いなさいよ。

墓に入れば絶対に驚けないのだから。」

 

「…驚いた方が宜しいのですか?」

 

「結構よ。私はゾンビ如きに驚かないわ?」

 

…微笑みながら語りかける隼一に対し、

私は努めて“完璧で瀟洒に”応対する。

しかし、隼一は中々のやり手の様で、

 

「では、墓の中からこの間の件を

思い切り叫んでみましょうか。

中々に驚かれると思うのですが。」

 

「…この間の件?一体どんな件よ。」

 

「嫌だな、言わせないで下さいよ。

咲夜さんが陛下の盗撮写真を自室で

大量に保管していたと言う件ですよ。」

 

…瞬間、私は反射的に時間を止めた。

何故、何故この男がそれを知っている?

この事実が万が一お嬢様へと知れ渡れば、

私はお嬢様に幻滅されかね無いじゃ無い!

そんな事は絶対に許されない事だ!!!

ここで考えるべきテーマは極めてシンプルに、

“この男を殺すべきか否か”である。

…しかし、私はここで既に負けを悟る。

今の私では、隼一を殺せないだろう。

何故なら、殺すか否かを考える時点で

心に迷いが生じているからである。

普段の私なら理屈を抜きにして

迷いなく“殺す”一択の場面だが、

迷いが生じてしまっている以上

私に殺すと言う選択は不可能だ。

…私は時間停止を解除すると、

苦笑しながら恐る恐る語り掛ける。

 

「…何故、その件を知っているのですか?」

 

今の私は異端審問にかけられた

地動説論者その物であると言えよう。

生殺与奪の権を完全に委ね、

最後の審判を待っている私に対し、

隼一は穏やかな口調で語る。

 

「…陛下から直接聞いたからですが。」

 

…私は思わず膝から崩れ落ちてしまう。

何て事だ!私の人生はおしまいだ!!!

あぁ…、これから私はお嬢様に

一体どんな顔をすれば良いのだろう…。

そもそも、合わせる顔等もう私には

その一切が必要無いのかもしれない。

…仕方無い。これ以上恥を晒す前に、

頸動脈に思い切りナイフを突き立てよう。

私はナイフを3本ほど取り出す。

 

「…咲夜さん、落ち着いてください。

陛下は責めていませんでしたから。

それと、敢えて言わせて貰います。

貴女は今や陛下の所有物です。

言うなれば、特別な存在と言えます。

貴女が死ねば、陛下を悲しませてしまう。

私としても、絶望に震える陛下等

とても見たくはありません。」

 

…私は、隼一の言葉で少しだけ

冷静さを取り戻す事が出来た。

…確かに、お嬢様をこれ以上

悲しませる何てどうかしていた。

私は隼一に感謝の意を示す。

 

「確かにそうよね。…悪かったわ?

私とした事が、少々取り乱してしまった。」

 

「…本当です。しっかりしてください。

流石の私でも焦ってしまいました。」

 

「…まさか、貴方に説教される何てね。」

 

「偶には、こう言うのも良いでしょう?」

 

「ハッキリ言って願い下げよ…。」

 

私は溜息をつくと、改めて立ち上がる。

膝に力が入らないが、そこは気合だ。根性だ。

…そして、私は恐る恐る聞いてみた。

 

「…ねぇ、一応確認させて頂戴。

貴方は写真を見て無いわよね?」

 

「…陛下はご覧になった様でしたが、

私は陛下に誓って見ていません。

無論被写体は想像する事が出来ますが、

そこについて言及するのは野暮と言う物です。

…それよりも、陛下のご意向を聞いてください。

陛下は貴女に対し、“次は堂々と撮影しなさい”

…と、おっしゃっていましたから。

陛下は貴女の献身に大変感謝していますから、

多少の狼藉や不敬は不問とするそうですよ?

