紅魔戦記~カリスマの戯れ~   作:インスタントブルー

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少しずつ、史実が改変され始めます。


紳士と淑女の盟約

1931年9月20日

 

私は、その日も新聞を確認していた。

女王と言う立場にいるのであれば

情報くらい咲夜に取らせても良いのだが、

彼女は私の思い付きで仕事が激増しているのだ。

主人として、従者の健康に気を配る事は義務であり、

普段の様に何でも彼女に丸投げしたりはしない。

 

…しかし、やはり1人と言うのは寂しい。

そこで、私は最近朝食後執務室では無く

図書館で新聞を読む機会も増えていた。

 

「…レミィは寂しがりやね。」

 

「参謀をこき使ってるだけよ。」

 

こうやって軽口を叩き合っているのは、

唯一無二の親友にして大図書館の司書を務める

パチュリー・ノーレッジその人である。

最近は研究に時間を使う事が増えた為に

こう言った時間にしか私とは話していない。

実に寂しくなったと思うが仕方の無い事だ。

それにしても、まさか私より

随分と速く飛ぶ戦闘機の開発に

成功するだ何て全く思ってはいなかったが。

私は新聞へと視線を落とす。

 

「中国軍が南満州鉄道を爆破…か。

相変わらずきな臭いニュースばかり。

人間の野蛮さってのがよく分かるわ?」

 

「クーデターで王党派を虐殺、

利用した鉄衛団も影で大粛清。

挙句の果てに、血液をワインへ。

こんな所業をしておいて、

人間を野蛮とよく言えるわね。」

 

痛い所を突いてくるパチュリー。

 

「…あら、パチェは人間の肩を持つの?」

 

「…どっちもどっちって言いたかっただけよ。」

 

「どちらに対しても非難するって事かしら?」

 

「人間も吸血鬼も、残酷な生き物でしょう。

別に、普遍的な行動の結果に過ぎないわ?」

 

私の追及をのらりくらりといなすパチュリー。

私は追及を続けたいとも思ったが、

そもそもこの議論は私にとって不利だ。

負けが見える勝負程馬鹿らしい事も無いので

私は議論を一旦放棄する事にする。

 

 

「…それにしても、このニュースは

かなり不吉な運命を感じるのよね。」

 

「そうなの?レミィの能力って

いっつも曖昧な物だから私には分からないわ。

結局、極東の話に過ぎないでしょう?

それが不吉なニュースになるのかしら。」

 

「あら、パチェは分からないの?

極東って案外大切な場所なのよ。」

 

私はパチュリーに説明する。

 

「私達の仮想敵国はソ連でしょう?

そうであるならば、私達はソ連と

距離を取っている国家との

友好関係の構築が必要不可欠よ。

だけど、現状ソ連と直接国境を接する列強国は

極東の大日本帝国ただ一国じゃないの。

しかも、あの国も仮想敵国は

他ならぬソ連であると聞いてるわ。

そんな中で満州の鉄道が爆破される事は

望ましい事とは決して言えないわね。」

 

「…言い分は分かるけど、大日本帝国に

ソ連軍に対抗する様な陸軍何てのは

存在していないのだから関係無いわ?

海軍は世界3位でも、陸軍は貧相な国よ。」

 

パチュリーはこき下ろしているが、

私は大日本帝国陸軍も意外と強いと思う。

1904年に始まったあの戦争で

最盛期の大英帝国と覇を争ったロシア帝国に

当時極東の小国だった日本が

勝利を収めたと言う事実は

欧州でも大きく報じられた物だ。

確かに私は正確な実力を知らないが、

少なくとも、大日本帝国陸軍は

ルーマニア陸軍よりは確実に強い筈だ。

 

「まぁ、大日本帝国陸軍の実力は

実際に見ない事には分からない訳だけど、

ソ連はロシア帝国の時代から

二正面作戦は徹底的に避ける国よ?

抑止力としては機能し得るでしょう。

私の外交政策の長期目標としては、

大日本帝国と大英帝国の双方と

軍事同盟を締結する事なのよ。

私達吸血鬼は種族的に海が苦手で、

ルーマニア海軍も脆弱な物だわ。

そこで、海軍力がある同盟国を

こちらの味方に引き込むの。」

 

つい最近固めた私の目標である。

特に、日本に対しては石油を餌に

同盟関係を構築すれば容易い筈だ。

 

「…結局、国際連盟はハリボテなのね。」

 

私が披露した渾身の外交プランを聞き、

国際連盟を皮肉ったパチュリー。

 

「事実ハリボテだから仕方無いわ?

