休日。
一級呪術師にももちろん休日という者が存在しており、今日は任務も何もない日。
前回行った精神病院、廃学校の任務の報酬が入った。割と高額……っていうか見たこともない金額が手渡しで渡されたのだった。
伊地知さんが銀行口座を作っておけばそちらに振り込むとも言われたので、とりあえず言われるがままに開設し、さっそく手に入れたお金でちょっと豪遊しようと神奈川まで足を運ぶ。
「萌え萌えにゃん♡」
やってきたのは猫耳メイドカフェ”おにゃんこぽん”というメイド喫茶。可愛い女の子がメイドの格好をして猫耳を付けているという、まさにかわいさの権化。
私もキツネ耳つけた時可愛いって思ってるからな。猫耳なんかもっとメジャーで、もっと可愛いに決まっているんだよ。
「ご主人様ぁ。ご注文は何にするにゃん?」
「とりあえずにゃんにゃんむらいすとにゃんこそーだで」
「かしこまりにゃーん!」
可愛い。
思わず鼻の下を伸ばしていると、また誰かひとりオタクがこの店にやってきた。よくある典型的なオタクファッション。チェックがらのシャツにダメージを受けてるジーンズ。
小太りであまり清潔感がない見た目をしていた。ちょっと近寄りたくない……。
「でへぇ」
そんな男からすぐ目を逸らし、働いている猫耳メイドを眺めていた。
可愛い。
「お待たせにゃー。にゃんにゃんむらいすとにゃんこそーだでーす!」
「あれ、さっきの人と代わったんです?」
「さっきの子は気まぐれだから帰っちゃったにゃん。にゃんじゃ不満かにゃ?」
「そ、そんなことないですっ!」
「よかったにゃあ。にゃ、美味しくにゃる魔法、いるかにゃ?」
「いります!」
「にゃはは。じゃ、ご一緒にー? にゃんにゃんもえー!」
「にゃんにゃんもえー!」
オムライスに魔法をかけ、私はオムライスを口へと運ぶ。
普通のオムライスだけどさっきの魔法で美味しくなってる気がする。思い込みって大事だなあって思っていると店員さんがそそくさと駆け寄ってきた。
「にゃん……申し訳ないにゃん。実はこの後この家で少し飼い主が何か作るみたいにゃん。食べ終わったら営業終了しちゃうにゃん」
「あ、そうですか? じゃ、急いで食べますね」
「い、急がなくていいにゃん!」
がつがつと食べ進め、完食しようとすると、お店の入り口に見知った顔が現れたのだった。
「……何してるんだお前ここで」
「おろ、伏黒くんに虎杖くん。奇遇だね」
メイド喫茶には場違いな伏黒くんがやってきていた。
「伏黒くんもこういう趣味あったんだねぇ。残念だけど営業終了するみたいだよ。うぷっ。ちょっと水……喉に詰まった……」
「ちげえよ。依頼だ」
「依頼ぃ?」
どういうことかちょっと待って聞いてみる。
「専門の方でしたのね。申し訳ございません!」
「いいんですよー。で、どんな被害を?」
「この子なんですが」
と、現れたのは私を最初に接客してくれた女の子だった。
頭にはぴょこぴょこと動く猫耳がついている。
「おー、猫耳。尻尾?」
「はい。ある日突然生えてきまして」
「この姿じゃ外歩けません……」
「ってな具合で困ってまして」
どうやら呪いの被害者らしい。
「……稲荷」
「ん、なぁに?」
「こいつの術式か?」
「いや、違うんじゃない? 私は自分で体を作り変えたけどこの子はそういう感じしないし」
「じゃ、呪詛師の仕業だな。犯人に心当たりはあるんすか?」
「一応……。この方と話してから生えてきたっていうんです」
と、出してきたのは防犯カメラのキャプチャ。
映っていたのは私も見た不衛生な男のオタク。
「その人と話してからこうなったんです……。きもくて、笑い方もきもくて……」
「まぁ……容疑者の一人にはなるだろうな間違いなく。残穢も少し感じるな」
「猫耳生やす術式て!」
「最初はすぐ消えてたんですけど、いつの間にかこれから戻らなくなって……」
「あー、定着しちゃったんだろ。多分、その人の術式の本質って魂にそういう干渉する術式なんじゃないかな」
「魂に……」
虎杖くんがなんか複雑そうな顔をしていた。
「まぁ、あれよりかはマシな術式か。とりあえずその男を調べよう」
「余罪もあるかもしれないな」
「……あの、その耳と尻尾って」
「ん? あー、私も似たようなもんっていうか、自分の力ですよ。私はこのなりで歩けてるのでまぁ、心配無用です」
「お前はただメンタルが強いだけだ。普通は出歩きたくなくなる」
「伏黒も体験したしな」
「うるせえ」
伏黒くんと虎杖くんはぺこりと一礼し、あとにしようとすると。
「調査頑張れ」
「お前もやるんだよ」
「えーーーっ!」
私関係ないじゃん!