無論、そう言う撮影に関してもそうでしょう。」

 

私は、自分の感情が分からなくなっていた。

顔から火が出そうな程の羞恥心と、

お嬢様に認められた嬉しさが同居している。

…しかし、今の私の精神状態においては

前者がやや優勢となっており、

私は隼一に対して釘を刺しておく事にする。

 

「…そう。報告に感謝するわ。

だけど、これは約束して欲しいの。

今回の件は、墓まで持って行って。

もし広めるなら…分かるわよね?」

 

私が殺気を放ちながら詰めると、

隼一は両手を上げて私に述べる。

 

「安心して下さい。元よりそのつもりです。

…それに、その手の秘密に関しては

どう考えても私の方が弱いですよ。

私と妻とのあれこれと比較すれば、

今回の写真の件何て言うのは

ちょっとした冒険ぐらいの物でしょう。」

 

…ニヤリとしながら述べる隼一。

こんな所でも惚気をかましてくるとは、

一体どれだけ乱れているのやら!!!

私はゴミを見る様な目で隼一を突き刺し

心底呆れている事を伝えながらも、

弱みを握る為に一応聞いてみる。

 

「…参考程度に聞かせて頂戴。

貴方、メアリーと何をしているの?」

 

「最近の妻は感度が上がる魔法の改良に

随分と力を入れている様でして。

涙ぐましい努力の甲斐もあって、

魔法の性能は向上の一途を辿っています。

…いやはや、折角開発された新魔法の

用途が限定的過ぎて泣けてきます。」

 

「なら、さっさと泣きなさいよ。」

 

「…女性の前で、男は泣かないのです。」

 

「嘘ね。”泣けない”の間違いでしょう?」

 

「まぁ、そうとも言います。」

 

一切の迷い無く、アッサリ言い切る隼一。

私はそんな堂々とした隼一を見て、

全てがどうでも良くなる感覚に襲われる。

…取り敢えず、もうここにはいたく無かった。

私は持って来ていた“ソレ”を隼一に渡す。

当然、隼一は少々困惑した顔で問うてきた。

 

「…それは、一体何でしょうか?」

 

私は、単刀直入に説明して見せた。

 

「…バチカンに関する資料よ。

情報の入手経路は二種類。

異端調査局による非公式ルート、

教会省から取り寄せた正規ルート。

…案外、後者の方が大変だったんだから。

異端調査局はあれでいて軍の管轄だけど、

教会省本体の方に関して言えば、

大臣の総主教を動かす必要があるでしょう?

総主教はお嬢様に忠誠心が無いから、

私の“ご丁寧な”説明が必要だったわ。

…取り敢えず、苦労して手に入れたの。

精々優秀な頭脳を活用して、推理する事ね。」

 

「私はホームズか何かなのですか?」

 

「…違うわ。貴方がホームズなら、

私はワトソンになってしまう。

貴方の助手何て、死んでも嫌よ?」

 

「これは、随分手厳しいですね。

…ひとまず、資料は受け取りました。

分かり次第また報告しますよ。」

 

「…宜しく頼むわ。」

 

…その瞬間、私は時間を止めた。

私は絶賛多忙に追われているのだから、

さっさと次の仕事を片付ける必要がある。

 

…だが、今の私に仕事の為の

集中力は残されていない。

 

「…今夜は、潰れるまで行きましょうか。」

 

…私の自棄酒宣言は、

止まった時間の中で

誰にも聞かれず溶けていった。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

「…君は、将来の夢とかはあるかい?」

 

1934年9月12日、放課後の教室にて。

私、ニコラエ・チャウシェスクは

担任の教師からの呼び出しを受けていた。

私に向かって穏やかな表情で語り掛ける担任

(担任は名をマリアン・パラーデと言う。

尤も、これは取るに足らない事実だ。)

に対し、私は確信めいた口調で回答を述べた。

 

「福祉大臣を目指そうと思います。

叶うなら、もっと上に行きたいですね。

少なくとも、楽な生活をしてみたいですよ。

貧しい農民として死にたくはありません。」

 