無いよりは平和になるでしょうけど、

まともに機能する筈が無いのよ。」

 

「それでも、平和になりたいが為に

人類は知恵を絞って進歩してるわね。

そこでのんびり新聞にかじりつく

どこぞの吸血鬼様とは違って。」

 

「…相変わらず皮肉屋なのね。

いつからこんな事になったのかしら。」

 

私は親友の変わりようを嘆く。

 

「いつからも何も、元からよ。

ただ、距離が近くなったから

本音が出やすくなっただけ。」

 

「…難儀な物ね。」

 

本当に難儀な物だ。困ってしまう。

何故私の親友は口がこうも悪いのか。

 

「…それにしても、もし大日本帝国を

同盟に引き込みたいと言うなら、

何処かで首脳会談を行うべきね。

見ず知らずの吸血鬼と同盟何て

結びたい人間がいる訳無いのよ。」

 

パチュリーは本から目を上げ私に提案する。

しかし、私としては乗り気では無いのだ。

 

「…パチェ、貴女忘れちゃったの?

私は吸血鬼で船旅は大嫌いよ。

かの国は島国で陸路では行けないわ。

どうやって首脳会談をするのよ。

ルーマニアに大日本帝国の首脳を

招ければ良い訳だけれども、

それが一体可能だと思うかしら?」

 

「…面倒だから咲夜を派遣なさい。

あの子外務大臣やってるんでしょう?

国連のあれこれも丸投げしてるし

多分上手くやってくれるわよ。」

 

また咲夜の仕事が増えるのか。

なまじ替えが利かない有能さだけに

倒れたりしたら大変な事になるから

最近は仕事は抑制していたが…。

同盟関係を構築する事は重要案件だ。

咲夜に頼る必要がありそうだ。

 

「…そうね。取り敢えず今日は、

日英の大使館に連絡を入れましょうか。

安全保障に関わる二国間協議をすると。

見返りに何を要求されるかだけが

凄く不安な材料になってきそうね。」

 

どうにか上手くやって欲しい。

それだけが、私の願いだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

1931年9月25日

 

「お嬢様、それでは行って参ります。」

 

「えぇ、気をつけてね?」

 

この日、私十六夜咲夜はお嬢様の命を受けて

ロンドン行きの命令を受けていた。

曰く、日英と同盟を結びたいのだとか。

当初は東京へ向かう命令だったのだが

南満州鉄道の爆破事件の関係で

移動は長い船旅が見込まれたので、

先にロンドンへ赴く事になった。

ブカレストからロンドンまでの

長距離での航空機での移動。

先方に我が国が誇る最新鋭機が

向かう旨を伝えた事は驚かれたが、

実際これが1番安全であるし、

我が国の力のアピールともなり

交渉が円滑に進む事だろう。

 

 

 

 

 

「…それゃじゃ、宜しくね?」

 

私は後部に設置した座席に座り、

操縦担当のアレクサンドルに声を掛ける。

 

「…ロンドンまで、2時間と少しだと思います。

本当に、夢の様な飛行機が出来た物ですよ。

その気になれば、日帰り往復も可能ですからね。」

 

超音速戦闘機スカーレット・デビルの性能には

それはもう凄まじい物があると言えるだろう。

最高速度1500㎞、航続距離3000㎞だ。

無論、航続距離は往復の数字なので

片道でも構わないならば6000㎞に達する。

まぁ、そもそもこの飛行機の動力が

賢者の石に依存している関係上、

賢者の石さえ持っていれば航続距離は

理論上無限に達する訳であるが。

 

それにしても、乗り心地が快適だ。

この戦闘機は本来1人乗りで

私が乗り込むスペース等無いのだが、

私は空間拡張が可能であると言う事で

後ろに勝手に座席を増設してしまった。

無論、外からは何も分からない様な能力なので

戦闘機の性能には何一つ影響しない。

機体に乗り込む前、アレクサンドルに

時間停止と合わせてこの能力を話すと

大層羨ましいと言われた物であるが、

仕事量の多さを告げると彼は苦笑していた。

猛訓練に励む若きパイロットにとっては、

激務からの解放は能力より尊い物であるらしい。

 

「これが初めての海外飛行でしょう?

