ありふれた|女主人公《ヒロイン》だけど、君が好き。 作:一文字 更新
ハジメとユイのプレートを受け取ったメルド団長はそのホクホク顔に疑問符を浮かべた。ふむ…いや?ふむぅ…?となにやら悩ましげに声をあげていたが、考えを整理し終えたのかガシガシと頭を掻きプレートから目線を戻した。
『うむ。錬成師はアレだ。戦闘職ではないが…我々は非常に世話になっているな。射手は…わからん。』
小声ですまんな。と言いながらプレートを返す団長。
困ったように眉を下げたユイは、隣に立つハジメを見る。やりようはあるさ。そう呟いたハジメの目には熱いものが宿っていた。
訓練開始から二週間目。
「1…2…3…4…成功」
『はぁはぁ…で、きた!』
「うん!十本ともいい出来だ」
石で出来た矢の出来を確認する西北結。作ったのは勿論ハジメだ。二週間前、一本の矢の作成に一時間程度必要としていたハジメだったが今ではその時間を5秒にまで縮めていた。ハジメ曰く、テンプレートとコピーペーストとのこと。
魔力が回復次第この訓練を繰り返したハジメ。錬成の練度も以前とは比べものにならないほど上達している。現に掌の上で液状になった石を操り、見事なガン=カタを披露してみせる。
『凄い!ハジメくん凄いよ!雫ちゃん今の見た!?』
『そうね。ハジメくんの趣味全開といったところかしら』
詰め寄ってきた白崎香織とからかい顔の八重樫雫の言葉に顔を真っ赤にしたハジメ。いくらか耐性ができても女の子に趣味を覗かれたのは恥ずかしかったのだろう。
『なんだ南雲。珍しく照れてやがんな?』
『ふ、ぁ…眠い』
ニヤニヤと笑みを浮かべて近づいてきたのは坂上龍太郎。最近ではよくハジメに話しかけてくる。眠そうに目を擦っているのは天之河光輝。トータスに来てから寝付きが悪いらしい。
『体温まってんだろ?一本付き合え』
また始まった。…訓練が始まって一週間が経った頃から龍太郎がハジメを自主練に誘うようになった。ハジメもハジメで嬉しそうに誘いに乗るのだ。
龍太郎が放った拳を錬成した盾で受ける。ズドンと重たい一撃が訓練場に響く…かと思われたが実際に響いたのは想像よりも幾分軽い音だった。どうやら一部を流体化して受け流したらしい。ついでとばかりにその腕を拘束したがこちらは力んだ龍太郎に破壊された。
『おォ!結構様になってきたなァ南雲!』
『坂上くんにそう言ってもらえると嬉しいよ』
ニカっと笑う龍太郎にハジメは照れくさそうに笑った。
訓練の終わり際、メルド団長から発表されたのは明日からの実践訓練。"オルクス大迷宮"への遠征だった…。