「成程、福祉大臣か。君なら十分に叶うだろうよ。

…いや、いきなり呼び止めてすまなかった。

君と幾らか話をしてみたいと思っていてね。

私が思うに、君は天才だと思うんだ。

まだ16歳だと言うのに驚かされるよ。」

 

「お褒め頂き光栄です。」

 

私は担任に対し一礼する。

誰だって、天才何て言われれば、

悪い気はしないだろう。

しかし、担任は話を終わらせずに

話の続きを述べてくる。

 

「思った事を率直に述べただけだ。

流石、史上初の特待生として

この高校に来ているだけあるさ。

流石の頭脳を持っていると思うよ。

…だがまぁ、君を褒める様な機会等

幾らでもあるだろうから、

話を本題に移そうじゃ無いか。

…君に、これを渡させて欲しい。」

 

そう言って、担任は私に対して

何故だか手を震わせながら

何かの封筒を差し出してきた。

私がそのまま封筒を受け取ると、

担任は私が質問する前に説明を寄越してくる。

 

「…封蝋を見てみなさい。

聡明な君なら分かる筈だ。」

 

私はそのまま封蝋に目を移す。

そこには、蝙蝠の紋章が施されていた。

…これは、何かの冗談何じゃないか?

悪戯が好きな誰かの悪質な嫌がらせでは?

私をからかおうとしているのだろうか?

蝙蝠の紋章、これは他ならぬスカーレット家の

紋章である事に疑いの余地は無かった。

私はいよいよ、担任に質問する。

 

「…誰かの悪戯では無いのですか?」

 

「それは流石に無いだろうよ。

…今朝、内務大臣が直接私に手渡してきてね。

“君にこの手紙を手渡す様に”と。

あの時は流石に震えたさ。

絵でも表せない程の美女だったよ。

残念な事に、一瞬の邂逅ではあったが。

…兎に角、開けて中を読んでみるんだ。

私だって、未だに信じられないのだから。

これが夢か現実か、君が読めばハッキリする。」

 

そう言って、担任は開封を促してくる。

私は半信半疑ながらも、中身を取り出し

文面に向かって目を通す事にした。

 

 

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ニコラエ・チャウシェスク君

 

突然の連絡となってしまってごめんなさいね。

高校生活は楽しめているのかしら?

私は高校何て行かなかったから、

少しだけ青春が羨ましく感じたりするわね。

 

まぁ、青春の思い出の有無はさておいて。

早速本題について話したいと思うわ。要件は2件。

 

1件目は、紅魔館のクリスマスパーティーへの招待よ。

実は、先日夢の中で貴方の運命を一瞬垣間見たの。

思わず気になったから、詳しく調べてみたわ。

すると、貧しい農家から特待生として高校に通い始めた

天才少年だって言うのだから驚かされてしまったわよ。

そこで、私は貴方に強い興味を持つに至ったの。

是非、貴方と一度話してみたいと思っているわ。

もし参加を希望するのなら、当日この手紙を持参して

是非とも紅魔館まで訪れて頂戴。歓迎するわ?

 

2件目は、国家官僚へのお誘いよ。

貴方程の頭脳があれば、きっと大学を卒業後は

試験を受けて官僚を目指すつもりなのでしょう?

勿論、その先の閣僚も目指しているでしょうね。

そこで、私、レミリア・スカーレットは

ルーマニア女王として貴方の大学卒業後の

官僚試験への合格をこの場で約束するわ。

是非とも、私に貴方の夢を応援させて頂戴。

そして、ルーマニアが世界一の国となる日まで

その頭脳を国家国民の為に使ってみなさい。

貴方に与えられた才能は、

誰かの為に使って初めて意味が出るのだから。

 

さて、ここまで読んでくれてありがとう。

来たるその日を、楽しみにしているわ。

まずは、クリスマスに会いましょう。

 