気分としてはどうかしら?」

 

私がそう聞くと、アレクサンドルは

何処か遠い目をしながら述べた。

 

「…それはまぁ、不思議な気分ですね。

願わくば、この戦闘機が今みたいに

平和な方法で使われる事を祈るばかりですよ。」

 

平和…か。私も、切にそう思う。

 

「そうね。まぁ、出発しましょうか。

空港は終日開けてくれるらしいけど、

出来る限り速く行きましょうか。」

 

アレクサンドルは私の言葉に頷くと、

ルーマニアの粋を集めたエンジンをかけた。

 

 

 

 

 

アレクサンドルが予告した通り、

離陸から2時間と少し経った頃。

ロンドン・ヒースロー空港に

私達は遂に降り立った。

直後、男が手を差し出してくる。

 

「…よくぞいらっしゃいました。

私はルーファス・アイザックス。

大英帝国の外務大臣を務めています。」

 

「大臣自らの歓迎、お心遣いに感謝致します。

私はルーマニアで外務大臣を務めております、

十六夜咲夜と申す物です。宜しくお願い致します。」

 

私は彼の手を取り頭を下げる。

すると、早速質問が飛んできた。

 

「…それにしても、我が国英国では

貴国に対する関心が高まっていたのですよ。

曰く、見目麗しい吸血鬼が女王に即位し、

女王陛下の従者たるメイドは人ならざる力を使うと。

実際にお会いさせて頂いた我が国の者も

その様な事を申していたのですが、

これは果たして真実であるのでしょうか?」

 

”お会いさせて頂いた我が国の者”とは

十中八九サー・ウィンストン・チャーチルの事だろう。

今は一介の議員とは言え、彼は大臣経験者であり

あのお嬢様が高く評価していた人物でもあるのだ。

実際、私達の存在についてもあれこれ語ったのだろう。

…良い機会だ。ここは交渉に使わせて貰おう。

 

「恐らく貴公はサー・ウィンストン・チャーチル氏の

発言の事について言及していらっしゃるのでしょうが、

彼の発言は事実と考えて頂いて構いません。」

 

ルーファスは思わず目を丸くする。

 

「それは…また信じ難い話ですな。

一先ず、外務省まで向かいましょう。

車を回してありますから。」

 

「ありがとうございます。」

 

私は車へと乗り込む。

格式高い黒塗りの車両だった。

 

 

 

 

 

 

「…それにしても、貴国では

女性の大臣は珍しく無いのですな。」

 

移動中、ルーファスが話しかけてきた。

 

「我が国で要職に就いている者は

海軍大臣を除いてお嬢様の住む館の住人何です。

お嬢様は女性なので、使用人は皆女性、

関わる者も大半が女性ですから、

どうしても女性が多くなります。

海軍大臣もお嬢様の友人の友人で、女性です。

男性の登用も考えてはいるのですが、

暫くの間はこの体制だと思います。

如何せん、人材不足ですので。」

 

女性の社会進出が進んだと言っても、

女性の指導者は極めて珍しい。

精々王政や帝政を維持する国で

男子の後継者がいない場合の

特例的、限定的な措置として、

女王や女帝と言った存在が

示唆される程度の物である。

まして、女性閣僚ともなれば

その数は極めて減少する。

女性の政治参加ですら

時代の先端を行くと言うのに、

国家の要職に女性が就く等とは

誰も考えてはいないのだろう。

更に言えば、ルーマニア王国は

主要ポストが女性に独占されている。

私は何の違和感も持っていないが、

客観的に見てこの体制は

完全に異端であると言えよう。

 

「…我が国では考えられないですな。

やはり、革命の際の混乱で

男性が血を流したからですかな?」

 

「勿論、要因にはそれもありますね。」

 

男性を一番葬ったのは私だ。

お陰で仕事が増えた訳だから

もう少し残しておくべきだったかもしれない。

まぁ、あれはお嬢様の指示だったし

この場で大っぴらに言う事でも無いけど。

 

「…十六夜女史は美しいお方だ。

良き伴侶には恵まれましたか?」

 

ルーファスは何でも無い事を聞く。

やはり、政治の社会は男性社会。

外交の場ではよくこうした事を

一々聞かれる事が多いのだ。

最初は不快になった物だが、

今はもう完全に慣れてしまった。

 

「…昔から、館で育った物で。

余り男性の事を知らないのです。

私に釣り合うお方がいらっしゃれば、

是非とも考えさせて頂きたいですね。」

 

