伏黒恵は無量空処に包まれ終わりを悟った。
いくら魔虚羅といえど、術者である伏黒恵が入ってしまっては伏黒恵にも効果がある。
だがしかし、領域内に入り、なぜか術式の効果が発動していないことがわかった。伏黒恵の脳内には無限の情報が流れ込んで来ていない。
「どういうことだ? なぜ俺は動ける?」
魔虚羅はいつのまにか消えていた。
伏黒恵の頭の上には方陣が浮かんでいる。伏黒恵は数秒間、考えてみるも理由がわかっていなかった。
「何かわからんがチャンスだ」
「…………」
五条悟の人形に呪力を込めた打撃をぶちかます。
五条悟の人形は退くこともせず、伏黒恵の攻撃をくらうが、五条悟の人形はびくともしていなかった。
領域の結界が解けていく。それと同時に、頭の方陣が回り適応が完了したことが伏黒には理解できていた。
「伏黒!」
「大丈夫だ。俺は動ける。なぜかは知らんが」
「そっか……ならいいんだけどよ」
「それよりやるぞ。布瑠部由良由良……」
伏黒は適応済みの魔虚羅を出した。魔虚羅は無量空処への適応は既に済ませてある。無量空処されたら魔虚羅がどうにか守ってくれる。まずは無下限への適応を早めることにした。
伏黒恵は領域に包まれない距離を保ち、無下限の術式をどんどん打たせ、可能なら攻撃を魔虚羅で受けて適応を促す。
伏黒恵は確信していた。この人形、虚式"茈"は使えないことを。
魔虚羅の破り方。適応前の初見の攻撃で一撃で屠る。
新宿では、無制限の虚式"茈"を使って魔虚羅を消し飛ばした。それが出来るのであればすぐに使ってくるはず。
赫、蒼は頻繁に使ってくるのでもう既に適応が終わりかけている。魔虚羅を倒すには既に無制限の虚式"茈"を決めるしかなくなっていた。
「術式反転"赫"」
魔虚羅は赫を受ける。
魔虚羅の方陣が回転した。適応が終わった。
「やっぱりあんたは先生であって先生じゃねえ。五条悟はお前のように弱くはねえ」
伏黒恵はニヤリと笑う。
「魔虚羅!」
伏黒恵は魔虚羅に命令を下した。
そのまま魔虚羅は五条悟の人形を無下限を無視して貫く。魔虚羅の拳は無下限を貫通し、五条悟の頭を吹き飛ばした。
魔虚羅の攻撃は最後まで続き、五条悟の人形を粉砕。五条悟の降霊が終わりを告げる。
「ふいー。一時はどうなるかと思ったけどなんとかなったな!」
「あぁ。稲荷も大変だっただろ。あとは神谷を捕えるだけだが……」
「その稲荷がいないわよ?」
「あ? どこいった?」
伏黒恵は辺りを見渡す。
すると、倒れている呪詛師の中に稲荷の姿が見つかった。
「……死んでる?」
「…………」
「稲荷ってそこまで弱くない……。キュウビなしでも強いでしょ!? なんでこんな死体に……」
「…………っ!」
伏黒恵はある考えに思い至ってしまった。
「……俺のせいだ。魔虚羅の適応を肩代わりしていたのはお前か……?」
その通りだった。
キュウビは自律思考が出来る式神で、稲荷と意思は同じだった。勝つために、勝てることをする。
稲荷は取り憑いた伏黒恵が無量空処に包まれると、取り憑いたキュウビが勝手に伏黒恵の術式を行使し、魔虚羅を消して無量空処の術式効果を肩代わりしていた。
式神が受けたダメージや効果はわずかながらも稲荷にも反映される。だがしかし、無限の情報はわずかという範囲には収まらず、外にいる稲荷に無量空処の効果が現れてしまったのだった。
キュウビが、稲荷が肩代わりしてくれていたため、伏黒恵は領域の中でも動くことができた。
動けなくなった稲荷は呪詛師にとっては格好の的。もし狙われていなくても、無量空処を数十秒受けた影響で廃人に化していた。
伏黒恵は勝った気分に浸れなかった。
人形の五条悟でも、自分の仲間を一人殺してしまった。
「…………悪ぃ、稲荷」
「……呆気なく、死んじゃうのね」
「……やっぱ慣れねーなこういうの」
伏黒恵たちは、稲荷の死体を見て、既に戦意喪失してしまったのだった。
だがしかし、伏黒恵の中のキュウビの魂は消えていなかった……。
降霊五条悟の性能
術式はそのまま保持。特異体質もそのまま保持。ただし術師本人の才能はコピー出来ず、人形は虚式茈を扱えないため、無量空処に適応された今、領域内での勝ち目は既になくなっていた。
肉体強度は強化できず、ただの人形であるため攻撃を喰らうとすぐに壊れる。魔虚羅の攻撃ですぐ壊れてしまったのはそのため。
指など細かな部品が破損しても少しは問題ないが、身体の大半が消失、または頭、胸を破壊されると戦闘不能となり術式が終了する。