ルーマニア女王 レミリア・スカーレット

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

…女王からの手紙だと言うから

どんな事が書かれているのか

正直戦々恐々としていたが、

内容は予想していた数百倍は

私に寄り添った手紙であった。

…てっきり、女王と言う存在は

往々にして酷く横柄な存在であって

私達国民を見下していると思っていた。

しかし、レミリアだけは例外なのかもしれない。

私は王制を懐疑的な目で見ていたが、

認識を改めるべきなのかもしれない。

少なくとも、レミリア・スカーレットと言う

吸血鬼女王に対してであれば、

私の運命を委ねられるかもしれない。

不思議と、直感的にそう思える。

 

…私は思考を回した後、

手紙から目を上げ担任を見据える。

 

「…端的に内容を説明させて頂きます。

どうやら、陛下は私を紅魔館で開催される

クリスマスパーティーに招待したいそうです。

また、大学卒業後官僚に登用してくださると。」

 

私がそう告げると、担任は目を丸くする。

 

「…とすれば、君の夢は叶ったも同然だ!

君は大学で首席も狙えるだろう存在だからな。

しかも、君は直々に手紙を貰える程の存在だ。

将来は確実に、閣僚に登用されるだろうな!!!

…本当に、才能に溢れた君が羨ましいよ。」

 

「…そうですね。そうかもしれません。」

 

私は努めて平静を装っていたが、

やはり笑みが零れていたかもしれない。

16年生きてきて、貧しい農家に生まれ、

勉学に励み、しかしまさか女王から

直々に手紙を貰える様になるなんて…。

確かに本気で夢を信じてはいたが、

正直言って叶うとは思っていなかった。

宝くじが当たった様な幸運である。

これは、明日クラスメートに自慢しても

怒られない位の偉業には違い無い!

しかし、私がそんな風に考えている中で、

担任は一転して真剣な表情を浮かべ口を開く。

 

「…しかし、私に一つだけ聞かせて欲しい。

一体、閣僚になって君は何をしたいんだ?」

 

担任の質問に対し、私は即答する。

答えは決まり切っていた。

 

「貧しい人々を救済したいです。

この国からあらゆる貧困を一掃し、

誰もが満たされる地上の楽園を、

幻想の様な理想郷を作りたいです。

…その為に、私は闘い続けます。」

 

これは、私の夢だ。…いや、違う。

これは私の目標だ。必ず実現する。

自分に出来無い筈が無いのだ!

…そして、私の想いは、きっと担任にも届く。

 

「…そうか。確かに、君なら出来る筈だ。

頼む、いつか私にもそんな世界を見せてくれ!

幻想の様な理想郷を作ってみるんだ。

…何、信じるだけだ。この国には魔法がある。

そうである以上、信じていれば必ず叶うさ。」

 

担任は、満面の笑みを浮かべて見せた。

眩い笑顔は、私の将来を示しているのだろう。

 

…そしてこの瞬間、ゆっくりと、だが確実に

私の運命が偉大な一歩を歩み始めた。

必ずや、私は成し遂げて見せる。

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

「あ、パチュリー様、こっちです!」

 

1934年9月20日、私、パチュリー・ノーレッジは

空中庭園…と巷では呼ばれている魔法植物研究施設へ

久し振りの飛行を満喫しながら向かっていた。

…歩くよりはマシだが、運動不足の私には応えるな。

私は溜息をつきながら、随伴の小悪魔に言ってやる。

 

「…長距離を飛ぶのは単純に疲れるし、

下着が丸見えになるから嫌いよ。

全く、何故レミィはこんな僻地に

研究施設を作ろうとしたのかしら。

大体、空中って言う割には

単に標高が高いだけに過ぎないし。」

 

空中庭園が存在するカライマン山の山頂は

その標高実に2,384mである。

そりゃ、全体的に平らな欧州では

高いと言える部類には入るのだろうが、

バベルの塔の頂上部を見てしまうと

正直感動する事は難しい気がする。

しかし、私の嘆きを前にして、

小悪魔はニヤニヤしながら口を開く。

 

「またまた~。パチュリー様の下着って、

大体白じゃありませんでしたっけ?

それに、パチュリー様には

下着を見せる相手もいませんし。」

 

…こいつ、また折檻されたいのか?