 

私がそう言うと、ルーファスは笑う。

 

「女史に釣り合う男等、現れないでしょうな。」

 

本当だよ。私だってそう思う。

その後、幾らか他愛のない会話を交わして

車は外務省へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「…そこの席へとおかけください。

改めて、よくぞいらっしゃっいました。

本日は、有意義な会談にしましょう。」

 

ルーファスは気品のある小部屋に私を招き入れた。

まぁ、二者会談であるし小部屋で事足りるだろう。

私はお嬢様から頂いた委任状を彼に手渡して、

早速本題の交渉へと取り掛かった。

 

「単刀直入に申し上げます。本日参ったのは、

貴国との軍事同盟を締結する為です。

その為の詳細な条件につきまして、

本日は議論をさせて頂きたいと考えています。」

 

「…大使からもその辺りは伺っています。

我が国でも、サー・ウィンストン・チャーチル氏を筆頭に

超党派で貴国との関係強化を要求する活動があってですな。

条件次第では、受け入れる事も検討させて頂きます。」

 

分かってはいた事だが、やはりハードルは高いな。

相応のカードをこちらも切る必要があるだろう。

 

「それでは、条件面のお話に入りましょう。

まず、同盟を締結して頂けた暁には

貴国に我が国が開発させて頂いた

最新鋭戦闘機の設計図を公開させて頂きます。

最速1500㎞、航続距離3000㎞、その他の項目も

貴国の航空機のどれよりも高い性能を

誇っていると考えて頂いて良いでしょう。」

 

…これは簡単に切れるカードである。

何せ、重要な技術を魔法に依存しているのだ。

英国の工業力での複製が不可能だと

分かり切っているから差し出せるのである。

 

「…最新鋭戦闘機とは、

乗りつけて来たと言うあれかね?」

 

「えぇ。我が国の軍事機密故に、

現在は中をお見せ出来ませんが…。

同盟締結が叶いましたら公開しましょう。」

 

ルーファスは考えこむ。

世界最新鋭の戦闘機の設計図等

欲しく無い訳が無いだろう。

工業力で劣るルーマニアに出来るのだ。

設計図さえ手に入ったならば、

英国に複製出来無い訳が無い。

 

「…もう少し何か無いかね?」

 

あくまで主導権は英国にあるのだ。

なるべく自国を高く売る為に、

ルーファスは条件を上げにかかる。

 

「でしたら、我が国の石油資源の

年間3%を無償で貴国に提供しましょう。

この2つが、我が国が提示する条件です。

我が国としては、この2条件を持って

同盟関係の構築をお願いしたく存じます。

具体的な同盟の条件としては、

片方が他国に宣戦を布告された場合、

又は片方が他国に宣戦を布告した場合に、

もう片方の国家も同様に宣戦布告をする事です。

締結国へ陸、海、空軍を派遣する事を

条件として明記して頂きたいと思います。」

 

「…貴国は、他国に宣戦を布告する

具体的な予定が入っているのかね?」

 

ルーファスは怪訝な顔をする。

 

「…ルーマニア軍は脆弱です。

又、拡張主義の代償についても

心得てはいるつもりです。

ただ、ソ連に宣戦されるのではと

我が女王を懸念をしております。」

 

「…つまり、この軍事同盟は

実質的には我が国が貴国を

ソ連の脅威から守る為に

必要とされているのだな?」

 

「そうなります。当然の事ながら、

貴国の戦争の際にも私達は貴国に

陸軍、海軍、空軍を派遣します。

悪い条件では無いと思います。」

 

「…すまない。5分間程頂きたい。」

 

ルーファスはそう言うと、

考えを纏め始めた。

 

 

 

 

 

 

「…分かった。私は賛成させて貰う。

我が国としても貴国の航空技術、

そして石油利権は欲しい物だ。

しかも、同盟の参戦義務は相互。

悪い話では確かに無いな。

マクドナルド首相にも話は通す。

早ければ、明後日にも良い知らせを

貴国に齎す事が出来ると約束しよう。

さて、それでは細かい条文について

詰めさせて貰おうじゃ無いか。

大枠は、先程の2条件と実践的な

相互参戦義務のある軍事同盟で

構わないと考えて良いかね?」

 

「はい、構いません。」

 

 

その後の会議では、具体的な条文について

英語とルーマニア語で明文化した。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…もうルーマニアまで帰ってしまうのですな。

