家入さんと芦田さんが処置室から出てきた。
「終わったよ。これの処置については上と相談かな」
と、家入さんは堕胎させた胎児を見せてきた。
特級呪物になってしまったその胎児は安易に壊すことは出来ず、存在を保証する縛りでずっと保管しておくしかないかもねと家入さんは言っていた。
「とりあえず芦田ちゃんはどうするんですか?」
「しばらく高専で療養だね。結構体に負荷がかかってるし、これの影響であの化け物が見えるようになってるんじゃないかな。呪霊との子を孕む体質みたいだからまた目をつけられたらもう一回妊娠するかもしれないし、芦田さんの今後はどうするかなってところだね」
また呪霊に目をつけられたら妊娠させられてしまうかもしれない。
芦田さんは今回の妊娠でだいぶ体力が削られていて、今は麻酔が効いてるのかスヤスヤと眠っているが、誰かが守っていないとまた……。
「術師をずっとつけているっていうわけにもいかないしね」
「ですね。対策は考えないと……」
「そいつ受肉させたらダメなんですか?」
「……それは無理だろう。芦田のために誰かを犠牲にするのはダメだ」
「あ、生きてる人に受肉させる感じになるの?」
受肉体の存在は知ってるけどどうやってやるのかはさっぱりだし。
「……死体」
「死体に受肉ですか?」
「死体ならたくさんあるが……。出来るかどうかだな」
「……私の死体は?」
私がそう言うと、みんなこっちを向いた。
「ほら、私の死体は反転術式で綺麗に回復してるし、無量空処受けて脳がダメになっただけだから綺麗だし?」
「……お前はどうなるんだ?」
「さぁ? 今の私は私の式神に魂が移った感じだし問題ないんじゃない? 本体はすでに死んでるんだから私の体に受肉しても対して影響ないと思う」
多分問題はない。
私の体にはすでに私の魂は残っておらず、ただただ綺麗な容れ物みたいになっている。
家入さんは早速と言わんばかりに私の身体を持ってきていた。つい先日死んだばかりだから腐敗しておらず、綺麗な肉体。
「じゃ、やるよ」
「いいのか? 稲荷」
「構わん構わん。ま、上手くいくといいね」
家入さんは私の身体にその九相図を放り込む。
そして、私の身体が震えたかと思うと、どんどん肉体が変わっていく。そして、むくっと起き上がった。
「私たちも羂索のことをとやかくいう権利はなくなったな。成功だ」
「……ここは」
私の身体が一人でに動いている。
「母はどこですか」
「君のお母さんなら今寝ている。意識は大丈夫かい?」
「問題ありません。そこの狐も身体をくれて感謝します」
マジで受肉出来るんだぁ……。
私の身体に受肉した九相図はベッドから起き上がる。
「とりあえず知りたいことは山ほどある。君のお母さんが目を覚ましたら会わせてあげるからそれまで君のことを教えてくれないかい」
「わかりました」
九相図は座り話を聞く態勢をとった。
「まず名前はなんと呼べばいい?」
「なんでも構いません。名前はありませんから」
「そっか。産まれたばかりだしね。となると……とりあえず君のことを花子とでも呼んでおこう、名前は後でお母さんにつけてもらうといい」
「わかりました」
花子……。なんつーかそれから連想されるのはトイレの……。
「自分の術式はあるか?」
「あります。血を操る術式のようで」
「血を操る……」
「赤血操術……」
虎杖くんが反応していた。そして、顔を抑える。
「なにもそこまでアイツと同じじゃ無くていいのに……」
と嘆いていた。
虎杖くんは辛そうな顔をしている。私は虎杖くんに「大丈夫?」と声をかけると、虎杖くんは取り繕ったように大丈夫と笑い返す。
「赤血操術は加茂家相伝の術式だろ。なぜ発現している?」
「わかりません。ただ、自分の術式がそうだとしか……」
「伊地知に調べさせてみよう。まぁ、先祖に加茂家の血が混じってるのかもしれないな」
家入さんは術式をメモしていく。
「……悪ぃ、俺やっぱ無理だわ」
「……なんていうか、ごめんなさい?」
「花子が悪いわけじゃないんだ。ごめんな」
虎杖くんは立ち上がり、出ていこうとドアに手をかける。
「悠仁、またね」
「…………俺の名前をなんで」
「えっ? そういう気がしたので……」
「ははっ……そっか。そういう気がしたのか」
虎杖くんは少し涙目。
「また気持ちを落ち着かせたら会いにいくよ、兄貴」
そう言って出て行ったのだった。
「兄貴って……。私は血が繋がってませんよね?」
「色々あるんだよ人間には」
「そうなんですね」
複雑ぅ……。
「伏黒、私も出るわ。いい加減寝たいのよ」
「私も……」
「わかった。あとは俺と家入さんで見ておくからゆっくり休んでろ」
「すまないわね」
とりあえず、安心したのか知らないが眠気がとうとう襲ってきた。
後の処理を伏黒くんに任せ、私たちはそれぞれの部屋に戻ることにした。