いや、現状を踏まえればそれは不可能と言えるか。

図書館に加え空中庭園の管理人も任された

現在の小悪魔を折檻するとなれば、

困るのは仕事が無駄に増やされる私である。

私はジト目で小悪魔を見つめ、吐き捨てる。

 

「…私はね、貴女みたいな淫魔より

真っ当な貞操観念を持っているの。

四六時中サバトに行ったりしないのよ。」

 

「え!流石にそれは酷く無いですか!?

私は別に淫魔じゃありませんよ!

サバト何てどこにあるか知りませんから!

それに、まだそう言う事は一度たりとも

経験した事無いんですから!!!

何なら私が持っている性欲って、

年がら年中盛ってそうなメアリーちゃんより

よっぽど少ないんじゃ無いですか?

魔女は性欲強いって言いますし!」

 

サバト。まぁ、要するに“そう言う場所”の事だ。

小悪魔は必死に弁明するが、疑わしい物だ。

…まぁ、メアリーは確かに例外だろうが。

あの子はちょっとおかしいから仕方無い。

無論、“良い意味で”ちょっとおかしいのだが。

取り敢えず、一般化されては溜まらないと

私は表明しておく事にした。

 

「それはあくまでメアリー個人の話。

少なくとも、私に限ればそれは違うの。

私は誰かに見せる為に下着を身に着ける何て

愚かな行為には興味が無い魔女なのよ。」

 

私は再び大きな溜息をついた。

他方、小悪魔は顎に手を当てて、

どこか神妙な面持ちで述べてくる。

 

「…分かりました。

では、今年のクリスマス、

楽しみにしていてください。」

 

「下着なら間に合っているわ?」

 

「…そうですね、色は黒、レースがついた

紐がちょっと細いサイズの奴にしましょう。」

 

「…絶対に履かないわよ?」

 

「いえ、絶対に履かせますから!」

 

…はぁ。本当に何なのだろう?

私は何でこんな話をしているんだ。

私は少し先の方に空中庭園と思しき

全面ガラス張りの半球状のドームを確認すると、

一応小悪魔に助言をしてやる事にした。

 

「…どうしてもって言うのなら、

色は青にしなさい。そうしてくれたら、

私からメアリーに渡しておくから。」

 

私はそう言って小悪魔を見る。

…すると、小悪魔は何故だか

キョトンとした表情で私を見つめてきた。

 

「…何よ。あの子なら需要があるって

話をしてあげただけなのだけれど?」

 

「いや、メアリーちゃんには

既に何着か送りましたよ?」

 

「…お礼は言われたかしら?」

 

「勿論!隼一さんからでしたけどね!」

 

…私は小悪魔から目を逸らす。

聞かなければ良かったな、絶対。

 

とは言え、後悔したってしょうがない。

有意義な事を考えれば良い話である。

私は眼前に迫る地面に着地すると、

ペガサスの飼料に使えそうな

研究用の魔法植物について

思考のリソースを割く事にした。

さて、上手く育っていると良いけど。




ニコラエ・チャウシェスク…恐らく日本で2番目に有名なルーマニア人。もしかしたら1番かもしれない。余りに有名なので、史実の彼についての説明は割愛する。この作品における彼は貧しい農民出身である事こそ史実通りだが、天才的な頭脳(天才的とは言ったが、彼はあくまで秀才タイプである。)を持っており社会保障政策の恩恵もあって教育を受けられていると言う設定になっている。(史実でも学習意欲が旺盛かつ記憶力もかなり高かったそうで、天才とは言わずとも頭は良いと思う。尚、史実における治世の後半はお察し。)作中ではレミリア・スカーレットにこの段階から見出されており、将来有望。

作中ルーマニアにおけるかなりざっくりとした地図…今更ながら、ルーマニアの都市の距離感が分かる様に地図を作ってみたので画像を添付しておくので興味がある方はクオリティーは低いが是非閲覧願いたい。更新が定期的に入る可能性も高い。
【挿絵表示】
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