女史との会談は有意義な物だっただけに、

もう少しばかり話込みたかった物です。

それと、これは我が国で一番の紅茶の茶葉です。

貴国の陛下が紅茶好きと聞きましてな。」

 

「まぁ、ありがとうございます!」

 

別れのロンドン・ヒースロー空港にて、

私はルーファスから紅茶を頂いていた。

事実お嬢様は紅茶がお好きなので有り難い。

ルーファスは話を続ける。

 

「同盟が無事に成立しましたら

貴国の大使館に連絡を入れますので、

ご確認の程を宜しくお願い致します。

それでは、ルーマニアでもお元気で。」

 

礼儀正しく丁寧に見送るルーファス。

その姿は少しだけ、カッコ良く見えた。

 

「貴国と友好関係を構築する事が、

お嬢様のお願いする所でもあります。

近い内にもう一度貴国の土を

踏める事を祈っております。

本日はありがとうございました。

それと、最後に是非。紅茶の返礼です。」

 

私はその瞬間時間を止め

アリスが作成した手のひらサイズの

小型人形をルーファスのポケットに仕込む。

そして、時間停止を解除した。

 

「…?」

 

「私が離陸した後で良いですから、

右ポケットをご覧ください。

それでは、またいつの日か。」

 

私が拡張された後部座席に乗り込むと、

安全な距離を確認したアレクサンドルが

少しづつエンジン出力を上げて行き、

遂に戦闘機はロンドンを離陸するに至る。

ここからブカレストまで、二時間と少し。

疲れ切った私は機内で目をつぶり、

ロンドンの夜景を楽しみながらも

夢の世界へと落ちていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

彼女を見送った私の右ポケットには、

可愛らしい人形が入っていた。

何故人形が出てきたか、私には分かる。

彼女は、本当に時間を止めるのだ。

そして、止まった時間を動くのだ。

 

…頭では分かっていても、

本能的に拒否する自分がいる。

信じ難い外務大臣の姿は、

何処か幻想に存在する者の様に思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




満州事変(柳条湖事件)…完全に私事ですが、曾祖父が満鉄の職員として勤務していたんですよね。当時報告した資料が未だにインターネット上に残っていた事には驚きました。それはそうとして、この事件は日本の大きな分岐点であったと思います。この時の処理を誤った事が、後々の悲劇の全ての始まりだった様に思いますね。

親日家レミリア…と言うよりは、対ソ連を意図しての外交姿勢。自国の脆弱な海軍力を補填する狙いもある。勿論、それを差し引いても日本に対する印象は悪くない。

船旅が大嫌いなレミリア…これは流石に仕方無い。

最新鋭戦闘機…戦争をしていないのにまさかの活躍。航続距離や速度面はシンプルに旅客機としても有用。但し、咲夜の様に空間拡張出来る人間しか客席に座る事は不可能である為にレミリアは乗れない。

1931年の英国情勢…はっきり言ってかなりの不安定さ。マクドナルド挙国一致内閣は脆弱な体制だった。

ロンドン・ヒースロー空港…1929年に、「グレート・ウェスタン・エアロドローム」と言う飛行場が出来た事がこの空港の始まり。この飛行場はフェアリー・アビエーションの私有で、航空機の組み立ておよびテストに使用された。この物語では便宜上現代でも馴染み深いこちらの名称の方を採用させて頂いた。この時期の滑走路は短い物だったが、最新鋭戦闘機には関係無い。

ルーファス・アイザックス…1931年9月の外務大臣。在任期間はこの年の8月から11月までに過ぎない。果物屋のユダヤ人の息子で、叩き上げの人らしい。

セクハラに遭う咲夜…仕方無い。時代が時代なのだから。

結婚しない咲夜…彼女は男を知らない。多分、永遠に。

ルーマニアの石油利権…開発中の新兵器の殆どは動力源が魔力になる予定なので、石油の優先度が下がってきている。

同盟に乗り気な英国…条件は悪く無いし、英国の方としてもソ連は仮想敵国扱い。

ラムゼイ・マクドナルド…トップダウン型の強烈な政治を展開した英国首相。カリスマ性があり劇場型政治を行った人間とも言わている。成果とは対照的に意外と評価は高そうで少しビックリ。

先送りされる満州事変…学校の授業だと1時間で終わりますが、実際は1年位かけてあれこれやってます。
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