ありふれた|女主人公《ヒロイン》だけど、君が好き。   作:一文字 更新

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第6話

 

 

 渦巻く火の柱が無数の骸骨剣士…トラウムソルジャーを包み瞬く間に灰に変える。巻き込まれなかった残党を撃ち抜きながら、ユイは必死にハジメの影を探す。

 

 そして見つけた。

 

 ベヒモスと呼ばれた魔物を拘束するハジメの錬成を。

 

 

 

 なんで、なんで…なんでッ!

 

 メルド団長は、天之河光輝は、ハジメを置いて撤退しているんだ…?

 

「あ、ア、あぁァ"あ"ッ!」

 

 怒りに身を任せ、矢を放つがベヒモスの皮膚を貫くことは出来ない。何処か遠くから八重樫雫とメルド・ロギンスが叫んでいる。

 

『ユイ!冷静になって!くッ、己を律しろッ!西北結!』

『馬鹿者!そんなんじゃ坊主を助けられんぞッ!』

 

 助け、?

 

 ハジメが死ぬ。嫌だ。ハジメが死ぬ、嫌だ。駄目だ。ハジメ、死んでは駄目だ!

 

 

 ハジメ…生きて帰ろう。

 

『グガァァァアッ!!!』

 

 右目。

 

 

『グウ!?』

 

 左目。

 

 もう一度。

 

 もう一度。

 

 もう一度。

 

 もう一度。

 

 

 もう、矢が。

 

 

 

『詠唱完了、そのまま待機!団長、いつでも打てます!』

『よしお前達!坊主を。南雲ハジメを助けるぞッ!』

 

 ハジメが動き出し、ベヒモスの拘束が解けると共にメルド・ロギンスが指令を飛ばす。夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。

 

 その時、明らかにハジメの方向へ向かう火球があった。

 

 なんで、どうして?わざと?偶然?誰?誰、誰??

 

 粘っこくドス黒い感情がゴボゴボと音を立てて心の器に注がれる。

 

「檜山大介ェっ!お前ッ!自分が何をしたか、理解しているのかァッ!!」

『…ぉ、俺はやってない!ヤバ…耐えられねぇッ!キ、キ』

『ギッ、ギッヒャヒャヒャッ!そうだよ。俺がやってやったよ!ずぅっと鬱陶しかったんだ!』

『キィ、キヒヒヒ。俺は、俺は…そう。そうだ、これは正当な権利なんだ。俺は正しいんだァ!』

『お前という奴はァァア!!!』

 

 メルド団長の怒号を最後に耳障りな雑音は沈黙する。

 

 支給されていた短剣を番え、放つ。湧き上がる確信。

 

 当たる。

 

 

 

 予定調和。短剣は火球の軌道にまるで吸い込まれるように流れていき、核を撃ち抜いた。

 

 まだだ。まだ!

 

 

 

 なんで…?

 

 詠唱が止んでいる。

 

「ぁ…」

 

 怖いのか。怖いのか、ハジメに当たるのが。

 

 考えることはなかった。

 

「ハジメッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、走る。人とはこんなにも疾いものだっただろうか。

 

 目が潰れていてもあの巨体だ。突っ込まれただけで終わる。

 

 ベヒモスの頭部が赤く赤く染まっていく。

 

「ぁあ、うわぁぁあ!」

 

 叫んでいたのか、僕は。まったく格好が付かないな。

 

 

 崩壊していく橋の上でハジメの腕を掴む。

 

 ごめん。

 

 

 帰れないや。

 

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